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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十四章 異世界生活編09 魔術師の街の騒動 後編 <勝負>
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27 ナナシ、シルフィにお風呂を堪能してもらったり、新たな魔道具の構想を練ったりする


かくでシルフィと二人きりでの夕食を終え、ソファーでのんびりしています。


いよいよ、シルフィにお風呂を堪能たんのうしてもらう時がやって来ました。


【多重思考さん】にお風呂の準備をしてもらいつつ、頭の中で相談する。

相談する内容は、お湯の温度調節などの『いつも魔法でしていることをどうするか?』という相談だ。

のぞきの相談ではありません。

のぞきの相談ではありません。

大事なことなので二回言いました。


普段、自分がお風呂に入る時のお湯の温度調節は、魔法で高温のお湯を作り出して足したり、水を足したりして調節している。

だが、シルフィがお風呂に入っている時は、その方法での温度調節が出来ない。

お風呂に入っているシルフィのすぐそばに【目玉】を配置しておけば、『お湯の温度を上げてほしい。』とか『下げてほしい。』なんていう要望を聞きながら温度調整をすることは出来る。

でも、そんな事をしたら、間違い無くのぞきを疑われるよね。

【多重思考さん】と相談しましたが良い方法が思い付かなかったので、のぞk…ゲフンゲフン。お湯の温度調節は諦めました。


次に、『お湯の温度を何度にするか?』を考える。

普段、自分が入っている時のお湯の温度は41から42度くらいだ。

でも、これは少し高めかもしれないね。

少し考えて、40度にしておくことにした。


次に、お風呂から上がった後の事を考える。

バスタオルが無いので。

普段は、【分離】魔法さんで体に付いた水分をのぞいているので、バスタオルが無くても困らなかった。

だから、バスタオルが無い事を気にしていなかった。

失敗したね。

シルフィの体にコッソリと魔法を掛けて水分をのぞく事は出来るけど、そうしてしまうとのぞきを疑われてしまいます。

のぞきを疑われた事がうっかりメイドさんの耳に入ろうものなら、俺が死にます。(断言)

タオルを複数枚用意する以外に、何か上手うまい方法がないか考える。

うーむ。

悩んでいたら、頭の中で【多重思考さん】に言われた。

『以前作った、『洗濯物を乾燥させる魔道具』でいけると思います。』

ふむ?

ああ。そう言えば、あの魔道具は【分離】魔法さんを使っていたね。

部屋全体に結界を張って、結界の内側の水分を【分離】魔法さんでのぞいて、のぞいた水分は指定した場所にポイする。そんな魔道具だったね。

『洗濯物を乾燥させる魔道具』を脱衣所に置いておいて、お風呂から上がった後で操作してもらえば、体の表面に付いた水分をのぞく事が出来るだろう。

そうだね。それで済みそうだね。

よし。

『洗濯物を乾燥させる魔道具』と『使い方を書いた板』を【製作グループ】に作ってもらって、脱衣所に置いておこう。

そうすれば、お風呂の準備は完了だね。

よろしく。(←相変わらず丸投げが雑です)



『『洗濯物を乾燥させる魔道具』と『使い方を書いた板』が出来上がりました。』

ソファーでしばらくくつろいでいたら、そう、頭の中で言われた。

よし。

これでお風呂の準備は完了だ。

俺はシルフィに言う。

「シルフィ、お風呂の準備が出来たからお風呂に入って。気持ちいいからきっと気に入るよ。」

「はぁ…。」

ちょっとうたがわしなシルフィのお返事です。

「お風呂の入り方を説明するね。」

そう言ってシルフィの手を取って、お風呂場に連れて行…、こうと思ったけど、着替えが必要だったね。

着替えを用意してもらって、改めて、シルフィの手を取って、お風呂場に連れて行きます。



お風呂場までシルフィを連れて来ました。

お湯が張られた浴槽よくそうの前でシルフィに説明します。

「服を脱いでこの浴槽よくそうに入って、お湯にかってのんびりすると、とっても気持ちいいんだよ。」

「………。」

「隣の脱衣所で服を脱いで、体に【クリーン】を掛けてから、お湯にかってのんびりしてね。」

「………。」

よく分かっていなさそうなシルフィを脱衣所に連れて行き、こちらでも説明します。

「脱いだ服はたなに置いてね。それと、お風呂から上がったら、この魔道具の前で『起動。』って言えば、かなくても体に付いた水分をのぞけるから。でも、この魔道具を起動させる時は、お風呂場の引き戸が閉まっている事を確認してから起動させるようにしてね。」

「…分かりました。」

あまり気乗りしていないご様子のシルフィですが、ここで鑑賞している訳にもいかないので居間に戻ります。



居間に戻り、ソファーに座ってくつろぐ。

そして考える。

シルフィは、ちゃんとお風呂に入ってくれているだろうか?

