19 6日目 ナナシサイド オークキングGETだぜっ
俺は王宮の部屋で、目を閉じてソファーに座っている。
しかし、頭の中では、複数の【目玉(仮称。魔法で作られた目。正式名称まぢどうしよう)】を通してオークの集落の状況を見ている。
オークの集落での戦闘が終わった。
その場に生き残っている冒険者は居ない様だ。
次の作業に移る。
王都の南の荒野に、【隠蔽】の結界を半球状に張ってある。
その中に、先ほどオークの集落で暴れてもらった、”一番大きなオークキング”を【転移】させる。
【頭のおかしい火魔法(【火属性魔法グループ】が開発した超高温の【ファイヤー】を刃の様な形にして飛ばす魔法。触れた物を蒸発させることで何でも切れる)】で、右肩から股間に掛けて体を二つに切り裂く。
倒れるオークキング。
ふう。
上手くいって、ホッとした。
ちなみに、ここに持って来てから殺したのは、オークの集落で殺すと、死体を奪われる恐れが有る気がしたので、わざわざこうしました。
最初は縦に真っ二つにしようと思っていましたが、魔石を避ける為に右肩から股間に掛けて切りました。
後は、綺麗にして仕舞うだけだ。
断面の”でろっとしたもの”を【分離】し【分解】する。
血も同様に処理して、オークキングの体に【クリーン】の魔法を掛けてから【無限収納】に仕舞った。
地面にも【クリーン】の魔法を掛けて綺麗にして、結界を消した。
よし。
一番大きなオークキング、GETだぜっ。
一仕事やり遂げた満足感に浸る。
満足感に浸っていたら、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】に言われた。
『【頭のおかしい火魔法】ではなく、ちゃんとした名前を付けないのですか?』
『【頭のおかしい火魔法】が実態にピッタリ合っている。変える気は無い。(キッパリ)』
諦めた様な感情が頭の中に浮かんだ。
『ピッタリな名前だよね? 失礼ぢゃね?』
【多重思考さん】からの反応は無かった。
それはそれとして。
視界をオークの集落の周辺に居る【目玉(仮称)】に切り替え、逃げ延びている冒険者が居ないか探す。
俺は、冒険者たちには全滅してもらおうと思ってるからね。
冒険者たちを妨害した事が知られて恨まれてしまうと、今後の生活に支障が出かねないから。
オークの集落の周辺には、まだ逃げ延びている冒険者たちが少数ながら居た。
『彼らをどの様に始末しようかな?』と、使う魔法を考えながら様子を窺う。
しかし、その冒険者たちは恐慌状態になっていたのか、足をもつれさせて転び、オークやオークジェネラルたちにやられていった。
俺が何もしない内に、逃げ延びていた冒険者たちは全滅した。
よし、終わった。
俺が何もしない内に全滅してくれたので、ホッとした。
念の為、視界を【魔力検知】のモノに切り替えて現場を見たら、魔法で姿を消していると思われる者たちが、チラホラと居る事に気が付いた。
皆、複数の魔道具を持っている様だ。
【魔力検知】の魔法で見ると、魔道具の存在が光って見えるからね。
彼らは、何らかの魔道具を使って姿を消しているのだろう。
でも、彼らは何者なのだろうか?
冒険者たちの仲間ではなさそうに感じる。
誰が、何の目的で、居るのかな?
どうしようか考えている内に、魔法で姿を消している者たちが一か所に集まって来た。
彼らは撤収する様だ。
その様子を見ていて、ふと、疑問に思った。
彼らは、仲間の姿をどうやって見ているのだろうか?
魔力を検知する魔法だったりするのだろうか?
魔力を検知する魔法を他の人も持っているとなると、【目玉(仮称)】の隠密性が失われてしまう。
彼らが、どの様な魔法を使っているのか気になったので、【目玉(仮称)】で追って、様子を窺うことにした。
彼らを【目玉(仮称)】で追って様子を窺っていたら、姫様が部屋にやって来た。
彼らを【目玉(仮称)】を通して監視しながら、隣に座る姫様の相手をしていたら、なにやら姫様が行動をエスカレートさせてきた。
メイドさんたちもそれに便乗してきたので、さすがに放置できなくなった。
彼らの監視を【多重思考さん】にお願いして、姫様たちに声を掛けたら、「もっと構ってください!」とか言われてしまって、姫様たちの相手をすることになってしまった。
夕食後も、姫様にねだられて、構ってあげることになってしまった。
やれやれだね。
姫様が部屋に帰って、一人になった後。
【多重思考さん】に監視をお願いしていた、魔法で姿を消していた者たちについて報告を受けた。
彼らが仲間の姿を見る為に使っていた魔道具は、赤外線を見る物だったそうだ。
『【遮光】結界を使って赤外線を遮断したら立ち止まったので、赤外線で見ている事が確認が出来ました。』とのこと。
その件に関して、やらなければならない事を【多重思考さん】に言われたので、【多重思考さん】に言われるままそれに従い、その後に寝た。