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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十四章 異世界生活編09 魔術師の街の騒動 後編 <勝負>
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39 勝負15 『魔術師の街』サイド 再戦04 メイド隊隊長視点


メイド隊

 『魔術師の街』がわの者たちの妨害の為に派遣されている。

 メンバーの半数は、前回の”勝負”の時と同じメンバー。

 隊長は同じ人。カーティーは今回は参加していない。


  ◇     ◇


私たちは、オークキングの討伐に向かった『魔術師の街』がわの者たちを監視している。

いつもの様に、魔道具で姿と気配を消しながら。

私たちの任務は、彼らを妨害して”勝負”に勝たせない事だ。

だが、私たちが何もしなくても、彼らは失敗し、敗走した。

今回も。

先日の戦いもひどかったが、今回はそれよりもひどいものだった。

敗走する彼らを追いながら、私たちは監視を続ける。


先日の戦いでは、魔術師たちが逃げ出した後、冒険者たちのリーダーの指揮のもと、残された者たちが連携しながら街まで撤退した。

そのお陰で、大勢おおぜいの者たちが生還できた。

だが今回は、冒険者たちも魔術師たちも我先われさきにと逃げ出した。

連携を取れなさそうな彼らが無事に街まで辿たどけるのか少し心配だ。

先日の撤退の時に指揮をっていた冒険者が今回は来ていなかったしな。

私たちは、最後尾になってしまっている指揮官と彼の護衛たちが敗走するのを追った。



指揮官を護っていた護衛たちがオークどもと戦闘になった。

指揮官を逃がす為に足止あしどめをするつもりなのだろう。

私たちは指揮官を追う。

ここにとどまって彼らの戦いを見ている理由なんて無いからな。

指揮官の後を追って、街まで帰ろう。


指揮官が二人組の女性を追い抜いた。

これで彼女たちが最後尾になった。

二人の内の一人は領主の娘だ。

彼女には護衛らしい護衛は付いておらず、魔術局の者らしき魔術師が一人付き添っているだけだった。

領主の娘は母親から遠ざけられていると聞かされていたが、さすがにこれはどうかと思う。

そんな彼女たちを、オークが一体追っている。

彼女たちが危ないな。

だが、私たちの任務は『『魔術師の街』がわの妨害』だ。

可哀想かわいそうだが助ける訳にはいかない。見殺みごろしだ。


二人の前を走っていた指揮官がころんで、彼女たちに追い抜かれた。

立ち上がって、彼女たちの後を追って行く。

あっ。

あの指揮官が、領主の娘の服をつかんで、彼女をころばせた。

あいつは、領主の娘を犠牲にしてでも自分は生き残るつもりの様だ。

ムカついた。

ムカついたので、つい、【バインド】でころばせて…、いや、ただころんだダケダ。

ウン。


領主の娘はうずくまったまま立ち上がらない。

どこか怪我をしたのか?

そこへオークが近付いて行く。

彼女たちを見殺みごろしにする事に既に決めていたのだが…。

心の中で少し葛藤かっとうしていたら、他にも足音が聞こえる事に気が付いた。

何だ?

足音のする方へ視線を向けると、東の方角からもオークが一体やって来た。若い冒険者を追いながら。

若い冒険者は、オークに追われて逃げ回っていた様だ。

彼は、ころんだままの指揮官の前を横切り、そのまま走り去って行く。

彼を追っていたオークは…。

ころんだままの指揮官に標的を変えて襲い掛かった。

ドガッ!!

「ぐはっ!」

指揮官がオークに()ばされた。

さらに、踏まれ、もう一度()ばされて、姿が見えなくなった。

因果応報いんがおうほうだな。

そのオークは、先ほどの若い冒険者が走り去って行った方へ走って行った。


視線を領主の娘たちの方へ戻す。

うずくまったままの領主の娘と、オークに小剣で立ち向かっている魔術師の女性の姿が見えた。

魔術師の女性は何とかオークとやり合えているが、ダメージを与えられている様には見えない。

倒す事は諦めて、時間を稼いで領主の娘を逃がすつもりなのだろう。

その様子を眺める。

剣術の基本は習っている様だが、あれでは、いずれオークにやられてしまうだろう。

助けようと思えば助けられるのだが…。

私たちの任務は、『『魔術師の街』がわの妨害』だからな。

見殺みごろしにせざるを得ないな…。

その事を残念に思いながら、オークに小剣で立ち向かっている魔術師の女性を眺める。

彼女の剣の振り方と体の使い方を見ていて…。

私は気付いた。

あいつは同僚だ!

面識めんしきの無い者だが同僚に違いない!

助けよう!


あわてて、彼女のところに向かって走る。

揺れる視界の中で、彼女が尻餅しりもちをついたのが見えた。

そこへ、オークが腕を振り下ろす。

ヤバイ!

だが、彼女は振り下ろされた腕をかわした。

ふぅ。

しかし、次の瞬間。オークが振った腕が彼女をはじばした。

ああっ!

はじばされた彼女は倒れたまま動かない。

気を失っているだけなら良いのだが…。


彼女をはじばしたオークは、彼女から離れて領主の娘の方へ歩いて行く。

私は、オークも領主の娘も無視して、倒れたまま動かない彼女の元へ行く。

領主の娘には気の毒だが、見殺みごろしだ。

同僚(多分たぶん)の方が大事だいじだし、領主の娘を助けるのは私たちの任務には含まれていないのだからな。


倒れている彼女のそばまで行き、様子をる。

気を失っているだけの様だ。

良かった。(ホッ)


グボッ!

バキッ!


ホッとしていた私の背後から、そんなイヤな音が聞こえた。

見殺みごろしにした者の最期くらいは見届けてやろう。』と思い、音がした方を振り返る。

振り返った視線の先には…。


先ほどのオークがゆっくりと倒れていくのが見えた。


は?

何が起きた?


倒れたオークの向こうに、人が立っていた。

見覚みおぼえの有る、いや、見慣みなれた服を着ていた。

メイド服だ。

王宮の。


何故なぜここに?

誰だ?

横顔を確認する。


そこには…。


『『鉄壁』のケイト』が立っていたのだった。


(設定)

(メイド隊の人たちがアンナ(アナ)に気付かなかった理由)

『魔術局に潜入調査をしている者が居る』ことまでは知らされていました。

ですが、その者がオークキングの討伐に参加するとは誰も思っていませんでした。

また、アンナは新人で、かつ、一般メイドから異動になった所為せいもあって顔合わせの機会が少なく、この部隊には面識めんしきのある者が居なかったのです。

道中どうちゅう、アンナが闇討やみうちをしていましたが、その時には『自衛の為には必要かなー。』と、たいして気にされていなかった為、その時には気付かれませんでした。

もし、アンナが【巨乳術】を習得しゅうとくしていれば、闇討やみうちの時に気付いてもらえてたかもしれません。

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