26 結婚して間も無く一年。子作りしましょう
『苦悩』
”ソレ”を見た俺が連想するのは、その言葉。
両手で頭を抱え、心の内の感情を抑え切れないかの様に体をくねらせる。
その様子は、まさに『苦悩』という言葉を見事に体現しているかの様に思えた。
目の前のそんな光景を、俺は…。
王妃様と一緒にお茶を飲みながらノンビリと眺めていた。
俺たちの目の前で頭を抱えて体をくねらせている、シルフィの姿を。
シルフィと結婚してから、間も無く一年になる。
俺とシルフィは王妃様の下を訪れ、三人で話し合いを行った。
話し合いの内容は、『子作り』に関してだ。
『体が成長し切る前の子作りは危険なのではないか?』
シルフィとの結婚式の少し前。そう懸念した俺は王妃様に相談した。
王妃様も俺と同じ意見であった為、改めてシルフィも加えた三人で話し合って、一年間は子作りをしないことに決めたのだった。
そして、結婚してから間も無く一年になる今。再び三人で話し合うことになった。
一年前は、『シルフィの体が成長し切っていないのではないか?』と考えて子作りを延期することにした。
一年経った今。俺は改めて隣に座るシルフィの体を見る。
身長は少し伸びた気がする。毎日見ているからよく分からんけど。
胸は…。どうなんですかね?
うーーん。
何とも判断が付かずに王妃様の方を見ると、王妃様もどうしたものか悩んでいるご様子だった。
そんな俺たちとは対照的に、シルフィは頬に両手を当ててイヤンイヤンしている。
ラブラブな妄想が脳内を満たしているのだろう。口元がだらしないし。
シルフィさん、心の内が駄々漏れですよー。
いささかアレな状態だが、当事者であるシルフィにも意見を訊いてみようと思い、呼び掛ける。
「シルフィ。」
「えへへへ。むふふふふふ…。(クネクネ)」
シルフィ、帰って来い。
脳ミソお花畑でイヤンイヤンしているシルフィに、もう一度呼び掛ける。
「シルフィ。」
「にょへへへへへへ…。(クネクネ)」
ダメだ、こりゃ。
とても残念なご様子の我が妻に、俺は、どうしたものか考える。
何となくシルフィの胸を見ながら。
別に『胸も残念だ。』なんて思ってないですよ?(←やめてさしあげろ)
ナナシがそんな事を考えている一方。
脳ミソお花畑でイヤンイヤンしているシルフィは、ふと、思い出した。
一年前の、あの勝負の直後に自分がナナシに言った言葉を。
『私の胸は、今はまだ小さいですが、このくらいには成長するはずですっ!!』
シルフィは、胸にパッドを沢山入れた王妃様の横で力強くナナシにそう言ったのだった。
そのナナシの視線が、今、自分の胸に注がれている。
『私の胸は今はまだそれ程ではないですが、これからまだまだ成長します。(ふんすっ)』と、ナナシにそう言うのは簡単だ。
だが、そう言ってしまうと、『まだ体が成長し切っていない。』ということになってしまって、子作りはさらに延期されてしまう。
逆に、『体はもう十分に成長し切っています。』と言ってしまうと、それは『もう私の胸はこれ以上成長しません。』と宣言するのと同じこと…。
その事に気付いたシルフィは焦るのだった。
『ど、どうしよう? 私は何て言えばいいのかしら?』
シルフィは焦りながら考える。考える。考える。
だが、答えが出ない。
さらに考える。
だが、答えが出ない。
頬に当てていた両手を後頭部に回し、頭を抱えて、さらに考える。
だが、何て言えばいいの分からない。
無意識にソファーから立ち上がり、両手で頭を抱えて体をくねらせながら、さらに考える。
考える。考える。
それでも答えが出ないシルフィは…。
どう言うべきか答えを探して、両手で頭を抱えながら体をくねらせ続けるのであった。
『我が妻は、今日も愉快だなぁ。』
そんな事を考えながら、俺はシルフィの奇行を眺めている。ノンビリとお茶を飲みながらね。
