20 6日目 ある者の話 カーティー05
日の出と共に移動を開始した冒険者たち。
私たちも、魔道具で姿と気配を消して、後を付いて行きます。
昼過ぎに、オークの集落に着きました。
彼らは、部隊を三つに分けて、配置に就けます。
私たちは、散開して彼らを監視します。
私たちは、遠くから【バインド】の魔法で彼らの動きを阻害して、妨害をします。
オークどもが全員始末してくれれば良いのですが、漏れがあったら、私たちが始末して全滅させます。
公爵家側も監視しているはずだと思っていましたが、監視している者は居ませんね。
既に負けを見越して、就職活動をしているのかもしれません。
勝負する事が決まった翌日には、既に売り込みに来た者も居たらしいですし。
部隊の一つが攻撃を仕掛け、オークどもとの戦闘が始まりました。
彼らはオークどもと戦いながら、移動しています。
この部隊の仕事は、オークどもをオークキングが居ると思われる洞窟から引き離す事の様ですね。
なかなか良い仕事をしています。
もう一隊は動こうとしません。
あの部隊は、オークキングを倒す為の本隊なのでしょう。
突然、オークどもと戦っていた部隊の背後に、別のオークどもが現れました。
今回も、いきなり現れた様に見えました。
転移魔法でしょう。
”彼”の仕業ですね。
オークどもと戦っていた部隊は混戦になりました。
かなり苦戦をしている様に見えます。
よく見ると、不自然な動きをする者が何人か居ます。
どうやら、仲間たちが【バインド】の魔法で妨害をしている様です。
この事態に、本隊の方はどう動くのでしょうか?
ドーン
洞窟に魔法を撃ち込みました。
オークキングを出来るだけ早く仕留める事を選択した様です。
そうですよね。今、仕留めないといけませんからね。
やり直しをする戦力的な余裕も、時間的な余裕も無いのですから。
ドーン
さらに魔法をもう一発撃ち込みました。
オークジェネラルとオークキングが、洞窟から出て来ました。
本隊がオークキングに向かって行きます。
挑発し、壁を作り、上手い具合に、オークジェネラルとオークキングを分断しました。
オークキングに斬り掛かっています。
魔法や弓矢でも攻撃を仕掛けています。
一気に仕留めにいきます。
私たちは、オークキングに攻撃を仕掛けている冒険者たちに魔法を掛けて、妨害をします。
【バインド】、【バインド】、【バインド】、【バインド】
よし。上手く妨害できました。
妨害に気が付いた者も居た様ですが、そういった者たちからオークキングに始末されていき、少し数を減らす事が出来ました。
魔法での攻撃が無くなりました。魔力が尽きたのでしょう。
攻防が拮抗してきたでしょうか?
私たちは、さらに魔法を掛けて、妨害をします。
【バインド】、【バインド】、【バインド】、【バインド】
冒険者たちの攻撃が少なくなってきました。
必死に斬り掛かっていますが、仕留めるまでには至らなそうです。
その時、異変が起きました。
洞窟から、新たにオークジェネラルが3体出て来たのに続き、オークキングがもう1体出て来たのです。
それも、今、彼らが戦っているモノよりも明らかに大きなオークキングが。
グオオオオオオォォォォォ!!
新たに現れたオークキングが吠えました。
冒険者たちの動きが、一瞬止まりました。
戸惑っているのでしょう。
『何故、オークキングが2体も?』と。
『どちらのオークキングを攻撃すればいいのか?』と。
それは、致命的な隙になりました。
一気に、形勢がオークどもに傾きました。
”蹴散らす”と言う状態になるまで、ほとんど時間が掛かりませんでした。
撤退の指示が出ましたが、既に手遅れですね。
蹴散らされています。
追い立てられています。
追い立てられている冒険者たちに魔法を掛けて、転倒させます。
【バインド】、【バインド】、【バインド】、【バインド】、【バインド】、【バインド】、【バインド】、【バインド】、【バインド】
転倒させた冒険者たちは、オークどもが始末してくれました。
仲間の一人が、逃げて行く斥候の後を追って行くのが見えました。
あちらは任せておいて大丈夫でしょう。
私たちの仕事は、無事に終わりそうです。
冒険者たちは全滅した様です。
2体目のオークキングが出て来た時点で、彼らの”勝ち”は無くなっていましたね。
あそこですぐに撤退を指示すべきだったのでしょうか?
それでも、彼らの作戦失敗は避けられなかったでしょうね。
上手く撤退できたとしても、やり直す時間的余裕など無いのですから。
『オークキングを転移魔法で出す。』か。
しかも、より大きい奴を。
冒険者たちへの依頼は、”一番大きいオークキングを”だったはずです。
どちらを攻撃しようか戸惑って当然ですね。
魔法の援護が尽きて、攻め手が疲れてきてから、出した。
見事な一手でしたね。
逃げ切った者が居ないのを確認している間に、他の仲間たちが集落のオークどもを始末して来ました。
後から現れた大きなオークキングは、いつの間にか居なくなっていたとのことです。
”彼”が回収したのでしょう。
そう言えば、彼らしき気配はずっと感じませんでしたね。
何処に居たのでしょうか?
仲間が集まり、仕事の成功と無事を確認してから、私たちはこの場から撤収しました。