表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十四章 異世界生活編09 魔術師の街の騒動 後編 <勝負>
284/400

56 外伝 王都のとある場所にて 裏ギルド『闇鳥』


裏ギルド『闇鳥やみどり

この業界ではそろそろ中堅ちゅうけんになろうかというギルド。

今回、バディカーナ伯爵側の貴族から『相手からオークキングを奪って来い。』と依頼を受けている。


   ◇      ◇



「相手側のお貴族さん(クラソー侯爵)は、オークキングを狩るのに成功したらしいですぜ。」


部下の一人がそんな情報を持って来た。

ほう。

「そのオークキングは何処どこに?」

「昨日、王都の屋敷に持ち込まれたそうです。『昨夜から盛り上がっている。』とも。」

「”ウラ”は?」

「盛り上がっている様子はありませんでした。また、食材は運び込まれている様ですが、勝負の後にパーティーを開く予定だったと考えればおかしくはありませんね。それと、この情報の出処でどころが不明ですので、『”ウラ”が取れた。』とは、とても言えませんね。」

ふむ。怪しいな。

「引き続き、情報を集めろ。」

「分かりました。」


部下を下がらせ、一人になって考える。

今の情報は怪しかったな。そもそも『オークキングを狩るのに成功した。』なんて情報をわざわざ外に広めるとも思えんしな。

しかし、この怪しい情報を、ただ『怪しいから』という理由だけで無視する訳にもいかない。

怪しい情報が真実だったり、正しいと思った情報が誰かの仕掛けた罠だったり。そんな話がこれまでいくらでも有ったのだからな。それが、この業界なのだ。

『誰が』、『何の為に』、『誰に』、その情報を流したのかについては、特に注意深く吟味ぎんみしなければならない。

だが、『情報を吟味ぎんみし過ぎて出遅でおくれてしまった』なんてことも有ってはならない。

出遅でおくれて仕事に失敗なんかすると、『せっかく有力な情報を教えてやったのに!』とか文句を言って、如何いかに無能かを触れ回って足を引っ張ろうとするヤツが何処どこからともなく現れるしな。

この業界は、本当に厄介やっかいなのだ。


この怪しい情報は、誰が流したものなのだろうか?

相手側(クラソー侯爵側)がこの情報を流す理由なんて無いな。情報が正しくとも違っていたとしても。

むしろ、味方側(バディカーナ伯爵側)の者が流した可能性の方が高そうだ。

今回の仕事は、大勢おおぜいのお貴族さまから同じ依頼が出されていて、その所為せいで多くのギルドでわずかな獲物を奪い合う状況になってしまっている。

同業者をく為におかしな情報を流す者が、きっと大勢おおぜい居ることだろう。


今回は、いつもとはまったく違う異常事態になってしまっている。

今回の”勝負”の為にルールが作られ、勝負を仕掛けられた側に協力する『協力者』なんてルールが作られたことが、こんな異常事態を引き起こした原因なのだろう。

協力者となったお貴族さまは、協力を申し出た以上、後で『何もしていなかった。』なんて言われるのをおそれたのか、裏ギルドにオークキングを持って来る様に依頼をした。

その情報が流れると、それに対抗する様に、勝負を仕掛けた側も裏ギルドにオークキングを持って来る様に依頼をすることになった。

その所為せいで、オークキングを奪うことが難しくなってしまっている。

しかも、そんな状況を自分たちで作り上げておいて、『確実に持って来い!』なんて念を押してくる。

もし、オークキングを手に入れることが出来て、それで勝負に勝利をもたらせば、その謝礼は莫大ばくだいな物になると欲に目がくらんで必死なのだろう。

何しろ、爵位や領地が賭けられている勝負なのだからな。


しかし、仕事が有るのはがたいのだが、大勢おおぜいのお貴族さまから同じ依頼を出されるのは勘弁かんべんしてほしいな。

まわりが敵だらけになってしまって、本来の仕事以外に無用な手間が掛かってしまうのだからな。

今回の様な異常事態は、これっきりにしてほしいものだ。



お茶を飲んで一息ひといきつく。

一度、頭の中をスッキリさせてから、もう一つ気になっている事を考える。

『国はどう動くのだろうか?』と。


今回の仕事のカギは国が握っている。

俺はそう思っている。

今回の勝負の為に、わざわざルールを作ったのだ。

ポーションの問題を引き起こしていて、その所為せいで勝負を仕掛けられることになったクラソー侯爵。そのクラソー侯爵が勝負に負ける様に国が誘導していると考えるのが当然だ。

と、なると、国があの怪しい情報を流した可能性も有るのか?

だが、国が怪しい情報を流さずとも、多くのギルドがオークキングを奪おうと動くのだ。

国がそんな危険をおかす必要なんて、そもそも無いだろう。


仮に、国が情報を流したとすると、その目的は『同士討ち』や『混乱』か?

