07 1日目 ある者の話 カーティー01
今回の仕事は、少し変わっていた。
あるA級冒険者のパーティーを、公爵家の依頼である”オークの集落の殲滅”に向かうのを止めさせるというものだ。
きっと理由は、死なせるには惜しい人たちだからだろう。
彼らは、馬車で街を出る様なので、魔道具で姿と気配を消して馬車の屋根の上に乗り、付いて行く。
馬車は西門から出て、速度を上げていく。
風除けの魔道具も使う。
風を感じなくなった。
この仕事は、色々な魔道具を使わせてくれるので助かる。
お茶を沸かす魔道具と、お尻が痛くならない魔道具が有れば、もっと良いのに。
そんな事を考えながら、懐からクッキーを取り出して食べる。
この仕事は、毎日おやつが出るのも気に入っている。
わざわざ現場近くの街まで届けてくれるし、お菓子を作る専門の部署まで在る。
…改めて言葉にするとすごいな。
こんな職場は他に無いだろう。
…他に無いどころか、一つ在るだけでも異常な気がした。
日没まであと僅かという頃に、隣の街に着いた。
帰ったら、”お尻が痛くならない魔道具”の開発を強く求めようと心に誓う。
彼らは領主の館に行き、守衛と何やら話した後、宿の確保に向かった。
私は引き続き、姿と気配を消したまま彼らに付いて行く。
彼らの取った宿の部屋を確認したら一度離れ、離れたところから監視をする。
彼らは食事をして部屋に入って行った。
飲みに行きたい衝動を堪えて、監視を続ける。
尾行に慎重な冒険者は、部屋に入ったフリをして、別の宿に移動する事が有るからだ。
そのまま、夜中過ぎまで監視を続けた。
よし。お愉しみの時間だ。
彼らの部屋に忍び込む。
この部屋には、男が一人と女が一人。別々のベッドで寝ていた。
両方に睡眠薬を嗅がせる。
薬が効くまで、息を潜めて待つ。
よし。
やろう。
男の方のベッドに足元の方から乗る。
男のズボンを下す。
「ふっ…。」
飲みに行くのを堪える事なんて不可能だった。




