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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十七章 剣術大会とメイド大乱
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04 剣術大会04end 決勝戦 衝撃(笑撃)の大将(大笑)戦。そして…


剣術大会の決勝戦。

優勝候補の王宮騎士団の代表チームと対戦するククラス侯爵領軍の代表チームは、ここまで体術のみで勝ち上がってきた。

剣術大会では異例のたたかかたをする、そんなククラス侯爵領軍のチームに対して、王宮騎士団の先鋒せんぽうの男も体術で応戦した。

王宮騎士団の先鋒せんぽうの男が四連勝し、残る大将たいしょうを倒せば優勝が決まる。

だが、先鋒せんぽうの男がここまで一度も剣を抜かずに勝ち続けたことに、王宮騎士団の代表チームの大将たいしょうつとめる副団長のワイトはおおいに不満だった。


『この『剣術大会』の決勝戦が、一度も剣が抜かれること無く勝敗が決してしまっていい訳が無い!』


ワイトは、王宮騎士団のしんの実力をみずからの手で見せ付けるべく、ちからづよく立ち上がるのだった。


< 王宮騎士団 副団長 ワイト視点 >


ここは俺が出て、我々王宮騎士団のしんの実力を知らしめなければならないだろう!


俺はそう決意し、ちからづよく立ち上がった。


俺様が、我々王宮騎士団のしんの実力を見せ付けるのだ!

ここまでの恥ずかしいたたかかたを吹き飛ばす様な、美しくちからづよけんろうしてな!!

そうとも。

我々王宮騎士団のあかしたましいとも言えるロングソードで敵を美しく打ち負かしてこそ、我々王宮騎士団の栄光がひかかがやくのだ!!


俺は、たいの上に勝ち残っていた頭のおかしな男を呼び寄せると、けんさせた。

ほう中堅ちゅうけん副将ふくしょうにもけんさせて、大将たいしょうである俺がたいがって行く。堂々とな。


俺様が堂々とたいの上に姿を現したのを見て、観客たちが歓声をげた。

うむ。やはり、このたいは良い。

俺様の美しくちからづよけんろうするのは、やはりこういう場所でなければなっ!

特に今日は、へいぜんでもあるのだ!

これ以上のたいはあるまい!

うむっ!


俺様がっ! このワイト様がっ!

へいぜんでっ! この観客たちの目の前でっ!

我々王宮騎士団のしんの実力を見せ付けるのだっ!

王宮騎士団の副団長であるこのワイト様がっ、きたげた美しくちからづよけんろうしてなっ!!

ざかしいりょうへいどもには、俺様の引き立て役になってもらうぞ!

決勝のたいまでがってきた事はめてやろう。

だが、りょうへいごとき、我々王宮騎士団の引き立て役でちょうどいいのだ!

ワッハッハッハッハッ!



対戦相手を圧倒あっとうつづけ、大将たいしょうまでをもたいの上に引きずり上げた、ワイトが言うところの『頭のおかしな男』。

ワイトは、勝ち残っていた彼を始め、他のメンバーたちにもけんさせると、みずからの美しくちからづよけんで王宮騎士団のしんの実力を知らしめるべく、たいの上にがったのだった。


この剣術大会、最後の試合が間も無く始まる。



俺は、大勢おおぜいの観客の目が俺様に集まるのを感じながら、この大会の最後をめくくる最高の試合が始まる瞬間を待つ。


はじめ!!」


審判のその声と同時に、俺様はちからづよく飛び出した。

そして、そのいきおいを維持したままロングソードを素早く抜き、相手がいにはいるやいなや、するどろす!


「ぬん!!」


ビュン!!


だが、相手は一歩()がり、俺のロングソードはくうった。


「ちょこざいな!」


そう口にしながら、俺は、自分の腕に違和感を感じていた。

俺様のきたげられた自慢の剛腕ごうわんが、まるでロングソードをずっと振り続けた後の様にプルプルとしていたのだ。

何故なぜかは分からぬが、今は、そんな事を気にしてはいられん。

俺は、グッとグリップをにぎめ、美しくちからづよい一撃を振るったロングソードを引き戻す。

すかさず二撃目を……。

と、二撃目を振るう体勢に入ろうとしたところで、相手に右腕をガッとつかまれた。


しまった!


俺が、つかまれた右腕を引き抜こうとするよりも早く、相手は、俺のみぎひじめながら、体ごとぶつけて来る様にして俺の腕を下からグイッと持ち上げてくる。


ぬぐっ?! 肩がっ?!


ゴキッ


「あいったー!」


ガッ グイッ


ゴキッ


「あいったー!」


うでの右肩だけでなく左肩もはずされた。

くそっ!


だが、このままやられはせんぞ!


両肩をはずされたいたみに耐えながら、俺はりをす。

だが、これもくうった。


「おのれ!」


俺はあきらめんぞ!

