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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十七章 剣術大会とメイド大乱
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10 メイド大乱06 漁夫の利

(人名)

クララ・ダーラム侯爵

王都の西隣の領地の領主。ケイトのことが大好き。

ダンジョンマスターであるダーラムの子孫であり、ダーラムと良好な関係を維持したいグラム王国にとっては重要人物。

その為、ダーラム侯爵邸には王宮からメイドが多く派遣されている。



< 王妃様視点 >


ナナシさんの転移魔法でグラアソのダーラム侯爵邸の前までやって来ました。


王宮騎士団の所為せいで起こった非常事態。それに、もうすぐひと区切くぎりつけられそうです。

ここまで無事にコトを運べたことにホッとした私は、メイドが門番に用件を伝えている様子をぼんやりとながめます。


そうしていたら屋敷からメイドが一人走って来ました。

長いスカートをいています。王宮から派遣しているメイドですね。


彼女の先導で屋敷に入り、私たちは応接室に通されます。

ダーラム侯爵はすぐに来てくれるとのこと。

それを聞いた私は、あわててアレクをどう紹介するか考えます。

ぼんやりし過ぎていて、まったく考えていませんでしたので。


ゆっくりとソファーのところへ歩きながら、考えます。

ですが、考えがまとまる前にクララが来てしまいました。

ぬう。

応接室に入って来たクララ・ダーラム侯爵に向き直って挨拶し、彼女にアレクをどう紹介するか考えます。

ですが、何だかイライラしてきました。『何でクソ騎士団の所為せいで私が苦労しなくちゃいけないのよっ。』と。

もう、そのまま言っちゃえ。

「あなたの結婚相手を連れて来たわ。」

「……へ?」

クララは、少し間の抜けた声を出しました。

ま、まぁ、彼女には『あなたの結婚相手は私が見付けてあげる。』とは言ってあったものの、いきなり連れて来られるとは思わないわよねー。

ですが、彼女が”彼”のことを気に入ることは間違いありません。

このままいきおいで押し切る!

「彼は、ケイトのお兄さんよ。」

すえながくよろしくお願いいたします!」

私がアレクのことをそう紹介すると、クララは彼に向かっていきおい良く頭を下げてそう言います。

そして、頭を上げながらダッシュで彼のもとに向かい、腕をガッシリとつかんで抱き着きました。

『絶対に離さない。』という彼女の強い意志を感じます。

よし。

アレクのほうは状況がよく分かっていないみたいだけど、まぁいいでしょう。

困った表情をしてこちらを見るアレクから、つい目をらしてしまいましたが、悪いのはクソ騎士団です。

もんはすべてクソ騎士団のほうに言ってもらいましょう。ええ。


メイド長が、「あとは、若い者同士で……。」と言ってくれたので、それにじょうじて私はこの部屋から出ます。アレクと目を合わせない様にしながら。

あとは、クララ自身が上手うまいことアレクを丸め込んでくれることに期待します。



別の部屋に向かいながら、『そう言えば、自己紹介すらさせていなかったわね。『ケイトのお兄さん』って言っただけで。』と思ったけど、もう今更いまさらね。『だんり』の『だ』の字も無い、自分でもあきれてしまうドタバタぶりだったワネー。

それもこれも、みんなあのクソ騎士団が悪いのです。ええ。

私は、今回の騒動を引き起こしたあいつらをどうやってらしめてやろうか考えながら、廊下を歩くのでした。


ふっふっふっふっ。



< ナナシ視点 >


ちょっとこわい笑い声をらしていらっしゃる王妃様にビビりながら、俺は王妃様のあとを付いて廊下を歩いて行く。


王妃様にお願いされるままにアレクをここまで連れて来ちゃったけど、目の前で突然結婚の話をされるとおどろくよね。

当事者であるアレクも、初めてその話を聞かされたみたいな反応だったし。

さすがに俺も、『こんな事になっちゃってるけど、いいのかなぁ?』って思って、存在感を消しちゃったよ。


それと、アレクってケイトのお兄さんだったんだね。

だから、彼のしゃべりかたでケイトのことを思い出したんだね。納得だね。うんうん。

でも、そうなるとケイトも貴族なのかぁ。そこには納得できないな。

いや、むしろ納得できるなのかな? あんなのが一般人だったらけん荒波あらなみの中で生きていくのはむずかしそうだからね。うんうん。


そんな風に、俺が割とどうでもいい事に納得していると、俺たちはさっきの部屋とそう変わらない立派なお部屋に通された。

ソファーに腰を下ろして、一息ひといきつく。

ふぅ。

すると、メイドさんがすぐにお茶が出してくれた。

メイドさんのごとぎわに感心していたら、ふと、そのメイドさんが王宮のメイドさんと同じメイド服を着ている事に気が付いた。

そういえば、この屋敷で見たメイドさんたちって、全員、王宮のメイドさんと同じメイド服を着ていた気がするわ。スカートの長いメイド服を。

戦闘力が無駄に高い王宮のメイドさんたちがここに居るってことは、ここの領主を国がだいにしているってことなのかな?