ちなみに、王妃様も俺と同様にノンビリとお茶を飲みながらシルフィの奇行を眺めていらっしゃいます。
そんな”愉快な踊り”(笑)を俺たちに見せてくれていたシルフィ。
しばらく踊り続けた後、ガックリとテーブルに両手をついた。
見るからに疲労困憊って感じで、肩で息をしています。
そんなシルフィが顔を上げて、俺たちに言う。
「半年…、延期で…。」
その二言を言ったシルフィは、再びガックリと下を向いてしまった。
先ほどの”愉快な踊り”(笑)で、本当に疲労困憊になってしまった様です。
「そうね。それじゃあ、また半年後に話し合いましょう。」
王妃様がそう言って、今回の『子作り』に関する話し合いは、お開きになったのでした。
ガッカリした様子で俺の腕にしがみつくシルフィと二人、廊下を歩いて部屋に戻ります。
シルフィの部屋の前でシルフィと別れ、自分の部屋に向かう。
自分の部屋に入ろうとしたところで、「うひゃーーー!」って言う声が、シルフィの部屋の方から聞こえてきた。
やっぱりね。(ヤレヤレ)
きっと、シルフィが、部屋に居る胸の大きなメイドさん(=マリアンヌ)の胸を揉みまくったのだろう。『私の胸も大きくなりますようにっ!』って。
割とよく有ることなので、俺は気にせずに部屋に入りました。
これまでにも同じ事が何度も有ったので、この後に何が起こるか分かっている俺は、ソファーには座らずに立ったまま待ち構えておきます。
少しの間そうしていると、トタトタと足音をさせて部屋にマリアンヌが駆け込んで来た。
そして、俺に向かって言う。
「ハチミツを寄越せーー!」
シルフィにされた事の迷惑料を俺にタカリに来たマリアンヌに対して、俺は、彼女の揺れる”タプンタプン”に意識のほとんどを集中させながら、用意していたハチミツが入った小瓶を高く掲げる。
俺が高く掲げた小瓶を奪おうと、体を俺に密着させながら手を伸ばしてピョンピョン跳ねるマリアンヌ。
二人の体の間に挟まれた”タプンタプン”が”むにょんむにょん”します。
”タプンタプン”が”むにょんむにょん”です!(力説!)
むはーーー!!(歓喜)
うん。いいねっ!!(←おい)
俺は至福の”むにょんむにょん”を心から堪能します。(むはー!)
少しの間堪能してから、ハチミツが入った小瓶をマリアンヌに渡してあげます。
あまりコレを長時間やって、瞬時に奪う様に工夫されてしまうようになったら、こうして”むにょんむにょん”を堪能することができなくなってしまうからね。(←小賢しいな、コイツ)
ハチミツが入った小瓶を手に入れたマリアンヌは、「うひょーー。」と喜びの声を上げながら部屋を出て、廊下を走り去って行きました。
メイドの仕事はいいのかなぁ? いつも疑問に思うんだけど。
まぁ、喜んでもらえたから、いいかぁ。俺も嬉しいし。
まぁ、俺が嬉しい理由はそれだけではないけどね。(ニマニマ)
ケイティさんが呆れた様な表情をしているのがチラリと視界に入りましたが、気にしなければどうということはないのです。ええ。(←少しは他人の目を気にするようにしようなっ)
半年後。
再び、シルフィと王妃様と三人で話し合いが行われました。
何かを諦めたかの様な表情をしたシルフィから、『過去の身の程知らずな発言』とやらについての謝罪がありました。
それが一体何なのか、俺にはよく分かりませんでした。
王妃様が微妙な表情をしながら子作りの解禁を宣言して、シルフィと結婚してから一年半が経った今日。子作りが解禁されたのでした。
ですが、俺は、この半年ほどの間頻繁に起きていた”むにょんむにょん”イベントが終了してしまうことを告げられた様な気がして、すっごく悲しかったです。(←おい)
こうして、何故か三人が三人とも微妙な表情をするなか、子作りが解禁されたのでした。
三人が三人とも微妙な表情をする一方、家族の重要な話し合いの場にナチュラルに呼ばれない王様なのであった。
王様ェ…。