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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十六章 異世界生活編11 そろそろノンビリできるよね編
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12 ナナシ、コーラの製造の引き継ぎをお願いするも、おおごとになる。そして…


王妃様から、お風呂場をゆずわたした報酬ほうしゅうを受け取った。


また大金たいきんを受け取ることになってしまった。ろく使つかみちも無いのにね。

そろそろ本気で、まりまくるおかね使つかみちを考えた方がいいのかもしれないね。


それはそれとして。

ちょうど王妃様にお願いしたい事が有ったので、この場で言おう。

「王妃様、コーラの試作が大体だいたい終わったので、コーラの製造を誰かにいでほしいんですが…。」

王妃様にお願いされて作ることになったコーラは、ほとんど完成した。

このあとやる事となると、味の改良とかコストダウンとかだけど、それらは別に俺でなくとも出来るし、俺はそんな面倒な事をしたくはない。

俺はもっとノンビリしていたいのです。

「それじゃあ、おやつを作っている部署にがせることにするわ。」

王妃様にそう言ってもらえた。

こうして、コーラの製造は俺の手を離れて、おやつを作っている部署にがれることになりました。



コーラの製造をいでもらえることになった。

それはうれしいんだけど、そもそも、あのコーラって俺以外でも作ることが出来たっけ?

今更いまさらながら、俺はコーラの製造工程を振り返ってみることにした。


俺がやっていたコーラの作り方は、『炭酸水を作って、そこに砂糖を煮詰につめて作ったカラメルと、香辛料こうしんりょう煮出にだした物を加えてかおりを付ける。』というものだった。

炭酸水の作り方は、空気中から取り出した二酸化炭素と水を結界でつつんで、ギュッとちぢめて圧縮して作っている。

…最初の炭酸水を作るところが、まったく普通ぢゃなかったね。

マズイぢゃん。最初の炭酸水を作るところで、既に製造をいでもらうのに赤信号がともっちゃってるぢゃん。

かおけ”という、割と誰にでも出来る事を何度も繰り返してうんざりしちゃっていたから、そのイメージがつよぎちゃって、炭酸水を作る工程のことをすっかり忘れちゃってたね。ずっと【料理グループ】が作ってくれていたしな。

マズイね。

炭酸水を作るところを何とかしないと、製造をいでもらう事なんて出来ないね。

仕方が無い。魔道具を作ってなんとかしよう。

コーラ作りを誰かに押し付けて俺がノンビリする為にな。(←本音がダダ漏れになってんぞ)



かくにやって来た。

きゅうきょ作らなければならなくなった『炭酸水を作る魔道具』の構想をる為にね。

ソファーに座って頭の中で考える。

炭酸水を作る手順は…。

ず、空中に結界を張って、その中から二酸化炭素以外を【分離】魔法さんでのぞく。

そこに【クリエイトウォーター】で作った水を加えて、結界をギュッとちぢめて圧縮する。

これで炭酸水が出来上がる。


この工程を魔道具で再現する方法を考える。

とは言え、以前作った『洗濯物を乾燥させる魔道具』でのやり方がりゅうようできそうだ。

『洗濯物を乾燥させる魔道具』は、壁に沿って結界を張ることで室内に在るすべての水を【分離】魔法さんでのぞき、洗濯物を乾燥させていた。

それと同様に、張った結界内から二酸化炭素以外をのぞき、そこに【クリエイトウォーター】で作った水を加えてから結界をギュッとちぢめて圧縮する。

これでいけるね。

でも、一回目はそれでいいけど、二回目以降は空気中に二酸化炭素が無くなっているから【ウィンド】で空気を入れ替えるてやる必要が有る。これを忘れない様にしないとね。


今の工程を、もう一度頭の中でおさらいする。

ふむふむ。ふむふむ。

これなら魔道具を作れそうだ。

俺が想像していたよりも簡単に出来そうだね。

コーラの製造のぎが決まってから炭酸水が俺にしか作れない事に気が付いてしまったので、あせってしまっていたのだろう。

ホッとした俺は、【製作グループ】に魔道具作りを頼んで王宮の部屋に帰ることにしました。

よろしく。(←今日も丸投げが雑です)



午後。

頼んでいた『炭酸水を作る魔道具』が出来たと聞いて、俺は呼ばれるまま『工房』へとやって来た。

『工房』へ来てみると、そこには車庫ほどの大きさの三角さんかく屋根の小屋こやちんしていた。

ん? あの小屋は何だ?

