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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十五章 異世界生活編10 魔術師の街の騒動 終編 <勝負の後>
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15 ナナシ、道路を作る03 王都でも道路工事?


道路工事は順調に進んでいます。

まだ、半分以上残っているけど。

でも、急いで終わらせる必要は無いし、魔術師の評判を良くする為にゴーレムで道路工事をしている様子を多くの人たちに見てもらいたいのだから、早く終わらせちゃあダメだよね。



今、俺はシルフィと一緒に馬車に乗って移動しています。俺が綺麗に作り直した街道を。

何でも、『綺麗になった街道を通って王都にやって来た人たちが王都の道にガッカリしてしまうのではないか?』と、そんな事を懸念けねんする声が一部から上がったんだそうで、急遽きゅうきょ王都内の道も作る直すことにしたんだそうです。

その道路工事を魔術師団の人たちにゴーレムを使ってさせる為に、俺のしている道路工事の様子を見てみたいんだそうです。


数台の馬車で道路工事をしている現場までやって来た。

俺たちの目の前では、ゴーレムたちが作業をしてくれています。

俺は、ゴーレムたちのしている作業の一つ一つを役人や魔術師団の人たちに説明します。

転移魔法を使って土を退かして地面を掘り下げたり、大量の小石を敷き詰めて、それを複数のゴーレムで踏み固めたり、”重いコンダラ”型ゴーレムでたいらにならしたりしている様子をね。


彼らの目の前で、20mほど道を作り直した。

役人たちの反応は上々(じょうじょう)だったのだが、実際に道路工事を担当する予定だという魔術師団の人たちは表情が死んでいた。

そんな魔術師団の人たちの様子に気付いた役人の一人が、彼らに訊く。

「魔術師団の者たちで同じ事は…。」

魔術師団の人たちのリーダーらしき人は、無言でプルプルプルプルと首を左右に振った。そして言う。大きな声で。

「同じ事が出来る者なんて魔術師団には一人だって居やしませんよ! 地面を掘り下げる為に転移魔法を使うとか有り得ないですし、あの大量の小石は何処どこから現れたんですか?! そもそも魔術師団には転移魔法を使える者なんて一人も居ないというのに! それに、一人で複数のゴーレムをあやつって、まったく別々の作業をさせるだけでなく、これほど離れた場所に居るゴーレムを王都からあやつるとか、一体いったい、どうやっているんですか?! 訳が分かりませんよ! 一体いったい、何なんですかっ! 本当に?! ウガーー!!」

そう言って頭をきむしるリーダーらしき人。

錯乱さくらんしているっぽいです。

他の魔術師団の人たちは、俺のことを『得体えたいの知れない者』を見る様な目で見ています。

次第に役人たちも、同じ様な目で俺を見始めました。

あるぇーー。

これって、俺が悪いの? 違うよね? 俺は何も悪くないよね? 俺は何も悪くないよねっ?

不穏ふおん雰囲気ふんいきの中、役人の一人が「計画の見直しが必要ミタイデスネ…。」とポツリと言って、この場はお開きになりました。


馬車に乗って王宮に戻ります。

シルフィは、ずーっと俺の腕に抱き着いていて、『さすがナナシさんですね。』って感じでした。

いつも通りの平常運転なシルフィにやされます。

シルフィは、俺の心のオアシスです。

ええ。



夕方。

シルフィと王妃様が俺の部屋にやって来ました。

依頼されていた『ヒールの指輪』と『ポーションを作る魔道具』が出来上がった事をケイティさんに伝えてもらっていたので、受け取りに来てくれたのでしょう。

俺は、ソファーに腰掛けた王妃様に、依頼されていた『ヒールの指輪』と『ポーションを作る魔道具』を渡します。量が多いから【マジックバッグ】ごと。

「頼まれていた『ヒールの指輪』と『ポーションを作る魔道具』です。」

「どうもありがとう。すごく助かるわ。」

「いえいえ、どういたしまして。」

「それと、またお願いしたいことが有るんだけど…。」

俺が渡した【マジックバッグ】をひざの上に置いた王妃様が、少し申し訳なさそうにそう言います。

俺の隣に座って腕に抱き着いているシルフィが特に何の反応も示さないので、依頼の窓口になっているシルフィとは既に話がついているのでしょう。

「えーっと。何でしょう?」

「王都内の道も綺麗に作り直してほしいの。」

あー。やっぱりねー。

今日の魔術師団の人たちの反応を見て、そうなると思っていました。

でも、王都内だと人通りが多くて道路工事をするのは面倒そうだなぁ。

「すべての道ではないのっ。東西の門をつなぐ大通りと、その大通りから王宮に続く道だけよっ。本当は魔術師団にやってもらうつもりだったのだけれど、工事の様子を見学しに行った彼らが『魔術師団には無理です。』って言うからっ。ひどく落ち込んだ様子だったそうなのだけれど、一体いったい、どんな風に道路工事をしていたの?」

俺が『面倒そうだなぁ。』と思っていたのが表情に出てしまっていたのか、あわてた様子で王妃様が一気にそう言った。

でも、最後、ちょっと俺を責める風だったのは、何でなんですかね?

俺は普通に地面を掘り返して小石を敷き詰めて踏み固めただけですよー。ええ。(←やり方が普通じゃねぇんだよ!)

「えーっと。道路工事は別にいいですよ。」

俺がそう言うと、王妃様はホッとした様な表情をします。

そんな王妃様に続けて言う。

「でも、俺は普通に道路工事をしていただけですよ?」

別に変な事はしていないもんね。うん。

それなのに、王妃様はジットリとした目で俺を見た後、どことなく疲れた様子で部屋を出て行かれました。

うーーむ。

せぬ。



それはそれとして。

俺は、王都内での道路工事について考えます。人通りが多くてめんどくさそうだから。

夜の人通りが無い時にパパッと終わらせちゃおうかな?

でも、人目ひとめが有る時に道路工事をしたいよなぁ。多少たしょう面倒でも。

俺の目的は『魔術師の評判を良くする』ことであって、道路工事が趣味という訳ではないのだしね。

『我々にすべてお任せください。(フッ)』

どうするか考えていたら、頭の中で【多重思考さん】にそう言われた。

何だか、やる気を感じさせる言い方だったね。

かなりの距離の道路工事を終わらせたから、自信が付いたのかな?

まぁ、やる気になってくれているのなら任せてしまおうか。

『ぢゃあ、よろしくね。』

『はい。お任せください。(ニヤリ)』

【多重思考さん】が頼もしいです。


ちなみに、シルフィはさっきからずっと俺の腕に抱き着いていますが、好きにさせています。

シルフィは、俺の心のオアシスですので。


別に、王妃様にジットリとした目で見られた事とかで、心にダメージをったからではアリマセンヨ?(←ダウト)


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