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02 事件発生02 王女シルフィの危機(笑)


< 王女シルフィ視点 >


今日も馬車で移動です。


すでに、王都を離れて三日。

あと一日の辛抱しんぼうとは言え、つらいです。

馬車は苦手です。

お尻が痛くなります。

しかし、王女としての公務ですから、それは我慢します。


同行している女性が、私に抱き着いています。

私よりも背の高い方に抱き着かれると余計な重みが掛かるので、すごくやめてほしいです。

ここのところ毎日言っている事を、また言います。

「暑いので離れてください。」

私がそう言っても、「お姉さまぁ。」とか「すーはーすーはー」とか「ぐへへへ。」とか言って体を密着させてくるばかりで、離れてくれる気配がまったく有りません。

『お姉さまぁ。』とか言っていますが、あなたの方が一つか二つ年上でしょうに…。

それと、『すーはーすーはー』するのもやめてほしいです。

文官ぶんかんとして同行しているはずの、このパディカーナ伯爵令嬢。

本当に仕事で来ているのでしょうか?

違いますよね。

不安です。


そんな時、馬車が停まりました。

「わー。」、「わー。」、「わー。」とか言う声と、騎士のかたたちが動き回る音がします。

ガシャガシャドタドタと、騎士のかたたちが走っているとおぼしき音が徐々に小さくなっていき、やがて静かになりました。


………状況が分かりません。


有りそうな状況としては”盗賊との戦闘”ですが、剣戟けんげきの音や怒鳴どなり声などが無かったので、盗賊ではないのでしょう。

では、一体いったい、何があったのでしょうか?

「何かありましたか?」

そう訊いてみました。

しかし、返事は有りませんでした。


状況がまったく分かりませんので、外に出てみる事にします。

「すーはーすーはー」している伯爵令嬢を引きがし、…引きがし、…引きが…せませんね。

無駄とは思いましたが、「離れてください。」と言います。

「ぐへへへへ。」

途方とほうれます。


その時、馬車の扉が開きました。

扉を開けたかたは、護衛の騎士のかたではなく、盗賊の様な見た目をしておりました。



「馬車からりろ。」

盗賊の様な見た目をしているそのかたが言います。

身の危険を感じますが、馬車の中にとどまるという選択肢は、無意味だと思いました。

また、『状況を知りたい。』とも思いましたので、そのかたしたがうことにします。


立ち上が…れませんね。

「あの…、がすのを手伝ってもらえませんか?」

盗賊のかたにお願いします。

「あー、しょうがねぇな。」

私に抱き着いている伯爵令嬢が恐怖に震えているとでも思ったのでしょう。意外と優しい声で応えてくださいました。

「おい、嬢ちゃん。立つんだ。」

私に抱き着いている伯爵令嬢に言います。

「すーはーすーはー」

彼女は、「すーはーすーはー」するのにいそがしい様です。

盗賊の方が、少し困った様子で私を見ます。

そんな目で見られても、私も困ります。

盗賊の方は、伯爵令嬢の腕をつかんで、立ち上がらせようとします。

「ほら、立って。」

伯爵令嬢は、そこで初めて盗賊の方に気が付いた様で、ハッとした顔をします。

状況を理解してくれた様です。

伯爵令嬢は、私にギュッと抱き着き、盗賊のかたにらみ付けます。

あー、これは私をかばって、『無礼者! 姫様に近付くな!』とか、言ってしまう場面ですね。

せろ、姫様は私の物だ。」

「………………。」

私が想像していたのとは、少し違いました。

あなたの物ではないですし、状況を理解して、危険な事はしないでほしいです。

「馬車からりろ。」

「あなたがりなさい。」

状況を理解してほしいです! 本当にっ!

盗賊のかたも、驚いています。

「降りますよ。騎士の方たちがどうされたのか心配です。」

伯爵令嬢を(なだ)めます。

「騎士なんかどうでもいいです。私は姫様がいらっしゃればそれで幸せです。」

「むふー。」と言って、私にしがみ付いてきます。

イラッとしました。

蹴飛けとばしてやりたいです。

体が密着していて、出来ませんが。


盗賊のかたは、がす事にした様です。

両腕を伯爵令嬢のおなかに回し、引っ張ります。

「離せ! 無礼者!」

…それ、私があなたに言いたいです。(無表情)


私は、盗賊のかたに引きずられる伯爵令嬢に引きずられて、一緒に馬車をろされました。



街道をに、斜面を歩きます。

しばらくのぼったりりたりしながら進むと、洞窟どうくつに着きました。


洞窟の中に入ると、いかにも”盗賊のボス”てきかたが、椅子に座って居ました。

その方が、私を見ながら、「あんたが姫さんか?」と訊いてきました。

私は、うなずきます。

「あんたらに危害を加える気は無い。大人おとなしくしていろ。」

その方が、そうおっしゃったので、一先ひとまず安心しました。

「トイレは大丈夫か?」

次に、そう訊かれました。

意外と紳士的な方なのでしょうか?

特に行きたい状態ではありませんでしたが、次にいつ行けるのか分かりませんので、行きたいむねげました。

「姫様がトイレなどする訳ないでしょう。」

私の隣から、そんな声が聞こえました。

「「えっ?」」

「えっ?」

「「………………。」」

「………………。」

「いえ、私だって、おトイレに行きますよ?」

私がそう言うと、「えっ、トイレで何をするのですか?」と、驚いた様にお馬鹿な伯爵令嬢が言いました。

そんな事を言わせるつもりなのでしょうか? このお馬鹿な伯爵令嬢はっ!

私は、よく分からない危機におちいりました。

どうしましょう?


よく分からない危機に頭を悩ませていたら、お馬鹿な伯爵令嬢が崩れ落ちました。

盗賊のボス的な方も、椅子から崩れ落ちました。

何事(なにごと)かと思ったら、ローブのフードを目深まぶかかぶった人が洞窟に入って来ました。

「なんか…、危険な状態だったから、助けに来た…。」

魔術師(ふう)のそのかたは、あきれた様に、めんどくさそうに、そう言いました。

その態度に、彼の言う”危険な状態”が、先ほどのトイレの件を指しているのだと分かりました。

「ありがとうございます。」

自然と、私はお礼を言っていました。

だって、本当に危険な状態でしたからっ。

まったく、お馬鹿な伯爵令嬢はっ!


こうして私は、彼と出会いました。

『彼とは、もっと素敵な出会い方をしたかった!』と、そう思う様になるのは、もう少し後の事です。


2019.12.30 一部修正しました。

”伯爵”としか出ていませんでしたが家名を付けました。”パディカーナ伯爵家”です。

”馬鹿な”から思い付きました。(←ヒデェ)

伯爵令嬢の身長と年齢について触れている箇所を追加しました。

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