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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十八章 のんびりしよう(できるとは言っていない)編
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08 畳作りと、続・ナナシの携帯端末01


朝食後のお茶を飲み、シルフィが部屋に戻って行くのを見送った後も、俺は何となくダラダラとソファーでくつろいでいた。


そんな俺の目の前のテーブルの上。そこには、二丁にちょうのハイパーバズー〇をカッコよくかまえている俺の携帯端末(=携帯電話型ゴーレム)の姿があった。


【多重思考さん】……。そうやって変なものを俺の携帯端末に与えるのはやめてくれよ……。


そんな事を思いつつ、ぼんやりとソイツを眺める。

すごくサマになっていてカッコイイ。……のだけれども、こんなフォルムだったっけ? 俺の携帯端末って。

最初見た時は、ごく普通のストレート型携帯端末に”短い足”と”取って付けた様な腕”がえている程度だったと思う。

だけど、今の姿は、手足が太く長くなっていて、本体部分にひねりが入っていたりする。

かげで以前とは印象がかなり変わっていて、最初期のガンプラと最新のガンプラを比較した時みたいな大きな違いがあった。

ゴーレムだから変形が可能だし、ここ最近の色々なことで進化していった結果、このフォルムになっていったんだろう。

だけど、俺の携帯端末って、一体いったい何処どこに向かって進化して行ってるのかなぁ……。(遠い目)


テーブルの上で二丁にちょうのハイパーバズー〇をカッコよくかまえてポージングしている携帯電話型ゴーレム。その姿を、テーブルの横にしゃがみ込んで見ているケイトの表情はとても満足げだ。

まるで、『こいつはワシが育てた』とでも言っているかの様に見えます。


ケイトがコレを持ち去ろうとしていないのは、さすがに、ハイパーバズー〇の使い方を教えるメイドさんが居ないからなんだろう。

いや、ケイトがハイパーバズー〇を理解している訳がないな。むしろ、”大きなトンファー”とでも誤解していそうなものだけど、どうして持ち去ろうとしていないのだろう?


俺がそう疑問に思っていたら、携帯電話型ゴーレムがハイパーバズー〇の先端を、俺とケイトの間の誰も居ない空間に向けた。


ポシュ ポシュ


そんな軽い音を立てて、ハイパーバズー〇からたまが発射された。

え? そのハイパーバズー〇、たまが出るの?!


スチャッ

ポシュ ポシュ


かまなおして、もう一丁いっちょうのハイパーバズー〇からもたまが発射された。無駄にカッコイイポーズで。


たまが撃ち出された先を振り返って見てみると、少し離れた場所に小さなたまころがっていた。あまり飛距離はないみたいだ。


『ピンポン玉みたいな軽いたまを【ウィンド】で押し出しているだけです。威力なんてかいです。』


威力が無いのはいいんだけど、わざわざ作るほどのモノでもないよね? どうして、こんなおもちゃみたいなモノを作ったのかな?


『ネタが尽きそうだったので、仕方なく。』


そんな理由かよっ。


【多重思考さん】が話した理由にあきれながら、俺は姿勢を戻してソファーに座り直す。

すると視線の先には、ドヤ顔をしているケイトと、ドヤっている様に見える携帯電話型ゴーレムの姿が。


……さっきの”アレ”の何処どこにドヤる要素があったのかな? 『ポーズが無駄にカッコよかった』くらいしかなかったと思うんだけど?


まぁ、いいや。

今日は『工房』に用事があるんだから、出掛ける準備をしよう。


俺は、ず、携帯電話型ゴーレムからハイパーバズー〇を取り上げる。それを【無限収納】に仕舞しまうと、次に、携帯電話型ゴーレムを手に持ち、命令する。


「手足を引っ込めて。」


手足を本体部分と一体化させて普通のストレート型携帯端末の姿になったソイツを、ホルスターに仕舞しまう。

わきのところでモゾモゾしないでね? 頼むよ?


