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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十四章 異世界生活編09 魔術師の街の騒動 後編 <勝負>
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40 王宮での出来事01 ある報告

オークキングの討伐に失敗して敗走する『魔術師の街』サイドの者たち。

クラソー侯爵の娘クララにオークが迫る。

だが、それをケイトが倒した。

『『鉄壁』のケイト』がその場に現れた理由。

それは、大臣の元にもたらされた”ある報告”が原因だった。


< 大臣視点 >


執務室で部下から報告を受けました。

最優先で探させていた人物を探し出すことが出来たという報告です。

「よくやった!」

思わず、大きな声が出てしまいました。

驚いている部下から視線をらしつつ報告書を受け取り、イスに座り直します。

部下を下がらせ、一人になった私は報告書をじっくりと読み始めました。


我々が最優先で探させていた人物。

それは、ダンジョンマスターであるダーラム殿の子孫です。

初代国王グラムと共にこの国を作った、建国の功労者ダーラム殿。

彼が、ダンジョンマスターとなって存命しているという情報がナナシ様からもたらされた。霊薬れいやくと一緒に。

ダンジョンマスターとなっているダーラム殿とは是非とも友好的な関係を築いておきたい。

そう考えるのは当然のことです。

その為に我々は、消滅したダーラム家を再興さいこうしたいと考えたのでした。


ダーラム家。

それは、ダーラム殿のご子息しそくが成人した時に創設された家でした。

ダーラム家の者たちは国につかえ、王宮で働いていました。

ですが、”ある噂”が広まった事をけに彼らは排斥はいせきされ、王宮を去っていきました。

その”ある噂”とは、『国王グラムは、ダーラムに裏切られてダンジョンで殺害された。』というものでした。

その様な事実が存在しない事は、王宮に残る『ダンジョン攻略に関する報告書』から明らかです。

報告書に残されている、ダンジョン攻略に参加した者たちの証言の中に、その様な事をにおわせるものなど一つも無かったのですから。


それなのに、ダーラム家の者たちは、そのおかしな噂を喧伝けんでんされ王宮から排斥はいせきされ、さらにダーラム家も他家に吸収されて消滅してしまいました。

居場所を失ったダーラム家の者たちは、ケイニル王国にびたのだそうです。

それらの出来事が、貴族たちの権力争いに巻き込まれた結果だったことが、最近になってから判明しました。

グラスプ元公爵家から没収した資料を調べたことで。

誰が主導したのかまでは判明していませんが、その事は今はどうでもいいでしょう。

今、大事だいじなのは、ダーラム殿の子孫の所在しょざいを探し出すことなのですから。

ダーラム家を再興さいこうする為に、なんとしても探し出したい。

その為に、ケイニル王国にも人を派遣して調べさせていたのでした。


今回の調査によって、ケイニル王国で暮らしていたある女性がダーラム殿の子孫であったことが判明しました。

彼女が商人の男と結婚して、この国に移り住んでいたことも。

既に故人こじんとなっていた彼女でしたが、三人の子を残し、孫も居ることが分かりました。

その孫の内の一人が魔術師である事も。

朗報です。

ダーラム殿は魔術師だったので、再興するダーラム家の当主には魔術師を据えたいと考えていましたので。

それに、ダーラム家を再興する為には、ダーラム殿に掛けられた汚名おめいそそぎ、おとしめられた魔術師の地位を向上させる必要も有るのです。

その事は、姫様の夫であり、魔術師でもあるグラストリィ公爵の地位向上にも繋がる為、王妃様も強く望んでおられているのです。

この報告書の内容は、考え得る最高の状況と言って良いものでした。


私は上機嫌で報告書を読み進めます。

ですが、魔術師だというその孫の名前を見て…。


私は固まりました。



その者の名前を私は知っていました。

親が、領地持ちの貴族でしたので。

その事も朗報と言って良いでしょう。

その者にダーラム家を再興させた際に、親の領地を与えられる可能性が有るのですから。

考え得る最高の状況。…のはずでした。


彼女の親が、現在進行中の”あの事案”の当事者でなければ。



嫌な予感がします。

血の気が引く感覚があります。

この感覚がある時は注意が必要です。今までの経験上。


私は、この報告書を持って王妃様の執務室へと走りました。



王妃様に面会を求め、すぐに会っていただけました。

ダーラム殿の子孫が見付かった事を報告すると、王妃様は一瞬笑顔になられましたが、彼女の名をげるとすぐにメイドに指示を出された。

「メイド長を呼びなさい! 作戦部長も!」

それを聞いた私は、彼女が今、何処どこに居るのかをさっしました。

そして、私が懸念けねんしていた最悪の状況に彼女がいる事も。


彼女は、オークキングの討伐に参加しているのです。

母親が仕掛けられた”勝負”に勝つ為に。


彼女に死なれてほしくない。

生きて帰って来てほしい。


彼女…。


クララ・クラソーには。


2020.07.18 修正

大臣の口調を全面的に見直しました。

この章の『大臣、勝負のルール案を考える』での口調に統一しようと思います。

ご迷惑かけて申し訳ありません。

お話の内容は変わっていませんので、改めて読み直す必要はありません。

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