オークキングを奪おうとする者たちをあらそわせたいのか?

そんな事をすれば、王都を混乱させてしまうだろう。

国がしていい事ではないな。俺みたいな奴の言うセリフではないが。


ふと、別の可能性が脳裏に浮かんだ。

裏ギルドの者たちを集める為?

………なるほど。

クラソー侯爵のところに裏ギルドの者たちを集めて、一網打尽いちもうだじんにしたいのか。

それならば、国があの怪しい情報を流したとしてもおかしくはないな。

と、なると、あの勝負のルールを作ったのも、この異常とも言える状況を作る為だったのか?

そもそも、あのルールの中で王都内での妨害行為を禁止していないこともおかしいのだ。

『国が何かをたくらんで、わざとそうした。』と考えるのが妥当だとうだろう。

国がそういう意図いとで動いているのならば、慎重に行動しなければならないな。


きっと国は、オークキングを奪わせるまでは包囲するだけにとどめておくのだろう。

そして、奪い合わせて疲弊ひへいしてから騎士団員たちで取り押さえるのだろう。

襲撃が何回行われることになるのか分からないのだ。騎士団員たちをなるべく疲弊ひへいさせないように動かすだろう。

お貴族さまをエサに使うのだ。不測の事態が起きてしまったら国も困るだろう。

国は、上手うまく騎士団員を使ってクラソー侯爵に勝負に負けさせると同時に、裏ギルドの者たちを大勢おおぜいとらえることを目論もくろんでいるのだろう。


だが、そう上手うまくいくか?

騎士団の上層部には貴族と繋がっている者が多く居るのだ。

国の意図いとした通りに動かない騎士団員も居るのではないか?

いや、目の前にぶら下がっている手柄てがらをライバルに取られるくらいなら、自分たちで取りに行くか…。

それに、大勢おおぜいの騎士団員が居る前でおかしな行動をすれば目立ってしまうしな。

お貴族さまをエサにした状態でおかしな事をして、それで、もしそのお貴族さまに何かあれば大事おおごとだ。

国の意図いとした通りに騎士団員たちは動かざるを得ないだろう。


当日の現場はきっと大混乱になるな。裏ギルドと騎士団の者たちで。

その混乱にじょうじて、獲物を奪えたりしないかな?