そんな心配をしつつローブを羽織はおり、ケイティさんに外出することとお茶の時間には戻ることを伝える。

そして、「行ってきます。」と言ってから、ササッと『工房』に転移しました。



『工房』にやって来た。

『工房』に来るのも久しぶりかな? ここしばらくは丸投げするだけで足をはこんでいなかったし。


久しぶりに来た『工房』では、ゴーレムたちが作業しています。

二つのグループに別れて作業しているゴーレムたち。その一つはたたみの本体部分を作っているようだ。そばに麦わらが山積みになっているし。


もう一つは、畳表たたみおもてむ為の道具らしきモノの準備をしている。


それらのゴーレムたちの向こう。一番奥に、大きな金属製の立方体が置かれていて、その周囲をグルリとあしが囲んでいるのが見えた。

見付けたイグサっぽい草をでたりしたりして処理の仕方の実験をしていると聞かされていたので、アレがその為の鍋なんだろう。

そう、当たりを付けて、そこに向かって歩いて行く。

近付くと、その立方体の横に置かれた台の上に緑色の草が置かれているのが見えた。


『それらはでて乾燥させたものです。においの確認をお願いします。』


頭の中で【多重思考さん】にそう言われたので、たたみの重要な要素でもある”におい”をぐべく手に取る。

手の取ったソレは、ヘロッとしていた。

”おひたし”を乾燥させたみたいなヘロヘロ具合が気になったけど、先ににおいを確認する。


くんくん


まぁ、たたみっぽいかなぁ。ちょっと物足りない気もするけど、”まぁまぁたたみ”ってところだろう。

でも、この”ヘロヘロ具合”は何だろう?


でたりしたりしてみたのですが、どうも失敗したらしくそんな状態に。よかったら食べてみてください。』

『『食べてみてください。』って……。』


確かに、『”おひたし”を乾燥させたみたい』って思ったけどさぁ。(苦笑)

戦国時代に食べられる物を使ってたたみを作っていたなんて話は聞いたことがあったけど、畳表たたみおもてまで食べられる様にはしていなかったんぢゃないのかなぁ? 知らんけど。


俺は、手に持っていた失敗作ソレをソッと元あった場所に戻して、【多重思考さん】に訊く。


『で。結局、処理はどの様に?』

『ただ乾燥させるだけにして、【ドライ】で乾燥させたものと、かげしで乾燥させたものと、日干ひぼしで乾燥させたもので比較しようと考えています。』


【ドライ】の魔法で乾燥させるのはすぐに出来るだろうけど、自然乾燥させるのは日数が掛かりそうだね。



次に俺は、この大きな金属製の立方体について訊く。


『コレって、イグサっぽい草をでる為に作った大きな鍋?』

『大きな圧力鍋です。今はふたはずされている状態です。高圧を掛けてすことも出来る様にと【製作グループ】が頑張って作ったのですが、コイツの所為せいで色々と条件を変えてイグサっぽい草をでたりしたりすることになってしまった結果、かなりの量を無駄にしてしまいました。砂鉄や鉄鉱石から抽出してストックしておいた鉄もゴッソリと無くなってしまいましたし。』


【多重思考さん】が、ちょっとオコっぽいです。


『今、ヤツラには、イグサっぽい草の自生地の拡張工事をさせています。』


時計作りを継続できなくなった原因が、ココにも有ったよ……。


脳裏にチラリとゴーレムたちが強制労働させられている光景が浮かんだけど、それは、まぁいいや。

脳裏に浮かんだ光景をサラッと追い出して、俺は、大きな圧力鍋を見る。

このサイズの圧力鍋って作るのが難しかったんぢゃないのかなぁ? 強度的な関係で。きっと、強度をたせる為に、沢山たくさんの鉄を使う必要があったんだろうね。

せっかく作ったコレだけど、コレを何か他の事に使うことってあるのかなぁ?


