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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十五章 異世界生活編10 魔術師の街の騒動 終編 <勝負の後>
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05 外伝 ある騎士団員の話。コーラルとコーレルのその後


< コーラル視点 >


王宮でメイドとして働いているはずの姉さんに騎士団の仕事中に連れ出され、姉さんにぶちのめされた不幸な人たちを大勢おおぜい縛りあげた。

その後、やって来た騎士団の人たちと一緒に留置場に運び込んだ。

あの日の出来事は、本当になんだったんだろうな。



そんな事があった二日後の朝。

職場に行くと新しい上司だという人が居た。

異動が行われるような時期ではなかったはずなのだが、まぁそんな事もあるのだろう。


新しい上司に呼ばれ、あらためてあの日の件の報告書を書くように言われた。

あれは、一度書いた報告書を上司に言われた通りに書き直して提出したんだけどなぁ。

ミノムシにしたベラスさんのことをすっかり忘れて、うっかり留置場に運び込んでしまった事を書き忘れたのがいけなかったのかな?

新しい上司からは、『あった事をそのまま書けばいい。』と言われた。

前の上司には、その『あった事をそのまま書いた』報告書を書き直させられたんだけどなぁ。

しかし、また報告書を書くのか…。

うんざりするな。


溜息ためいききながら席に戻ると、コーレルの姿は無かった。

きっと訓練に行ったのだろう。僕を置いて。

まぁ、居たところで報告書を書くのには何の役にも立たないのだが、僕が報告書を書いている間に訓練をしていると思うと腹が立つ。

コーレルには任せられないから報告書は僕が書いているのだが、その所為せいで少しずつ実力に差を付けられてしまっているというのになっ。

くそう。


腹を立てながら報告書を書いて提出し、すぐに訓練場に向かった。

これ以上、コーレルに離されてたまるかっ。


午後。

訓練場に向かおうとしたら新しい上司に呼び止められた。

「前の報告書は上司に言われるままに書き直したとのことだったが、他にもそうした報告書があるのか?」

あぁ、うっかりそんな事を書いてしまってたな。何度も報告書を書く羽目はめになった事に腹が立って。

僕は正直に言う。

「ほとんどの報告書がそうです。」

「…憶えている範囲でいいから書き出してくれるか? 報告書の体裁ていさいでなくていいから。」

「………はい。」


うんざりしながら席に戻る。

コーレルの姿は、もちろん無かった。

くそう!


腹を立てたまま、これまでに書き直しをさせられた多くの報告書について、憶えている範囲で書き出す。

うっかり、前の上司や上官たちのクズっぷりなんかも書きなぐったら、ブ厚い超大作の、自分でもよく分からないモノが出来上がってしまった。

えーっと…。

自分のした事なのだが、どうしてこうなってしまったのだろうか?

机の上に鎮座するブ厚い超大作を見て、呆然とする。

…まぁ、いいや。

どうせ、こんなブ厚い報告書なんて、まともに読まないだろう。

新しい上司がトイレに立った隙に机の上に置いて、僕は訓練場に向かった。

紙の無駄遣いを怒られたくなかったしなっ。



翌々日の朝。

何故なぜか僕と弟の二人は昇進した。

弟と二人で顔を見合わせて考えるが、昇進する様な事なんてしていないはずだ。

『何で?』

自分と同じ顔をした弟の顔にそう書いてある様な気がした。

きっと、自分も同じ表情をしていることだろう。


昼。

食堂で昼食を摂っていると、『沢山たくさんの人が辞職したらしい。』なんていう噂話を聞いた。

前の上司やベラスさんも辞職したらしい。

あの人たちは、辞職なんてする様な人たちではなかったと思うんだけど…。

何となく触れてはいけないことの様に感じたので、僕たちはその話題には触れないことにした。


訓練場に向かいながら、前の上司やベラスさんの事を思い浮かべた。

姉さんがぶちのめしたベラスさんを弟がミノムシにした事を思い出したら、その後の色々な出来事も思い出した。

そして、何故なぜか、あの時に姉さんが言っていた『掃除そうじ』という言葉が強く思い出された。

………何だか、背筋が寒くなった気がした。


…考えるのはよそう。

何も考えない。

頭の中をからっぽにして、やり過ごすのだ。

それが最善。

そうとも。


よし、今日も訓練だ!

これ以上、コーレルに離されてたまるか!


(設定)

(コーラルとコーレルが昇進した理由)

1,あの時の手柄。(姉たちに譲られた分を含む) 2,上司の不正を裏付ける情報提供。 3,過去に上官の手柄にされていた分を正当に評価し直してもらえた結果。 4,二人の姉が王宮のメイドで、かつ、かなりの実力者だった事が判明したから。


(どうして、姉が王宮のメイドだと昇進するの?)

騎士団の中に、王宮のメイドたちの実力を知る者が徐々に増えつつあります。

彼女たちと良好な関係を築く為に、王宮のメイドの親族を騎士団に入れたり重要なポストに就けようとする動きがあるのです。

ですが、騎士団の上層部に貴族と繋がった者たちが居座り続けている事と、王宮のメイドたちの名簿が入手不可能な事から、上手うまくくいっているとはがたい状況です。

だから、王宮のメイドの親族だと判明した者を、今回の様に上司が不正などで処罰された時を利用して積極的に昇進させているのです。

ちなみに、コーラルとコーレルの様に母親が元王宮のメイドで、親のすすめで騎士を目指す者もそれなりには居るのですが、腐った上層部の所為せいで昇進できてない者が多いのです。

そういう者たちには何故なぜ曲者くせものが多くて困ってしまっていますが、コーレルはともかく、コーラルは希望の星になるかもしれません。先のことはまったく分かりませんが。


(騎士団の派閥につて)

貴族派

貴族と繋がっている者たち。上層部に多く発言力が大きい。

腐っているが、排除してもなかなか居なくならない。

『まるでGの様ではないか。』と国の上層部を呆れさせている。

メイド派

王宮のメイドさんたち実力をある程度把握し、良好な関係を築こうと考えている者たち。

現場で遭遇して実力を知った者たちや、王宮のメイドさんが親族に居る者たち。

『メイドさんたちともっと仲良くしようぜ。』なんて言っている者も多いのですが、『いやいや、やめておけ。ぶちのめされるだけだぜ。』なんて言って善意で止められていたりもしています。

正統派

騎士道の求道者たち。真面目まじめさん。

そんなことより筋肉だ!派

筋肉。

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