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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第二十章 やったね、家族が増えるよ(増えるのが家族だけだとは言っていない)編
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07 人をダメにするクッションが出来ました


『人をダメにするクッションが出来ました。』


ある日、ソファーでくつろいでいたら、頭の中で【多重思考さん】にそう言われた。


ほう。人をダメにするクッションか……。


”人をダメにするクッション”は、俺も欲しいと思って前に少しだけ検討してみたことがあった。

だけど、”小さくて柔らかいツブツブ”を作る方法がまったく思い付かなくて、早々に断念していた。

石油から何かを取り出して何かを作り出さないといけないと思うんだけど、そのへんの知識がまったく無かったからね。どうしようも無いよね。

だけど、【製作グループ】がソレをどうにかして作ることに成功したみたいだね。

でも、一体いったい、どうやって作ったのかな?

そのあたりの説明を期待して、俺はそのまま【多重思考さん】の報告に耳をかたむける。


『”人をダメにするクッション”についてダーラムさんに相談をして、ダンジョン内にクッションの中身に使えそうな物がないか訊きました。』


なるほど。ダンジョンなら何か利用できそうな物が有るかもしれないね。

それに、無かったとしても”謎のダンジョンパワー”で作り出せるかもしれないしね。


『相談した翌日、ダーラムさんに見せてもらいました。”人をダメにするクッション型スライム”を。』


新しい魔物が爆誕ばくたんしていた?!

いいのか? それで。

てっきり、『クッションの中身に使えそうな物を”謎のダンジョンパワー”で作ってもらう』って方向になると思ってたんだけど?!


『その、新しくつくり出された、外見がクッションっぽいスライムなのですが、なかなかの座り心地ごこちだったそうです。』


うーむ。感心したらいいのか、そんな目的でつくり出されてしまったスライムをあわれんでいいのか、よく分からんね。


『リラックス効果に大満足したダーラムさんは、ダンジョン内にトラップの一つとして設置してみたそうです。冒険者たちがくつろいでくれれば滞在時間が伸びますしね。』


なるほど。そういう使い方もあるのか。


『ですが、普通に冒険者たちに討伐されてしまったそうです。”人をダメにするクッション型スライム”にたかってダメになっていたウッドゴーレムたちと一緒に。冒険者たちは一度に沢山たくさんの魔石をゲット出来てウハウハだったらしいですよ。』


何? そのオチ。ただのボーナスステージになっちゃってんぢゃん。

でも、ウッドゴーレムはもっと動き回れよ。【製作グループ】が作ったベビーベッドの方が動き回ってるんぢゃないか? 動き回るどころか飛んでっちゃったけど。(苦笑)


『今は”人をダメにするクッション型スライム”はダーラムさん専用になっていて、すっかりダーラムさんがダメになっちゃっています。』


”ダンジョンマスターをダメにするクッション型スライム”か……。

うーむ。

まぁ、ダンジョンマスターってあんまりやる事が無いっぽいから、ソイツが原因で何か大きな問題が起きてしまうことも無いだろうし、まぁいいか。


『”ダンジョンマスターをダメにするクッション型スライム”の所為せいで、すっかりダメになってしまったダ()ラムさんですが……。』


ダメラムさん言うな。


『そんなスライムとは別に”小さくて柔らかいツブツブ”も作ってくれていました。極小のスライムのボディを流用してつくり出してくれたんだそうです。』


ほう。


『ソレを毛皮で作った袋に沢山たくさん詰め込んで、”人をダメにするクッション”が完成しました。それがコレです。ジャジャン。』


そう言って【無限収納】から出されて床にモスンッと置かれた、大きくてモフモフで真っ白な立方体のクッション。


俺は、ソファーから立ち上がって近付くと、手で押して感触を確かめてみる。


むにょる むにょる


ふむ。だいたい想像した通りの柔らかさと変形具合だね。


その座り心地ごこちに期待しながら、早速さっそく、腰を下ろしてみる。

体にフィットする様にむんにょりと変形して、なかなかイイ感触です。(ニコニコ)

