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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十八章 のんびりしよう(できるとは言っていない)編
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05 ナナシ、携帯電話を完成させる02end


『携帯電話の端末30台と取り扱い説明書が出来上がりました。』


昼食の後もソファーでずーっとダラーーッとしていたら、頭の中で【多重思考さん】にそう言われた。

そうか、出来上がったか。いつもありがとうございます。


俺は、ケイティさんに王妃様への伝言を頼むと、その後もそのまま『ソファーでダラーーッ』を継続しました。


「ダラーー。」(←思わず口に出してしまう変な奴がここに居ます)



おやつの時間になってから王妃様が部屋にやって来た。シルフィと一緒に。


俺は【無限収納】から【マジックバッグ】を取り出し、その中から携帯電話の端末一台と取り扱い説明書を取り出して、向かいのソファーに腰を下ろした王妃様に手渡します。

王妃様は端末を少し見てから取り扱い説明書を開いて読み始めます。

王妃様には前に一度実物(じつぶつ)を見せているからね。でも、王妃様ってちゃんと取り扱い説明書を読む人だったんですね。

ちょっと意外に思ったのは内緒です。


シルフィにも、端末と取り扱い説明書を手渡します。

だけど、シルフィは、コレがどうやって使う物なのかよく分かっていないみたいだった。

報酬ほうしゅうを決めるさいに王妃様からどんな物なのか説明を聞いていたはずだけど、それだけでは理解なんて出来る訳がないよねー。


「前のとは全然(かたち)が違うんですね。」


シルフィにそう言われた。

ん? 『前のとは全然(かたち)が違う』?

そんな事はないと思うんだけど……。


『姫様が言っているのは『糸無し糸電話』のことでしょう。前に作った携帯電話の端末は王妃様にしか見せていませんでしたので。』


そういえば、そうだったね。

完成して、王妃様に見せに行って、その時は『お金がない』って理由で導入が見送られた。その後、そのまま【無限収納】に仕舞しまい込んだままだったね。


俺はシルフィに説明する。


「前に作ったコップみたいなやつは、話す相手が決まっているんだ。だけど、これは話す相手を指定することが出来るんだ。そういう機能を持たせる為に、まったくの別物になっているんだよ。」


コレの使い方を、実際にシルフィに使ってもらいながら説明することにする。

俺も【マジックバッグ】から端末を一つ取り出す。これにシルフィから電話を掛けてもらおう。

だけど、俺が手に持ったこの端末の電話番号が分からないな。何処どこかに書いている訳でもなさそうだし。


『携帯端末の電話番号は、端末に向かって『番号は何番?』とか『貴様の名を言ってみろ』とか言ってもらえば、表示部に番号を浮かび上がらせて教えてくれますよ。』


頭の中で【多重思考さん】がそう教えてくれた。

でも、『貴様の名を言ってみろ』ってのは何なんだよっ。訊けば答えてくれるのはがたいけどさっ。

訊けば答えてくれるのは、ゴーレムにしたメリットだよねー。


携帯端末(携帯電話型ゴーレム)に何て言って訊こうか少し考えてから、俺はさりげなさをよそおいつつ端末に向かって言う。


「この端末の電話番号は何番かなぁ?」


表示部に番号が浮かび上がった。『0007』だ。

番号が分かったので、シルフィに電話の掛け方を教える。


「俺の持っているこの携帯端末に電話を掛けるには、ず、この端末の番号である『0007』を、数字の形で盛り上がっているボタンを押して入力するんだ。次に、表示部にちゃんと『0007』と正しく表示されている事を確認してから、一番下の横長よこながのボタンを押してね。」


