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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第二十章 やったね、家族が増えるよ(増えるのが家族だけだとは言っていない)編
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02 シルフィご懐妊。それと、ツナサンドおかわり


「シルフィが妊娠したわ。おめでとう。二人とも。」


王妃様にそう言われて思考停止してしまった。


『ハッ!』と再起動した俺は、隣に座るシルフィを見る。

シルフィは、とてもいい笑顔でこちらを見上げています。


俺は、笑顔のシルフィに声を掛けようとして、考える。

こういう場合って、何て言えばいいんだろう?

『おめでとう。』は、どことなく他人ひとごとみたいな感じがして、少し違う気がするんだよなぁ。

うーーん。


「えーーっと。こういう時って、何て言っていいのか分からない。初めてのことだし。えーっと……。」


たなかったので、一度そう言ってからさらに考え、その一言ひとことをひねり出した。


「あ、ありがとう?」

「はい。(ニッコリ)」


俺がそう言うと、シルフィは笑顔でそう返事をしてくれました。

どうやら間違ってはいなかった様です。(ホッ)

疑問形になっちゃってた気がしないでもないけど、シルフィは喜んでくれているみたいだし問題無いだろう。うん。



リリス様とメイド長からもおいわいの言葉をいただき、その後、二人はニヨニヨする王妃様を連れて帰って行きました。

王妃様から連れ去られぎわに『揚げパンと、一応、マヨネーズのレシピもよろしくねっ。』って言われたけど、今はまぁいいや。

俺は、にゅるりんと俺のひざの上に移動していつも以上にベッタリと抱き着いてくるシルフィの肩を軽く抱きながら、片手で頭をナデナデします。

シルフィが俺の胸元むなもとで「むふふふー。」とか「でへへへー。」とか「クンカクンカ。」とか言っているのが聞こえてきますが、好きにさせておきます。

まだちょっと動揺が抜け切れていないので。



たっぷりとデレデレベタベタを堪能たんのうしてご満悦まんえつになったシルフィが部屋に帰って行きました。

俺は、揚げパンとマヨネーズのレシピと注意事項を書いた紙をケイティさんに渡し、一息ひといきついたところで、頭の中で【多重思考さん】に訊きます。


『シルフィが妊娠したこと、知ってたんぢゃないの?』


部屋に来る前にシルフィと王妃様たちはその話をしていたのだろうし、その話をコッソリと聞く以外にも【多重思考さん】には知る方法があるんだからね。


『もちろん、知っていましたよ。(しれっ)』


コイツ、しれっと答えやがったぞ。


『何で教えてくれなかったの?』


前もって教えておいてくれていれば、もっと気のいたことをシルフィに言えたと思うんだ。

そんな自分の姿なんて自分でも想像できないけど、そんな事は今は置いておいて。


『前もって知っていたら、先程の様な初々(ういうい)しい受け答えなんて出来なかったんじゃないですか? あの初々(ういうい)しい受け答えで本体ほんたいさん(=ナナシのこと)の好感度、ばくがりでしたよ。』


やめて! そんなこと言わないで! 恥ずかしいから!


顔が赤くなってしまいそうになった俺は、かくに緊急避難します。

そして寝室のベッドに頭からもぐんで足をバタバタさせたのでした。



かくから王宮の部屋に戻って来た。

すると、部屋には生卵が沢山たくさん届けられていました。それと、お酢も。

どう見てもマヨネーズを作る材料です。本当にありがとうございました。あんまり嬉しくないけど。

油が無かったけど、きっと『アブラナのたねから抽出ちゅうしゅつした油』が厨房ちゅうぼうには無かったのだろう。

何だか、毎日ツナサンドを食べに来る王妃様の姿が脳裏に浮かぶなぁ。(しおしお)



翌日の昼前。

アブラナのたねが山ほど届けられました。うん。知ってた。



おやつの時間です。

昨日と同じ面子メンツが俺の部屋に集まっています。

ついでに、昨日の恥ずかしい出来事も思い出しそうになってしまいましたが、平常心です。

サッサとツナサンドをらわせて追い出そう。(←平常心とは?)


