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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十八章 のんびりしよう(できるとは言っていない)編
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03 ナナシ、買い物に行く。(魔道具屋)


材木屋さんをあとにした俺たちは、次に、魔道具屋さんに向かう。


あの魔道具屋さんに行くのも久しぶりだ。

『あのおばあさん、元気かなぁ。』とか考えながら、俺はクーリをながめます。

クーリは、抱き締めた『サメ子ちゃん』に顔をうずめています。

恥ずかしがっているのかネコモードになっているのかはよく分からない。時々「うにょうにょ。」と聞こえてくるけど。

そんなクーリをでるのもイイよねっ。(ニヨニヨ)



目的地に到着。馬車からりて魔道具屋さんに入った。

奥のカウンターに居るおばあさんに挨拶する。


「こんにちはー。」

「おや。久しぶりだねぇ。元気にしてたかい?」

「はい。おばあさんもお元気そうで。」


そんな挨拶をわしてほっこりしていると、おばあさんが俺に訊いてくる。


「しばらくゴーレムを見てないけど、道路工事はおしまいかい?」

「道路工事は魔術師団がやるそうです。私がやると予算を削り切ってしまうみたいで。」


不思議ダネー。(←コイツがやると短期間で物凄いモノを作ってしまうので報酬に困ってしまうからです)


「『買い物ゴーレム』をゆずってくれないかねぇ? としをとると買い物も面倒でねぇ。」


『買い物ゴーレム』かぁ。ゴーレムを使って誰かさんが勝手に市場で買い物をしていたけど、それもおばあさんに見られてしまっていたみたいだね。

でも、あのゴーレムって【多重思考】たちが直接操作していたんだと思う。

自律行動型ではないから売ったところでどうにもならないだろうね。出掛けた先でコミュニケーションをとる為に、空中に文字を描く手段も必要になるし。いや、それは手紙でなんとかなるか。

でも、魔力が多く必要だったり【並列思考】のスキルも必要かもしれない。やっぱり無理だよね。


「あのゴーレムをゆずるのは無理ですねぇ。あれって自律行動型ぢゃなくて直接操作していましたんで。」

「才能の無駄使いだねぇ。買い物なんてメイドさんに任せればそれで済むだろうに。(あきれ)」

「ですよねー。」


おばあさんにあきれた様に言われてしまったけど、俺にはそう返事をするしかないよね。

今は、買い物はちゃんとメイドさんにお願いしていますよー。今回は自分で来てるけど。


それはそれとして。

俺は、おばあさんに魔石の価格を訊いてみた。価格が高騰こうとうしたままだったら、今回は魔石を買うのを見送った方がいいと思って。

すると、以前の、品薄しなうす高騰こうとうしていた状態は解消したとのことで、『もうすぐ前の価格にまで戻るだろうねぇ。』とのことだった。

それと、ポーションの価格も以前の価格に戻りつつあるそうだ。

俺や王妃様たちがやった色々な対策が効果を上げている様だね。うむうむ。


小さな魔石を100個購入した。

携帯電話(がた)ゴーレム30台分の魔晶石を作る材料としては少し足りないけど、足りない分は手持ちでまかなう。あまり買い過ぎちゃうのもアレなんでね。



じょうちゃん。手袋を見せてごらん。」


魔石の代金を俺から受け取ったおばあさんが、クーリに向かってそう話し掛ける。

クーリは『サメ子ちゃん』を抱いたまま手袋をはずすと、おばあさんにわたした。

おや?

