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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十五章 異世界生活編10 魔術師の街の騒動 終編 <勝負の後>
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10 ナナシ、魔術師の評判を聞かされる。それと、王妃様から色々と依頼される


『魔術師の評判が良くありません。何とかしないといけない気がします。』


かくに来て、こたつに入って全力でダラーーッとしていたら、頭の中で【多重思考さん】にそう言われた。


魔術師の評判が良くない?

何か魔術師が事件でも起こしたのかな?


んーー。せっかく、こたつを全力で堪能たんのうしていたのになぁ。

真面目まじめに話を聞く為に姿勢をただし、話の続きを聞く。

『これまで報告していませんでしたが、『魔術師の街』で指示通りに行動した結果、魔術師の評判をすごく悪くする結果になってしまいました。』

「ん? 何か指示してたっけ?」

『………………。』

「………………?」

『『魔術師の街』の素行そこうの悪い魔術師たちのMP(Magic Point)を”1/1”にした件ですよ。忘れていませんよね? 忘れていませんよねっ?』

ああ…。

王都に来る前に一日だけ居た『魔術師の街』。そこで見掛けた素行そこうの悪い魔術師たちのMPを”1/1”にして魔術師でなくしてしまえば魔術師の評価を下げる事にはならなくなるだろうとか考えて、そんな指示をしていたね。

うんうん。もちろんオボエテマスヨ?(←ダウト)

『………………。(あきれ)』

あきれた態度を隠そうともしない【多重思考さん】を素知らぬ顔でうながして、さらに話を聞きました。

すると…。

MP(Magic Point)を”1/1”にされて魔法を使えなくなった『魔術師の街』の”元魔術師”たち。彼らは魔法が使えなくなった事を隠して魔術師ギルドに居続けたらしい。

その結果、魔術師ギルドで大量に作っていたポーションの生産がとどこおって価格が高騰こうとうし、それを、『ポーションの流通量を減らして価格を高騰こうとうさせて大儲おおもうけしている!』と誤解されて、『魔術師の街』の領主が”勝負”をいどまれることになったんだそうだ。

そして、俺がダンジョンマスターのダーラムさんのところに行かされたのは、その勝負に俺が巻き込まれない様にする為だったそうで、また、森の中に居たダーラムさんの子孫だという人のところに俺がケイトを転移魔法で送った件は、その勝負の為にオークキングを狩りに行って敗走していたところを助け出す為だったんだそうだ。

しかも、その敗走の原因は、魔法を使えなくなった”元魔術師”たちが何故なぜかオークキングを狩りに行く部隊に同行していて、彼らが戦闘中に逃げ出した事が敗走のけになったんだそうで、その事が魔術師たちの評判をひどく落とす原因になっていた。街まで逃げ帰って来た冒険者たちが、逃げ出した魔術師たちをひどく非難したこともあって。

………………。

「って、どうしてそうなるの?! 何で、魔法を使えなくなったのにオークキングを狩りに行く部隊に同行するの?! おかしいだろ?!」

やり場の無い全力のツッコミです。

俺が期待していた事とはまったく違う”ななうえの出来事”に理解が追い付きません。何気なにげに俺も巻き込まれていたしなっ。

本当にどうしてそうなったんだよっ。


全力のツッコミでグッタリする俺に【多重思考さん】が言う。

『何もしない方が良かったかもしれませんね。』

「………………。」

いや、確かにそうかもしれないけどさぁ。

今更いまさらそう言ったところで、どうしようもないよね。

このまま放っておく事は出来ないな。魔術師の評判を良くする為に何かしないといけないね。

【多重思考さん】に訊く。

「何かない? 魔術師の評判を良くする方法。」

『ゴーレムを使って道路工事でもしますか?』

「………………。」

『………………。』

少し考えてからツッコミを入れる。

「何で、道路工事なんだよっ!」

『ゴーレムを使って道をととのえれば目立ちますし、魔術師がしている事だということも一目ひとめで分かります。それに馬車で移動する商人たちに喜んでもらえますので彼らが話を広めてくれるでしょう。魔術師の評判を良くする方法としてはなかなか良い方法だと思います。』

目的が『魔術師の評判を良くすること』なんだから、確かに目立った方が良いね。それと、商人たちが話を広めてくれる事が期待できるというのも、確かに良いね。

「でも、もし仮に道路工事をするとして、大臣に何て言って道路工事をさせてもらうの?」

『『趣味です。』とか?』

「………………。」

『きっと大臣なら、それで許可してくれると思いますよ。』

いや、確かにそうかもしれないけどさぁ。それはそれで何かイヤだなぁ。

道路工事が趣味とか、どうみても変な人だもんね。

『………………。』

何か言いたげな【多重思考さん】を無視して、俺は他の方法を考える事にします。

宙に浮いた状態でアップを始めた”重いコンダラ”型ゴーレムから視線を外しながらなっ。

どうして、お前らはそんなに道路工事をやる気なんだよっ!

訳が分からないよ!!



王宮の部屋に帰って来た。

やる気を出しまくる”重いコンダラ”型ゴーレムが高速回転を始めて、身の危険を感じたのでっ。


ソファーに座り、ケイティさんにれてもらったお茶を飲みながら、考える。

大臣に何て言って道路工事の許可をもらうのか。を。

だって、他のもっと良い『魔術師の評判を良くする方法』なんて思い付かなかったのでっ。

【多重思考さん】には『『趣味です。』とでも言っておけば許可をもらえますよ。』なんて言われてしまったが、それで許可をもらえちゃうのも何かイヤだしなっ。


しばらく『むむむむ。』とソファーで悩んでいたら、王妃様が部屋にやって来た。シルフィと一緒に。

何か頼み事でもあるのかな?

シルフィが俺の隣に、王妃様が俺の正面に座り、早速さっそく王妃様が用件を言う。

「畑を作ってほしいのだけど、やってもらえないかしら?」

「畑?」

『何でそんな依頼が俺に?』って思ったが、そう言えば、前にシルフィに魔法で畑を作るところを見せていたね。その時の話をシルフィから聞いたから俺に依頼が来たのだろう。

まぁ、別にたいした手間てまぢゃないから、特に問題は無いけどね。

「いいですけど、何処どこにどれくらいの面積の畑を作るんですか?」

「隣の街のすぐ外に、街の半分くらいの面積で出来るかしら?」

結構けっこう広くね? まぁ、別にいいけど。

「『隣の街』って『魔術師の街』ですか?」

「ええ。その『魔術師の街』なんだけど、これから人が減るから農民を増やすことにしたの。王都の隣だし、食料の生産拠点として良い立地りっちかなと思って。」

ふむ。

まぁ、畑を作ること自体は何も問題は無い。

それに、魔法で畑を作るところを多くの人に見てもらえば、悪くなった魔術師の評判を良くするのに役立ちそうだね。

道路工事を『趣味です。』とか言ってやらせてもらうよりは、ずっといいよねっ。

「分かりました。やります。」

「助かるわ。」

「畑は作れますけど、農民のアテはあるんですか?」

『人が減る』って言っていたので、何となく訊いてみた。最悪、俺がゴーレムで作物さくもつを育てるという方法もアリだけど。

「ええ。”農民希望者”がちょうど大勢おおぜい居るの。だから大丈夫よ。(ニッコリ)」

「………………。」

王妃様の笑顔に、何故なぜか触れてはいけないものを感じたのは、何故なぜなんだぜ?


その後、笑顔の王妃様から『ヒールの指輪』と『ポーションを作る魔道具』の製作も依頼され、俺は首をコクコクと縦に振って了承しました。


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