『あの小屋が『炭酸水を作る魔道具』です。』

「はぁ?」

【多重思考さん】が言う『炭酸水を作る魔道具』は、俺が想像していたのとは大分だいぶ違った。また、参考にした『洗濯物を乾燥させる魔道具』ともまったく違っていた。

『『洗濯物を乾燥させる魔道具』を参考にしたとは言え、条件が色々と違いますので。』

【多重思考さん】は、そう言ってから説明してくれる。

『『洗濯物を乾燥させる魔道具』はドアを閉めてから起動する様にしてもらっていました。室内全体を結界でおおう為に壁に沿う様に結界を張る必要がありましたので。』

そうだったね。説明書の注意事項にそんな事が書かれていたね。

『『炭酸水を作る魔道具』では、空気を入れ替える必要がありますので窓はけっぱなしにしておかないといけません。その為、『洗濯物を乾燥させる魔道具』と同じ事は出来ず、結界を張る場所と大きさを固定することにしました。』

ふむ。

『また、周囲の二酸化炭素濃度が一定でないと炭酸水の炭酸の量が一定にならない為、屋内に設置して運用する事は難しく、また、飲み物を作る設備でもある為、野ざらしにする訳にもいきません。それらを考慮こうりょした結果、”屋外に設置する小屋型の魔道具”になりました。』

「うわぁ。」

ただ炭酸水を作るだけぢゃ済まなかったんだね。そして、色々な事を考慮こうりょした結果、こんな”小屋型の魔道具”になっちゃったのかー。

「うわぁー。(呆然ぼうぜん)」


【多重思考さん】から説明を聞いて、少しの間、呆然ぼうぜんくしてしまった。

気を取り直してっ。

俺は、目の前にちんする”小屋こや型の魔道具”を見る。

車庫ほどの大きさの、やや背の高い三角さんかく屋根の小屋こやだ。

正面に両開きのドアが在り、側面のやや奥寄りに窓が四つ、正方形をえがく様に配置されている。

俺は小屋に近付き、両開きのドアを開けて小屋の中に入った。

入ったところは、奥行きが2mもない小さな部屋だった。

正面の壁の右端みぎはしにドアが在り、正面中央からやや左に寄った場所に、幅1.5mで床から1.5mくらいの高さまで壁が取り払われている部分がある。

その上にはたなが在り、そこに『洗濯物を乾燥させる魔道具』とよく似た魔道具らしき物が置かれていた。

ふむ。

そこまではいいんだけど、どうして、壁が取り払われている部分に寸胴ずんどうなべが置かれているんだろうか?

そう疑問に思っていたら、頭の中で【多重思考さん】が教えてくれた。

『作られた炭酸水は、ここに置かれたものの中に入れられます。』

「何で、寸胴ずんどうなべなの?」

『他に適当な大きさのものがありませんでしたので。それと、持ち運びがしやすすそうでしたのでコレにしました。』

まぁ、それはいいか。

【多重思考さん】が説明を続ける。

『ここへ来てものを置き、『起動。』とか『炭酸水。』とか言うと魔道具が起動して炭酸水を作ります。作られた炭酸水は、ここに置かれたものの中に入れられます。』

なるほど。


この小さい部屋には他に見る物は無いので、奥に続くドアを通って奥の部屋に行く。

ドアの向こうは、八畳くらいの広さの何も無い空間だった。

本当に何も無く、ただ左右の壁に、それぞれ四つずつ正方形をえがく様に窓が配置されているだけだった。

不自然な窓の配置だが、あの窓の配置にはどんな意味が有るんだろうか?