…いや、難しいな。

きっと、騎士団員たちで取り囲むだろうしな。

取り囲まれたら、それでお終いになってしまいそうだ。

下手へたに近付く事さえ危ないかもしれない。

危ない事は他のギルドに任せてしまおう。


今回は、獲物を狙うギルドがとても多いのだ。襲撃が一回で済むはずがない。

何回も仕掛けていれば、誰かが襲撃を成功させるかもしれない。

他のギルドの者がオークキングを奪うのを待ち、奪って逃げた者から奪うことにしよう。

うむ。

今回の仕事は、国が動いていて危険が多いのだ。

慎重に動くべきだろう。


だが、そうは言っても、それはそれで簡単な事ではない。

オークキングを誰かが奪い取ったとしても、それを、『どのルートで』、『誰に渡すのか』、の予測がまったく付かないのだから。

それに対応する為には、監視する者を大勢おおぜい配置して見失みうしなわないようにしなければならない。

監視するだけでもかなりの人員が必要になってしまうし、オークキングを奪う為にも十分な人員が必要になるのだ。

人員を無駄無く配置する事が、今回の仕事を成功させる上で何よりも重要になるだろう。

むずかしいが、やり遂げてみせるぞ。

すべてのギルドをいて、オークキングを奪ってやろう。

そして、俺たちのギルドの名を上げてやるのだ。



仕事の当日の朝。

アジトに部下が駆け込んで来た。

「騎士団が道を封鎖しています。何カ所も。」

「なに?」

詳しく聞くと、騎士団が道をいたるところで封鎖しているとのことだった。

ふむ。

国は、馬車が進む道を限定させることで、”あみ”を張る場所を少なくしたいのだろう。

どうやら、国は本気で裏ギルドを潰しにきているようだ。

やはり、今回の仕事は慎重に動かなければならないな。


だが、俺たちの作戦に大きな変更は無い。

直接獲物を狙うのは危ないから、獲物を奪い取った奴から奪うことにしているのだからな。

むしろ、監視する範囲をせばめられるので、道を封鎖してくれるのならば俺たちには都合つごうが良いな。


部下たちに道の封鎖状況を調べさせ、人員の配置を見直した。

既に現場で配置に就いている者たちに変更を伝える為に、部下たちを送り出す。

ふぅ。

当日の朝になってバタバタしてしまったが、こんな事はよく有ることだ。

むしろ、こういう時こそが、上に立つ者の腕の見せ所だ。

そう思うと、俺に良い流れが来ている様に感じるな。

うむ。


俺は、一人になったアジトで吉報きっぽうを待つ。

待ちながら、今回の仕事のことを考える。

今回の仕事は”他人まかせ”な部分が多いが、今回ばかりは仕方が無いな。

何しろ、国が本気で裏ギルドを潰しにきているのだ。

この状況ならば、とらえられずに生き残るだけでも十分な成果になる可能性だって有る。

そう考えれば、慎重に動くことにした俺の判断は正しかったのだろう。

今回の仕事は上手うまく気がするな。良い流れが来ているし。

うむうむ。

俺は、上機嫌で作戦の成功を願い、ノンビリと待つことにした。



人の気配が近付いて来る。

仕事が終わるのには、まだ早いだろう。

また何か起きたのか?

るな。今回は、色々と異常事態なのだしな。

だが、何が起きようとも上手うまく乗り切ってみせる。

今日は、俺に良い流れが来ているのだしなっ。

うむうむ。

俺はドアを見詰めながら、そいつがやって来るのを待った。


ドアを開けて入って来たのは、見知らぬ少女だった。

この場に不釣り合いな、青いワンピースを着たお人形の様な少女だ。

あまりにも予想外な人物の登場に、驚いて声が出ない。

その少女は、不自然なほど素早い動きで俺に近付くと、いきなり殴り掛かって来た。


ドガッ!


「ぐはっ!」


とんでもなく強烈な一撃を受けた俺は、訳が分からぬまま意識を失ったのだった。




(数日後の話)

慎重に動くことにしていた。

その判断に間違いは無かったと思う。

ただ…。

アジトを襲撃されるなんて思っていなかっただけだ。


外に出ている者が多ければアジトの守りが薄くなるのは当然だ。

だが、当日の騎士団に裏ギルドのアジトの制圧にける人員の余裕なんて有るはずがなかった。

だから油断していた。

まさか、裏ギルドのアジトを狙う裏ギルドが有ったとは。

怪しい情報の出処でどころだとか、獲物を奪う方法だとか、人員の配置がどうこうだとか…。きっと、そういう話ではなく、依頼を受けた時点でこうなる事が決まってしまっていたのだろう。

良い流れが来ていると感じていたのに…。


しかし、あれは何処どこのギルドの者だったのだろうか?

見た目にはんして、とんでもない手練てだれだった。

あれ程の手練てだれが居るギルドならば、直接オークキングを狙うことだって出来ただろうに。

裏ギルドを襲うのではなく。な。

それとも、獲物を奪い合うあの状況をきらって、より成功確率が高い別の依頼を受けたということなのだろうか?

ふむ。

俺は慎重に動いたつもりだったが、『あの依頼を受けない』という選択こそが最善だったのかもしれないな。

報酬がかなり良かったし、依頼内容に不振な点も無い、まともな依頼だった。

だから、あの依頼を受けてしまった。『依頼を受けない』という選択肢を思い浮かべるまでもなく。

失敗だったな…。


いや、そんな事は、今更いまさらどうでもいいか…。

これから先のことを考えよう。

うむ。

だが、一体いったい、いつになったら外に出られるのかな?


この留置場から。


クーリの被害者、二人目のお話です。


(設定)

(裏ギルドのアジトを狙う裏ギルド?)

もちろんメイドさんたちです。

裏ギルドのアジトを強襲して制圧。制圧したアジトは騎士団に任せ、戻って来た者たちも騎士団員たちが待ち伏せて一網打尽いちもうだじんにする予定です。

裏ギルドの者たちは、『大勢おおぜいの騎士団員たちが動員されることが予想されているこのタイミングで、多くの裏ギルドのアジトの制圧にける人員など居るはずがない。』と油断していました。

王都内での妨害行為を禁止しなければ、多くの裏ギルドが王都に集まって襲撃をたくらむと考えて、あえて禁止にしなかった理由です。多分たぶん?(←おい)


ちなみに、このお話と前の話の裏ギルドが、クーリたちに襲撃された理由は、『馬車を襲撃しない』と予測されていたからです。

馬車を襲撃した者は、現場で騎士団員たちがとらえる計画になっています。

ですが、『オークキングを奪い取った者から奪おう』と計画している裏ギルドまでは手が回らないと思われたので、そういった裏ギルドは先にアジトを制圧して、帰って来たところを取り押さえることにしたのです。

クーリと同行しているメイドの一人が『後続の仕事不足が心配になる』とか文句を言っていましたが、出払ではっている者が多くてアジトに人が少ないのは、計画を立てた”上の人”にとっては計画通りのことでした。

書いた人には全然計画通りではなかったのですがっ。(←それはアカンヤツやで!)

さぁ、だんだんと危なくなってきました! F1も始まったしな。(←おい)

俺、この話をUPしたら昨夜のレースのハイライト動画を見るんだ。(←ヤ・メ・ロ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