さらに背中もあずけて、体の大部分でクッションを堪能たんのうする。


うほーー。コレはいいものだぁーー。


天井を見上げながら、心の中で歓声を上げる。


『使っている毛皮もクッション専用にダーラムさんに新しく作ってもらいました。ネコ型ゴーレム用の毛皮では伸び過ぎてしまってどうにもなりませんでしたので。』


ああー。あの毛皮は良く伸びるからねー。

あの毛皮で作ったら、きっと液体感の高いデローンとしたクッションになっちゃただろうねー。ネコ用だしー。

その様子を頭の中で想像したら、『何だかスライムっぽいなぁ。』なんて思った。

片や、クッションを作ろうとしてスライムっぽくなってしまったモノ。

片や、クッション型につくり出されたスライム。

上手うまくいかない世の中の無情さを感じるね。何となくだけど。



それはそれとして。

それにしても、このクッションは気持ちがいいなぁー。


『リラックス効果はバツグンです。でも、うっかり寝てしまわないでくださいね。』


いやぁー、そう言われてもなぁー。(むふー)


『ダメになった顔をメイドさんたちに見られて、末代まつだいまでのはじになりますよ。』


グイッ


意思の力で上半身を引き起こした。


感触や座り心地ごこちはとても良かったんだけど危険な一面もあったんだね。コレって。

”本当は恐ろしい、人をダメにするクッション”だった。

しかし、『末代まつだいまでのはじ』って……。

一体いったい、どんなレベルでダメになってしまうと言うんだろうか?

そのあたりを確認する為に、ニーナに座ってもらおう。(ニヤリ)


そう考えて俺がニーナを呼ぼうとした時、シルフィが部屋にやって来た。お茶の時間になったのだろう。

そのシルフィが、”人をダメにするクッション”に座っている俺に訊いてくる。


「ナナシさんが座っているそれは何ですか?」

「これはクッションだよ。」

「……大き過ぎません?」


そういえば、ここまで大きなサイズのクッションってここでは見たことが無かったね。『クッション』と言われても初見しょけんでは驚くだろう。一人掛けのソファーとほぼ同じサイズだし。


「これはね。こうして床に直接置いて座る為のクッションなんだ。ソファーみたいにね。」


そう説明すると、興味津々(きょうみしんしん)な様子を見せるシルフィ。

まぁ、このクッションの危険な一面を確認するのはシルフィでもいいか。シルフィは元々残念だからダメになった顔をさらしたところで問題にならないだろう。(←おい)


俺は立ち上がって、シルフィに座るようにすすめる。「変形するから、ゆっくりと腰を下ろしてね。」なんて注意する点を言いながら。


シルフィは慎重にクッションに腰を下ろすと、感心した様に言う。


「とても柔らかいですね。(ニッコリ)」

ころぶ様に座ると気持ちいいよー。」


俺がそう教えてあげると、シルフィはクッションに背中をあずけて体の大部分で感触を堪能たんのうし始めた。


ふふふ。とりこになってしまうがいい。(ニヨリ)



数分後。

すっかりリラックスしたシルフィは、人をダメにするクッションの上で”ダメな顔”をさらしていました。


な、なるほど……。(汗)


想像以上の効果にビビります。

うん。こいつはヤベェ。


この”人をダメにするクッション”は、人をダメにする効果が高過ぎて逆に使いにくいんぢゃないのかな?

かくで俺が一人でいる時に使う分には問題無いから、かく専用にしておくか?


ダメになっちゃったシルフィを眺めながら、この危険物(苦笑)をどうあつかおうか考えていたら、視線を感じた。

視線を感じる方向へ顔を向けると、微妙な表情をしているクリスティーナさんと目が合った。


さて。

クリスティーナさんのこの”微妙な表情”は、どんな意味なのだろうか?

