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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十八章 のんびりしよう(できるとは言っていない)編
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09 畳作りと、続・ナナシの携帯端末02end


イグサっぽい草でたたみおもてを作る様子を『工房』に見に行ってから数日後。


俺は、今、”お着替え部屋”に敷いたばかりの”真・たたみ”の上で思う存分ぞんぶんゴロゴロしています。

”真・たたみ”からかおるイグサっぽいにおいやざわりが、本当に最高です。


うはーー!



思う存分ぞんぶんゴロゴロしくし、一息ひといきついたところで【多重思考さん】から報告が。


かくの居間のたたみの交換が終わりました。それと、王妃様とリリス様に販売できるぶんの製作も終わっています。』


よし。

では早速さっそく、王妃様のところへ行って、この”真・たたみ”を売り込もう。

”真・たたみ”作りは、時計作りをこの国の職人さんたちに丸投げをする口実に使っていたから、きっと王妃様も待ちわびているはずだ。


『王妃様のところへ行く前に電話をしよう。』と思ったんだけど、俺の携帯端末は居間のテーブルの上に置きっぱなしだったな。

呼べばここまで歩いて来てくれる気がするけど、それはやめておこう。

ゴロゴロしているところに、あの”百姓一揆のベテラン(?)”みたいなヤツがくわを手に持って歩いて来るとか、ちょっとしたホラーだからね。(苦笑)


それに、”アレ”を使って電話をするのも何だかめんどくさい。直接、持って行くことにしよう。

そう決めた俺はムクリと体を起こすと、そばひかえていたケイティさんに「ちょっと王妃様のところへ行ってくる。」と言ってから、トテトテと歩いて王妃様の部屋に向かったのでした。



王妃様の部屋に来て室内に通されると、王妃様はこたつでお仕事をしていました。

気に入っていただけているようで、何よりです。(笑顔)

こたつにはもう一人居るけど、天板てんばんの上にしているので誰なのかは分からない。

でもまぁ、きっとリリス様なんだろう。頭の上にみかんが乗せられているし。(苦笑)


そんな”頭の上にみかんを乗せられている人”から視線を王妃様に戻して、訊く。


「イグサっぽい草を使ったたたみが完成したんで持って来たんですけど、どうしましょうか?」


こたつの下に敷いてあるやつと交換するのはめんどくさそうだ。”みかんの人”が邪魔で。


「んーーと、ず、そのあたりに一枚出してもらえるかしら。」


そう言って、俺のすぐそばゆかを指差す王妃様。


俺は、言われた通りに”真・たたみ”を一枚【無限収納】から取り出して敷いた。

こたつから出て来た王妃様が、”真・たたみ”の上に乗る。

王妃様は、少しツルツルする感触を足で楽しんだ後、その場でひざをついて手でも感触を確認します。

そして、顔を近付けて、くんくん。


ですよねー。たたみがあったらにおいをぎますよねー。


「これはいいわね。(ニッコリ)」

「いいでしょう。(ニッコリ)」


王妃様と俺は、笑顔で通じ合ったのでした。



『それぢゃあ、めんどくさいけど”みかんの人”とこたつを一度片付けて、たたみを交換しますかねぇ。』と思ったんだけど、王妃様は「たたみたたみで楽しみたいわ。」とのこと。

なので、出した一枚とこたつはそのままにして、残りの”真・たたみ”を【マジックバッグ】に入れた状態で王妃様にお引き渡し。リリス様のぶんも一緒にね。

そして、おだいはいつもの様にシルフィと価格交渉した上でシルフィに渡してくれるようにお願いしました。


俺と王妃様がそんなやり取りをしていた間に、リリス様が”真・たたみ”の上に移動して全身で堪能たんのうしていらっしゃいました。

ほっぺたにたたみあとが付きそうだけど、王妃様がめる未来が思い浮かばないのは、何故なぜなんだぜ?

それどころか、頭の上にみかんを置こうとする未来が見えるよっ。

天板てんばんの上に取り残されていたみかんを取りに向かった王妃様の姿に苦笑しつつ、俺は王妃様の部屋をしたのでした。



自分の部屋に戻った俺は、かくの方のたたみも確認しようと思い、準備をする。

テーブルの上で油断なくくわを下段にかまえている俺の携帯端末(=携帯端末型ゴーレム)。コイツからくわを取り上げてホルスターに入れたいのだが、コイツをホルスターに入れるのってすっごくイヤだなぁ。

コイツはココに放置して行こう。電話が掛かって来たら、この部屋に常駐している【目玉めだま】を通して【多重思考さん】が気付くだろうしね。

携帯していなくても何とかなってしまう携帯電話……。

まぁ、俺が普通ぢゃないだけだし、気にするのはやめよう。


べ、別に、自分が普通ぢゃないことに改めて気付いてしまって傷付いてなんていませんよ?(←誰に言ってるんだよ)



かくにやって来た。

いつもの居間兼応接間から出て、廊下を渡って南側の建物に行く。

を開けて靴を脱ぎ、一段いちだん高くなっているキッチンにがりつつスリッパをいて、隣の居間へ。

居間に入ると、一面に”真・たたみ”が敷かれていて、イグサっぽい良いにおいがします。

思わず、ゴロゴロころがりながら部屋の真ん中まで移動してしまいました。


うはーー!(本日二回目)



広い部屋のたたみの上をゴロゴロゴロゴロするのは本当に最高です。(ニヨニヨ)


たたみの上でゴロゴロするのは最高ですよねー。』


頭の中で【多重思考さん】もそう言います。

うんうん。そうだよねー。


『時計作りをしていた時に作った『腹をかかえてころまわるだけのゴーレム』も、この部屋で役に立ったのでよかったです。』

たたみの上でゴーレムをゴロゴロさせんなや。」

『大丈夫です。表面を加工してツルツルに仕上げてからころまわらせましたので。』


その心配もしていたけど、違う、そうぢゃない。

でも、もう既にやらかした後みたいだし、どうでもいいか。


『いやぁ、無駄にならなくて本当によかったです。』

「そもそも、作ったこと自体が無駄だったけどなっ。」


普通、作らないよなっ。『腹をかかえてころまわるだけのゴーレム』なんて!


