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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十四章 異世界生活編09 魔術師の街の騒動 後編 <勝負>
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33 ナナシ、シルフィと卓球をして遊ぶ


面白おもしろい物が出来ました。』


ソファーでくつろいでいたら、そう【多重思考さん】に頭の中で言われた。

面白おもしろい物かー。

そう言われて何となく身構みがまえてしまいますが、それは俺の所為せいではないと思います。


さて。

【多重思考さん】たちは、一体いったい、何を作ったのかな?

『今から出しますので、ひらを上にして手を出して下さい。』

俺の心配を余所よそに【多重思考さん】がそう言う。

少し悩んでから、ひらを上にして手を出すと、次の瞬間、ひらに軽い球状の物体が置かれた。

ん? これは何かな?

その直径4cmくらいの丸くて軽い球状の物体を、指でつまんで顔の前に持ってきてじっくりと見る。

知っている物の中でコレに一番近いのは、ピンポン玉だろうか?

材質が何なのか分からないが、プラスチックに近い質感の様に見える。

さらにじっくりと見るが、これの材質が何のか分からない。

だが、きっとプラスチックではないのだろう。

石油を掘り出して何かを作っていたら、きっと報告されていただろうからね。…多分たぶん

『これは、魚の魔物のうろこを変形させて作ったピンポン玉です。』

ほう。

そう言われて改めてじっくりと見てみると、確かにうろこっぽい質感に見えるね。

なかなかピンポン玉に近い見た目をしている。でも、ピンポン玉の様に跳ねるのだろうか?

テーブルの上に落として試してみよう。

手を伸ばして、テーブルの上にピンポン玉(←もう、こう呼ぶことに決めた)を落とす。

カッ カッ カッ カッ

おお。よく跳ねるね。

その跳ね方は、かなりピンポン玉に近いものだった。

良い出来のピンポン玉が出来た事に、俺は嬉しくなった。(ニッコリ)


ピンポン玉が出来た!

と、なれば、当然、卓球たっきゅうで遊びたくなるよね!(ニコニコ)

でも、卓球をして遊ぶ為には、ラケットやら卓球台やらが必要になるなぁ。(チラッ チラッ)

遊技ゆうぎ場に、ラケットと卓球台を用意してあります。(ニヤリ)』

よっしゃあ!

やったね!

それぢゃあ、今日はシルフィと卓球をして遊ぶことにしよう!(ワクワク)

先日から時々微妙な表情をするシルフィに気分転換をしてもらうのに、きっと卓球はちょうどいいよね!(←誰の所為せいで微妙な表情をしていると思っているのかな?)

と、そう思ったんだけど…。

会話の中に初めて聞く単語が(また)有ったので、それについて【多重思考さん】に訊く。

『『遊技ゆうぎ場』って、なに?』

『文字通り遊ぶための場所です。体育館の様なものだと思って下さい。』

『体育館の様なもの』と言われて、ふと、『工房も割とそんな感じだったよね?』と思った。

そんな俺に【多重思考さん】が説明してくれる。

つくりは工房とだいたい同じで少しだけ大きくしました。今、工房は手狭てぜまになっていて、卓球を楽しむ為のスペースを確保できませんでしたので。』

【製作グループ】に何かと丸投げしているから、その作業の所為せい手狭てぜまになってしまったのかもしれないね。

ふと、【製作グループ】に何を頼んでいるのかハッキリとは憶えていない事に気が付いてしまいました。雑に丸投げしまくっていたので。(←おい)

工房については触れないでおくことにします。(冷や汗)

俺はそう思ったのだが、【多重思考さん】に説明されてしまった。

『今の工房で一番場所を取っているのは馬車の魔改造です。スプリングやダンパーの試作にサスペンションの取り付け方の検討。それと、ネジの規格化とネジを作るゴーレムの試作などもしています。』

…馬車の魔改造が、想像以上に大事おおごとになっていました。

それなら、場所を取ってしまっていてもシカタガナイデスネー。(冷や汗)