俺は、クーリから手袋を受け取ったおばあさんに訊く。


「もしかして、その手袋ってこのお店であつかった物だったりします?」

「そうだよ。ウチがあつかってる魔道具だよ。このじょうちゃんの母親から頼まれて作った物だよ。」


へぇー、そうだったんだ。

俺は、いつもクーリが身に着けていたその手袋が魔道具だったことに驚いた。


「それって、どんな魔道具なんです?」

「……じょうちゃんから聞いてないのかい?」

「ええ。『寒がりなんだな。』って思ってました。」

「普通、メイドは手袋なんてしないだろうに……。(あきれ)」


あきれた様に言われてしまった。また。

確かに、手袋をしているメイドさんってクーリしか見たことがなかったね。

でもですね、王宮のメイドさんたちって『普通』ぢゃない人が多いんですよ。だから『普通』の話をされても困るんですよ。マジで。(苦笑)

まぁ、そんな事は他所よその人には言えないんだけどねー。


「少しいたんでるけど、あずかるかい?」

「今は護衛の仕事中なので。(キリ)」


おばあさんに訊かれたクーリは、そう返事をする。真面目まじめな顔で。

でも、抱き締めている『サメ子ちゃん』の所為せいで、せっかくの真面目まじめな顔も微笑ほほえましく思ってしまいます。

そんなところもクーリらしくてイイよねっ。(ニヨニヨ)



「で。じょうちゃんが抱いているソレは、なんなんだい?」


クーリが『サメ子ちゃん』を抱いたまま手袋をはめているのを隣でニヨニヨとながめていたら、おばあさんにそう訊かれた。

正直に『ゴーレムですよ。』だなんて答えないほうがいいだろうね。


「馬車の中で抱いている為に作った物デスヨ。」


だから、俺は、おばあさんにそう答えた。


「なるほど。ゴーレムかい。」


サラリと当ててくるのは、やめていただけませんかね。


おばあさんは、クーリから今度は『サメ子ちゃん』を受け取ってモニュモニュする。


「いい出来だねぇ。あんたが作ったのかい?」

「そんな訳ないぢゃないですか。俺のことを何だと思ってるんです? 王宮のふくの人に作ってもらったんですよ。」

「ほう。」


しばらく『サメ子ちゃん』をモニュモニュした後、おばあさんが俺に訊いてくる。


「で。他にはどんなゴーレムを作ったんだい?」


そう言って期待した目で俺を見てくるおばあさん。

だから、何でそんな事が分かるんですかっ? やめていただけませんかねっ、本当にっ。


頭の中で【多重思考さん】が【無限収納】の中にネコ型ゴーレムがあることを教えてくれたので、俺はソレを出すことにする。

ケイティさんから【マジックバッグ】を受け取り、いかにもそこから取り出したていでネコ型ゴーレムを出す。

なかあたりを下から片手で持ち上げ、ぬるんと体を変形させるネコ型ゴーレムに『今日もなかなかの液体えきたい感だなぁ。』なんて事をチラリと思う。

このネコ型ゴーレムって、ゴーレム史上最高傑作な気がするよね。この液体えきたい感とかマジで凄いと思うし。

宗教上の理由(笑)でこれ以上の完成度に出来ない事が残念だ。


それはそれとして。

俺は片手で持ったネコ型ゴーレムをおばあさんに差し出す。

ネコ型ゴーレムの両脇に手を入れて受け取ったおばあさんは、にょろーんと伸びるネコ型ゴーレムに合わせて立ち上がる。

あまりの伸びっぷりに、おばあさんは驚いているご様子です。

今日も安定の長さだしねっ。

うむうむ。(ニッコリ)


「……この毛皮は何の毛皮だい?」


おばあさんに、そう訊かれた。

毛皮がよく伸びる事に気が付いたみたいだね。さすがの目利めききですねー。


「それに使っている毛皮はダンジョンの宝箱から出てきたものです。よく伸びるんで助かってます。」

「…………。」

「…………?」



「……そういえば、ダンジョンの中にみずを作ったんだってねぇ。」


少しの間(だま)ってしまったおばあさんに、まったく別の事を訊かれた。


「ええ。あの街の領主に頼まれてみずを作りました。水を出すのにダンジョン内の魔力を使ってるんで、他の場所には作れないんですけどね。」


『だから、他の場所には作れないんですよー。』というアピールをしっかりとしておきます。余計な仕事をさせられたくないからね。

そもそも、その為にみずをダンジョンの中に作ったんだしね。


「…………。」

「…………?」


何だか、またおばあさんが静かになっちゃったんですが?

