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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十六章 異世界生活編11 そろそろノンビリできるよね編
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27end 外伝 ダンジョン内に水場を作ってもらった後のククラス侯爵領の出来事

(ククラス侯爵領について)

グラム王国の東のはしの領地。隣国ケイニル王国との最前線。

領地に在る街の名前はグシクク。グシククにはダンジョンが在る。

領主のククラス侯爵は、グラム王国軍最高指揮官をつとめる。


< ククラス侯爵視点 >


「ふぅ。」


領軍を再編し、上がってきた問題の修正作業を終えた私は、ホッと一息ひといきつきます。


グラストリィ公爵にダンジョンの一階層目にみずを作ってもらった後、私は、そのみずを守る為に領軍の一部をダンジョン内に駐屯ちゅうとんさせることにしました。

グシククの街の中に在る唯一のみずなのです。その決断は当然の事です。

ですが、ダンジョン内に兵士を駐屯ちゅうとんさせた事に安心したのか、時間に余裕のある街の住人たちが『自分たちが使う水は自分たちで確保しよう。』と、ダンジョン内に大勢おおぜい立ち入るようになってしまった事は予想外でした。

ですが、水で苦労してきた街なのですから、そうした行動をする者が出てしまうのは当然の事だったのかもしれません。『危険だからめろ。』と言ってもめてはくれないでしょう。

そんな街の住人たちを守る為にさらに兵士が必要になってしまって、結局、領軍の編成に大きな修正が必要になってしまいました。


ですが、その作業も、もう終わりました。

これで、この街にいてまわっていた足枷あしかせの一つが消えたのです。

その事を嬉しく思いながら、私は、この街の今後の発展に思いをせるのでした。



みずの件がすっかり落ち着き、それからしばらくったある日。

『街道で盗賊の被害が増えています。』と、報告を受けました。

何でも、放置することになった井戸の近くに盗賊がアジトを作ってしまったのだそうです。

失敗しましたね。

これまで水をみに来ていた兵士たちが来なくなったのですから、そこに居着いつこうとする盗賊が出てくる事を予測していなければいけませんでしたね。

盗賊たちにとっても水は必要不可欠なのですから。


ですが、やる事が特に変わる訳ではありません。

私は、いつもの様に、討伐隊を派遣する様に部下に指示しました。



後日。

『盗賊の討伐に失敗してしまいました。』と、部下から報告を受けました。

しかも、討伐するどころか、多数の怪我人を出して逃げ帰って来たと言います。

「何をしているか!」

その報告を聞いた私は、思わず、そう怒鳴どなりました。


隣国ケイニル王国との最前線で、ダンジョンも在るこの領地。

この地をながおさめてきたククラス家は、ずっと領軍の強化につとめてきました。

盗賊ごときに遅れを取るなど、あってはならないのです。

ケイニル王国に知られて領軍の質が低下したなどとあなどられるのもマズイですが、こんな事を、普段から関係が良くない王宮騎士団の連中に知られたら、何を言わることになるやら…。


