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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十六章 異世界生活編11 そろそろノンビリできるよね編
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22 ナナシ、ダーラムさんにダンジョンの中に水場を作ってもらう


大臣と王妃様に頼まれて、グシククの街に在るダンジョンの中にみずを作ることになった。


その話し合いから数日後。

王宮をおとずれていた領主がグシククの街まで帰るのを待って、今日、ダンジョンの中にみずを作ります。


護衛の兵士たちを引き連れてダンジョンの一階層目を歩く領主のククラス侯爵。彼らと一緒に俺もケイティさんとケイトを引き連れて歩きます。

しばらく歩き、二階層目に続く階段をどおりして、一番奥のかべの手前まで来ました。

ここにみずを作ります。


ダンジョンの入り口から遠いこんな場所にみずを作るのは、水をみに来た人たちに、より長い時間ダンジョンの中に居てもらう為です。その方がダンジョンてきには助かるんだそうで。


「この場所がこの階層で一番魔力が多いので、ここにみずを作ります。」

俺は、ククラス侯爵にそんな”それっぽい事”を言ってから、みず作りに取り掛かる。

とは言っても、実際に作るのはダンジョンマスターのダーラムさんで、俺は、さも自分が作っているかの様にふるうだけです。


「ター。(棒)」

そう、ぼうみな掛け声をあげると共に、俺はそれっぽく手をかざす。

そんな俺の様子を何処どこからか見ているはずのダーラムさんが、『謎のダンジョンパワー』を使ってみずを作る。俺が前もって渡しておいた、王妃様がえがいたみずの絵の通りに。ただし、ガ〇ガンはのぞく。


ズモモモッて感じで、一分も掛からずに、外周部に何カ所かりがある半円形の池が出来上がった。


「ソヤー。(棒)」

引き続き俺がそんな掛け声をあげると、半円形の池の奥の一段高くなっている壁の数カ所から水がダバダバと出てくる。

水が池の中に溜まっていく様子を見て、俺は満足します。

うむうむ。


満足しながら振り返ると、ククラス侯爵をはじめとした皆さんは呆然としていました。

ま、まぁ、そんな反応になってシマイマスヨネー。(←やらかした事に気付いた模様)


ククラス侯爵たちの反応に居たたまれなくなった俺は、サッサと王宮の部屋に帰ることにします。

水位が一定にたもたれる事とかは、前もってククラス侯爵に説明しておいたしね。

「お、俺がやる事は終わったので帰りますね。」

いまだに呆然としているククラス侯爵にそう言って、俺はケイティさんとケイトを連れて【転移】でサクッとその場から逃げ帰りました。



「ふぅ。」

王宮の部屋に帰って来た俺は、一息ひといきつきます。


ケイトが、部屋の中をヨタヨタと歩き回るペンギン型ゴーレムを笑顔で追い掛け始めたことに呆れつつ、これまた笑顔のケイティさんに連れられて隣の部屋に行く。着替えをする為にね。


笑顔のケイティさんの着せ替え人形になる俺。

でも、どうしてケイティさんは笑顔なんですかね? 着せ替えなんて面倒なだけだと俺は思うんだけどねぇ。

せぬ。



その日の午後。

大臣が俺の部屋に来て、ダンジョンの中に作ったみずの報酬を受け取った。

へっへっへ。実際には何もしていないのにボロい商売だぜぇ。(←ゲスい)

まぁ、そうは言っても、このお金はダーラムさんの為にお酒や食材を買うのに使わないといけないんだけどね。

それらの買い出しの事を考えると、普通に俺がみずを作った方が掛かる手間てまが少なかった気がしないでもない。でも、恒久的に使えるみずを作るのは俺には難しいんだから仕方が無いよね。


そう納得しつつテーブルの上を見ると、受け取ったみずの報酬とは別に、あと二つお金が入っているとおぼしき革袋がある。

これらは何だろう?


革袋の一つは、先日、王妃様の馬車に【異空間作製】+【空間拡張】の魔法を掛け、洋式便器を一つ引き渡した、その報酬でした。

あー、そんな事もしたねぇ。みずの件を大臣と王妃様に頼まれた翌日にね。


もう一つの革袋は、俺がオークションに出品した物の代金とのこと。

グシククの街の冒険者ギルドで頼んでオークションに出品していたやつだね。

そろそろだとは思っていたけど、すっかり忘れてしまっていたね。グシククの街には、今朝、行ってきたばかりなのにね。


でも、俺が冒険者ギルド主催のオークションに出品した物の代金を、どうして大臣から受け取ることになっているのかな?

俺がそう疑問に思っていたら、大臣が説明してくれた。

「王都の冒険者ギルドのギルドマスターがこのお金を持って王宮にやって来ました。ナナシ様に面会したがっていましたが、私が追い返しました。ナナシ様が冒険者ギルドに所属するお気持ちが無い事は前もってうかがっておりましたので。」

どうやら、俺が知らない間に大臣が面倒事めんどうごとを引き受けてくれていた様だ。

冒険者ギルドに勧誘かんゆうされるのは鬱陶うっとうしいから助かったね。

「ありがとうございます。助かりました。」

大臣にそうお礼を言って、その革袋も受け取りました。



翌日の朝食後。


『さぁ、買い物に行きましょう!』


朝食後のお茶の時間を終え、部屋に戻るシルフィを見送ったところで、頭の中で【多重思考さん】にそう言われた。

【多重思考さん】の言う”買い物”は、ダーラムさんに渡す、みずを作ってもらった報酬のことなんだろう。


でも、そんなに急ぐことないよね?

【無限収納】の中には、お酒も食材もまだまだ入っていたはずだし。


そんな俺の意志とは無関係に、俺の体の操作を奪った【多重思考さん】がケイティさんに声を掛けて、隣の『お着替え部屋』に歩いて行きます。

『ちょっ、おまっ?!』

そう言ってあせるのだが、笑顔のケイティさんにあらがう気にもなれず、大人おとなしく着せ替え人形になります。

『あー、もぅどうでもいいやー。』

そう思った俺は、【多重思考さん】に体の操作を預けたままもることにしました。

【多重思考】たちは買い物とか料理とか好きだし、それに、買い物を拒否したところで、ゴーレムを使って買い物に行かれでもしたら、俺が文句を言われてしまうしなっ。

どうせ、何を言っても無駄だろうし、好きにさせてしまおう。

その方が問題が起きない気がするしなっ。



この日の夜。

【無限収納】の中を見たら、色々なお酒が沢山たくさん入っていました。

『…ちょっと、買い過ぎぢゃない?(意訳:大分だいぶ買い過ぎだよね!)』

『テヘペロ。』


『テヘペロ。』だそうです。

なんでも、【多重思考さん】が俺の体を使って大陸中を飛び回り、お酒を買いまくったんだそうです。中には、お店に有ったお酒をすべて買ってしまったこともあったんだそうです。

どう見ても、やり過ぎです。本当にありがとうございました。


どうして、こう、【多重思考さん】はやる事が極端なんだろうね?


「はぁ。」


思わず溜息ためいきいた俺は、ふてすることにしました。


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