表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十九章 『金色の牛』編
383/400

03 生け捕り作戦 (冒険者レアード視点)


< ベテラン冒険者レアード視点 >


俺が冒険者を引退する事を決めてから10日ほどった。

だが、俺はまだダンジョンにもぐり続けている。


あの金色きんいろうしの魔物の情報を売ったモウケル子爵からの依頼を受けて。


今回、俺が受けた依頼は、俺と酒場のマスターのハゲ頭に髪をやしたあの金色きんいろうしの魔物を、生きたままつかまえて持ち帰ることだ。

ハゲをなおす為に、わざわざ貴族様がダンジョンに入る訳などないのだからな。

それに、あの金色きんいろうしを手元に置いておけば、おおもうけ出来ることは間違い無いのだ。

情報料を受け取った時はあまりの金額に驚いたのだが、あの金額くらいならすぐに取り戻せるのだろう。



  ◇  ◇


12階層までやって来た。

同行して来たモウケル子爵のへいうちの20人ほどが、目的の金色きんいろうしさがしに散らばって行く。

俺は本隊に同行し、この階層のなかあたりで発見のしらせを待つことになっている。

本隊と一緒にのんびりと進む俺の隣では、私兵のリーダーがワクワクした表情をしている。

目的の金色きんいろうしつかまえるついでに、自分のハゲ頭で試してみたいのだろう。『雇い主であるモウケル子爵に効果を説明する為』という立派な口実こうじつも有るわけだしな。



この階層のなかあたりに到着した。

すると、すぐに私兵の一人がやって来て、「目的の金色きんいろうしを発見しました。」と報告する。

あせる気持ちをおさえながら、金色きんいろうしさがしに散らばって行った私兵たちがこの場所に集まってくるのを待った。


しばらく待っていると……。


「俺は、目的の魔物をあしめしに行ってくる!」


そんな事を言って、待つことに我慢できなくなったらしい私兵のリーダーが走って行ってしまった。

……まぁ、いいだろう。

他の私兵たちも苦笑にがわらいをしているだけだしな。



金色きんいろうしさがしに散らばっていた私兵たちが全員集まり、目的の魔物を発見したという場所まで移動する。


その場所に着くと、私兵のリーダーが金色きんいろうしに頭を差し出してめられていた。

アレの効果を知らなければドン引きする光景だ。

ハゲた男が笑顔でハゲ頭を差し出して魔物にめさせているんだからな。

見ていたら、『悪い夢に出てきそうな光景だな。』なんて思った。



散々(さんざん)()められて頭をねっちょりとさせたリーダーの指示で、金色きんいろうしの足をロープでしばり、組み上げた荷車にぐるまの上によこたわらせる。

金色きんいろうしがほとんど無抵抗だったおかげで、なんなく荷車にぐるませる事が出来てホッとする。

大人おとなしい魔物だとは思っていたが、ここまで無抵抗だと少々不気味に感じる。

だが、後は地上まで運んで、モウケル子爵のお屋敷まで運ぶだけだ。


荷車にぐるまに布を掛けて目立つ金色きんいろうしを隠すと、俺たちは上機嫌で上の階層へ続く階段の方へ向かった。



  ◇  ◇


ダンジョンの中を上へ上へと移動し、いよいよ第一階層へがる階段が見えてきた。

金色きんいろうしせた荷車にぐるまを持ち上げて階段をのぼるのは重労働だったが、あれが最後の階段だと思えば笑顔も出てくる。

布が掛けられた荷車にぐるまの積み荷に興味を示す冒険者たちを、俺が先頭に立って視線であつしながら最後の階段に向かって歩いて行く。


そんな時……。


「あれ?」、「何だ?」、「おかしいぞ?!」


後ろから、そんなまどった声が聞こえてきた。

俺は思わず立ち止まり、後ろを振り返った。


「牛が居ないぞ。」、「どうした? 何が起きた?」、「消えた。消えたんだ!」、「そんな馬鹿なことがあるか!」


そんな声を上げて、荷車にぐるままわりでオロオロする私兵たち。

その様子を見ていたら、荷車にぐるまに掛けられていた布がはらわれた。

そこに、金色きんいろうしの姿は無かった。


咄嗟とっさに周囲をわたす。

だが、あの金色きんいろうしの姿は何処どこにも見えなかった。


おかしい。


足をロープでしばっていたのだし、そんなに遠くへ行けるはずがない。

そもそも、荷車にぐるまにはよこたえた状態でせていたのだ。立ち上がろうとした時点で、間違いなく気付いたはずだ。


おかしい。


何が起きた?


……まさか、本当に消えたのか?


俺は、やけに大人おとなしくしばられて荷車にぐるませられていた、あの金色きんいろうしの不気味さを思い出して……。


呆然ぼうぜんとその場に立ち尽くしたのだった。



(設定)

(モウケル子爵)

元軍人。文官タイプで数字に強く、軍では財務関係の仕事をしていた。先代ククラス侯爵の側近の一人。ハゲ。

ククラス家とは親戚関係で、ダンジョンの在る街グシククに住む。


(グシククの街に住む貴族たちについて)

ダンジョンの在る街グシククは最前線の街でもあるので、普通の貴族はこの街に居着いつきません。この街に住んでいる貴族は、皆、ククラス家の親戚です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