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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十五章 異世界生活編10 魔術師の街の騒動 終編 <勝負の後>
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27 ナナシ、ネコ型ゴーレムを改良する03end その後 【ヒール】の毛皮の敷物


ダンジョンマスターのダーラムさんのところへ行って、ネコ型ゴーレム用に作ってもらった毛皮のお礼を言って、ゴーレムをプレゼントした。

その後、特殊な特性を持った毛皮シリーズの商品展開(?)をダーラムさんに説明して、一緒に試作品を作ったりしてみた。


その試作品の一つを、ダンジョンから持ち帰って来ている。

『こういった品物がダンジョンで出るんですよー。』って知らしめて、ダンジョンに行く人が増えてくれる様にね。


持ち帰って来たのはいいんだけど、どうしようかな?

前に、ミスリルゴーレムの腕なんかをオークションに出した。あれも、ダンジョンに行く人を増やす為にやったんだけど、今回持ち帰った品は、できれば王宮内で使ってほしいと思っている。

今回持ち帰ったのは、『【ヒール】を常時発動する毛皮の敷物しきもの』なのでね。

王宮で働いている人たちに使ってほしいよね。


でも、これって誰に渡したらいいのかな? よく分からんね。

王様や王妃様、それに大臣にも使ってほしいという気持ちが有るが、医務室のベッドで使ったり、疲れているメイドさんに使ってほしいという気持ちも有る。

どうしたもんかね?

うーーん。分からん。

分からんから、ケイティさんに丸投げだな。

俺が悩むよりは誰かに丸投げした方が、大抵たいていの場合、上手うまくいくしね。(←いつも、丸投げばかりしているだけです)


ダーラムさんと一緒に試作して持ち帰って来た『【ヒール】を常時発動する毛皮の敷物しきもの』を【無限収納】から取り出して床にく。

六畳くらいの大きさの、白くて厚みがあってフワフワモフモフした毛皮の敷物しきものです。

そして、ケイティさんを呼んで言う。この毛皮もダンジョンで見付けたふうにね。

「ケイティ、これは以前、ダンジョンで見付けた宝箱の中から出て来た毛皮の敷物しきもので、【ヒール】の魔法が常時発動しているんだ。王宮内で働いている人たちに使ってほしいと思ってるんだけど、誰に渡したらいいのか分からない。あげるから、誰かと相談してどうするか決めて。」

我ながら、”丸投げ感”が丸出まるだしの言い方です。(苦笑)

「はぁ、分かりました。」

ケイティさんのお返事も戸惑とまどった感じです。

うん。申し訳ない。


申し訳なく思った所為せいという訳ではないのだが、もう少しこの毛皮について説明する。

「この毛皮はね、このままの大きさでなくても、切り分けても【ヒール】が常時発動するから。だから、使いやすい大きさに切り分けてくばってくれてもいいから。」

そう。これには俺もダーラムさんも驚いたんだけど、この毛皮は切り分けても何故なぜか【ヒール】が発動する。

魔法が付与されている場合、切り分けてしまうと付与された魔法陣が破壊されてしまって魔法が発動しなくなる。普通は。

だけど、謎のダンジョンパワーで作ったこの毛皮は、切り分けても【ヒール】が発動し続けた。

その時は驚いたんだけど、ネコ型ゴーレム用に作ってもらった良く伸びる毛皮も、切り出して使っても良く伸びる特性を維持したままだったし、そういう物なんだろう。

『謎のダンジョンパワー』は謎なのです。

謎過なぞすぎて、【製作グループ】でも再現をあきらめた不思議な毛皮です。


ケイティさんに丸投げするこの毛皮。大きいからこのまま渡されても困ってしまうだろうから、【マジックバッグ】に入れて渡す。

両手でモフモフ感を堪能たんのうしているケイティさんに一言ひとこと断ってから、【マジックバッグ】に入れる。

シュルンと毛皮が【マジックバッグ】に入ると、毛皮のはしほうでモフモフを全身で堪能たんのうしていたケイトがコロリンと床にころがった。

そして、少し離れたところから、俺を『むーー。』って感じでにらんでいます。

「えーっと。ごめんなさい。」

ワザとぢゃないよ? ちょっと面白おもしろかったけど。(←おい)