『無駄と言えば……。』


ん?


本体ほんたいさん(=ナナシのこと)、入ります? あの先日の圧力鍋。』

「入らねぇよ。あと『圧力鍋』って言うな。この前は『サウナ』って言ってたぢゃねぇかよっ。」


使つかみちが無いからって、俺をでようとすんな。



天井を見上げながら、ふと、思い出す。

交換したことで余った”たたみっぽい何か”は、どうしようかな?

メイドさんたちの訓練場で使ったりするかな? 柔道場みたいな感じで。

体術の訓練をしている場所では喜ばれそうな気がするよね。


王妃様に訊いてみるか。


そう思った俺は、サクッと【転移】で王宮の自分の部屋へ……。と思ったんだけど、ちゃんと靴を履いてから戻らないとね。

廊下まで戻って、靴を履いてから王宮の自分の部屋へ戻りました。



ソファーに腰を下ろし、テーブルの上で油断なくくわを下段にかまえている俺の携帯端末(=携帯端末型ゴーレム)を眺める。

コイツからくわを取り上げないといけないんだけど、どうしようかな?

普通に武装解除を命令すれば、それで済むのかな?

一応、試してみよう。


くわをその場に置け。」


俺がそう言うと、携帯端末型ゴーレムはくわをその場に置いた。

なんだ。これでよかったのか。

すんなりと武装解除が出来て、ホッとした。


携帯端末型ゴーレムは歩いてこちらに近付くと、正座せいざをして座った。

君、正座せいざなんて出来るんだね。以前よりも足が長くなったお陰なんだろう。

でも、まるでこれから切腹でもしそうな雰囲気を出しているのは何でなんですかね? 俺は、ただ電話を掛けたかっただけだからね。

おそおそる携帯端末型ゴーレムに手を伸ばし、手に取る。そして、「手足を引っ込めて。(ビクビク)」と命令する。

手足を本体と一体化させた携帯端末型ゴーレムは、普通のストレート型携帯端末の姿になった。


「ふぅ。」


ホッとしたぜ。

でも、ただ電話を掛けたかっただけなのに、何でこんなに疲れないといけないんだよっ。

くそう。

もう、あのくわは封印決定だな。

きっとあのくわは呪われた品だったんだよ。その所為せいであんな”百姓一揆のベテラン(?)”みたいなヤツが召喚されてしまったんだ。そうに違いない。うん。



グッタリとしながら王妃様に電話を掛けて、使わなくなった”たたみっぽい何か”がるか訊いた。『訓練場にでもどうですか?』って話もしてね。

王妃様も訓練場で使うことを考えていたんだそうで、俺のところで余っているやつを王妃様に引き渡して有効活用してもらうことになりました。


使わなくなった”たたみっぽい何か”を【多重思考さん】に【マジックバッグ】に入れてもらい、それをケイティさんに手渡します。「王妃様のところに届けてね。」とお願いしてね。

よろしく。


これで色々とひと区切くぎりが付いたね。

ふぅ。



夕方。

王妃様から頼まれていた物作りが終わったので、俺はソファーでマッタリとくつろいでいます。

え? ガイ〇ン? 知らない子ですね。(すっとぼけ)


そんな俺の目の前。テーブルの上には、ゴロゴロところまわる俺の携帯端末型ゴーレムの姿があった。


えーっと、何これ?


『我々もメイドさんたちに負ける訳にはいきませんので。』

『変に張り合うなや。それも、ここのメイドさんたちとっ。そもそも、テーブルの上でゴロゴロところまわっている”コレ”で、どうやってメイドさんたちと張り合うつもりなんだよっ。』


そう頭の中でツッコんだ俺は、ぼんやりとテーブルの上でゴロゴロところまわっている携帯端末型ゴーレムを眺めます。

視界のはしにクーリがウズウズしているのが見えちゃって、クーリが飛び掛かったりしないかちょっと心配です。


すると……。


シュバッ!

タシッ


あっ?!

我慢できなくなったクーリが、『シュバッ!』と手を出して携帯端末型ゴーレムを押さえ付けた。

ネコだね。


『フィーーッシュ!!』


そして、俺の頭の中で響く【多重思考さん】の嬉しそうな声。


ここのメイドさんたちと張り合っても勝てないと思っていたけど、”釣り”では【多重思考さん】の勝ちだったみたいです。



(設定)

(お着替え部屋って?)

王宮のナナシの部屋は三つの部屋が繋がっています。『居間(兼接客部屋)』、『お着替え部屋』、『寝室』です。

お着替え部屋の一画には”たたみっぽい何か”が敷かれていて、こたつが置いてあります。


(リリス様って誰だったっけ?)

元・王宮のメイドで、王妃様の姉(てき)な人です。森で拾った王妃様を王宮に連れて来ました。ナナシからこたつセット一式を購入済み。


(”真・たたみ”を、畳表たたみおもての交換だけにせずに新しく作った理由について)

以前、畳表たたみおもての代わりに革を張って作った”たたみっぽい何か”。その革をがして畳表たたみおもてを交換しようとしなかったのは、革のにおいが残っていたらイヤだったからです。

王妃様もナナシと同じ気持ちでしたので、”張り替え”という話は一切出てきませんでした。


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