と、そう思ったんだけど、ここの領主って”ダーラム”侯爵だったね。

ダンジョンマスターのダーラムさんの子孫なんだから、そりゃあ、国にとってはだいか。

その結婚相手を王妃様が紹介するのも納得だね。

その割には、すっごくバタバタしていた気がするけど。(苦笑)


お茶を飲みながら今日の出来事をぼんやりと振り返っていたら、王妃様にお礼を言われた。

「ありがとうナナシさん。ナナシさんのおかげで何とかなったわ。」

「いえいえ。お役に立てて何よりです。」

俺は王妃様にそうお返事した。

でも、『何とかなった』かー。やっぱりバタバタしていたんですね。(苦笑)

ダーラム侯爵の結婚でバタバタするなんて、本当に何が起こっていたんですかね?

あいわらず、俺は、何が起こっていたのか分からないままです。


王妃様とメイド長は、一仕事ひとしごとえたかの様にマッタリしていらっしゃいます。

この機会に、何が起こっていたのか訊いてみよう。

「ところで……。」

そう言って王妃様とメイド長がこちらに視線を向けてもらってから言葉を続ける。

「何が起こって、こうなったんですかね?」

俺がそう訊くと、王妃様が『そう言えば、何も説明していなかったわねぇ。』みたいな表情を少し見せてから、説明してくれた。

「アレクはケイトのお兄さんなの。」

ええ。さっきそう言ってましたね。

俺はコクリと相槌あいづちを打って、話の続きを待つ。

「ケイトのお兄さんの存在は秘密にしていたのよ。ケイトの親衛隊のメイドたちが大騒ぎすることが目に見えていたから。」

ふむふむ。

目立めだたない場所に上手うまいことかくしておけていたのだけど、クソ騎士団の連中がアレクを剣術大会の決勝戦のたいげてしまったの。今回はメイドが大勢おおぜい観戦に来ていたというのに。アレクをあの場所にかくしておく為に、夫にも協力してもらったというのに!」

最後のところの力のはいりっぷりに、王妃様のご立腹りっぷく具合を感じます。(ビクビク)

そして、『あいつらをどうしてやろうかしら。ふっふっふっ。』とばかりに黒い笑顔を浮かべる王妃様に、俺は、苦笑にがわらいを浮かべつつ目をらすことで、この話をそっと終わらせたのでした。


(設定)

(ケイトの兄 アレク)

王宮騎士団に所属している明るいさわやかさん。

王宮騎士団の制式せいしき装備であるロングソードを『使つかにくい。』とキッパリとはなち、習熟しゅうじゅくする訓練に参加すらしようとしない『王宮騎士団の問題児』。

ロングソードを使う気も反省する気も無いようで、日々(ひび)、屋内訓練場で格闘術の訓練にれている。また、それを騎士団長に許されている。

彼の存在はかくされていたのだが、騎士団長からそのあたりの詳しい事情を聞かされていなかった脳筋な副団長に剣術大会の決勝戦のたいげられてしまい、彼の存在がメイドたちにバレてしまった。

ヘインズハート男爵家の長男。妹が二人(ケイトとその下にもう一人)いる。


(クララ・ダーラム侯爵の結婚相手がなかなか決まらなかった理由と、今後の対応)

クララに近い年代は、王女シルフィの存在もあって、もともと貴族の子が多く居ました。

クララが領地持ちの侯爵家の当主ということもあって、さかんに自分の子をプッシュして来る貴族が多く、クララの結婚相手の選定は難航していました。

また、クララの母親(クラソー伯爵)と祖父(ケメル公爵)も領地持ちの貴族である為、彼らの一族の勢力が大き過ぎることに既に不満の声が上がっていて、ケメル公爵の派閥の中から結婚相手を選ぶことも難しく、さらに、その事をケメル公爵や派閥の者たちに納得させることも難航していました。

そんな色々な事があった為、クララの結婚相手の選定は難航しまくっていたのです。

アレクの実家の爵位が”男爵”と低いので、クララの結婚相手として納得させる事は難しそうですが、そんな貴族たちは『クソ騎士団をドエライ目にわせることで黙らせてやりましょう。ふっふっふっ。』と、この時の王妃様は考えていました。


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