すぐにでも新たな討伐隊を急行させて殲滅せんめつさせたかったのですが、その気持ちをグッとおさえて、念の為、当事者たちから話を聞くことにしました。


盗賊の討伐に参加した者を10人ほど集めて、彼らから話を聞きました。

聞くと、盗賊たちはろくな武器を持っておらず、木をけずして自作したとおぼしきやりを持っていた者が多かったのだそうです。

さらに、防具を身に着けている者が一人も居らず、そんな盗賊たちの様子に少し油断してしまったと言います。

ですが、油断だけが討伐失敗の原因ではありませんでした。


やりを突き出して抵抗する盗賊たちに対して、じょうせき通りにやりをやり過ごして近い間合まあいに入ったところ、盗賊たちは予想外の行動に出たと言います。

盗賊たちは、すぐにやりばなすと、腕をつかんできたのだそうです。

そして、その腕をひねったり、ひじの関節をめたりしながら下から持ち上げる様にされて、肩の関節をはずされてしまったのだそうです。

そんな初めて見る盗賊たちの戦い方に苦戦させられ、さらに、逃げた盗賊を追ったところわなが仕掛けられていて、さらに怪我人を増やしてしまったそうです。

その様にして怪我人を多く出してしまったことで、撤退を決断せざるを得なくなってしまったとのことでした。


今回の盗賊たちは、これまで相手にしてきた盗賊たちとは大分だいぶことなる戦い方をする様ですね。

しっかりと対策を立ててから討伐にいどまなければならないでしょう。


私が、万全の準備をしてから討伐に向かう様に指示したところ、討伐に参加した者の一人から要望が出ました。

「おかしな体術を使う者をらえたいのですが、許可していただけますでしょうかっ。」

盗賊は死罪と決まっています。それなのに、その様な要望を強くうったえる彼の様子が少し気になり、私は、彼に理由を訊きました。

「あの体術を身に付けたいのです。治安維持にも役立つと思いますっ。」

実際、討伐隊が苦戦して撃退されましたしね。その技術をしゅうとくできれば、役に立つこともあるでしょう。

それに、我がククラス家の方針も『実力第一』なのです。見映みばえばかりを重視する王宮騎士団とは違って。

たとえ相手が盗賊であろうとも、すぐれた技術を持っているのならばそれを手に入れるのを躊躇ためらうべきではないでしょう。

私は、その要望を了承しました。

りは実力差がなければ難しい為、もちろん『無理をしない範囲で。』と厳命げんめいした上で。



討伐隊が街に凱旋がいせんしました。


街の住人たちに盗賊の討伐を知らしめるその喧騒けんそうを聞きながら、私は執務室で報告書を読みます。

その内容は、凱旋がいせんした本隊にさきんじて移送されて来た、りにした盗賊たちから聞き出したものです。

先日苦戦させられた盗賊たちが、これまでの盗賊たちとは大分だいぶことなるおかしな戦い方をしていたのは、『武器を頻繁ひんぱんに奪われ続けた為にく編み出したもの』ということが分かりました。

何でも、武器と防具とかねの物を綺麗さっぱりぬすまれることが何度もあったのだそうです。

ふむ。

どうやら、盗賊相手に窃盗せっとうを働く、凄腕すごうでのシーフが居る様ですね。

この情報は国にげておいたほうがいいでしょう。盗賊を相手にしているぶんにはかまいませんが、やがて国に被害をおよぼす日が来るでしょうからね。


今回、数人の盗賊をりにした結果、思わぬ情報が手に入りました。

これまで、こういった盗賊たちのないじょうを知る機会なんて、滅多めったに有りませんでした。盗賊たちはその場で討ち取っていましたからね。

今後の対応の仕方を再検討するべきなのかもしれませんね。


あとは、りにした本来の目的である、盗賊たちが使っていた体術のしゅうとくですね。

技術のしゅうとくは、すぐに出来るものではありません。ながに成果を待つことにいたしましょう。



あの盗賊騒動から半年以上が過ぎました。


あの時にらえた盗賊たちから体術をならった者たち。その彼らの成長ぶりを、私は、今、たりにしています。

彼らと、彼らがしゅうとくした体術に感心した私は、ふと、思い付きます。


『これほどの実力があるのなら、近く開催される予定の『剣術大会』に出してみてもいいのではないか?』と。


王宮で毎年開催されていた、王宮騎士団主催の『剣術大会』。

王女様の結婚式と王宮騎士団の不祥事とで一時開催を見送られていたその剣術大会が、近いうちに開催されます。


これまで、王宮騎士団主催の『剣術大会』にはまったく関心がありませんでした。

王宮騎士団の上層部にはクズな貴族たちと関係が深い者が多く、そんな貴族たちの考えにドップリとかった彼らとは関わりたくありませんでしたから。

それに、出場させた兵士が下手へたに活躍してしまうと、クズな貴族たちから嫌がらせを受けてしまうおそれだってありました。王宮騎士団には特定の貴族とつながっている騎士も多く居ますからね。


以前、我々が盗賊の討伐に失敗した時、その事をぎつけて馬鹿にしてきた騎士団長たちには、今でもムカついています。

ですが、あの時の盗賊たちから学んだ体術を使って王宮騎士団の代表をくだして優勝してやれば、きっと痛快つうかいな気分になれるでしょう。

さいわい、剣術大会では使う武器に制限はありません。何の武器を使ってもいいのですから、武器を使わなくてもかまわないでしょう。

剣術大会に王宮騎士団の代表として出場する者たちは精鋭せいえいぞろいですが、見映みばえばかりを重視する彼らが制式装備としているロングソードには小さくないすきが有ります。

十二分に勝機が有るでしょう。


私は、体術をしゅうとくした彼らに領軍の代表として剣術大会へ出場すること。それと特訓を指示しました。

彼らなら、きっと王宮騎士団の代表たちをくだして優勝してくれるはずです。

王宮騎士団の騎士団長が顔をにしていかくるう様子が目に浮かびますね。

それを近くで鑑賞してやりましょう。

その時が、今から楽しみです。


ふっふっふっふっ。



間も無く王宮で開催される剣術大会。

ククラス侯爵のこの行動によって、何が起きるのか?


これから王宮で起きる事を予測できる者など、何処どこにも居ないのであった。



(設定)

りにした盗賊たちから聞き出した、『武器と防具とかねの物を綺麗さっぱりぬすまれることが何度もあった』とは、【多重思考】たちがやったことです。

武器を失った盗賊たちが、この様な”魔”進化をするとは、【多重思考】たちも予想外でした。

なお、いただいた物はスタッフ(=【製作グループ】)が有効活用しています。


次のお話から次章になります。

次章のタイトルは『剣術大会とメイド大乱たいらん』です。

剣術大会での出来事をけに、メイドさんたちがドッタンバッタンすることになります。


下の 【 ☆☆☆☆☆ 】の星の数で『評価』をしていただけれると嬉しいです。

それと、『ブックマークに追加』も。

ポイントが増えると嬉しいので!

気が向いた方だけで結構ですので、よろしくお願いいたします。

それと、誤字報告も歓迎しています。

ちょこちょこと誤字とか脱字とか、なおしした時の消し忘れとか、やらかしてますので……。


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