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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第二十章 やったね、家族が増えるよ(増えるのが家族だけだとは言っていない)編
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01 ナナシ、揚げパンを振舞う。そして……。


そろそろ、おやつの時間になる。

俺は、自分の部屋でシルフィが来るのを待っています。

今日は、【料理グループ】が作ったおやつをシルフィにふるう予定なので。


【料理グループ】が今回作ったのは”揚げパン”だ。油で揚げたパンにきな粉と砂糖をまぶした、アレ。

何で”揚げパン”なのかというと、以前、【料理グループ】に試作をお願いしていた”ふっくらしたパン”を作る過程で作られた”少しふっくらしたパン”。それで揚げパンを作ってもらったところ意外と美味おいしかったので、それをシルフィにふるおうと思ったからだ。



シルフィがやって来た。

シルフィのあとに王妃様とリリス様が続き、メイド長もやって来た。


ま、まぁ王妃様が来るのは分かる。前もってシルフィに『揚げパン』って言ってあったから、その話が王妃様に伝われば興味を持っただろうしね。

リリス様も分かる。これまでにも何度か、俺が何か作った時にフラッとやって来ていたからね。こたつとか。

でも、メイド長がおやつの時間に来るのは珍しいね。

きっと王妃様が呼んだんだろう。揚げパンが美味おいしかったら今後のおやつのラインナップに加えることを考えて。


皆がソファーに腰を下ろしたところで、【無限収納】の中から皿に盛られた揚げパンを出して、皆の前に置く。

揚げパンは、ねじって焼いたパンを揚げたタイプだ。俺の記憶の中に有る、給食で出された揚げパンを忠実に再現しているのでね。

各人の皿には、それを縦に半分に切ったものをさらに一口サイズに切ったやつが盛られている。

おやつだから、このくらいの量でいいよね。

人によっては少し多い気もするが、王妃様がおかわりをしそうな気がするのは、何故なぜなんだぜ?


ケイティさんにお茶をれてもらって、皆で揚げパンを食べ始める。


もぐもぐ


「これは美味おいしいわね。それとパンがいいわね、やわらかくて。(ニッコリ)」


王妃様にそう言われて、内心で『そうでしょう、そうでしょう。』と思う。

うむうむ。(←満足げ)

俺の隣に座るシルフィをチラリと見ると、笑顔でもぐもぐしています。

シルフィはかわいいなぁ。(ニヨニヨ)


「このパンに興味があるのだけれど、揚げていないのはあるかしら?」


王妃様にそう言われると、俺が反応するよりも早くコッペパンっぽいパンが一つ乗った皿がテーブルの上に現れた。

どうやら【料理グループ】が、王妃様からそう言われることを想定してスタンバっていた様だ。俺が考えるより早く出て来たしな。


王妃様がその”コッペパンっぽいパン”を手に取り、少しちぎって口に入れてもぐもぐする。


ちなみに、”コッペパンっぽいパン”と呼んでいるのは、コッペパンと呼ぶにはふっくら感が足りていなくてややひらべったく、モッチリとしているからです。


「このパンはナナシさんが作ったのよね? もっとやわらかいパンはないの?」


一口食べた王妃様にそう訊かれた。


「もっとやわらかくてふっくらしたパンを作りたいんですけど、なかなか難しいんですよねー。作ろうにも”きんだいですしね。”きん”を見付けられないことにはどうしようもありません。」

「頑張って、もっとやわらくて大きい四角いパンを作ってちょうだい。」


『大きい四角いパン』って、それって”食パン”のことを言ってます?

まぁ、俺も食パンが出来上がってくるのを期待して待っているんだけどね。

バターをたっぷりと塗ったサクサクでふわふわなトースト。食べたいよねー。(ジュルリ)


「このパンに何かをはさんで食べても美味おいしそうよねぇ。(チラッチラッ)」


そう言って、期待した目でチラチラと俺を見る王妃様。

そして、俺が考えるよりも早く出て来る皿。(さっきぶり二回目)

今日の【料理グループ】、ノリノリである。


テーブルの上に新たに出された皿。それにはツナサンドが乗せられていた。

ややひらべったい”コッペパンっぽいパン”に縦に二つ切れ込みが入れられ、そこにツナマヨがギュッと詰め込まれており、たっぷりのツナマヨに大満足の一品です。(うむうむ)


四等分に切られているその一切れを素早く取った王妃様が、早速さっそく、一口(かじ)く。

そして、一言ひとこと


「ツナマヨ?!」


そう言った王妃様は、いている片手を伸ばしてもう一切れ確保しようとするが、既に皿の上には何も残っておらず、その手はくうを切る。

そのままその手を宙に泳がせながら、俺をジッと見詰みつめる王妃様。


「……おやつですからね?」


おやつなんだから、あんまり沢山たくさん食べちゃダメだよね。


正論せいろんとツナマヨ。どちらが大事だいじなのかは言うまでもないでしょ。(断言)」


大事だいじなのは『正論せいろん』ですからね?!

