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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十四章 異世界生活編09 魔術師の街の騒動 後編 <勝負>
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63 外伝 王都のとある場所にて 裏ギルド『さきがけ』


裏ギルド『さきがけ』

この業界では中堅ちゅうけんのギルド。

今回、複数の貴族から『オークキングを持って来い。』と依頼を受けている。

オークキングを手に入れたら報酬額が一番高かった依頼主に引き渡す予定でいる。


   ◇      ◇


馬車で襲撃予定地点に行ったら、騎士団員が何人も居た。

そのまま通り過ぎて、やり過ごした。


周辺を、そのまま馬車で走る。

やはり騎士団員を多く見掛ける。

困った。

これでは予定通りに襲撃するのは難しそうだ。

どうするか考えながら、襲撃予定地点の周辺をウロウロした。


標的ひょうてきのバディカーナ伯爵の馬車を見掛けた。

予想外の場所で。

どうして南に向かっているのかは分からないが、これは好機だ。

こんな場所で襲撃を予定しているギルドなんて居ないはずだからな。

舞い込んで来た幸運に感謝しながら襲撃することに決め、バディカーナ伯爵の馬車を追った。


不自然に何度もかどを曲がるバディカーナ伯爵の馬車を追い、徐々(じょじょ)に距離を詰めていく。

まれ!」

やっと近付いたところで、道の端から飛び出して来た騎士団員に停止を求められた。

くそっ。

馬にむちを入れ、前に立ちふさがった騎士団員たちを蹴散けちらす。

ここで一気に仕掛ける!

そう思って、もう一度馬にむちを入るが、ガガガガガ!と音を立てて馬車の速度が落ちた。

後ろを見ると、馬車の車輪に鉄棒が突き込まれていた。

無理やり停止させるつもりか?!

騎士団の強引なやり方に驚いた。

回転しない車輪を引きずり、馬車の速度が落ちる。

「ヤバイ! 逃げるぞ!」

すぐに仲間たちに声を掛け、馬車から飛び降りて脇道に飛び込んだ。


少し走ると、騎士団員たちは俺たちを追うのをあきらめた。

担当するエリアが決まっているのかもしれないな。あちらこちらに騎士団員が居たしな。

逃げ切れた事には安堵あんどしたが、馬車を失ってしまった。

失敗したな。

まさか、あんな強引な手段を使ってくるとは思っていなかった。


馬車を失ってしまったので、『待ち伏せ』に方針を変える。

待ち伏せする場所を頭の中で考えながら王宮の方角ほうがくに向かった。


小走こばしりで移動していたら、目の前をバディカーナ伯爵の馬車が横切よこぎった。

ん? 何処どこへ向かっているんだ?

標的ひょうてきの馬車は王宮の方角ほうがくには向かわずに、西へ走り去って行ったのだった。


仲間たちと相談する。

あの馬車を追うか? それとも待ち伏せするか?

相談した結果、待ち伏せすることにした。

待ち伏せて襲撃した方が成功する確率が高いからだ。

既に馬車を失って計画通りではなくなっている。だから、襲撃が成功する確率がより高い方法でいくことにした。

あの馬車が何処どこに向かったのかは分からないが、王宮に行くはずなのだしな。


さらに小走こばしりで移動する。

その途中で、あわてて走って行く余所よそのギルドの連中を何度か見掛けた。

騎士団に追われているのかと思ったが、どうやらそういう訳ではない様だ。

どういうことだ?

標的ひょうてきの馬車を探し回っているのか?

先ほど見掛けた標的ひょうてきの馬車を思い出す。王宮とは違う方角ほうがくへ走り去って行った馬車を。

おとりの馬車を走らせているのだろうか?

でも、あの馬車には護衛たちが並走していた。

”護衛込み”でおとりなのか?

勝負に賭かっている物を考えれば、それをするだけの価値は有るな。

おとりの存在は厄介やっかいだが、簡単に見分ける方法なんて無いだろう。

見分けるのはあきらめて、運に任せよう。


待ち伏せをする地点まで来た。

この近くでも、走り回る余所よそのギルドの連中を何度か見掛けた。

どうなっているんだ?

ここで待ち伏せをして、本当に上手うまくいくのだろうか?

俺は不安になった。


もう一度、仲間たちと相談する。

仲間たちも、ここまで来る途中で見た異常な状況に戸惑とまどっていた。

余所よそのギルドの連中は、待ち伏せをあきらめていた様に思えた。

彼らが待ち伏せをあきらめるのも理解できる。

俺たちが二度見掛けた標的ひょうてきの馬車は、二度とも王宮には向かっていなかったのだしな。

標的ひょうてきの馬車は、本当に王宮に行こうとしているのだろうか?

その事にすら自信が持てなくなった。

どうすべきだろうか?

さらに仲間たちと話し合った。

話し合った結果、俺たちも馬車を追い掛ける事にした。


標的ひょうてきの馬車を探して、王都を走り回る。

だが、見付けられない。

それも当然だろう。

何処どこに居るのかも、何処どこに向かっているのかも分からないのだからな。

それでも俺たちは王都を走り回った。


駄目だ。

襲撃が上手うまくいく気がしない。

そう思ったが、足はめない。

俺たちは王都を走り回る。

もう一度、幸運に巡り合う事に期待して。



気が付いたら、西の貴族街の近くまで来ていた。

ここからならクラソー侯爵邸が近いな。

標的ひょうてきを変えるか? クラソー侯爵の馬車に。

バディカーナ伯爵の馬車を襲える気がまったくしないしな。

依頼は『オークキングを持って来い。』だから、どちらから奪ってもいいのだしな。

そうしよう。

俺たちはクラソー侯爵邸の方向に向かった。


クラソー侯爵邸に向かっていると、護衛たちが並走している馬車がこちらに向かって来るのが見えた。

クラソー侯爵の馬車だ。よし、やるぞ!