各人の皿には、一本を四等分に切ったツナサンドが乗せられています。

どう見ても”おやつ”の量ではありませんが、どうせ腹いっぱいになるまで食べるだろうしなっ。特に王妃様とか、王妃様とか、王妃様とかっ。(←全部同じ人です)


ツナサンドをらわせ、追い出そうとしたところで、当たり前の様にお土産みやげをおねだりされました。

あの大量の材料は、その為の物だったんですね。

毎日のおやつとして出す分の材料だと思ってたんだけど、ちょっと甘く見てたわ。

ぐぬぬん。


そして、”ぐぬぬん”となっている俺とは無関係にテーブルの上にパッと現れる多くの皿。(昨日ぶり三回目)

今日も【料理グループ】はノリノリでした。



四人が上機嫌で帰って行くのを見送った後。

俺は、『マヨネーズを作る魔道具』を作って引き渡す事を決意します。

材料をもらったとは言え、こんなペースで”残弾数”を減らされてしまっては困るのです。

サルモネラ菌の殺菌とかに気を使わないといけなくて面倒だったんだけど、魔法で出来るし、やっているんだから、当然魔道具が作れるのです。

サッサと作って引き渡すぜ。まぁ、実際に作るのは【製作グループ】なんだけどなっ。(てへっ)


『お待ちください。』


あれ?

【多重思考さん】から”待った”が掛かったぞ?


『『マヨネーズを作る魔道具』だけではツナサンドは作れませんよ。(あきれ)』


……それもそうだったね。


『マヨネーズを作る魔道具』を作って引き渡すだけでは済まない事に気付かなかったあたり、やっぱり平常心ではなかったのでしょう。

よく考えるまでもなくツナも必要だし、あのパンを作る為の”菌”だって必要ぢゃん。

ぐぬぬん。

それに、サルモネラ菌は、マヨネーズを作る時だけでなく生卵やマヨネーズを運ぶ段階でも気を付けなくてはいけない。手に付いていた菌が食べ物に移ってしまう恐れがあるからね。

魔道具を渡すことで安心してしまってそのあたりのことに注意を払わなくなってしまうと、かえって危険なことになってしまいかねない。

そんな事まで考えると、『【料理グループ】に作ってもらったツナサンドをきるまでらわせる』が、きっと正解なんだろうね。(しおしおー)



翌日のおやつの時間。

今日も今日とてツナサンドです。

俺は、無心でもぐもぐしました。


もぐもぐタイムの終了後。『このツナサンドを子供のお披露目ひろめパーティーに出そう。』なんて話になりました。

パーティーにこのツナサンドを? それって見た目(てき)にどうなんですかね?

このツナサンドを皿に乗せて出して、ナイフとフォークでっていうのは何か違うよねー。


もしかして、『ふわふわな食パンを作って、見映みばえのする綺麗なサンドイッチを作れ』ってことなのかな? 違うよね? 違うよねっ?


でも、まだずっと先の話だね。そもそも、まだ生まれてもいないんだし。

生まれてすぐにお披露目ひろめをするって訳でもないだろうから、一年くらい先の話になるのかな?

それまでには、やわらかいパンを作れるきんが見付かっていたりするのかな?

せめて、立食りっしょく形式のパーティーならなんとかなるのかな?


そんな事を考えながら頭の中で一口サイズのオサレなサンドイッチを想像していたら、ふと、『やわらかくてふわふわな食パンを薄く切るのはどうやったらいいのかな?』なんて事を考えた。

ナイフとかでは切れなさそうだから、薄い刃を回転させてそれで切るのかな? その為のゴーレムを作らないといけなくなっちゃいそうだね。


『お任せください。ガイ〇ンで検討した回転ノコギリの技術がここで活きます。(ニヨリ)』


そんな事を考えていた俺の頭の中で、何やらおんな単語が聞こえたような気がしました。

気の所為せいだと判断して、俺は全力でスルーします。

俺は、ナニモキイテナイデスヨ?


そもそも、まだ一年くらい先の話だから、今から考える必要なんか無いのです。(無心)


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