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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十五章 異世界生活編10 魔術師の街の騒動 終編 <勝負の後>
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26 ナナシ、ネコ型ゴーレムを改良する02 完成。宗教? 知らない子デスネ


メイド長がつぼかかえて部屋を出て行くのを見送った。


イイ笑顔でつぼかかえて部屋を出て行ったんだけど、そのつぼを持っていたところで、ただネコが増えるだけですよ?

メイド長の家には既に何匹もネコが居るのにいいのかな?

『新しいネコがやって来る』というところに魅力を感じちゃっているのかな?

家がネコ屋敷になってしまわないかな?

俺は、大丈夫だと信じておくことにします。


それぢゃあ、ネコ型ゴーレムの改良に取り掛かろうかな。


宗教? 知らない子デスネ。(すっとぼけ(全力))



メイド長から渡された要望書にあらためて目をとおす。

そこに列挙れっきょされていた項目の多くには横線を引かれている。かなりの要望が取り下げられた様だ。

その中で消されずに残った要望を見ていく。

それらの中に、『体が十分に伸びない。毛皮が伸びなくて動きを阻害そがいしている様だ。』というものがあった。

ふむ。

その様子を頭の中で想像していたら、【多重思考さん】に言われた。

『特にジャンプした時に動きがぎこちなくて、ジャンプに失敗することもあるんだそうです。』

ほう。そうなのか。

それぢゃあ、ジャンプする様子を実際に観察してみるかね。


ジャンプする様子を観察する前に、ネコ型ゴーレムのプログラムをちょっとイジっておく。

ジャンプする頻度ひんどを低くおさえてあるので、そのを頻度ひんどを高くしておく為にね。


プログラムをちょっとイジってからネコ型ゴーレムを床に置き、その目の前に【無限収納】から取り出した木箱きばこを置く。

早速さっそく、その木箱きばこねらいをさだめたネコ型ゴーレムは、腰を落としながら位置を微調整し…。ジャンプして木箱きばこの上に飛び乗った。

その動きは確かにぎこちないもので、要望書に書かれていた通り、毛皮が伸びなくて体が伸び切るのを邪魔している様に見えた。

こういう問題は、動きがほとんど無かったペンギン型ゴーレムでは起きなかった問題だね。


さて。問題の状況は確認できた。

対策としては、『もっと伸びる毛皮を使う』ってことになるんだが、そんな毛皮は在るのかな?

被服部ひふくぶのエイラさんたちの事だから、そのあたりに抜かりは無いと思うんだが、念の為、確認しておこう。

この部屋まで来てもらうほどの事ではないから、便箋びんせんにサッと書いてケイティさんに届けてもらうことにする。

よろしくお願いします。


エイラさんに問い合わせた結果…。

既に一番良く伸びる毛皮を使っていて、これ以上の物は知らないんだそうです。

うん。そんな事だろうと思ってました。

と、なると、もっと良く伸びる毛皮を探さないといけないのか…。

何処どこかに、そんな毛皮を持つ魔物って居るのかな?

でも、そんな魔物が存在していたら、王宮の被服部ひふくぶが知っていそうだよね。良く伸びる毛皮なんて、いくらでも使つかみちが有りそうだし。


そうなると、まだ誰も行った事が無いダンジョンの深い階層にでも行って、そこで手当てあたり次第しだいに魔物を狩って、毛皮をいで、試さないといけないのかな?

結構な手間てまが掛かりそうだね。

でも、ダンジョンマスターのダーラムさんの協力を得られれば、普通にやるよりも全然(らく)に出来るだろう。

心配事が有るとすれば、毛皮を求めて魔物を乱獲らんかくした結果、俺のステータスにまた変な【称号】が付いてしまいそうな事ぐらいだね。(苦笑)

………………。(考え中)

他に良い方法って、何かないかな?


他の良い方法を真剣に考え始めたところで、頭の中で【多重思考さん】に言われた。

『それなら、良い方法が有りますよ。』

ん?

『ダーラムさんに協力してもらうのは同じなんですが…。』

ふむ?

『ダーラムさんに、『良く伸びる毛皮』を作ってもらうんです。』

ん? 作ってもらう?

どういうこと?