『サウナにでもどうですか?』

『『サウナにでもどうですか?』って、それって、ただ”蒸気”が共通項として有るだけなんぢゃないのかな? それ以前に、圧力鍋に入るなんて怖くて出来ねぇよ。』


殺人事件が起きそうだよね。圧力鍋って殺傷力が高そうだし。

こいつででられた時に死因が何になるのか、少しだけ気になります。やろうとは思わないけど。



それはそれとして。


『【ドライ】で乾燥させた草って、ある?』

畳表たたみおもてを作るところにあります。』


そう言われて、畳表たたみおもてを作る為のみ機らしきモノが置かれている場所へ移動する。

木材で組まれた、たてながみ機らしきモノ。上から縦糸たていとが1cmくらいの間隔でらされているので、横糸よこいとにイグサっぽい草を使ってみ込んでいくのだろう。

そのみ機らしきモノの横の台に置かれていたイグサっぽい草を手に持って、くんくんとにおいをぐ。

さっきの”乾燥させたおひたし(笑)”よりもたたみっぽいにおいがします。

思わず、このにおいのするたたみの上でゴロゴロする様子を脳裏に思い浮かべてしまいます。(ニヨニヨ)


俺がニヨニヨしていたら、畳表たたみおもてむ作業が始まった。

縦糸たていとを二本ずつ交互に前後させて、そこに左右からイグサっぽい草をゴーレムが差し込んでいく。


ガション

サササッ


ガション

サササッ


その作業を繰り返していく。


……これは、かなり時間が掛かりそうだなぁ。

たたみの上でゴロゴロできるようになるまでには、まだしばらく掛かりそうだ。


俺は、後の事をゴーレムたちに任せて、王宮の部屋に戻ることにしました。



自分の部屋に戻って来た俺は、ローブを脱いでケイティさんに手渡し、ホルスターから携帯端末を取り出す。

わきでモゾモゾしなくてよかったよ。ふぅ。


携帯端末をテーブルの上に置こうとした、その寸前。俺の携帯端末(=携帯電話型ゴーレム)は足をやすと、その足を前後に広げてテレマーク姿勢でテーブルの上に着地した。

無駄に芸が細かいなっ。


俺がそうあきれていると、手もやした俺の携帯端末に【多重思考さん】がものを与える。

だから、そういうのはやめろと……。


【多重思考さん】からくわらしきものを受け取った携帯電話型ゴーレムは、その場でろして畑をたがやすような動作を始める。

コイツに畑をたがやさせる状況なんて思い浮かばないよね。考えるまでもなく効率が悪過ぎるし。

それなのに、どうしてくわなんか渡したんだか……。


ろしかたが全然なってないねー。」

『フィーーッシュ!!』


俺がそんな事を考えていたら、ここ数日の間に何度も聞いたケイトのセリフが聞こえた。【多重思考さん】の嬉しそうな声も。


またか。


そしてケイトは、今日も携帯電話型ゴーレムを持ち去って行ったのでした。



夕方まで、俺はソファーでダラダラと過ごした。”真・たたみ”が完成するのは、まだまだ先の話になりそうだったしね。


そんな俺の目の前のテーブルの上には、くわを振る俺の携帯端末型ゴーレムの姿が。


でも、ソイツのくわの振り方は、”畑をたがやす”てきなモノぢゃなくて”対人戦闘”みたいに見えてしまう。

おまけに、変に風格みたいなのがかもされていて、”百姓一揆のベテラン(?)”みたいに見えてしまうのは何でなんですかね? 何でなんですかねっ?!


今日も俺の携帯端末が謎進化してしまいました。いや、謎”深化”か? 『謎が深まる』てきな意味で。


今日もまた、ここのメイドさんたちの”普通でない一面”を見せ付けられてしまった気がします。


本当に、油断ならねぇなっ。


俺は、『早く”真・たたみ”が出来上がらないかなー。』とか思いながら、目の前の現実ソイツから目をらしたのでした。


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