時々、妙に子供っぽくなるよなっ。王妃様って!


と、俺はそう思ったのですが、そう言える雰囲気はそこにはありませんでした。”四対一”になってしまっていて。

頭の中で【料理グループ】に”残弾数”を確認してから、もう一皿追加で出しました。

俺は多数決に負けたのであって、決して、無言の圧力に負けた訳ではないのデスヨ?(←誰に対する言い訳なんだよ)


その一皿もペロリとたいらげられ、無言の圧力によって、さらにもう一皿追加で出さなければなりませんでした。(しおしお)

くっ。これが数の暴力かっ。(←そんなおお袈裟げさな話ではありません。四人しか居ませんし)



おやつとは言えない量のツナサンドを食べて、さぞかし満足したかと思いきや、何故なぜか始まる事情聴取。


「マヨネーズ、作れたのね……。(ジットリ)」


そう言ってジットリとした目で俺を見る王妃様。

ツナマヨ美味おいしいですからねー。材料がそろえばツナマヨの為にマヨネーズを作るのは当然ですよねー。(うむうむ)

でも、マヨネーズ作りは危険なので、そのあたりの事をハッキリと言っておきます。


「生卵は危ないですからね。殺菌とかあつかかたとかにすっごく気を使わないといけなくて大変です。それと油の品質も大事だいじで、作るたびにアブラナの種から抽出ちゅうしゅつして油を作ってます。お酢は高いですし、本当に色々と大変なんですよ。」


そう言って釘を刺しておきます。

さも、俺が苦労しているみたいに言っていますが、実際に苦労しているのは【料理グループ】なんですけどね。(てへっ)


俺の話を聞いて、少し難しい表情をして考えていた王妃様が訊いてくる。


「ツナはどんな魚なのかしら?」


どうやらツナマヨを簡単にはあきらめてくれないご様子です。うん。知ってた。


「こんな魚ですね。」


俺はそう言って【無限収納】の中から全長3mくらいの魚を出して宙に浮かせる。『コレを見てあきらめてくれてたらいいなぁ。』なんてチラリと思いながら。

この魚。【多重思考】の誰かがってきて【無限収納】の中に入れられていた”でっかいカツオ”みたいな魚だ。名前は知らん。何処どこって来たのかも。

あ。もっと大きな魚も【無限収納】の中に有ったな。別の魚だけど、そっちを出しておけばよかったかな? スッパリとあきらめてもらえる様に。

でもまぁ、これでも十分に大きいから大丈夫だろう。


「「………………。」」


宙に浮かせたこの魚を見て、王妃様とメイド長は何も言わない。

シルフィとリリス様は『大きなお魚ですねー。』くらいにしか思っていなさそうです。

まぁ、この国って、西へ行けば海があるけどがけになっていて港なんて無いからね。魚の知識がろくになくても仕方がないだろう。

でも、このサイズの魚をろうとした時にするであろう苦労は、想像してもらえるだろう。

【多重思考】たちが何処どこからか勝手にって来るんで、俺はそんな苦労をまったく知らないんだけどね。(←おい)



「それじゃあ、明日のおやつもここで食べることにして、本題に入りましょう。」


しばらくの沈黙の後。サラリとそう言って、流れる様に明日のおやつもココで食べることにしやがる王妃様。

作るのはあきらめてくれたみたいだけど、食べることはまったくあきらめてくれていやがりません。うん。知ってた。

『勝手に決めんなやっ。』とは思うものの、そんな事を言える雰囲気ぢゃないのは先ほどと同じです。”四対一”ですし。

でも、自分たちでツナマヨを作るのはあきらめてくれたみたいだから、ひとず、それで”よし”としておこう。


でも、『本題』って何ですかね?


『本題』は、『俺がシルフィに揚げパンをふるう』ぢゃなかったっけ?

ツナマヨに全部持って行かれてしまって、すっかり影が薄くなっちゃってるけど。(苦笑)

可哀想かわいそうな揚げパンさん。美味おいしかった君のことは忘れないよ。(合掌がっしょう


俺が、可哀想かわいそうな揚げパンさんの冥福めいふくを心の中でいのっていると、王妃様が言う。


「シルフィが妊娠したわ。おめでとう、二人とも。」


王妃様にそんな事を突然言われた俺は……。


思考が停止したのだった。


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