場当ばあたり的な襲撃だが、ここで仕掛ける!

散開して馬車が近付くのを待つ。

馬車が近付いて気が付いた。この馬車はバディカーナ伯爵の馬車だ!

どうしてこんな場所に?!

理由は分からなかったが、そんな事は関係無い。

馬車を襲って、オークキングを奪えばいいだけだ!

俺たちはバディカーナ伯爵の馬車に仕掛けた。



バディカーナ伯爵の馬車に仕掛けたが護衛たちに蹴散けちらされた。

万全な状態でもなかったし、計画なんてものも無かったしな。

早々(そうそう)あきらめて逃げた。

…依頼は失敗だ。


意気消沈いきしょうちんして帰路きろく。

目の前の交差点を、護衛が並走している馬車が横切よこぎった。

クラソー侯爵の馬車だった。

疲れ切っていた俺たちには、その馬車が通り過ぎて行くのをただ眺めていることしか出来なかった。


疲れた体を引きずるようにして歩く。

アジトまでもう少しだ。

アジトに帰ってノンビリしたい。

そう思いながらダラダラ歩く。


かどを曲がると、ここらでは見掛けない様な娘たちが歩いていた。

彼女たちに一瞬意識が向いたが、『早くアジトに帰ってノンビリしよう。』と思い、そのまま彼女たちとすれ違った。

「………。(ぼそっ)」

何か話し声が聞こえた気がしたが、気にせずにアジトに向かって歩く。

今日は本当に疲れたなー。


ドガッ! ドガッ!


「ぐはっ!」、「ぐふっ!」


?!

その音にあわてて振り返る。

振り返った先には、地面に倒れる仲間と左右に吹き飛ばされる仲間たち。

それと、こちらに向かって来る青い服を着た小柄こがらな少女の姿が見えた。

何処どこから現れた?! 何者なにものだ?!

一歩後ろに下がり、すぐにもう一歩後ろに下がる。が、青い服の少女がそれよりも速くみ殴り掛かって来た。


ドガッ!


「ぐはっ!」


重いその一撃を受けて、俺は気を失った。




< 王都のとある場所にて。あるメイド視点 >


………ドサ


殴り飛ばされた最後の一人が地面に落ちた。


「やっぱり裏ギルドの『さきがけ』ですね。」

先に倒した男たちを確認していた、途中から合流してくれた裏ギルドにくわしい仲間がそう言ってくれた。

青いワンピースを着たとおさんがとおになってしまう事態は避けられた様だ。

その事に安堵あんどした。


でも、やっぱり後続には仕事が無かったね。

ゴーサインが出ると同時に飛び出して行ったからね。皆でかこんでいたのに。

切り込み隊長さん、やる気が有り過ぎである。


それと、以前よりも手数てかずが増えていたね。人数が多くてもまったく関係無かったし。

ケイトと練習した成果なのだろうか?

「ケイトに遊ばれ…ゲフンゲフン。ケイトに遊ばれまくっていた成果が出たねっ。」

仲間の一人が、言い直すフリをしながらまったく言い直さずに、そんな事を言った。

「「「うんうん。」」」

そして、その言葉にうなずく私たち。

「フガーーーッ!」

そして、そんな私たちにご不満な様子をあらわにする、青いワンピースを着たとおさん。

グーにした両手をブンブンと上下に振る様子が可愛かわぎである。(むはー)


「早くしばってー。しばり終わったら、こいつらのアジトに行くよー。」

「「「はーい。」」」

しばって、かついで、私たちは彼らのアジトに向かった。


アジトに踏み込んだ。

人が飛ぶのを見るのは、今日、何度目かなぁ?(遠い目)

そして、ここでも後続には仕事は無かった。

やっぱり、切り込み隊長が強過つよすぎる。

もう、切り込み隊長だけ放流しとけばいいんじゃないかな?

それだけで裏ギルドが絶滅してしまいそうだ。(苦笑)


切り込み隊長が殴り倒した男たちをロープでしばってころがす。

外で倒して運んで来た男たちも、ここにころがしておく。

後は、騎士団にお任せだ。


「最後にまた予定外の仕事が入っちゃったけど、これでおしまいにして帰るよー。」

「「「はーい。」」」

ふぅ。誰も怪我けがをせずに仕事が終わったね。

まぁ、全部一人が一撃で殴り倒していただけだったしね。

切り込み隊長が強過つよすぎである。

でも、そのおかげで仕事が楽だったね。(ニッコリ)


仕事を終えた私たちは、ノンビリと王宮に向かう。

もちろん、青いワンピースを着たとおさんを皆でかこみながら。



王都で裏ギルドの連中が右往左往うおうさおうしている様子と、標的ひょうてきの馬車に馬車をぶつけて襲撃する裏ギルドが現れなかった理由を描いたお話でした。


またまた、クーリのとおっぷりが光ってうなとどろさけびました。(意味不明)

取り敢えずクーリを放流しておけばオチに使えるのです!(←開き直んなや!)

ごめんなさい。クーリをオチに使うのは今回で最後です。クーリは(●●●●)なっ。(←コイツ完全に開き直ってやがるぜ…)



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