『空気を入れ替えるさい、右から入れて左に出すのが良いのか、それとも、右上から入れて右下から出すのが良いのか。それらを確認する為にあの様な窓の配置にしました。』

ほう。

『実験してみたところ、右から入れて左にぐに出したら良い感じでした。単に、窓を作り過ぎただけかもしれませんが。』

なるほど。そりゃあ、四つも窓が在れば風がよく通るよね。

「そんなオチは必要無いからね?(ニヤニヤ)」

何事なにごとも実験してみなければ分かりませんので。(震え声)』

まぁ、色々と実験していれば、たまにはそんな事もあるよねー。


それはそれとして。

俺は、あらためて目の前の何も無い空間をながめながら【多重思考さん】に訊く。

「でも、こんなに広い空間って本当に必要だったの?」

何も無いので、空間が本当に広く感じます。

『ある程度まとまった量の二酸化炭素を集めようとすれば、このくらいの空間は必要になるのです。』

「そうなんだー。(呆然ぼうぜん)」


俺の想像を色々な方向で越えてきましたね、この魔道具は。

ただ、炭酸水を作りたかっただけなのに、どうしてこうなったんだろうね。

「はぁ。」

溜息ためいきが出た。


色々な事が有りましたが、こうして『炭酸水を作る魔道具』が完成しました。



精神的に疲れて王宮の部屋に帰ると、そろそろおやつの時間だった。

疲れた体に、おやつで糖分とうぶんを補給することにします。

ほどなく部屋にやって来たシルフィと一緒におやつを食べます。

王宮のおやつは美味おいしいです。(笑顔)


シルフィと一緒におやつをパクつきながら、ふと、思い付く。

お金を使う方法を。

使つかみちが無いのなら、お金が必要な人に貸してしまえばいいんぢゃね?』と。

そもそも、お金を使うのが目的ではなく、んでおかずに世の中に流すことが目的だったしね。


おやつを食べながらシルフィと相談して、俺がんでいるお金の貸し付けをシルフィにお願いすることになりました。

『ナナシ金融』を開業し、貸金かしきん業に進出です。

俺はお金を出すだけで、実際に仕事をするのはシルフィですが。

何故なぜか、シルフィが『つまっぽいお仕事!』とか言って、みょうです。

貸金かしきん業でもうける気なんか無いので、らくにやってくれていいんだけどね。

まぁ、『我がつまが頼もしい。』とでも思っておくことにしよう。

よろしく。(←丸投げが雑なのは、相手が誰であっても同じ模様)



翌朝。

コーラの製造をいでもらう件について、王妃様とさらに具体的な話し合いをします。

急遽きゅうきょ作ることになってしまった『炭酸水を作る魔道具』が、まさかの”小屋サイズ”になってしまったので、それを置く場所も考えてもらわなければならなくなりましたしねー。

いきなり”小屋サイズ”の魔道具を引き渡す事になってしまって、本当に申し訳ない。


ビン王冠おうかんの製造は外に発注するそうですが、そのビン王冠おうかんふうをする為のゴーレムを貸し出すことになりました。

いずれ、もっと簡単な方法を考え出すつもりでいるそうで、それまでの”つなぎ”です。

きっと、魔道具を作らせて対応しようとすると、また変なものが出来上がりそうで怖かったのでしょう。また小屋を増やされても困るだろうしね。(苦笑)


