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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第二十章 やったね、家族が増えるよ(増えるのが家族だけだとは言っていない)編
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09 子供誕生


ある日、ケイティさんが俺の部屋にやって来た。

久しぶりだね。

隣街のダーラム侯爵邸に行って以来だからね。

ケイティさんが帰って来たのでニーナと交代……、って訳にはいかないんだったね。

そもそも、ケイティさんが俺の担当からはずれて隣街のダーラム侯爵邸まで行っていたのは、これから生まれて来る俺とシルフィの子供のお世話をしてもらう為に、その経験を積んでもらうのが目的だったんだもんね。


そのケイティさんから、ケイティさんと一緒にダーラム侯爵邸に運ばれて行ったベビーベッド型ウッドゴーレムについての報告も受けた。

『何も問題ありませんでした。(キリッ)』とのことだったので、後で同じ物を作ってシルフィの部屋に届けておこう。

それと、ダーラム侯爵のところに生まれた子供は男の子だったそうです。

俺はその事を、今、初めて聞いたんだけど、【多重思考さん】は生まれた時に既に知っていて、ダンジョンマスターのダーラムさんにしらせてあげていたんだそうです。

そのしらせを受けたダーラムさんは、連日れんじつ祝杯をあげていたそうです。

……最近聞くダーラムさんの話って、吞んでいたりつぶれていたりしている話が多い気がするのは何故なぜなんだぜ?(苦笑)

でも、いつも吞んだくれているという訳ではないのだろうし、今回はめでたい話なのでツッコむのはやめておこう。うん。



  ◇  ◇


ケイティさんが帰って来てから数日後。

いよいよ子供が生まれそうです。

そうは言っても、俺に何か出来る事が有る訳でもなく、ただ自分の部屋のソファーで待機しているだけです。

ソワソワする俺の横では、王様もソワソワしまくっています。

時々立ち上がってはウロウロと歩き、また座る。そんな事を何度も繰り返しています。

その気持ちは分からなくはないんだけど、何度も繰り返されるとイラッとします。

なので、王様がソファーに腰を下ろそうとした瞬間に、サッとソファーを”人をダメにするクッション・かい”に置き替えてやりました。

むにょんと腰を下ろして背中をあずけた王様は、そのままスヤァと夢の世界に旅立って行きました。

よし。静かになった。

それにしても、今日も安定の破壊力ですねー。”人をダメにするクッション・かい”は。



「ポテトチップス。」


俺の向かいに座っている王妃様が俺に向かってそう言います。

すると、スッとテーブルの上に大皿に盛られたポテトチップスが現れます。

【料理グループ】は今日もノリノリです。


ポテチをまむ王妃様とリリス様は、コーラを飲みつつご満悦まんえつです。

その様子をながめていると、俺の部屋が待機場所になった理由がありありと分かってしまって何とも言えない気持ちになります。

いや、きっと落ち着かない気分をまぎらわす為に飲み食いしているだけだな。……多分たぶん



ポテチを食べ尽くした王妃様が次の注文を俺に向かって言います。


「カツ丼。」

「……カツ丼は無いです。米が無いんで。それに醬油もありませんからどうしようもないですね。」

「味噌ラーメン。」

「味噌も無いです。」


この前のツナサンドの所為せいなのか、王妃様は、まるでこちらの手の内をさぐるかの様な事を言ってきやがります。

やめていただけませんかね? そういうの。

やめてくれないと、ただの食いしん坊()ばわりしちゃいますよ?



コンコン

「失礼します。」


そんな事をやっていたら部屋にメイドさんがやって来た。

全員が固唾かたずんでメイドさんを見る。


「無事ご出産されました。元気な男の子です。」

「やったわ!」


その報告を受けて立ち上がってよろこぶ。王妃様が。

波に乗り遅れてしまって、ちょっとくやしい。ビクンビクン。(←ビクンビクンはやめろ)


立ち上がってよろこんだ王妃様だったのだが、その直後に満面の笑顔が消えた。先日の命名騒動のことを思い出したのだろう。

子供の名前は”ガ〇ガン”ではありませんからねー。

俺の顔をジッと見たって、どうにもなりませんからねー。

いい加減、あきらめてくださいねー。

王妃様の視線がすっごく鬱陶うっとうしかったけど、全力でスルーしました。(ヤレヤレ)



俺たちはシルフィの部屋へ移動します。ゾロゾロと。

寝室に通されると、ベッドのまわりをメイドさんたちがかこんでいました。

キャッキャウフフで大層な盛り上がりようで、あそこへって行く勇気がいてきません。

どうしよう?


立ち尽くしていたら、メイド長が気付いてくれて場所をけてくれました。

ありがとうございます。


ベッドのわきまで行ってシルフィの様子をうかがうと、シルフィは眠っていました。

お礼の言葉を用意していたんだけど、眠っているのなら仕方がないね。

その眠っているシルフィの横に、布にくるまれた赤ん坊が寝かされています。

こちらも眠っているようです。

シワクチャな顔で猿みたいですが、生まれたばかりの子供は皆こんなものなんでしょう。

無事に生まれてきてくれた事に感謝します。


しばらくの間、生まれたばかりの赤ん坊を皆でながめました。

そうしていたら、これまでそれほど意識していなかった”家族”というものを意識する様になって、何となくホンワカした気分になりました。

『シルフィは俺の妻でこの子の母親。王妃様は俺の義母でこの子の祖母になるんだなぁ。』なんて思いながら王妃様の表情をチラリとうかがうと、『ぐぬぬ。』って表情をしていました。

まだ、”ガ〇ガン”に未練があるみたいです。

いい加減、あきらめてくださいね。ホンワカした気分が台無しだよ。



メイド長に退室をうながされて、俺たちは部屋から出ました。

俺たちの後からメイドさんたちがゾロゾロと部屋から出てきます。

……このメイドさんたち。他の仕事場からサボってやって来てたんですかね? どうでメイドさんが多かった訳だよっ。

ちょんと仕事してくださいねっ。



自分の部屋に戻って来ました。

そして、部屋に入ってすぐの場所で立ち尽くします。

”人をダメにするクッション・かい”の上でスヤァと眠っている王様を見て。


……そ、そういえば、シルフィのところで姿を見ていなかった気がスルナァ。(冷や汗)


えーっと。どうしよう?


ここで起こすと面倒なことになりそうな気がした俺は、”人をダメにするクッション・かい”ごと王様の執務室に運び込みました。


そして、後のことはその場に居た人たちに任せて、『俺は何もシリマセンヨ。』っていうていで自分の部屋まで戻ったのでした。



感動の場面に一人取り残されてしまっていた王様(オチ担当)なのでした。

王様ェ……。

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