翌日。

俺の部屋に大勢おおぜいの人がやって来ました。

シルフィと王妃様とメイド長のわりといつものメンバーと、他に大臣と、前に一度来た事がある”厨房ちゅうぼうの関係者らしき人”と、魔法関係で何度かお世話になったオリヴィアさんがいらっしゃいました。

大事おおごとになっている感じがビシビシとします。

な、何事なにごとなのかな?(ビクビク)


俺の隣に座って、いつもの様に腕に抱き着いているシルフィが俺に訊く。

「ナナシさん、あの毛皮ってもっと有りませんか?」

「えーっと、俺が持っているのは、あれ一枚だけだね。」

嘘は言ってません。ダーラムさんにお願いすれば簡単に手に入るけど。

「ダンジョンで手に入れたそうですけど、深い階層で手に入れた物なのでしょうか?」

「いや、それほど深いところではなかったかなぁ。」

俺はそう言って誤魔化ごまかす。深い階層でしか手に入らないとなると、『ダンジョンに人をって手に入れよう。』という状況になってくれないからね。

「何階層で手に入れたか、おぼえていませんか?」

厨房ちゅうぼうの関係者らしき人”が俺に訊く。

「えーっと。おぼえてませんねぇ。宝箱には特に興味が無かったので。」

そう答えながら、俺はさらにビビる。

どうして”厨房ちゅうぼうの関係者らしき人”がそんな事を訊くのかが分からなくて。

俺が想像していた以上に、広い範囲に影響が出ちゃっているんですかねっ?(ビクビク)


俺がビビッていると王妃様が言う。

「あの毛皮を服に加工して着ると疲れが取れそうよね。それと、靴の中に敷くのもいいわよね。メイドは立ち仕事が多いし。」

なるほど。

そんな使い方は考えてなかったけど、確かに良さそうな使い方だね。

「服にしてダンジョンに行く者に着せれば、長期間の遠征も可能になるだろう。」

そう言う、”厨房ちゅうぼうの関係者らしき人”。

日常的にダンジョンに人をって、食材を手に入れているのかな?

「あの毛皮で服を作ってネコ型ゴーレムに着せれば、一日中抱いていられるわ。(ニッコリ)」

そんな事を言うメイド長。そして、その発言をスルーする皆さん。

最近のメイド長の暴走っぷりを生温なまあたたかい目で見ているのかな?(←無関係っぽく言っていますが【ネコグループ】がブーストさせた所為せいです。)


そんな話を聞いて、俺は、あの毛皮が想像していたよりもずっと利用範囲が広い事に驚いた。俺は敷物しきものにしてゴロゴロするくらいしか考えていなかったのに。

俺が驚いていると、今度は大臣が言う。

「イスにけば、仕事の疲れを軽減しつつ体調を良くしてくれそうです。」

そうしたい程にお仕事が大変なんですかね?

でも、そんなふうに使うと一日中いちにちじゅう仕事させられちゃいません? 大丈夫?

それとも、もしかして痔主じぬしさん?(←おい)

そんな失礼な事を考えている俺に、大臣が続ける。

「馬車の御者ぎょしゃに使ってもらえば、かなり仕事が楽になると思います。御者ぎょしゃは疲れる仕事ですからね。また、馬車を引く馬に着せてあげれば疲れにくくなって、きっと長距離移動が可能になるでしょう。」

なるほど。俺がやった道路工事と話がつながりそうだから大臣もこの場に来ているんだね。痔主じぬしさんだからではなかったのか。

もっとも、痔主じぬしさん疑惑が完全に消えた訳ではないけどな。(←その疑惑は消してさしあげろ)