『ゴメン、言ってる意味がよく分からないんだけど?』

『ですから、ダーラムさんに『良く伸びる毛皮』を作ってもらうんですよ。謎のダンジョンパワーで。』

『『謎のダンジョンパワーで。』って…。そんなに上手うまくいくものか? それに、そんなに万能か? 謎のダンジョンパワーって。』

『試してみるのもいいんじゃないでしょうか。魔物が作れるんですから魔物の”毛皮だけ”だって作れるでしょう。その毛皮に『良く伸びる』っていう特性を加えるだけなんですからきっと出来ますよ。』

そう言われてみれば、魔物は色々の特性を持っていたりするね。魔法への耐性が高かったり、刃物での攻撃がつうにくかったりね。

そう考えると、『良く伸びる毛皮』くらい、割と簡単に作れてしまいそうな気もするね。

『それに、そんなふうに物が作れたら面白おもしろいじゃないですかー。』

『それが本音ほんねかっ!』

【多重思考さん】に言いたい事は有ったが、『謎のダンジョンパワー』でどこまで出来るのか確かめてみる価値は確かに有りそうだ。

それに、そうやって面白い物が作れれば、ダンジョンに冒険者を呼び込むエサとしても使えそうだしね。

ダーラムさんなら喜んで協力してくれそうだ。


それぢゃあ、早速さっそく、お願いをしにダーラムさんのところへ行きましょうかね。

『お待ちください。』

ソファーから腰を浮かそうとしたら、【多重思考さん】にそう言われてめられた。

『今、作ってもらっています。』

もうダーラムさんに頼んだのか…。

『今、出来上がって…、受け取りました。今、【無限収納】から取り出します。』

頭の中で【多重思考さん】がそう言うと、空中に白い毛皮が出された。

えーーっと。

早過はやすぎる展開に頭が追い付いてこないんですがっ。

腰を浮かそうとした体勢で固まったままだしなっ。


気を取り直して、一旦いったん、ソファーにすわなおし…。

あらためて立ち上がって、空中にフワフワと浮かされている、たたみくらいのサイズのしろな毛皮を手でわる。

サワサワ サワサワ

ふむ。ネコっぽいイイ手触てざわりだ。

ペンギン型ゴーレムに使われてる毛皮の様なモフモフ感は無いが、実際のネコの手触てざわりを忠実ちゅうじつに再現した感じがするね。

うん。イイ感じです。(サワサワ サワサワ)


次に、はしつかんで引っ張ってみる。どのくらい伸びるのか、その確認だ。

引っ張ってみたら、想像以上に軽い力でフニョっと伸びた。

その伸びっぷりに驚く。

手を放す。

ススッと元に戻った。

すげぇ。

これならネコ型ゴーレムに使えそうだ。きっと上手うまくいくね。(ニッコリ)


早速さっそく、エイラさんにお願いしよう。

と、そう思ったんだけど、まだメイド長からの要望にすべてこたえたわけぢゃなかったね。

『他の要望も読んで手直てなおしを…。』って思ったのだが、既に【製作グループ】と【ネコグループ】で手直てなおしを終わらせてくれていたそうです。

いつの間に。

既に手直てなおしを終えたネコ型ゴーレムは【マジックバッグ】に仕舞われていて、今、俺がサワサワしている毛皮を【マジックバッグ】に入れれば、後は渡すだけだそうです。

うん。展開が早くて頭が追い付いていけません。(苦笑)

メイド長の”やる気"が【多重思考さん】たちに感染しちゃったのかな?


それはそれとして。

『さっさとその毛皮を中に入れろ。』って感じで、空中にフヨフヨと浮いてスタンバっている【マジックバッグ】に、謎のダンジョンパワーで作ってもらった毛皮を入れ、ケイティさんにエイラさんに届けてくれる様にお願いして手渡す。

よろしくお願いします。


後は、毛皮を交換されたネコ型ゴーレムが出来上がってくるのを待つだけだ。

楽しみだね。



夕方。

被服部ひふくぶのエイラさんとミリィさんが部屋にやって来た。

そして、毛皮を交換されたネコ型ゴーレム試作一号機を受け取った。

受け取ったネコ型ゴーレムは、手に持った感じが前とはかなり違っていて、フニャフニャとやわらかい感じになっていた。

なるほど。

これが、『液体(かん)が足りない。』ってメイド長に言われて改良した成果か。

フニャフニャとやわらかい感じになったネコ型ゴーレムを頭の高さまでかかち、全身をダラーンと伸ばしてブラーンとしているネコ型ゴーレムの頭のてっぺんから足の先まで眺める。

