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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十五章 異世界生活編10 魔術師の街の騒動 終編 <勝負の後>
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17 その頃、クララの父は…


< クラソー侯爵領 副領主視点 >


街道の近くの地中から発見された、親子三人とみられる遺体。

それについての報告を受けた。


「遺体は白骨化していましたので衣服の損傷具合から経過年数を推定いたしました。そして、埋められた頃の行方不明者を調べましたところ、魔術局の局長一家の可能性が高いと思われます。」

ふむ。

「それと、埋められていた場所が街から近く、かつ街道から近いにも関わらずかなり深い場所に埋められていたことから、人の手で埋められたとは考えられません。土属性の魔術師が関与していたとみて間違い無いでしょう。」

「そうか。ご苦労だった。」

彼から報告書を受け取り、下がってもらった。


報告書に目を通しながら考える。

魔術局の局長一家が行方不明になってから、もう随分ずいぶんつ。

局長のまま据え置いて、彼の帰りを待っていたのだが…。

「やはり殺害されていたのか…。」

『局長が組織のお金を持って街から逃げ出した。』なんて報告を受けてはいたが、私はそんな話を信じなかった。

局長に、そんな事をする理由なんて無かったのだからな。


…そう言えば、それを私に報告したのは誰だったかな?

当時の事を思い出す。

………そうか。

私に報告したのは、今、魔術師ギルドのギルドマスターをしているあの男だったな。


その事を思い出した私は、魔術局を立ち上げた当時の事を思い出す。

あの男には、土ゴーレムを使って建物を建てるデモンストレーションをしてもらっていたな。

あの頃は希望を抱いていた。魔術師たちを大勢おおぜいこの街に集め、それによってこの街が発展していく様子を思い描いて。

街は発展したものの、魔術局から大勢おおぜいの魔術師を引き抜かれて、今の魔術師ギルドが作られたのだったな。

一体いったい何処どこで失敗したのだろう…。

そんな事を考えながら、私は報告書をぼんやりと眺めた。


私は、先ほど受けた報告の一部を思い出した。

『土属性の魔術師が関与していたとみて間違い無いでしょう。』

あの男には、土ゴーレムを使って建物を建てるデモンストレーションをしてもらった。

もちろん、彼は『土属性の魔術師』だ。

そして、私に『局長が組織のお金を持って街から逃げ出した。』なんて報告をしたのも彼ではないか!

怪しい。

あの男が一番怪しい。


私は衛兵隊長を呼び、報告書を読ませて相談する。

「確かに怪しいでしょう。ですが、決定的な証拠ではありませんよね。」

「ああ。だが事情聴取はすべきだろう。」

「事情聴取をしたところで、正直に言う訳は無いと思いますが…。」

「確かにな。だが、何もしない訳にはいくまい。それに魔術師ギルドは今のまま放置してはおけない。魔術局の局長一家殺害に関して幹部たちから事情聴取を行うだけでも、つぶした時の反発を弱めることが出来るだろう。既にこの街に奴らの味方は少なくなっているのだしな。」

「………それもそうですな。」

衛兵隊長も了承してくれたので、彼に事情聴取を任せることにした。



衛兵隊長が部屋を出て行くのを見送り、一人になって考える。

魔術局の局長一家殺害の犯人に目星めぼしが付いた。

証拠集めは困難だろうが、やってもらおう。

局長は『魔術師の街』を作り上げた功労者なのだからな。この街の現状がどうであれ。

思えば、彼が居なくなってから色々とおかしくなってしまった気がする。

彼が居てくれれば、こんな事態にはならなかったのだろうか?


そう言えば、局長はクララの恩師でもあったのだったな。

随分ずいぶんと長く王宮に滞在することになってしまい、会えないでいる娘のことを想う。

あの子がここに帰って来る時は、この領地の”新しい領主”として帰って来ることになる。

あの子の未来は決して明るいものではなかった。だが、それが大きく変わる事になったのだ。

思えば、魔術師を大勢おおぜいこの街に集めたのは、娘の将来に役に立ってくると思ったからだった。

そのこころみは上手うまくはいかなかったが、娘の将来が明るいものになってくれたのだから、もうどうでもいい。

私が一番大切なのは、あの子なのだからな。

早くあの子に会いたいものだ。

そう思って、クララの笑顔を思い浮かべた。


クララの笑顔を思い浮かべ、再会を待ちわびていたら、ふと、気が付いた。

あの子が帰って来て最初にする仕事が、恩師の殺害犯の調査になってしまうという事実に。

それはどうなのだろう?

あの子に、いきなりその様な事をさせたくはない。

母親の後継者としての教育をまったく受けていなかったあの子が、いきなり侯爵家の当主になるのだ。母親を追い出す形で。

それも国の後押しによって再興されるダーラム家の当主として。

そんな大変な時期に、あの子に恩師の殺害犯の調査をさせるのか?


仮に私が調査の指揮をったとしても、殺害の容疑が固まれば死罪になる。

そうなれば、領主になったあの子に処刑の許可を求めることになるだろう。

その様な事をあの子にはさせたくないな…。


………あの子が帰ってくる前に、すべてを終わらせよう。

そうすれば、あの子に要らぬ心労を掛けさせることにはならないのだから。

そうしよう。


私は決めた。


あの男を処刑することに。



(設定)

ナナシが何かをすると、何処どこかで誰かが迷惑をこうむるというお話でした。前回の話の大臣とケメル公爵も含めて。

こうして今日も、ナナシの疫病神っぷりが光ってうなとどろさけんだのでした。(意味不明)


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