18 6日目 公爵家サイド ギルドマスター視点 戦闘
今朝も、日の出と共に出発した。
疲労の色が濃い者が、それなりに居る。
寝不足の者も、俺以外にも居そうだ。
クソッ。
昼まで、何の問題も無く進む事が出来た。
お陰で、かなり距離を稼ぐ事が出来た。
皆の表情が少し明るくなった。
休憩し、昼食を摂る。
あと少し移動すれば、オークの集落に着く。
この場の全員にやる気が満ちてくるのを感じた。
斥候の一人に先導してもらい、オークの集落を目指して出発した。
オークの集落を目視出来るところまで来た。
屯しているオークどもと、その先に洞窟が在るのが見える。
この場で監視していたもう一人の斥候が、「あの洞窟の中にオークキングが居ます。」と教えてくれた。
作戦を手早く確認し、部隊を分けて、配置に向かわせる。
部隊は、オークどもを引き付ける若手主体の部隊と、オークキングを仕留めに行く部隊。それと、弓兵と魔術師たちの部隊だ。
弓兵と魔術師たちの部隊は、洞窟を狙える位置に配置し、そこから全体の支援もさせる。
部隊が配置に就いた。
合図を送り、先ず、若手主体の部隊に攻撃を仕掛けさせる。
屯していたオークどもに斬り掛かり、戦闘が始まった。
そして、少しずつ移動しながら、オークどもを洞窟から引き離していく。
よし。上手いぞ。
洞窟の中から、一回り大きなオークが2体出て来た。オークジェネラルだ。
そいつらは若手主体のグループが戦っているオークどものところへ向かって行った。
出来ればオークキングにも出て来てもらって、その側面を突ければ良かったんだが…。
上手くいっている様に思っていたが、急に状況が変わった。
若手主体の部隊の背後から、別のオークどもが襲い掛かって来たのだ。
あっと言う間に、混戦状態に陥った。
『何処から出て来た?!』とか考えている場合ではない。
どうすべきか?
助けに向かった後にオークキングに出て来られると、挟撃されてしまう。
出来れば、今、オークキングに出て来てほしい。
魔術師に【ファイヤーボール】を洞窟に撃ち込むように指示を出す。
直ぐに撃ち込まれる。
ドーン
洞窟の中からオークジェネラルが2体出て来た。
周囲を警戒している。
その場所から離れる気配は無い。
洞窟の側面に配置しておいた弓兵たちが矢を射掛ける。
オークジェネラルがそちらへ向かう。
再び【ファイヤーボール】が洞窟に撃ち込まれた。
ドーン
オークジェネラルより大きなヤツが姿を現した。
オークキングだ!
攻撃開始だ!
オークキングの前面に部隊を展開し挑発する。
挑発してオークキングを洞窟から引き離しながら、包囲していく。
オークジェネラルたちは別の部隊に包囲させ、オークキングに近付けさせない。
よし!
いい感じに包囲出来ている。
若手の部隊が心配だ。早くカタを付けたい。
魔術師たちに、「撃ちまくれ!、一気にカタを付ける!」と指示し、俺も最前線に加わる。
魔法に合わせ、弓矢でも攻撃をする。
さらに、皆が剣で斬り掛かる。
オークキングを押している。
イケる。
そう思った。
若手の部隊の方へ行っていたオークジェネラルが戻って来て、こちらに攻撃を仕掛けてくる。
壁を作り、耐える。
イケる。
オークキングに傷が増えてきた。
こちらにも被害が出ているが、まだ、こちらが押している。
イケる。
魔法の攻撃が無くなった。
魔力切れだろう。仕方が無い。
だが、まだこちらが優勢だ。
イケる!
「イケるぞ! 一気に仕留めるぞ!」
仲間を鼓舞して、攻勢を掛ける。
必死に斬り掛かる。
しかし仕留めるまでにはいかない。
こちらにも被害が出続けている。
さらに攻勢を掛ける。
しかし倒せない。
さらに被害が出る。
「もう一息だ!!」
そう鼓舞しながら、必死に剣を振るう。
しかし、倒せない。
クソッ!
焦る。
さらに、剣を振るう。
振るう。振るう。振るう。
しかし、倒せない。
クソッ!
さらに、剣を振り続けた。
ひたすら。
剣を振り続けていたら、洞窟の中から出てくるヤツが視界の隅に見えた。
そちらを見る。
オークジェネラルが3体、洞窟の中から出て来た。
クソッ! まだ居たのか!
そいつらは壁役に任せて、その間にオークキングを倒さなければならない。
急がなければ!
そして、さらにもう1体が、オークジェネラルどもの後から出て来るのが見えた。
そいつは、とても大きかった。
オークキングだった。
そいつが吠えた。
グオオオオオオォォォォォ!!
「えっ…。」
誰の声だったのだろうか?
もしかすると、自分の声だったのかもしれない。
何故、さらにオークキングが出て来る?!
何故、集落に2体もオークキングが居る?!
一つの可能性が頭の中に閃いた。
『転移魔法かっ!』
しかも、2体目のオークキングの方が明らかに大きかった。
『どちらを仕留めるのか?』
皆の動きが、一瞬止まった。
致命的だった。
洞窟から出て来たオークジェネラルどもが動く。
オークジェネラルを囲んでいた部隊が崩れる。
2体目のオークキングも動く。
オークジェネラルを囲んでいた部隊が吹き飛ぶ。
オークキングを囲んでいた部隊も浮足立つ。
「両方仕留める!! 足を狙え!! 動きを止めろ!!」
それしか生き残る道が無いと思って、そう叫んだ。
魔法の援護は既に無く、全員かなり疲れてきている。
それでも、死力を振り絞る。
全員が。
だが、包囲が綻ぶ。
隣の奴と連携が取れない。
包囲出来ないどころか、壁すら満足に作れない。
『蹴散らされる。』と思った。
「撤退だ!!」
そう叫ぶしかなかった。
皆、一斉に逃げ始める。
俺は踏み留まって、皆を逃がす為の時間を稼ぐ。
だが、オークジェネラルの体当たりで飛ばされた。
オークジェネラルどもは、逃げる冒険者たちの後を追って行く。
オークジェネラルどもを追おうとしたら、また吹き飛ばされた。
手をつき、顔を上げる。
オークキングの拳が目の前にあった。




