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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十五章 異世界生活編10 魔術師の街の騒動 終編 <勝負の後>
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13 ナナシ、道路を作る01 試作。そして、シルフィ、再びふぎゃる


隣街となりまちのすぐ外に”手押しポンプ付きの井戸”を作りまくった翌日。


俺は朝から魔術師の評判を良くする方法を考えています。

でも、何も思い浮かばない。道路工事以外に。

道路工事のイメージが強過ぎた所為せいだろう。


結局、午前中は、ただマッタリしているだけになってしまいました。(しおしお)



昼食後のお茶の時間。

シルフィは俺のひざの上に座り、ベッタリとしています。上機嫌で。

何でも、まっていた仕事がすべて片付いたんだそうで、俺に抱き着いて『めてー。でてー。』って感じのオーラを出しまくっています。

俺は、そんなシルフィの頭をでてあげます。(ナデナデ)

胸元から「でひゅふふふー。」なんていう、王女様らしくはないがシルフィらしい声が聞こえて来ます。(苦笑)

喜んでくれている様なので、そのままナデナデし続けます。(ナデナデー)


長い時間そうしていたら、クリスティーナさんが部屋にやって来た。

なかなかシルフィが部屋に戻らないから迎えに来たのだろう。

クリスティーナさんが、俺にベッタリしているシルフィに言う。

「姫様、部屋にお戻りください。」

「えーー。」

シルフィはイヤそうだ。すっごく。

「お仕事をしませんと、またすぐに書類がまってしまいますよ。」

「少しくらい大丈夫だもん。」

そう言って、さらに俺にベッタリするシルフィ。でも、『だもん』はないと思うなぁ、『だもん』は。

「その油断が命取りになるのです。うっかり割ってしまったカップの始末書は待ってはくれないのですよ?」

俺に抱き着いて「むふふー。」とか言っているシルフィに、そんな事を言うクリスティーナさん。

シルフィのところには、ドジっメイドさんが居るのかな?

尚もグズるシルフィだったが、しばらくするとあきらめたのか、俺から体を放して両手を上げた。

クリスティーナさんは「はぁ。」と一つ溜息ためいきくと、俺のひざの上に座ったまま両手を上げるシルフィの両脇に手を添えてヒョイっと持ち上げ、浮いたシルフィの体を空中で持ち直して、いつもの小脇こわきかかえる体勢になった。

見事だね。

そしてクリスティーナさんは、『やれやれ』といった表情でシルフィを小脇こわきかかえて持ち去って行きました。いつもの様に。

俺は、そんなクリスティーナさんとシルフィのしりを見送ります。いつもの様に。

無心で。



さて。

午後も、魔術師の評判を良くする方法を考えるかな。

俺は、ソファーに体をしずめて考える。

考えるのだが、魔術師の評判を良くする方法は何も思い浮かばない。道路工事以外に。

道路工事のイメージ、強過ぎである。(苦笑)


もう、道路工事でいいかなぁー。一番効果が有りそうだし。

そう、なかあきらめかけた時、ふと、思い付いた。

道路工事をする”良い口実こうじつ”を。


一昨日、王妃様の依頼で隣街となりまちに作った広い畑。

その畑で作られた作物さくもつを王都まで運ぶのに、道が綺麗だったら作物をいためずに運ぶことが出来るだろう。

その為に、俺が隣街から王都までの道を綺麗に作り直そう。

良い口実こうじつになるよね。

『趣味です。』なんて言って道路工事をさせてもらう許可をもらうよりも、とうな理由だね。俺の心へのダメージも無いしなっ。(←ココ重要)

よし。それでいこう!