うん。長い。

見事みごとな伸びっぷりです。(ニッコリ)


次に、このネコ型ゴーレムを『歩行モード』にして歩く様子を観察してみよう。

この液体(かん)がマシマシになったネコ型ゴーレムが、ちゃんと歩けるのか不安になったので。


床に置いて、『歩行モード』にして歩かせてみた。

その歩く様子は、特に以前と変わった様には見えない。

すげぇ。

普通に歩いている事に軽く驚く。

ジオン、脅威のメカニズム? ジオン全然関係無いけど。


次に、ジャンプさせてその様子を観察してみよう。

ジャンプがちゃんと出来なかったのを改善する為に、毛皮を変えたんだからね。

決して、ダラーンと伸びている様子を見たかったからではないのです。あれはあれで良かったけど。長かったし。(笑顔)


ジャンプさせる為に、床を歩いているネコ型ゴーレムのまわりをかこむ様に木箱きばこを置く。

ジャンプをする頻度ひんどが低いので、確実にジャンプしてくれる様にしっかりとまわりをかこみます。

決して、宗教的な儀式ぎしきってわけぢゃないですよ? そう見えちゃわなくもないけど。(苦笑)


ネコ型ゴーレムが木箱きばこの一つにねらいをさだめた様だ。腰を落としながら位置を微調整し…。ジャンプして飛び乗った。

「おおっ。」

思わず声が出た。綺麗なフォームだったので。

ネコ型ゴーレムは木箱きばこの上で少しウロウロした後、床に飛び降りた。

そして、何事なにごとも無かったかの様に部屋の中を歩いて行く。

よし。改良は上手うまくいって、綺麗にジャンプが出来る様になったね。

うむうむ。


その後、30分くらい、歩く様子や段差をのぼりする様子、それとニャンモナイトになる様子なんかを観察して”お墨付すみつき”を得た。【ネコグループ】から。

これでっ、ネコ型ゴーレム、試作一号機のっ、完成っ、です!

やったね。



一緒に観察していたエイラさんとミリィさんに、ネコ型ゴーレムの骨格を10体分と、謎のダンジョンパワーで作ってもらった良く伸びる白い毛皮を5枚、それと取り扱い説明書を【マジックバッグ】に入れて渡した。

そうしたら、エイラさんに『良く伸びる白い毛皮』について訊かれた。

ですよねー。気になるよねー。

困ったな。何も考えてなかったよ。(←コイツ、馬鹿だろ)


【多重思考さん】のアドバイスで、『以前、ダンジョンに行った時に見付けた宝箱に入っていた。』ってことにした。

こう言っておけば、時々、『ダンジョンに毛皮を仕入れに行く。』って言って、2、3日出掛ける事が出来るようになるしね。

これでまた、かくに行ってゴロゴロダラダラできるね。

うむうむ。


ただ、ここで別の問題がっ。

『ダンジョンでしか手に入れられない毛皮』となると毛皮が高額になってしまい、その為、ネコ型ゴーレムの価格も高額になってしまうんだそうです。

そうかー。そうなるよねー。

『知人から入手した。』とでもしておいた方がよかったのかな?

でも、そうなるとその人について色々と訊かれそうだし、それならダンジョンで手に入れた事にしておいた方がまだマシだろう。

それに、この毛皮に需要じゅようが見込めて、この毛皮を得る為にダンジョンに人を派遣する様になれば、ダンジョンに入る人が増えてダーラムさんが喜ぶし、さらに、特殊な特性を持った毛皮シリーズを商品展開(?)すれば、ダンジョンに入る人がさらに増えることになりそうだよね。

うむうむ。(←満足げ)


ネコ型ゴーレムは、取り敢えず、今、渡した分で作れるだけ作ってもらって販売してもらうことにしよう。

次回の毛皮の入手予定を未定としておいてね。

価格が上がってしまうのは仕方が無い。諦めてもらおう。


それと、今回協力してもらったダーラムさんへのプレゼント用に、ネコ型ゴーレムを1体作ってもらう様にエイラさんに頼んでおく。ついでにペンギン型ゴーレムも。

あ。自分用にもペンギン型ゴーレムも1体頼んでおこう。

ちなみに、自分用のネコ型ゴーレムはいりません。

上手うまく歩くネコ型ゴーレムを見ると、自分では上手うまく歩かせることが出来なかったので嫉妬しっとしてしまうので。(←コイツ、心がせまいな)