おもいのほか、シルフィの反応が薄くて、正直戸惑(とまど)った。

この国には川が無いから、お湯がたっぷりと入った浴槽を見せられて戸惑(とまど)ってしまったのかもしれないね。

この国では、贅沢ぜいたくなお湯の使い方だからね。

でも、一度体験してもらえば、お風呂の気持ち良さを理解してもらえるでしょう。


それはそれとして。

ちょっと思い付いた事があったので、頭の中で考える。

考えるのは、お風呂のお湯の温度を調節する魔道具だ。

お風呂のお湯の温度調節は、魔法で高温のお湯を作り出して足したり、水を足したりして調節している。

これを魔道具で行うようにすれば、『魔法が使えない人がお風呂に入る時でも温度調節が出来るようになる。』って思ってね。


お湯や水を足して、お湯をかき回すだけだから、簡単に出来るだろう。

お湯や水を浴槽に足す方法を頭の中で考えていたら、ライオンの口からお湯がダバダバ出る様子が思い浮かんだ。

ふむ。

いいね!(笑顔)

ライオンさんは確定として、口から出すだけでは湯量が十分ではなさそうだね。浴槽が大きいから。

『ライオンさんの口からお湯ダバダバ』は視覚効果と割り切って、それとは別に水面下にもお湯を出す口をもうけることにしよう。

お湯や水を入れるだけでなく、かき回す必要も有るから、浴槽内をグルグル回るようにお湯を噴き出させたらどうだろうか?

そうした方が良さそうだね。

それらを考えてから、魔道具の形を考える。

浴槽の一辺いっぺんの中央に、暖炉だんろの煙突みたいな感じの構造物を作り、正面にはライオンの口を設置する。水面下の両側面に穴を明けておいて、一方向へお湯や水を噴き出せば流れが生まれて攪拌かくはんされるだろう。

こんな感じで良さそうだね。

”ワード”は、「起動。」、「停止。」、「熱く。」、「ぬるく。」くらいで足りそうだね。

おもいのほか、簡単に出来そうだね。

後は、寝ている間にでも【製作グループ】に作ってもらおう。

よろしく。(←本当に丸投げが雑です)



『姫様がお風呂から上がりました。』

頭の中で【多重思考さん】に言われた。

ほう。

それなりの時間、お風呂に入っていたみたいだね。

シルフィはお風呂を気に入ってくれただろうか?

『姫様はお風呂を気に入ってくれた様です。』

そうか。それは良かった。(笑顔)

………………ん?

ちょっと気になったので、頭の中で【多重思考さん】に訊く。

のぞきなんて、してないよね?』

そう訊くと、『ふぅ、やれやれだぜ。』という感情を出しながら【多重思考さん】が言う。

『姫様には常に護衛が付いてます。』

…そう言えば、そうだったね。

それが当たり前になっていたから、すっかり忘れてたね。

その事実から、俺の脳内で導き出された事を【多重思考さん】に訊く。

『ぢゃあ…、その…。護衛の【目玉】を通して…、見てた…、ってこと?』

『………………。(ふっ)』

『その映像プリーズ!』(←おいっ!)

『それは出来ません。見てしまったら、まともに姫様の顔を見れなくなりますよ? そうしたらのぞきを疑われてしまいますよ? 素人童貞なのですから。素人童貞なのですから。素人童貞なのですから。』

何故なぜ、三回も言った?!』


シルフィが戻って来るまで、頭の中でみにくあらそいが行われました。



シルフィが居間に戻って来た。

その表情は、上機嫌な様に見える。

そんなシルフィだが、こちらを見て表情を変えて訊いてくる。

「ナナシさん、何だか疲れてません?」

「イエ、ソンナコトナイデスヨ。(グッタリ)」

グッタリしていますが、そう答えました。

シルフィは首をかしげていますが、深く追及されたくないので、お風呂の感想を訊くことにする。

「お風呂は気に入ってもらえたかな?」

「はい。とても気持ち良かったです。(ニッコリ)」

シルフィに喜んでもらえた様です。

やったね。(ニッコリ)

「ぢゃあ、俺もお風呂に入って来るね。あと、これ飲んで。」

テーブルの上に、【料理グループ】に作ってもらったみかんジュースを出しつつ、俺はお風呂場に向かいました。



お風呂を堪能たんのうして居間に戻ると、シルフィはソファーでうつらうつらしていました。

今日は、朝からダンジョンの中を歩いたり、ダーラムさんに会ったりしたから疲れたんだろうね。

俺も眠いし。

シルフィを連れて寝室に行き、ベッドに直行します。


おやすみなさい。


………ぐぅ。


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