コーラを作った事に対する報酬ほうしゅうとは別に、コーラの試作に掛かった経費けいひも出してもらえるんだそうです。

そう言われて、かおけの為に購入した香辛料こうしんりょうのビックリ価格や、コーラを試作していた時に沢山たくさん書いたメモの事を思い出しました。

特に、現時点での完成品のかおけに使った香辛料こうしんりょう配合はいごうのメモは、これを引き渡さないと味の再現が出来ないんだから、忘れちゃダメなヤツだよね。

それ以外にも、これまでに試作したコーラをあじしたさいの感想と配合はいごうのメモ。さらに、香辛料こうしんりょう煮出にだした物をあじしたさいの味とかおりのメモなど、コーラの試作中に作成したメモをすべて王妃様に引き渡します。

あと、残った香辛料こうしんりょうも引き渡します。今後の味の改良で使うかもしれないし、使わなかったとしても厨房ちゅうぼうで使ってもらえるだろうしね。

それらを引き渡した後、王妃様に、かおけの為に購入した色々な香辛料こうしんりょうのビックリ価格をお伝えしたら、表情がおかたまりあそばされました。

うん。イイ反応です。

そのお顔を見れて、俺は満足です。(悪い笑顔)


満足はしたのですが、支払いは少し待ってくれる様に言われました。

おもいのほか、高額になってしまって、王妃様が決済できる金額を超えてしまったんだそうです。これまでにも俺が作った物を色々とお買い上げいただいていたこともあって。

まぁ、支払いが遅れることくらい、まったくかまいません。

普段、お金を使う機会自体がほとんど無いので。


こうして、コーラの製造のぎが本格的に動き出しました。

コーラ関係の物が俺の手から離れてくれて、俺はホッとします。

王妃様はオロオロしていらっしゃいますが。(苦笑)



後日。

コーラの製造をいでもらった後の話を、シルフィから聞きました。

コーラの試作に掛かった経費や、これから製品化をするさいに掛かる費用の捻出ねんしゅつなんかに、王妃様が苦労していらっしゃったそうです。

何でも、お風呂場の移設は福利ふくり厚生こうせいとして予算がりたものの、コーラはこうひんあつかいとなって予算がりなかったそうです。

その為、付き合いのある貴族や商会などから出資してもらったものの十分な資金が集まらず、『ナナシ金融』からお金を借りたんだそうです。

『ナナシ金融』の最初のお客様が、まさかの王妃様でした。

いや、王妃様はこれまでにも色々とお買い上げいただいていたから、意外でも何でもないか。

しかし、そうなると俺のお金を借りた王妃様が、そのお金で俺に報酬を支払うのかぁ。

その事に『なんだかなぁ。』とか思わないでもないけど、『ナナシ金融』でお金を貸し出す目的は『俺が大金たいきんんでいることで経済に悪い影響が出ない様に、お金を世の中に流す』ことなので、そのお金を使って何かを作ったことで世の中のお金の回りが良くなって経済に良い影響が出るかもしれないから、まぁいいだろう。

それに、安全、安心な貸し出し先だしね。

王妃様には他にも電話や目覚めざまし時計も頼まれているので、長いお付き合いになりそうな気がしますねー。(苦笑)


その王妃様、コーラの製品化に向けてげんげるべく、かおけに使う香辛料こうしんりょう配合はいごうの見直しをさせているんだそうです。

そして、そのあじをさせられていて、うんざりしているんだそうです。

『コーラ飲みたい!』ってらくはなちあそばされた、そのむくいを受けているのかもしれませんねー。


俺は、上手うまく逃げ出す事が出来た幸運を、ひそかに喜んでいるのでした。(笑顔)


(修正 2021.01.08)

誤字報告をいただいた脱字を修正しました。

以前作った『洗濯物を乾燥させる魔道具』の働きを説明している部分を微修正しました。

『ナナシ金融』から王妃様がお金を借りている件のナナシの感想を修正しました。

ついでに、言い回しが不自然だった部分の修正と、ルビの追加をしました。


(追記 2021.01.07)

王妃様に、コーラの試作中に作成したメモを引き渡す様子を追記しました。忘れちゃダメなヤツを書き忘れてしまっていましたので。


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