まだ畑を作ったばかりだから、道路工事はそれほど急ぐ必要は無い。

一度、試作をしてみようかね。道路の。

道路を作った事なんて無いからね。当たり前だけど。

道路を作った事が有る人なんて、そうそう居ないよねー。(苦笑)


さて。

道路の試作をするとしたら、あの荒野だろう。

あの荒野に行くとしよう。


っと、その前に【多重思考さん】に釘を刺しておかないとね。

『新魔法披露はしないからね。』

『…はい。』

『それと、食材の買い出しも。』

『ぐ…。』

食材の買い出しを考えていたかの様な反応だなっ。

釘を刺しておいてよかったぜ。


ケイティさんに一言ひとこと断って、俺はあの荒野に転移しました。



あの荒野に来た。

目の前に広がる惨状については、今更いまさらコメントする事なんて何も有りません。(無表情)


さて。

そもそも道路ってどうやって作るものなのかな?

試作を始める前に、以前見た道路工事の様子を頭の中に思い浮かべる。

地面を少し掘り下げて、ゴツゴツした石を敷いてロードローラーでならして、その上にアスファルトを敷いていた気がするなぁ。ウロおぼえだけど。

それを参考に、少し考えてみる。


アスファルトの下にゴツゴツした石を敷いていたのは振動を吸収する為かな? 電車のレールの下に石を敷くのはそれが目的だった気がするし。

でも、馬車程度の重さなら振動なんて気にしなくてもいいだろう。住宅が近くに在る訳でもないし。

それ以外に、アスファルトの下にゴツゴツした石を敷いてたいらにならしておく必要って、何か有るのかな?

考える。

ゴツゴツした石を敷いてギュッとすると、ゴツゴツが噛み合って丈夫な道になるなんて話を聞いたことが有る気がするなぁ。これもウロおぼえだけど。

そうやって固めてたいらにならしてからアスファルトを敷けば、長い年月がった後でも、アスファルトの表面にゆがみがしょうじたりしないかもしれないね。アスファルトって柔らかそうなイメージがあるし。

でも、そもそもアスファルトなんてここには無い。

あまり参考にならないかな?


アスファルトが無いから、これから作る道路の表面を何で作るか考えよう。

…それが最初に考えるべき事だった様な気がしないでもないけど、俺の気の所為せいです。

さて。何で作るかねぇ。

思い付くのは石だよなぁ。

街を囲む外壁に大量の石が使われているのだから、何処どこかに石切り場が在るのだろう。石なら、きっと入手しやすいだろうね。

でも、四角く切り出した石を並べて敷き詰めるなんて、そんな手間てまが掛かる事はやりたくないなぁ。

小石が沢山たくさん【無限収納】の中に有るから、それを敷き詰めようかな。

小石を敷き詰めて、”重いコンダラ”型ゴーレムでギュッとしながらならして、その状態で【結合】でくっ付ければ、いい感じの道路になりそうな気がするなぁ。

【結合】でくっ付ける際には隙間すきまける様にしよう。そうすれば、雨水あまみずが下に抜けて水溜みずたまりができないだろう。


さて。

道路の表面を、小石を敷き詰めて【結合】でくっ付けることにするとなると、その下ってたいらにならしておく必要って有るのかな?

たいらにならすと共に固さを均一きんいつにしておかないと、柔らかいところが(へこ)んで、その上に悪い影響が出そうだな。

やっぱり、小石を敷き詰める前に下をたいらにならしておいた方が良さそうな気がするね。

その部分の材料はどうしようかな?

ゴツゴツした石を敷いてたいらにならすのは、材料を集めるのも作業をするのも面倒だからあまりやりたくないなぁ。

道路の表面部分は、小石を敷き詰めて”重いコンダラ”型ゴーレムでギュッとした後に【結合】でくっ付けて一体化させたものなんだから、その下の部分はたいらであればそれでいい気がするなぁ。

そうだね。下の部分は土をたいらにならしておくだけでいいだろう。


よし。道路の構造はだいたい決まった。

厚みは、どのくらい必要なのかな?

薄すぎると馬車の重みで変形してしまうだろう。何度も変形すれば疲労破壊が起きてしまうから、ある程度の厚みは必要だね。

30cmくらいかな? もう少し欲しいかな?