「ナナシさんは同じ物を作れるのかしら?」

王妃様に訊かれた。

「俺には同じ物は作れないですねぇ。どうして切り分けても魔法が発動するのか、その仕組みがさっぱり分かりませんので。」

俺はそう答えておく。俺の仕事が増えちゃうのは勘弁かんべんしてほしいし。

視界のはしでオリヴィアさんがホッとしている様に見えるのは、オリヴィアさんも、どうして切り分けても魔法が発動するのか不思議に思っていたのかもしれないね。


沢山たくさん有れば、メイドたち全員に身に着けさせたいのだけどねぇ。ふぅ。」

俺のことをチラしながら、そんな事を言う王妃様。

俺にダンジョンに行ってあの毛皮を大量に取って来てほしいのかもしれないけど、そんな王妃様をシルフィがにらみながら俺の腕を強くつかんでいるので、『俺がダンジョンに行って取って来ますよ。』とか言ってしまう展開にはなりません。俺自身も行く気は無いし。

俺とダーラムさんの目的は、ダンジョンに行く人を増やすことだからねー。

俺がダンジョンに行ってサクッと持ち帰っちゃったらダメなんです。


その後も色々と話を訊かれたり、王妃様とシルフィの間で無言の駆け引きが繰り広げられたりしました。

そして、少しガッカリした感じで、シルフィ以外の全員が部屋を出て行きました。

残ったシルフィもクリスティーナさんが回収していき、やっと一息ひといきけます。

ふぅ。


さて。

冒険者に依頼してダンジョンから毛皮を持ち帰らせようとすると思っていたのだが、あの食い付きっぷりだとメイドさんたちをダンジョンに派遣してしまいそうだね。

この後どうなるのか心配だから、【多重思考さん】たちにメイドさんたちの動向を監視しておいてもらうことにしよう。

よろしく。(←相変わらずの丸投げっぷりです)



メイドさんたちの動向について、割とすぐに報告が来た。

毛皮を取りに行く為にダンジョンに部隊を派遣したり、戦闘訓練の一部にダンジョンでの戦闘を追加する事が、決定しちゃったんだそうです。

それと、俺が”厨房ちゅうぼうの関係者らしき人”って思っていた人は”作戦部長”と呼ばれている人なのだそうで、厨房ちゅうぼうの関係者ではないとのことでした。

それどころか、”メイド長のすぐ下”くらいのえらい人っぽいとのことで、メイドさんたちをダンジョンに派遣する事をメイド長に進言しんげんし、色々と具体的な指示を出しているのもこの作戦部長とのことでした。


さて。

俺がした事が原因で、メイドさんたちがダンジョンに行かされる事になってしまった様だ。

その事に申し訳ない気持ちになるね。

せめて、ダンジョンで必要になりそうな魔道具を作ってプレゼントすることにしよう。

【ヒール】と【ハイヒール】の指輪と【マジックバッグ】は必須だろう。

その以外の物を考え、水筒の魔道具を作る事を思い付いたので、早速さっそく、検討を始める。

【製作グループ】と相談しながら、キャップを取ってかたむけると【クリエイトウォーター】が発動する、250ml缶サイズの【水を出す魔道具】を作り上げました。

それらの他に、魔道具に魔力を充填じゅうてんするウエストポーチと、魔力を充填じゅうてんする為に使う魔晶石もたんまりと用意して、プレゼントしました。

きっと役に立ってくれるでしょう。



後日。

準備と装備を整えたメイドさんたちがダンジョンに向けて出発しました。

無事に帰って来てほしいので、コッソリと【目玉】を二つ同行させて、【多重思考】二人(?)に護衛をさせます。よろしく。(←ここでも丸投げです)


俺がケイティさんに渡したあの『【ヒール】を常時発動する毛皮の敷物しきもの』は、ほとんどがダンジョンに派遣されたメイドさんたちの装備に使われたんだそうです。

その残りを、王様や王妃様や大臣、それとメイド長に、イスで使う敷物しきものとしてくばられたんだそうです。

王様も痔主じぬしさんだったのかな?(←や、め、ろ!)

