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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十五章 異世界生活編10 魔術師の街の騒動 終編 <勝負の後>
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23 ゲストロ男爵、即落ち


玉座ぎょくざで起きた若い貴族たちによる暴力事件。


その暴力事件の被害者であったはずのゲストロ男爵は、手違い(●●●)で若い貴族たちと一緒に騎士たちに取り押さえられてしまった。

また、彼は手違い(●●●)で普通の留置場にぶち込まれてしまい、そこで一夜いちやごすことになってしまった。

翌朝、留置場から出されたゲストロ男爵は、連絡の手違い(●●●)で王宮へ向かってしまった迎えの馬車と合流できず、乗合のりあい馬車に強引に乗り込んで屋敷に向かわせ、なんとか屋敷に帰り着いたのだった。


いかりがおさまらぬゲストロ男爵。

その彼の元に、王宮から手紙が届いた。

『無礼(きわ)まりない不手際ふてぎわの謝罪か!』、『慰謝料をたんまりと請求してやるぞ!』と、そんな事を考えながら、執事に開封させた手紙を読む。


その手紙には、国王の御前ごぜんでの行いをとがめる言葉と、いくつかの処罰しょばつが書かれていた。

御前ごぜんでの一件については、罰金だけで済んだ様だ。

だが、既に留置場にぶち込まれた後であったこともあり、『罰金だけで済んで良かった。』などと殊勝しゅしょうな事をこの男が思う訳がなかった。


また、その件以外にも、先日の勝負の日に王都内で自身が乗っていた馬車が起こした接触事故について書かれており、そのさい破損はそんさせた相手の馬車の修理費の一覧と、『これらを確実に弁済べんさいする様に。』と厳命げんめいする一文いちぶんが書かれていた。

『何をふざけたことを!』と思いながらも、記載された項目と修理費にザッと目を通す。

すると、その中で、グラストリィ公爵家の馬車の修理費が特に高額になっていた事に気が付いた。

その高額な修理費と『グラストリィ公爵家』という文字にいかりがく。

がり者が何様なにさまのつもりか! 魔術師ごとき(●●●●●●)が!」

そう言っていかるこの馬鹿は、ダーラムの名誉が回復された意味をまったく理解していないのだった。


手紙には、まだ他にも書かれていた。

ゲストロ男爵は、手紙を床にたたきつける前に、一応、目を通しておくことにした。『俺様は立派な貴族で『がり』とも『魔術師ごとき』とも違うのだ。』と。

だが、『既に、王宮からの手紙を床に叩きつける事を決めている者が何を言っているのか?』という話なのだが。

その手紙の最後に書かれていたのは、馬車が起こした接触事故についての処罰しょばつだった。

罰金と、その他にも処罰しょばつが書かれていたのだが、その処罰しょばつの内容を読んで目をいた。

そこには、『王都内での馬車を使っての移動を禁止する。』と書かれていたのだった。

これは、『王都内では、馬車に乗らずに歩け。』と言っていて、貴族に対する処罰しょばつとしては有り得ないものであった。

もし、王宮に歩いて行ったとすれば、貴族である事を信じてもらえずに追い返される恐れがあるのだ。その事を考えれば、この処罰しょばつは『王宮への立ち入りを禁止する。』と言われたのも同然であり、実際にそうなってしまう可能性が極めて高いのであった。

この国に10人しかいない『領地持ちの貴族』に対する処罰しょばつとしては、『有り得ない』どころか『有ってはいけない』と言っても過言かごんではないほどの処罰しょばつであった。


「ふざけるな!!」


ゲストロ男爵は激怒した。

わめらしながら手紙をやぶてた。

それだけではいかりがおさまらず、やぶてた手紙を目の前で執事に焼却させたのだった。

『この馬鹿がそうするであろうと予測されたからこそ、この処罰しょばつになった。』という事実に、この馬鹿が気が付く訳がなかったのであった。


異例の処罰しょばつを認めようとしないゲストロ男爵と、その処罰しょばつの内容を知る機会を失った彼の家臣たち。

ゲストロ男爵が問題を起こすのは時間の問題だった。



この馬鹿は、その日のうちに問題を起こした。

ストレス発散はっさんの為に”とってもイイお店”に行こうとして、馬車に乗って屋敷を出たのだ。

その馬車が屋敷を出ると、馬鹿がやらかすのをかまえていた騎士団員たちに停車を命じられた。

そして、ゲストロ男爵は、その場で馬車から引きずり降ろされたのだった。

この事態に、この馬鹿だけでなく、何も知らない家臣たちも一緒になって激しく抗議し、もみ合いとなった。

その結果、大勢おおぜいの者たちがらえられ、留置場に送られることになったのだった。



その日の夕方。

何故なぜか王都にとどまる様に命令されていた、この国のすべての貴族たち。

彼らは、昨日に引き続き、再び玉座ぎょくざに集められた。


大臣から、昨日、領主になったばかりのゲストロ男爵に対する処罰しょばつが発表された。

処罰しょばつは、爵位と領地の没収。それと強制労働であった。

そして、ゲストロ男爵領となったばかりの旧シタハノ伯爵領が国王直轄領(ちょっかつりょう)となったことがげられたのだった。


最後に、まるでついでの事であるかの様に、あの馬鹿が起こした出来事とその罪状が大臣からげられた。


それを聞かされたこの場に集められた貴族たちは、あの馬鹿の馬鹿さ加減にただただあきれると共に、溜飲りゅういんげたのだった。


(設定)

ゲストロ男爵、領主になったその翌日に領地も爵位も失いました。

領主だった間、留置場に居た時間が一番長かった気がします。

ちなみに強制労働は、ナナシが作った畑での畑仕事です。彼の家臣共々(ともども)です。がんばれー。(←心にもない薄っぺらな声援)

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