余裕をもって50cmにしておこう。馬車程度の重さならこれで十分だろう。



ぢゃあ、試しに作ってみますかね。

ず、道路を試作する予定の場所の地中から小石を集める。【分離】魔法さんで。

ザザザザザザザザーーーッ

小石の山が2個できた。相変わらず【分離】魔法さんは便利ですねー。

次に、地面を掘る。

が、深さは決めてたけど道路のはばを決めてなかったね。

道路の幅は、どのくらいにしようかな?

馬車の幅は2mくらいだったはずだ。幅2mの馬車が安全にすれ違える幅となると5mくらいかな?

いや、もう少し余裕を取るか。歩いている人も少しは居るかもしれないし。実際、俺も王都に来る時に歩いたしね。

ぢゃあ、道路の幅は6mにしよう。

道路の幅を決めて、【製作グループ】にゴーレムと転移魔法を使って地面を掘ってもらう。幅6m、深さ50cm、長さ10mで。


地面を掘る作業が終わり、一度ゴーレムたちに退いてもらって、掘ってもらった地面を見る。

うーむ。幅が6mもあると、50cmの深さは浅く感じるね。

どうしようかな?

何となく心許こころもとなく感じたので、もう一度【製作グループ】にお願いして、深さを70cmにしてもらった。


幅6m、深さ70cm、長さ10mの範囲で掘られた”道路予定地”を見る。

うん。これでいこう。


”重いコンダラ”型ゴーレムに、掘ってもらった地面の底をたいらにならしてもらう。

何だか上機嫌に見えるのは何故なぜなんだろう?

そう言えば、先日やたらとやる気になっていたな。活躍する場面がほとんど無いからなのかな?

そんな事を考えながら、”重いコンダラ”型ゴーレムが地面がたいらにならすのをながめた。


掘られてたいらにならされた地面に、転移魔法を使って小石をザザザーーーッと入れる。

山2個分では小石が全然足らなかったので、足らない分は【無限収納】の中に仕舞っておいたものを出して使う。

掘られた地面を小石で埋め終えたら、そこを、身長3mほどの大きなゴーレムたちに踏み固めてもらう。


十分に踏み固めてから、”重いコンダラ”型ゴーレムが再登場。

上機嫌に見える”重いコンダラ”型ゴーレムが、踏み固められた道路をたいらにならしていく。


”重いコンダラ”型ゴーレムにたいらにならしてもらった後、俺が【結合】の魔法を掛ける。小石同士がくっ付くように、かつ、隙間すきまける様子をイメージしながらね。

最後に【目玉】をもぐらせて、底まで小石が結合されている事を確認して、道路の試作は完成した。

やったね。


完成した道路をゴーレムにゆっくり歩いてもらって、道路の様子を観察する。

見た感じ、たわむこともひび割れることも無かったので、問題無さそうだ。

『よし。これでいいな。』って思ったのだが、摩耗まもうの対策もしておいた方がいいね。長く使っているとわだちが出来てしまうからね。

摩耗まもうの対策はどうしようかな?』と思ったのだが、【不懐化】の魔法が有ったね。

【不懐化】の魔法を掛けておけば摩耗しないだろう。

でも、【不懐化】の魔法を掛けるのなら、70cmまで深くしなくてもよかったかもしれないね。

まぁ、いいか。

広大な荒野があるのだから、小石はいくらでも集められるだろう。


【不懐化】の魔法を掛けて、道路の試作、完成、ですっ。

やったね。



王宮の部屋に戻って来て、シルフィと一緒におやつを食べてます。

一仕事終わった後のおやつは美味おいしいです。(ニコニコ)


おやつを食べ終わった後。

シルフィは、また俺のひざの上に座ってベッタリと抱き着いています。「むふふー。」とか言いながら。

俺は、そんなシルフィの頭をナデナデしてあげます。(ナデナデー)


