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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第二十章 やったね、家族が増えるよ(増えるのが家族だけだとは言っていない)編
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11 シルフィ悩む。そして……


「最低でも二人。出来れば四人()んでほしいわね。国とナナシさんの領地の為に。」


王妃様にそう言われたシルフィは、思わず体をピシリと硬直させたのだった。



ベッドに上体じょうたいを起こして座り胸元に我が子を抱いているシルフィは、「四人……。」とポツリとつぶやくとうつろな目でくうを見詰める。

そのまま動きをめたシルフィは、胸元に抱いていた我が子を母親にヒョイと取り上げられたことにも気付いていない。


先日の出産は、難産ではなかったものの、それでも大変だった。

それが、あと三回も……。(クラッ)

想像しただけでもクラッとしてしまうシルフィなのであった。


最低でももう一人はまなければならない。夫の領地をがせる為に。それは分かる。

また、『万が一の時の為に、さらに二人』というのも理解できる。あとぐ者が居なくなってしまっては混乱が起きてしまうのだから当然だ。

それは分かるのだが、それでも思わず「ぐぬぬぬ……。」とうめいてしまうシルフィなのであった。


一方、シルフィを悩ませる発言をした王妃様が、実は『四人もめば一人くらい『ガ〇ガン』って名前を付けられるわよねっ。』などと考えていたことなど、シルフィに分かる訳がないのであった。



王妃様は初孫をかまい尽くすと、満足して帰って行った。

一人娘はいまだに「ぐぬぬぬ……。」とうめいていたのだが。



さらにしばらくの間「ぐぬぬぬ……。」とうめいていたシルフィであったが、突如とつじょとして天啓てんけいた。


『一人で四人もむは大変。でも、二人なら……。』


さいわいシルフィには、この話に乗ってくれそうな親友に心当たりがあった。

シルフィは、早速さっそく手紙を送るべく、ペンを手に取ったのだった。



< ナナシ視点 >


子供がまれてから10日ほどった。

シルフィも歩き回れるまで回復し、食堂で食事をできるようになった。

何故なぜか、いまだに俺がシルフィに食べさせてあげているけど。

シルフィをねぎらうつもりで求められるまま好きに甘えさせていたんだけど、これって、いつまで続けなければいけないんですかね?

なかなか”どき”が分からなくて困ってしまいます。(苦笑)



そんなある日のこと。

一人で部屋でくつろいでいたところにメイドさんがやって来た。

シルフィが呼んでいるとのことだったので、メイドさんのあとに付いて部屋を出る。

部屋を出ると、メイドさんはシルフィの部屋とは反対の方向へ向かう。

おや?

でも、シルフィも歩き回れるまで回復したことだし、応接室とかで来客と一緒に俺を待っているのかもしれないね。

そう考えて、俺は大人おとなしくメイドさんのあとに付いて行った。


メイドさんのあとに付いてやって来た場所は、すぐ近くだった。

って言うか、隣の部屋だった。

この王宮に来た当初に過ごしていた部屋だから、ちょっとなつかしく感じるね。


部屋に入ると、ソファーに座っているシルフィの姿が見えた。

それと、シルフィの向かいに座る、シルフィと同じくらいの年齢の女性の姿も。

『誰だろう?』と思いながらシルフィのもとへ歩いて行く。

その途中で、その女性が誰なのか気が付いた。

ああ、アントニオか。今日は女性っぽい服装だったからすぐには気が付かなかったよ。

でも、シルフィの友人って言ったら彼女くらいしか思い浮かばないし、彼女が、シルフィに子供が生まれたタイミングで会いに来るのは何も不思議な話ではなかったね。


軽く挨拶をしながら、シルフィの隣に腰を下ろした。

お茶をれてくれたメイドさんががって行ったところで、俺は二人に気になった事を訊く。


「彼女のことは何て呼べばいいのかな?」


彼女の本名は『アン』だ。だけど、前回、彼女の家をおとずれていた時に、彼女のことは男のフリをしていた時の偽名の『アントニオ』と呼ぶ様にシルフィに言われてたんだよね。

男装してくれていればよかったんだけど、今みたいに女性っぽい服装をしている時には何て呼んだらいいのか悩んでしまうよね。


「これからは『アン』と呼んでください。」


そう言われた。シルフィに。

それをシルフィが決めてしまうのはどうかと思う。前回もそうだったけど。(苦笑)

シルフィって、アンが相手の時だと割と強引ごういんなんだよねー。

きっとアンは苦笑いを浮かべているに違いない。

そう思ってアンに視線を向けると、何やらアンの表情が硬かった。

おや? どうしたのかな?

不思議に思いながら、俺はお茶を一口飲んだ。


カップを戻したところで、シルフィが俺に向かって言う。


「アンにはナナシさんの愛人になってもらいます。子供を二人は作ってくださいね。」

「…………?」


シルフィに何を言われたのか、頭の理解が追い付かなかった。



「?!」


頭の理解がやっと追い付いた。

でも、言葉の意味が分かっても、言っている意味が分からない。(混乱中)


俺は二人の表情をうかがった。


二人の表情は、俺の頭が理解した内容を裏付けている様に俺には思えた。


……え?

……マジで?

え? え? え?


俺は二人の表情を見比べながら、しばらくの間、混乱しまくったのでした。


(設定)

(人名)

アン

シルフィの親友。サーリス伯爵の一人娘だが男として育てられていた。当時の偽名はアントニオ。

グラスプ公爵家の馬鹿息子にシルフィが結婚を迫られていた際、それを回避する為にシルフィと婚約していた。

婚約者がナナシに変更された際にサーリス伯爵領に戻り、それ以降、ずっとサーリス伯爵領で過ごしていた。


(サーリス伯爵領について)

グラム王国の南東の端に在る領地。

北部で現クラソー伯爵領(元バディカーナ伯爵領)とククラス侯爵領と隣接し、西部でソーンブル侯爵領、南西部でグラストリィ公爵領と隣接している。


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