シルフィが、俺が言った通りに操作するのを見守ってから、自分の持っている端末に視線を移す。

それとほぼ同時に、俺の持つ携帯端末が「キュキュキュ、キュキュキュ」と鳴りながら振動した。


「電話が掛かって来ると、こうして音が鳴りながら振動するんだ。あと、表示部には電話を掛けて来たがわの端末の番号が表示されるんだ。」


そう言いながら、表示部に『0002』と浮かび上がっている端末をシルフィに見せ、さらに説明を続ける。


「この状態では、まだ、会話が出来る状態では無くて、一番下の横長よこながのボタンを押すことで会話が出来る状態になるんだ。」


そう言ってから、『発信』や『応答』を兼ねた横長よこながのボタンを押して、端末を顔の横に持って来る。そして、口元を手でかくしつつ小さな声で端末に話し掛ける。


「もしもし。シルフィ、聞こえる?」

「「はい。聞こえます。」」


シルフィの声が二重にじゅうになって聞こえた。すぐ隣に居るシルフィがこっちを向きながら返事をしたからね。(苦笑)

タイムラグがほとんど無いのは、かなり優秀なんぢゃないだろうか? その事に特にメリットを感じないけど。


「と、まぁ、こうして離れた場所に居る人と会話をすることが出来る魔道具なんだよ。」

「「へぇー、すごいですね。」」


シルフィから『すごいですね。』をいただきました。ダブルで。(苦笑)

でも、シルフィは、それほど『すごい』とは感じてくれていないみたいだった。

まぁ、いきなり携帯電話の凄さを理解するのは無理かもしれないね。使っている内に徐々に理解していってくれればそれでいいや。


「会話が終わったら、また横長よこながのボタンを押すんだ。それで『通話終了』ね。」


こうして、シルフィへの使い方の説明を終えました。



キュキュキュ、キュキュキュ


あれ? 俺の持っている携帯端末が鳴ってる。

と、思ったら、王妃様が端末を耳に当ててこちらを見ていた。

横長よこながのボタンを押して、『応答』っと。


「もしもし。」

「モシモシ、ワタシ、〇カチャン。」

「いきなりイタズラ電話とか、どうなんですかねっ?」


いきなり遊ぶなや。

そういえば、王妃様に『糸無し糸電話』を渡した時もリリス様と遊んでいたなっ。


「これは凄いわね。イイ出来だわ。」

「そうでしょう。そうでしょう。」


つい、自慢気にそうこたえてしまう。

色々と丸投げしたけど、俺もそれなりに苦労したんだから自慢してもいいよね。


その後、王妃様から取り扱い説明書の内容についていくつか質問された。電話()しに。

すぐ目の前に居るんですから、電話を切ってからでもいいんぢゃないですかねっ?

まぁ、使いたくなる気持ちも分からなくはないですけどね。

内心『子供かっ。』って思ったけど、王妃様については今更いまさらだな。『コーラ飲みたい!』とか『ガイ〇ン作って!』とか言っちゃうおかただからなっ。



王妃様との通話を終えて、満足そうな表情をした王妃様に少しあきれていたら、シルフィに訊かれた。


「ナナシさん。『もしもし。』って何ですか?」

「…………。」


改まって『何ですか?』って訊かれてしまうと、何て答えていいのか分からない質問だね。

何だろう?


「えーーっと。離れた場所に居る人に対して、こちらに注目してくれるように掛ける”問い掛けの言葉”……、かなぁ?」


上手うまく説明できないけど、何となく合っていそうな気がしないでもない。

俺のその説明で、シルフィは何となく理解してくれたみたいです。

ふぅ。

何だか、携帯端末の取り扱い説明書だけでなく、電話の使い方についても説明書が必要になりそうだね。『電話を掛けた時や受けた時には『もしもし。』と言う。』とかね。

まぁ、そういったものは、使う側が使っていく内にルールが出来上がっていくものだろう。

何かあったら、王妃様が対応してね。(←サイレント丸投げ)