やはり、工房については触れないでおくことにします。

ええ。

”逃げ”ですが、何か?(←誰に言ってるんだよ)

不都合ふつごうな真実(笑)をこれ以上突き付けられたくないので、俺はシルフィを連れて遊技ゆうぎ場に転移します。



【目玉】に目印めじるしになってもらって、『遊技ゆうぎ場』とやらにシルフィと一緒に転移して来ました。

初めて来た遊技ゆうぎ場の中を見回みまわす。

『工房』と同じく、壁と三角屋根が在るだけのシンプルな建物です。

天井が高くて、高い位置に窓が多く在って明るいのも、工房と同じです。

ですが、床一面ゆかいちめんに板がめられている点が、工房とは違います。

あと、工房よりも少し広く、まんま”体育館”って感じがします。

天井近くのはりにボールっぽい物体がはさまっている事も含めてな!

あれはワザとそうしたのだろう。”体育館”っぽさを演出する為に。

無駄にリアルだなっ。

そんな事に呆れていたら、頭の中で【多重思考さん】に言われた。

『ボールが天井近くのはりはさまっているのは、体育館の標準装備ですので。(キッパリ)』

そうだけどさっ。確かにどこの体育館に行っても有るけどさっ。わざわざボールを作ってまで再現する必要なんて無いからねっ。

それに、ボールなんていつの間に作ったんだよっ。今、初めて知ったよ!

しかも、そのボールを初めて見るのが天井近くのはりはさまっている状態っていうのは何なんだよっ。ホントに何なんだよっ!

先日の【ネコグループ】に続いての、全力のツッコミです。

【多重思考さん】は俺の全力のツッコミには何の反応も示さずに、ボールについての説明を始めます。

『ボールは、オークの皮を薄くけずり、片面にゴムを塗った後で縫い合わせて作り上げました。ボール自体は割と簡単に作れたのですが、空気を入れる仕組みが少し厄介やっかいでした。』

そう言われてみれば、ボールに空気を入れる部分の構造なんて知らなかったな。どうなっているのかな?

そんな事を考える俺を余所よそに、【多重思考さん】は続ける。

『今度メイドさんたちにサッカーを教えてあげましょう。きっと少林〇ッカーを超えてきますよ(ワクワク)』

『やめれ。』

俺は即座にめた。

さすがに少林〇ッカーを超えることは無いと信じたいけど、あのメイドさんたちだからなー。

何が起こるか分からないよね。

危険の芽は積極的にんでいきます。うむうむ。


それはそれとして、卓球たっきゅうです。

いや、その前にこの場所についてシルフィに説明しないといけないかな?

シルフィがあちらこちらを見回みまわしているからね。

そんなシルフィに説明する。

「ここは遊技ゆうぎ場ね。森の中に作った、ちょっとしたお遊びをする為の建物だよ。」

「すごいですね。この建物もナナシさんが作ったのですよね?」

「そうだよ。」

「いつの間に作ったのですか?」

「………………。」

ちょっと返答を考えてしまう。いつの間にか出来ていたので。(苦笑)

「………スゴイデスネー。」

俺が返答に悩んでいたら、シルフィがそう言った。色々とさっした表情で。

さっしてくれた様なので、この話はサラッと流すことにします。うん。


ちょっと遠い目をしているシルフィに言う。

「シルフィと卓球たっきゅうをして遊ぼうと思って、ここに連れて来たんだ。」

「タッキュウですか?」

「そう。どんなものなのか、今からやって見せるね。」

そう言って、遊技場の中央に置かれている卓球台に近付き、卓球台の上に置かれていたラケットを手に取る。

ラケットはシェイクハンドタイプの物で、両面に茶色いゴムが貼られていた。

想像以上にラケットっぽい物になっています。

シルフィには卓球台の横に立ってもらい、【多重思考さん】が用意してくれたゴーレムと打ち合うところ見せながら説明することにします。


「こうやって遊ぶんだよ。」

シルフィにそう言って、サーブを打つ。

コッ(←ラケットでピンポン玉を打った音)