翌朝。

部屋に被服部ひふくぶのミリィさんがやって来て、ネコ型ゴーレム1体とペンギン型ゴーレム2体を受け取った。

ありがとうございます。

ペンギン型ゴーレム1体は自分用なので、早速さっそく、『歩行モード』にして部屋の中を歩かせておく。

ネコ型ゴーレム1体とペンギン型ゴーレム1体はダーラムさんへのプレゼントなので【無限収納】に仕舞っておく。


ミリィさんに、改めて次回の毛皮の入手予定が未定な事を伝えておく。

注文が入っている様だったが、「ダンジョンに行かないと手に入らないのですから仕方が無いですよねー。」と言って、納得して帰って行った。



それぢゃあ、ダーラムさんのところへ行くとしよう。毛皮のお礼を言うのとゴーレムをプレゼントする為にね。

ケイティさんに外出することをげて、ササッとダーラムさんのところへ転移した。


いつもの食堂っぽいところへ転移して来ると、ダーラムさんはイスに座って待っていた。【多重思考さん】が連絡してくれていたのだろう。

「おはようございます。昨日は良い毛皮をありがとうございました。おかげでイイ物が出来上がりましたよ。(ニッコリ)」

「おはようございます。私もダンジョンの力の面白おもしろ使つかかたを知れてよかったです。」

「これが、あの毛皮を使って作ったネコ型ゴーレムです。お礼に差し上げます。それと、こっちはペンギン型ゴーレムです。歩かせて、それを見てやされる為に俺が最初に作ったゴーレムです。これもお礼に差し上げます。」

「ペンギン?」

「はい。ペンギンという鳥の仲間をして作ったゴーレムです。」

「鳥………。」

何故なぜ戸惑とまどった様な表情をするダーラムさん。

「ぜんぜん飛べそうに見えないのですが…。これって、上に放り投げたらそのまま落ちてきませんか? 丸々とした体がポムンと地面で跳ねる様子しか想像できないんですが…。」

「ええ。鳥だけど、飛べない鳥なんです。」

俺がそう言うと、ダーラムさんはもっと戸惑とまどった様な表情をしました。

どうしてなのかな? 本当の事を言っただけなのにね。

せぬ。


ダーラムさんにゴーレムの取り扱い説明書を渡して、軽く説明した。

早速さっそく、所有者登録をして、『歩行モード』にして床を歩かせる。

その様子を二人でながめてなごみました。


その後、ダーラムさんに特殊な特性を持った毛皮シリーズの商品展開(?)をプレゼンすると、かなり乗り気になってくれて、二人で話し合いながら試作品をいくつか作ったりしました。



ダンジョンから王宮の部屋に戻って来た。

ソファーに座って一息ひといきく。

ふぅ。


一仕事ひとしごと終わった。』という感じが、かなりするね。

最近は、【製作グループ】に丸投げする事が多かったからねー。

現在も、王都内で絶賛ぜっさん道路工事中だし。


一仕事ひとしごとした疲労感をやす為に、ペンギン型ゴーレムが歩き回っている様子をながめることにしよう。

そう思って部屋の中を見回みまわす。

だが、そのペンギン型ゴーレムが見当みあたらなかった。

………………。

ふと、窓の方へ視線を向けた。

窓際まどぎわひかえているケイトを見ると、両腕でペンギン型ゴーレムを抱きかかえていた。2体。イイ笑顔で。

一応、ケイトに言う。既に心の中で『無駄だ』と思ってるけど。

「ケイト、抱きかかえているペンギン型ゴーレムのうちの1体を床に置いて歩かせてあげて。」

「………。(♪)」

「………。」

「………。(♪)」

コイツ、完全にスルーしやがった。


まぁ、いいか。『無駄だ』と分かっていたことだしな。


俺は、ソファーに身を沈めて溜息ためいききました。


はぁ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも見てます。これからも頑張ってください。 [一言] これはいつのまにか称号に「猫教教祖」みたいなのが追加される予感。
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