「ナナシさんはその端末を使う?」


俺がひそかに”サイレント丸投げ”をしていたら、王妃様にそう訊かれた。


「え? 俺は持つ気は無いですよ。」


作る依頼はされたものの、最初から携帯電話を持つ気なんて無かった俺は、そう言ってサラリと拒絶します。

あまり持ちたくはないんだよね。携帯電話って。『何となく』でしかないんだけど。


「持ちなさいよ。あなたが一番何処(どこ)に居るのか分からなくなるんだから。」


確かにそうですねー。

俺って、転移魔法でフラッと出掛けちゃうし行動範囲も広いから、一番(つか)まえにくいですよね。

他の人なら移動速度である程度の居る範囲が分かるけど、俺の場合は『今、隣の大陸に居るの』なんてことまで有り得ますからねー。


「それを使うか、別の端末を作って持ってちょうだい。別の端末を作るなら番号を『0774』にしてもらうと分かり易いわね。」


『0774』? ああ、『ナナシ』か。確かに分かり易いね。いや、持つ気は無いんだけど。

でも、拒絶したところで、それが通るとは思えないなぁ。


「ぢゃあ、『0774』の端末を作って持ち歩くことにします。」


仕方なく、俺がれることにしました。


でも、持ち歩くのめんどくさいなぁ。【無限収納】に入れっぱなしにしちゃうと役に立たなそうだしなぁ。


「『めんどくさいなぁ。』とか思わずに、ちゃんと持ち歩いてね?」


王妃様に釘を刺されてしまった。

でも、何で分かったんですかね?


「そんな表情をしてたわよ。(あきれ)」


また読まれた?!

しかも、あきれた様な顔までされた!

ぐぬぬん。


仕方がない。ちゃんと持ち歩くことにしよう。

でも、ポケットに入れておくと何かの拍子ひょうしに落としちゃいそうなんだよなぁ。実際に経験あるし。

拳銃のホルスターみたいなのをふくに作ってもらおうかな? 脇の辺りに収納するやつ。

ついでに財布が入るくらいのポケットも付けてもらおう。

【無限収納】からお金を取り出すのって、不自然にならない様にするのが意外と大変だから、それを上手うまかくせるようにね。


と、そんな事を考えたりしながら、三人でおやつをいただいたのでした。(もぐもぐ)



王妃様とシルフィが帰った後。

ふくのミリィさんに部屋に来てもらった。


作って欲しい物をミリィさんに説明すると、ほぼ同じ物が存在するとのこと。


一度戻ったミリィさんが、見本としていくつか持って来てくれた。

見せてもらうと、ほぼ俺が想像していた通りの物で、ナイフやポーションなんかを収納しておく為の物なんだそうだ。

それらとは別に、『こんな物もありますよ。』と言って、腕に装着して袖口そでぐちからシュッと物が飛び出すなんてものも見せてもらった。

でもコレって、何の為のモノなんですかね? サラリと見せられたけど、暗器用の装備にしか見えないんですがっ?!


思わぬタイミングで、また一つ、ここのメイドさんたちの”普通でない一面”を見せ付けられてしまいました。

不意打ちはやめてください。


まったく、油断ならねぇなっ。



(設定)

(携帯電話の端末(携帯電話型ゴーレム)について)

沢山たくさんの小さな木のブロックで作られたゴーレム。全長15cmほど。

3個 x 3行並んだ『1』~『9』の数字の形で盛り上がったボタンと、その下に『キャンセル』と『0』と『マナーモード』の各ボタン。さらにその下に『発信』/『応答』/『通話終了』を兼ねた横長よこながのボタンが一つある。

これらのボタンの上に”表示部”があり、表示部は、数字の形で盛り上がることで打ち込んだ番号を表示したり、着信した際に相手の番号を表示したりする。

着信時は、携帯端末が振動しながら木のブロックをこすり合わせて『キュキュキュ』という音を出す。サイレントモードの際は、木のブロックの間に空間を作ることで音が発生するのを防ぎ、振動のみとなる。

電話番号は4桁の数字だが『0001』は『1』と省略して入力することも可能。

端末に向かって「〇番に電話。」と言えば、その番号に電話を掛けてくれる。

ゴーレムにしたことによって、かなり多機能になっています。


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