シルフィを”ダメな顔”にしちゃった事を非難しているのかな? それとも、『この後のシルフィのお仕事に支障が出そう。』とか、『気持ち良さそうだから欲しいけど、あんな顔になってしまうのはイヤだなぁ。』とか考えているのかな?

俺は色々とその”微妙な表情”の意味を考えたのだが、よく分からなかった。なので、俺はソッとクリスティーナさんから目をらしたのでした。



”人をダメにするクッション”でダメになってしまったシルフィ。すっかり爆睡ばくすいしちゃっていました。

『もう、このまま寝かせてしまおう。』ということになって、ベッドまで運ぶことになりました。『これではきっと使い物にならん。』というクリスティーナさんの神判断です。(苦笑)

【レビテーション】でシルフィの体をふよふよと浮かせてベッドまで運びます。

俺がそうしていたら、クリスティーナさんにあきれた様な目で見られてしまいました。

……ここは”お姫様だっこ”で運ぶ場面だったんですね。シルフィってお姫様だし。

でも、仕方がないんです。俺って”男子力”が低いから、そんな事に気が付く訳が無いんです。


【レビテーション】でふよふよと浮かせて運んで来たシルフィをベッドに置くと、俺はすぐに退散します。

クリスティーナさんのあきれた様な目で心にダメージをってしまうので。



”人をダメにするクッション”は、取り敢えず【無限収納】に仕舞しまっておくことにしました。かくで使うその時まで。

でも、かく爆睡ばくすいしてしまうと食事の時間になっても起きられない気がするな。さっきのシルフィの爆睡ばくすいっぷりを思い出すと。

やっぱり危険物だな、コイツは。【無限収納】に仕舞しまって、そのままぞうすることになってしまうかもしれないね。

頭の中で『せっかく沢山たくさん作りましたのにー。』なんて声が聞こえた気がしましたが、きっと俺の気の所為せいです。


世に出せない危険物が【無限収納】にまっていきます。(遠い目)

その”不都合な真実”から目をらした俺は、ふと、別の心配を思い付いて【多重思考さん】に釘を刺しておきます。


『クッションは空に飛ばすなよ?』

『何をおかしなことを言っているんですか? クッションが空を飛ぶ訳がないじゃないですか。(しれっ)』

『ベビーベッドを飛ばしたやつが何を”しれっ”と言ってんだよっ。二回も飛ばしておいてっ。』

『はっはっはっ。何を言ってるんですか。いつから四回目が無いと錯覚していた?』

『ゲッ?! 四回目があったの?! って言うか、三回目も聞いてないよ?!』

『今、四回目を楽しそうに計画しています。三回目がテイクオフ直後に壊れてしまったので構造を一からなおすんだそうです。いつか飛行機が誕生しそうですね、割と最初から飛行機っぽい形をしていましたけど。ベビーベッドなのに。』

『むしろ、いまだに『ベビーベッド』と言い張ってる事を不思議に思うけどなっ。』

『そう言って歯止めを掛けておかないと本格的に飛行機を作ってしまいそうですからね。』

『まるで歯止めが掛かっていたかの様に言っているけど、まったく歯止めが掛かっていなかったからな? そもそも、歯止めが掛かっていたら、ベビーベッドなんてものが空を飛んだりしてねぇよ!』

『はっはっはっ。』

『『はっはっはっ。』ぢゃねぇ!』


今日も【多重思考さん】があいわらずです。

もうちょっと歯止めを掛けてほしいです。本当に。


俺は、クッションが空を飛ぶ日がないようにいのっておきます。


いのる内容がおかしいことについては、俺はナニモキガツキマセンデシタ。(死んだ目)



(捕捉)

この”人をダメにするクッション”の製作から、【製作グループ】が裁縫さいほうを自分でするようになりました。人型のゴーレムを使った手縫てぬいです。(苦笑)

ミシン型ゴーレムの試作がまったく上手うまくいかなかったのです。

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