カッ(←ピンポン玉が卓球台の上で跳ねた音)

ワンバウンドした球がネットを越える。

そして、相手側でワンバウンドした球をゴーレムがかえ…、さずに、見えない壁に”コッ”と当たって跳ね返って来た。

【シールド】か【ブロック】の魔法を使った様だ。

山なりに返って来た球を打ち返す。

コッ

再び、見えない壁に当たって跳ね返って来る。

その球を打ち返す。

コッ

二回打ち返したら、ただ立っていただけのゴーレムが、暇だったのかボディビルダーの様にポーズを決め始めた。

『ムンッ』 (ムキッ)

そんな力のこもった声が頭の中で聞こえたので、跳ね返って来た球を”コッ”と打ち返しながら、頭の中で『ウザイわ!』とツッコミを入れる。

カッ、コッ、(ムキッ) カッ、コッ

カッ、コッ、(ムキッ) カッ、コッ

カッ、コッ、(ムキッ) カッ、ぱすっ。

ラリーを少し続けた後、俺は、球を手でつかんだ。

これだと、シルフィへの説明にならないから。

こんなのを見せた後で、シルフィに『こうやって遊ぶんだよ。』って言ったら、”ムキッ”とかしかねないからね。(←そんな訳ありません)

「ちゃんとラケットでかえそうなっ。」

俺はゴーレムに向かってそう言いました。キッパリと。


もう一度、始める。

サーブを打つ。

コッ(←ラケットでピンポン玉を打った音)

カッ(←ピンポン玉が卓球台の上で跳ねた音)

ワンバウンドした球がネットを越え相手側でワンバウンドした球を、ゴーレムがフワリと下から合わせる様にかえす。

コッ

山なりに返って来た球を打ち返す。

コッ

ゴーレムとラリーを続ける。

久しぶりの卓球は楽しいです。(ニッコリ)

球を手でつかんでめ、シルフィに向かって言う。

「シルフィ、こうやって遊ぶんだよ。」

「面白そうですね。(ニッコリ)」

笑顔でそう言って、シルフィが喰い付きました。

よし。

ツカミはオッケーだった様です。


シルフィにラケットを持たせて素振すぶりをさせてから、打ち合います。

最初は上手うまく打ち返せなかったシルフィでしたが、10分くらいでちゃんと打ち返せる様になりました。

時々、ラケットの振り方を教えつつ30分くらい打ち合ったら、ラケットを振る動作もかなりサマになってきました。

うむうむ。(満足げ)

途中で昼食をはさんで、夕方までシルフィと卓球で遊びました。

久しぶりにした卓球は楽しかったです。(笑顔)

球拾いをしてくれていたゴーレムたちが時々”ムキッ”とかしていましたが、俺はまったくキガツキマセンデシタ。



翌朝。

今朝も遅い時間に起きました。

二度寝にどね最高!(←ダメ人間まっしぐらです)

顔を洗って目を覚ましてから寝室に戻ると、シルフィが「ふぅおー。」とか言ってベッドの上でピクピクしていました。

多分たぶん、筋肉痛でしょう。

でも、我が妻よ…。

『ふぅおー。』はないと思うなー、『ふぅおー。』はっ。

でも、シルフィらしくはあるかな?

王女様っぽくはないけどなっ。


そんなシルフィの姿になごみつつ、『筋肉痛に【ヒール】って掛けていいのかなぁ。』とか考えました。


(ひとりごと)

『玉』と『球』が混在していて違和感を覚えるかもしれないので、その説明を。

球:『球技などに用いるボール』という意味で使っています。

玉:『ピンポン玉』という名詞の一部として使っています。『ピンポン球』と書くと何となく違和感を感じましたのでこうしました。


ナナシの日常パートは、これでお終いです。

次話は、久しぶりにあの人が再登場します。

その後、あの人の視点で『魔術師の街』サイドの再戦の様子を書いていきます。

お楽しみに。

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