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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十七章 剣術大会とメイド大乱
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02 剣術大会02 決勝戦 衝撃(笑撃)の先鋒01


< 王宮騎士団 副団長 ワイト視点 >


『いずれ役に立つ時がある。』


そう国王(へい)()に言われたので王宮騎士団にせきを置いているという、よく分からない男が騎士団に居る。

へいくちきなのだ。きっと何処どこかの貴族家の者なのだろう。

そいつがかたくなに家名を言わないので、何処どこの家の者なのか誰も知らないのだがな。


王宮騎士団にせきを置いてはいるものの、あの男のあつかいには少し困っている。

王宮騎士団の制式せいしき装備でありたましいとも言えるロングソードの素晴らしさを理解できない頭のおかしな男で、ロングソードをしゅうじゅくする訓練に参加しようともしないばかりか、一日中、屋内おくない訓練場にもって格闘術の訓練をしている。

へいくちきでなければ、とうの昔に追い出されていただろう。


だが、今回はちょうどいい。

決勝戦の相手の、剣も使わずにおかしなわざばかりを使うおかしな奴らには、こちらも、頭のおかしな奴をぶつけてやろう。

奴が、(へい)()ぜんざま真似まねさらしてくれれば、追い出す為の説明をする手間てまはぶけるしな。



訓練()のままれてられたソイツに、先鋒せんぽうの奴がていたデカいプレートメイルをあわただしくかぶせる様にせて、ロングソードを帯剣たいけんさせる。

何も事情が分からないままブカブカのプレートメイルをせられて、キョロキョロと周囲をまわしているソイツに、副将ふくしょうから状況を説明させる。

状況を説明させているうちに試合開始の時間になってしまい、十分じゅうぶんな指示を出せないまま、ソイツをこれから始まる決勝戦のたいに送り出すことになってしまった。


たいの上でもあいわらずキョロキョロしているソイツの姿にあきれていると、対戦相手の先鋒せんぽうの男もたいの上にがった。

たいの中央で審判をはさんで両者が並び、ひん席にいらっしゃる国王(へい)()御一家に向かって一礼いちれいする。

たいの下の我々も一列いちれつに並んで一礼いちれいし、いよいよ決勝戦が始まる。


俺は、アイツが『ざま真似まねさらす』ことに八割、『勝つ』に二割くらいの割合わりあいで期待しながら、たいを見上げる。

たいの上で相対あいたいする両者の姿を見て……。

俺は、対戦相手が使う、あのおかしなわざやぶる方法を、何も思い付けていなかった事を思い出した。


い、いや、我々は王宮騎士団最強なのだ!

これまで、厳しい訓練にれてきたのだ!

そんな我々が、りょうへいごときに負けるものか!

そ、そうとも。

我々が、りょうへいごときに負ける訳など無いのだ!


俺は、自分にそう言い聞かせるようにして、不安な気持ちを吹き飛した。



たいの上では双方そうほう先鋒せんぽうが距離をけて相対あいたいし、観客たちは声をひそめてその様子を見詰みつめている。

会場がしずまりかえるなか、俺も押し黙って、審判が試合開始をげるのをジッと待つ。


はじめ!!」


その、審判の試合開始をげる声と共に、歓声がドワッ!とがった。


サッ ブンッ!!


バキャッ!


「ガハッ!」


バッタリ


試合開始早々。

駆け寄って来た対戦相手の男が、バッタリとあおけになって倒れた。

たいの、ちょうどなかあたりで。


審判の『はじめ!!』の声と共にがっていた歓声がみ、再び会場がしずまりかえった。

たいの上で起こった、その”あまりの出来事”に。


「…………。ハッ。そ、それまで!」


ビックリして呆然ぼうぜんと立ち尽くしていた審判がそう声をげて、この試合に決着が付いたことを宣言した。


その審判の声を……。

俺は、眩暈めまいおぼえながら聞いていた。



奴が勝った。

急遽きゅうきょ、俺が先鋒せんぽうとしてたいげた、頭のおかしな男が。

対戦相手の、おかしなわざを使うおかしな奴に何もさせずに。

それどころか、相手がロングソードの間合まあいに入る、そのはるか前で。

だが、俺は、眩暈めまいまらない。


『俺の副団長の地位は、もうダメかもしれない。』と、そう思って。


勝ったのはいい。

そう。

勝ったのはいいんだ。

だが……。


いくらなんでも、”かた”ってものがあるだろう!


だが、誰が想像できる?

ロングソードを……。

我々の王宮騎士団のあかしたましいとも言えるロングソードを……。


さやごと相手に投げ付けて、ぶちのめすだなんてっ!


そんなの、誰が想像できるって言うんだよっ!!


これは、剣術大会の決勝戦なんだぞっ!

我々王宮騎士団が、その実力を如何いかんなく発揮はっきして、国中くにじゅうに我々の実力を知らしめる為のっ!


それなのにっ!!


俺は、さやに入ったままのロングソードをひろげる頭のおかしな男の姿を、色々な感情を押さえ込みながらながめていたのだった。


(設定)

(着せられたプレートメイルがブカブカだった件について)

本来の先鋒せんぽうの男の体格が大きかった為にプレートメイルがブカブカでした。ワイトが言うところの『頭のおかしな男』の体格は、標準的な大きさです。


(王宮騎士団とグラム王国軍の剣の呼称こしょうちがいについて)

軍では「長剣ちょうけん」、「小剣しょうけん」と呼称こしょうしていますが、王宮騎士団では「ロングソード」と呼んでいます。だって、その方がカッコイイからっ。

軍では「長剣ちょうけん」を、そのあつかにくさから兵士に使わせていません。その為、王宮騎士団が何と呼称こしょうしていようとも気にならないのです。

グラム王国軍の最高指揮官でもあるククラス侯爵は、王宮騎士団が使う剣を「長剣ちょうけん」ではなく「ロングソード」と呼称こしょうしていますが、内心では『ロングソード(プー、クスクス)』と思っています。

軍では、「長剣ちょうけん」ほどの長さの剣はすべて「両手剣」にしていて、たてと併用する時は両手剣を片手持ち。あるいは短槍たんそうを持たせています。


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