メイド長は、配布されたその敷物しきもの被服部ひふくぶに持ち込み、小さいベストを作らせて、それを一番に購入したネコ型ゴーレムに着せて仕事中に抱いているんだそうです。

敷物しきもののままではダメだったんですか?』 なんて訊いてはいけないんでしょうねー。



さらに後日。

ダンジョンに派遣されたメイドさんたちが大量の毛皮を持ち帰ったんだそうです。

【多重思考さん】によると、あの『【ヒール】を常時発動する毛皮の敷物しきもの』の他に、服に加工しやすくもっと薄い『【ヒール】を常時発動するかわ』や、ネコ型ゴーレム用の『良く伸びる毛皮』も大量に持ち帰ったんだそうです。ダーラムさんの協力もあって。

色々とはかどりそうですね。被服部ひふくぶは大変そうだけど。

心の中で冥福めいふくいのっておきます。(←死んでません)



その後。

何度かメイドさんたちがダンジョンに派遣されました。

なんでも、ネコ型ゴーレムを予約しているメイドさんたちが志願してダンジョンに行っているんだそうです。あの『良く伸びる毛皮』を持ち帰ると割引きになるんだそうで。

いいように使われている気がしないでもないけど、いいのかな?

そう心配したんですが、王妃様が『【ヒール】を常時発動する毛皮の敷物しきもの』を買い取ってくれているんだそうで、いい小遣こずかかせぎになっているんだそうです。


俺が『【ヒール】を常時発動する毛皮の敷物しきもの』を持ち帰ってプレゼントした所為せいで、メイドさんたちがダンジョンに派遣される事態になっちゃったけど、いい感じなところに着地したのかな?

いい感じなところに着地したことに、しておくことにします。

うん。



(メイドさんたちのおかげでネコ型ゴーレムの販売が軌道に乗った後日の話)

今日は、ケイトではなくクーリが護衛に来た。

今日から、ケイトとクーリが交代で俺の護衛をすることになったらしい。

なんでも、グラアソに出張に行っていたケイトの親衛隊の者たちが出張から戻って来たら、ケイトが俺の護衛に復帰していて、ケイトと一緒に訓練できる時間が減ってしまう事に激しく抗議した結果らしい。

そう、ケイティさんが俺に説明してくれた。

へぇー。(←この無関心さよ…)


クーリは、今日はペンギン型ゴーレムを抱きかかえていた。

先日、ペンギンっぽいメイド服を着せられた時に賄賂わいろとして渡された(注:ナナシの想像です。合ってるけど)その当日以外は、仕事中にペンギン型ゴーレムを持っていなかったのにね。

きっと、ケイトに入れ知恵された結果なんだろう。(←合ってます)


一方、ケイティさんはネコ型ゴーレムを抱きかかえています。

真面目まじめさんなケイティさんらしくない気がしますが、注意するようなことでもないので好きにさせておきます。


俺は、部屋の中を歩くペンギン型ゴーレムをながめます。


このゴーレムシリーズを作ったけは、歩かせて、その様子をながめてやされようと思って作り始めたんだったよねー。その後、色々な事が有り過ぎて、どうでもよくなっちゃったけど。

やっと、部屋の中をペンギン型ゴーレムが歩いている様子をながめることが出来る状態になったね。

少しだけ感慨かんがい深いものがあります。


もっとも、ケイトがこの部屋に来た日には、このペンギン型ゴーレムも一緒に抱きかかえられることになるんだろうけどなっ。



(設定)

ナナシが何かやると、大抵たいていの場合、それで迷惑をこうむる人が出ますが、今回の被害者は被服部ひふくぶの人たちだった様です。それと、急にダンジョンに派遣されることになってしまったメイドさんたちも。


王妃様が『【ヒール】を常時発動する毛皮の敷物しきもの』を買い取っているのは、贈答ぞうとう用に使う為です。


ケイティの抱きかかえているネコ型ゴーレムは、メイド長からプレゼントされたものです。

前にメイド長が仕事中にネコ型ゴーレムを抱きかかえていたところをケイティに見られた事の”口止め”の意味と、ネコ好き仲間に引き込むのがその目的です。

ケイティには『さすがメイド長…。』と少し呆れられてしまいましたが、こんな事も、きっとケイティの将来に役立つと思います。

それと、仕事中にネコ型ゴーレムを抱きかかえているのは、『何か不具合があったらナナシ様に教えてあげてね。』とメイド長に言われたからです。ケイティはやっぱり真面目まじめさんなのです。


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