何でだろう?


「ナナシ様。そろそろお時間です。(キリッ)」


会話が途切れたところで、ケイティさんにそう言われた。

そうか。そろそろ、お昼ゴハンの時間か。


俺は、おばあさんに「それぢゃあ、今日はこのへんで。」と言って、安定の長さを見せ付けていたネコ型ゴーレムをおばあさんの手からにゅるんと回収。


「また何かあったら来ますねー。」


そう、おばあさんに言って、魔道具屋さんをあとにしたのでした。




< 魔道具屋のおばあさん視点 >


うっかり考え込んでしまったね。あのネコ型ゴーレム欲しかったのに。

まぁ、次に来た時には忘れない様にしよう。それとも、じょうちゃんの家を通してお願いしてみようかね。


それにしても、あの毛皮は……。


たまに持ち込まれるようになった、『ダンジョンの宝箱から出るようになった。』と聞いている毛皮。

”よく伸びる”以外にコレといった特長が無く、ダンジョンの宝箱から出た物にしてはよく分からない品物だった。

どうしてあんな物がダンジョンの宝箱から出るようになったのか?

誰にも分からなかった。


だけど、あのネコ型ゴーレムに触れて分かった。


『あの毛皮は、あのネコ型ゴーレムを作る為の物だ。』と。


あの子が規格外だということは分かっていたつもりだった。

規格外だから、ダンジョンの中にみずを作った事を知っても、『あの子なら、その程度のことはやるだろうねぇ。』としか思っていなかった。


だけど、あの子は……。


あの子は、あのダンジョンの中に居るかもしれない『ダンジョンの”ぬし”』とも話が出来るのだろう。


その様な存在が居るかもしれないという話題は、これまでに何度も出ていた。

『居る』のか? それとも『居ない』のか?

これまで私は半々くらいの気持ちでいた。

だけど、『ダンジョンの”ぬし”』は『居る』と考えて間違いないのだろうね。

そう考えたほう辻褄つじつまうのだから。


まったく。

何処どこまで規格外なんだろうねぇ。


あの子は。



(設定)

(『俺や王妃様たちがやった色々な対策が効果を上げている様だね。』とは?)

魔石が品薄しなうすになったことには、ダンジョンの浅い階層に弱いウッドゴーレムを沢山たくさん出してもらうことで対応。

ポーションが品薄しなうすになったことには、国営の治療院をかくまちに設置し『ポーションを作る魔道具』と『【ヒール】の指輪』を配布することで対応しました。


(『宗教上の理由(笑)』って?)

ネコ型ゴーレムをネコ様にせて作ってしまうと『ネコよりもネコ型ゴーレムの方がいい。』とか言いだす人が出てきてしまいかねません。その為、えて完成度を下げて製作されています。

ネコ様そっくりに作るのはそんな行いであり、ぼくがしていい事ではないのです。


(『ダンジョンの”ぬし”』?)

ダーラムさんは『ダンジョンマスター』と呼称していましたが、魔道具屋をいとなむおばあさんの界隈かいわいでは『ダンジョンの”ぬし”』と呼んでいます。

存在がたしかなものですので、呼び方が一つであるほうが不自然なのです。


(クーリの手袋について)

クーリの母親(元・王宮のメイド。先代『じゅうげき』)があの魔道具屋のおばあさんに依頼して作らせたのが最初。クーリの為にも作らせて、身に着けさせています。

手袋に付与されている魔法は【威力増加】。ただし、威力は増すものの反力も増してしまう為、使いこなすには修練が必要。また、その修練のお陰で手袋無しの”素”の状態でも重い一撃を打つことが出来る。

他のメイドさんたちが同じ物を使おうとしていないのは『二番(せん)じを嫌う』からです。

ナナシならもっと凄い手袋を作れますが、ナナシ自身がまったく興味を示していないのでその予定はありません。


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