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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十七章 剣術大会とメイド大乱
368/400

11 メイド大乱07end 終幕


< ナナシ視点 >


ダーラム侯爵とアレクに見送られて、俺たちは転移魔法でシルフィの部屋に戻って来ました。


イイ笑顔のダーラム侯爵にガッシリと腕をつかまれて助けてほしそうな表情をしていたアレクに思うところが無かった訳ではありませんが、彼にはしあわせになってほしいと思います。



さて。

子牛を売り払ってきたかの様なうしろめたい気持ちを切り替えて部屋の主(シルフィ)の姿を探すと、シルフィは執務机でお仕事をしていた。

シルフィがあまりお仕事に身が入っていない様に見えるのは、いつもシルフィのそばにいるクリスティーナさんが居ないからだろう。

そのクリスティーナさんは、ドアのそばに立って廊下の様子をうかがっている様に見えるんだけど、一体いったい、何をしていらっしゃるんですかね?


「それでは、私は執務室に戻りますね。」

アレクをドナドナしてきたきょうはんの一人のメイド長が、そう言ってドアのほうへ歩いて行く。

一方いっぽう、もう一人のきょうはんである王妃様は、ソファーに腰をろしてくつろぎだす。メイドさんに、この部屋にも常備してあるコーラを要求しながら。

王妃様は、すっかり”ひと仕事しごとえたモード”に入ってしまっている様です。

そんな姿を見せられてしまうと、さっきまでうしろめたい気持ちになっていた事が馬鹿らしくなってくるよね。

王妃様にならって俺もノンビリすることに決め、腕に抱き着いてきたシルフィの頭を少しナデナデしてから自分の部屋に戻りました。



自分の部屋に戻ると、こちらでもケイティさんとクーリがドアのそばに立って廊下の様子をうかがっている様だった。

えーっと……。

廊下に何か居るの?


俺が二人に声を掛けようとした、その時。廊下のほうからめいの様な声が聞こえてきた。

阿鼻あび叫喚きょうかん”って感じの声が聞こえてくるんですが、一体いったい、廊下では何が起こってるんですかねっ? 廊下では何が起こってるんですかねっ?!

二人に訊くのが、すっごく怖いんですけどっ?!


廊下から聞こえてくるめいにビビッて立ち尽くしていたら、頭の中で【多重思考さん】が教えてくれた。

『メイド長が廊下に居たメイドさんたちに説明しました。ケイトのお兄さんがダーラム侯爵と結婚することになったことを。』

ん? それだけ?

それだけで、あんなめいがるの?

『それだけですが、廊下に居たメイドさんたちは『ケイト親衛隊』のメイドさんたちでしたので。』

ケイト親衛隊……。つまり、『ケイトのことが大好きなメイドさんたち』ってことか。

で、そのケイトのお兄さん(アレク)が結婚することになってしまったから、彼のことをねらっていたメイドさんたちがなげいている。と。

いや、アレクのことは『かくしていた。』って王妃様が言っていたから、彼のことをねらっていた訳ではないか。


ちょっと状況を整理してみようか。

王妃様からの説明も途中で打ち切られてしまったままだったし。


まず、ケイトのお兄さん(アレク)を王妃様たちがかくしていた。『ケイト親衛隊』のメイドさんたちに知られると大騒ぎになるから。

だけど、王宮騎士団が勝手なことをして剣術大会の決勝戦のたいにアレクをげてしまった。観客席にはメイドさんたちが大勢おおぜい居たのに。

メイドさんたちにアレクの存在がバレてしまいそうだったので、王妃様はあわてて会場を離れた。俺の転移魔法で。

その後、アレクも会場から連れ出して、ダーラム侯爵のところに連れて行った。ダーラム侯爵と結婚させる為に。

アレクをダーラム侯爵と結婚させるのは、『ケイト親衛隊』のメイドさんたちが起こすであろう騒動をしずめる為なんだろう。アレクをダーラム侯爵と結婚させてしまえば、メイドさんたちでは手が出せなくなるからね。

なるほど、なるほど。

それと、今、廊下に居るメイドさんたちは、きっと会場からこの建物に向かって走っていた人たちだったんだろう。

会場からここまで走って来て、やっとアレクの事を知っていそうなメイド長から話を聞けたと思ったら、そのアレクがダーラム侯爵と結婚することを知らされた。

それなら、めいの一つぐらいはがるかもね。めいどころか阿鼻あび叫喚きょうかんって感じだったけど。


今回の件では、俺が色々な事をやっていた。

すべて王妃様に頼まれてやった事だったとはいえ、ちょっと申し訳なく思うよね。

俺は、そっと心の中でメイドさんたちの冥福めいふくを祈りました。(←誰も死んでねぇよ)



さて。

色々な事が分かってちょっと気持ちが落ち着いた俺は、視線を、部屋にちんしている大きなペンギン型ゴーレムに向ける。

そして、その大きなペンギン型ゴーレムにゆかひざをついた体勢で抱き着いている、今日は非番だったはずのメイドさんに声を掛ける。彼女も関係者だしね。

ケイト(●●●)、お兄さんがダーラム侯爵と結婚することになったよ。」

「………………。」

返事が無い。でも、『タダノシカバネ』って訳ではなく、大きなペンギン型ゴーレムに抱き着くのにいそがしいだけなんだろう。モフモフに顔をうずめているし。

それに、ケイトからまともに返事が返って来ないのは割といつものことダシネー。(←それで納得していいのか?)