我々栄光ある王宮騎士団が、りょうへいごときに負ける訳などあるものか!


俺は、両肩がいたむのを無視して、相手を追いかけた。



観客たちが見詰みつめるなか、たいの上で追いかけっこが始まった。

笑い声ががるなか、審判は試合をめようかどうしようかなやんでいた。

元気に相手を追いかけ回しているワイトだが、既に両肩をはずされてしまって両腕をダラリとさせている。

しかし、彼の右手はロングソードをグッと握ったままばなしておらず、また、闘志も失っていない。

だが、ワイトに”勝ち”があるとは思えなかった。

『やはり、試合をめるべきだろう。』

そう思って試合をめるべくワイトに駆け寄った審判に、ワイトがはなつ。

「こいつらの様なおかしなたたかかたをする奴らを、この剣術大会で優勝させる訳にはいかんのだ!!」

もっとも、ワイトがそんな事を言ったところで、『お前の今のたたかかたはどうなんだ?』と審判をあきれさせるだけであったのだが。



ワイトのあまりにもアレな発言に審判があきれて足をめてしまった為、たいの上の追いかけっこは、そのまま続くことになってしまった。

両肩をはずされたワイトは、いで持ち続けているロングソードを引きずりながら、かんばかりの形相ぎょうそうで対戦相手を追いかけ続ける。

実際、相手にこうとしているのかもしれない。


そんなワイトを見て、観客たちは大笑おおわらいしていたのだった。



ひん席でこの試合を観戦している国王。その斜め後ろにひかえる王宮騎士団の騎士団長は、顔をにしながらも何処どこあきらめ顔になっていた。

彼は、『もういい。だから、早く終わってくれ……。』と、心の底からそう思っていたのだった。



たいの上でひろげられていた追いかけっこ。

観客たちが大笑おおわらいするなか、しばらく続いていたソレが、唐突とうとつに終わりをむかえた。

対戦相手を追いかけ回していたワイトが方向転換しようとしたさいに、いで持ち続けていたロングソードに足をからめてころんでしまったのだ。


ガッ バタッ


「! そこまで!!」


試合をめる機会をうかがっていた審判が、ようやく、そこで試合をめた。


「まだだ!! まだ終わっていない!!」


だが、ワイトはそう言って立ち上がろうとする。

イモムシの様に体をグネグネさせながら。


そんなワイトを、たいの下でひかえていた副将ふくしょうたち三人(●●)たいの上にがって取り押さえる。

さらに他の騎士団員たちも加わり、みんなでワイトをかかげてたいからりると、そのまま何処どこかへとはこって行ったのだった。


こうして剣術大会の決勝戦が終わった。


剣がまともに活躍する場面が無かった……。それどころか、さやごと相手に投げ付けた場面が一番剣が活躍した場面だったという、異例としかようがない『剣術大会』の決勝戦であった。



そんな、異例としかようがない剣術大会の決勝戦。

観戦していたククラス侯爵は、自身が送り出した代表チームが、大会史上(はじ)めて王宮騎士団を優勝者の地位から引きずり下ろした事をよろこびつつ、ざま真似まねさらした王宮騎士団の副団長に笑いがまらなかった。

そんな彼は、王宮騎士団の騎士団長のツラをおがんでやろうと、後ろのひん席を振り返った。

ククラス侯爵がひん席を見上みあげると、国王(へい)()に騎士団長がオロオロしながら必死に言い訳をしていた。

その様子を見てククラス侯爵は、『あのざまな副団長の戦いぶりに、一体いったい、どんな言い訳があるのでしょうか? サッパリ分かりませんねぇ。ププププッ。』と、そう腹の中で笑っていたのだった。


そんなククラス侯爵が、ふと、気付く。


ひん席に国王(へい)()しか居ないことに。


国王(へい)()と一緒に観戦していたはずの王妃様と王女様。それと王女様の夫のグラストリィ公爵の姿がそこには無かったのだ。

『おや? いつから居なかったのでしょうか?』

まったく気付いていなかったククラス侯爵はそう不思議に思ったのだが、すぐに気にしなくなった。

ククラス侯爵に見られていることに気付いた騎士団長が、顔をにしてにらみつけてくる様子が、とてもとてもかいだったので。



国王もククラス侯爵も知らなかった。

王妃様たちが席をはずした、その理由を。

それと…。


この時、ケイト親衛隊(●●●●●●)に所属するメイドたちが王宮内を駆けずり回り、姿を消した王妃様とメイド長たちを問い詰める(●●●●●)べく探し回っていたということも。


(お詫び 更新延期について)

やむにやまれぬ事情により、書く時間が取れません。

毎日更新を宣言しておきながら申し訳ありまりませんが、区切りの良いココで、一旦、更新を停止します。

続きは、八割くらい書き上がっておりますので、書く時間が取れ次第、投稿を再開いたします。

申し訳ありません。


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