”シルなで”をしていたら、王妃様が部屋にやって来た。最近よくいらっしゃいますね。

「お邪魔するわね。」

そう言って俺の向かいに座った王妃様は、俺とシルフィを見てニヨニヨされていらっしゃいます。

ニヨニヨしないで下さい。(苦笑)

「畑と井戸の件、どうもありがとう。想像以上だったみたいね。報告書からも驚きが伝わってきたわ。(クスクス)」

「どういたしまして…。」

そんな事を王妃様に言われた俺は、少しだけ落ち込んでしまう。

『驚き』になってしまっていて、俺の目的の『魔術師の評価を上げる』ことには役立ってくれてないんだよねー。

どうして、そうなってしまうんだろうね?

せぬ。


あ。

ちょうどいいから、王妃様から道路工事の許可をもらおうかな? 畑と関係の有る事だしね。

王妃様に道路工事の件を説明する。『道が綺麗なら、運ぶ作物さくもついたみませんよー。』ってね。決して趣味で道路工事をしたい訳ではないのです。ええ。

「そうしてくれると助かるわ。ぜひ、お願い。」

王妃様からあっさりと許可が出ました。

やったね。


満足しながら、俺は道路工事のスケジュールを考える。

実際の作業は明日の朝からにしようかな?

寝ている間でも道路工事は出来るんだけど、それぢゃあ駄目だからね。

『魔術師の評価を上げる』ことが目的なんだから、見ている人が居る時間帯にゴーレムを使って道路工事をしないと『魔術師の評価を上げる』ことには繋がらないからね。


取り敢えず、今日は小石集めをしておこうかな。

沢山たくさんの小石が必要になるからねー。

よろしく。(←相変わらず丸投げが雑です。)


”シルなで”をしつつ王妃様と雑談などしていたら、クリスティーナさんがシルフィを迎えに来た。

そういえば、結構な時間ここに居るね。

シルフィはまた少しゴネたが、すぐにあきらめて俺から体を放して両手を上げた。

クリスティーナさんは、シルフィの両脇に手を添えてヒョイっと持ち上げ、浮いたシルフィの体を空中で持ち直して小脇こわきかかえた。

見事だね。(本日二回目)

そしてクリスティーナさんは、王妃様に「失礼します。」と言って、シルフィを小脇こわきかかえて持ち去って行きました。いつもの様に。

俺は、クリスティーナさんとシルフィのしりを見送ります。いつもの様に。

無心で。


「私も、これで失礼するわね。」

そう言って立ち上がった王妃様は、廊下へ続くドアの方へは向かわずに、クリスティーナさんがシルフィを持ち去って行った方へ向かう。

『おや?』と思ったが、まぁシルフィに何か用事でも有るのだろう。


俺は、残っていたお茶を飲み干し、身支度みじたくを整える。

俺も小石を集めに行こうと思ってね。

大量の小石が必要になるから、さすがに【多重思考さん】たちにすべて押し付けるのは申し訳ない気がしたので。

ストレスをめさせると、何処どこで何を仕出しでかすか分からないしなっ。

”重いコンダラ”型ゴーレムで荒野を大暴走とかしそうだ。『ヒャッハーー!!』とか言いながら。

………本当にやりそうで、怖いわ!


ケイティさんに一言ひとこと断ってから、王都の外に転移して来た。

荒野を前に立ち、俺は首をかしげます。


部屋から転移する直前に『ふぎゃーーー!!』って音が聞こえた気がしたのだが、あれは何だったのかな? と。


(設定)

(転移する直前に聞こえた『ふぎゃーーー!!』って音って、何?)

シルフィが王妃様にお尻をはたかれた時にあげた悲鳴です。

王女様にあるまじき移動方法(笑)を王妃様に目撃されてしまったので、しかられました。

ちゃんとシルフィの首からネックレスを外してからバシーーン!!としました。そのあたり、抜け目のない王妃様なのです。合掌。

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