視線を感じてドアのほうを向くと、ケイティさんがすごくおどろいた様な表情をして俺のことを見ていた。

俺が部屋に戻って来ていた事に気付いていなかったのだろう。

そういえば、『ただいま』の挨拶をしていなかったね。ドアの向こうの様子をうかがっているみたいだったことと、廊下から聞こえてきためいに俺がおどろいて立ち尽くしてしまっていたからね。

そんな事を思い出した俺は、何故なぜか視線を俺とケイトの間で往復させているケイティさんに改めて挨拶をする。

「ただいま。ケイティ。」

「あ、はい。お帰りなさいませぇ。」

ケイティさんから返って来たのは、そんな、かなり気の抜けたお返事でした。

なかなかレアなケイティさんの様子に、ちょっと笑いそうになってしまう。


ケイティさんは、笑いそうになっている俺の様子なんて気にせずにケイトに訊く。ちょっとあせった様子で。

「ケ、ケイト、あなた、お兄さんが居たの?!」

「んーー。居るねぇーー。(もごもご)」

モフモフに顔をうずめたまま、ケイティさんにそう返事をするケイト。すごくめんどくさそうだ。

でも、俺には何も返事をしなかったのに、ケイティさんには返事をスルンデスネー。

まぁ、別に気にしてないからいいんだけどさっ。(←それは気にしている人の反応です)


そのケイトの返事を聞いたケイティさんは、一度廊下の様子をうかがうと、何かを納得したかの様な表情をした。

そして、「お茶をおれしますね。」と俺に向かって言って、ドアのそばから離れる。

そんなケイティさんに、俺は、お茶ではなくコーラをお願いする。

疲れを感じていたので甘い物を飲みたくなったのと、王妃様がコーラを飲んでいるのを見て俺も飲みたくなったので。


ソファーに腰をろした俺は、ケイティさんから、せんが抜かれたコーラをびんのまま受け取り、ねんため、【鑑定】を掛けてからグビリと一口ひとくち飲む。

ぷはぁ。

やっぱりコーラはびんからグビリと飲むのが美味おいしいよね。(ニッコリ)


ちなみに【鑑定】を掛けたのは、ヤバイものが入っていないか確認する為です。前に一度、中毒性のあるものが入っていた事があったので。

その時は、製造コスト削減の為に新しく使った香辛こうしんりょうの組み合わせによって、ヤバイ成分が生成されてしまったとのことだった。

材料の【鑑定】はしていたそうなんだけど、びんめされた後にヤバイ成分が生成されてしまうという状況は想定していなかったんだそうだ。

そんな事があった後、何度かお手伝いで【鑑定】をしたから、変なものが出される事はもう無いとは思うけどねんためにね。俺が気付くことで減らせる被害があるかもしれないし。


まぁ、それはそれとして。

もう一度グビリと飲んでコーラのシュワシュワと甘みを堪能たんのうして、俺は一息ひといきつきました。

ふぅ。


一息ひといきついたところで、ふと、どうしてここの廊下に『ケイト親衛隊』のメイドさんたちが大勢おおぜい居たのか不思議に思った。

メイド長に訊くならメイド長の執務室に行くはずだし、シルフィがアレクのことを知っていたとも思えない。

その事をケイティさんに訊いてみる。

「ケイティ、廊下に居るメイドさんたちって、そもそも何でここに居たの?」

「彼女たちは、王妃様やメイド長たちを探して姫様の部屋に来たようです。」

ほう。でも、よく王妃様とメイド長がシルフィの部屋に居ることが分かったよね。俺も一緒に会場から居なくなったからかな?

そんな事を考えている俺に、俺たちと一緒に転移魔法で会場から戻って来たケイティさんが説明を続けてくれる。

「きっとナナシ様も一緒に席をはずしていたからでしょう。ですが、姫様の部屋に入ろうにも、クリスティーナさんにあしらわれてしまっていました。」

まぁ、クリスティーナさんだしねぇ。

「その後、強引に対処する事に決めた様で、何故なぜか廊下に居たマリアンヌを味方に引き込もうと交渉をしていました。ですが、交渉が上手うまくいかなかった様で、クーリともドアしに交渉を。クーリを味方に引き込めればこの部屋から姫様の部屋に行けるようになりますし、それも駄目だったとしても、クーリなら壁をこわして廊下から部屋に突入するなんて事も出来ますから。」

そんな、ちょっと物騒ぶっそうな事をサラリとおっしゃるケイティさん。

そういえば、クーリって見掛けによらずパワーがあったよね。前にニーナをブン殴って吹き飛ばしていたし。

チラリと、ドアのそばひかえて、いまだに廊下の様子を気にしている感じのクーリを見る。

そのクーリは、何だか残念そうな表情をしていた。

君は、そんなにこわしたかったのかな? 壁を。(←違います。残念に思っているのはアップルパイのほうです)


そんな残念そうな表情をしているクーリから視線を戻した俺は、ケイティさんに礼を言って、ソファーに体を沈める。

そして、天井を見上げながら今日の出来事を振り返った。


今日はあっちこっち行かされたり、色々な事があったよねー。

思い出すだけでも疲れる気がするね。

でも、俺のやる事はもう無いだろう。いつもの日常に戻りそうだね。


チラリとドナドナしてきたアレクの表情が脳裏に浮かんでしまいましたが、俺は残ったコーラをグビリとして、ソファーで何事なにごとも無かったかの様にノンビリしたのでした。



読み返すたびに、なおししたい箇所が見付かる不思議。

一気に予約投稿しておいたものの、当日までなおししていました。orz


この後、後日談が二つと外伝が一つあります。

それらも、きっとなおしすることになるんだろうなぁ。(虚ろな目)


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