04 1日目 ナナシサイド オーク多くね?
グラスプ公爵家と勝負をする事が決まった日の翌朝。
ベッドの中でモゾモゾダラダラしていたら【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】から報告があった。
最初の報告。
『【火属性魔法グループ】と【風属性魔法グループ】が、ダンジョンで『ヒャッハー!』してます。』とのこと。
『何で?!』という疑問を頭の中に思い浮かべるのとほぼ同時に、頭の中にその理由(=奴らの言い訳)が浮かび上がってくる。
『呪いへの対策が出来たら、確認しないといけないよね。(喜)』
『ダンジョンには、コカトリスという【石化】の呪いを掛けてくるヤツがいる。(喜)』
『対策が出来たら、そいつで確認しよう。その為にはそいつの前まで行かないとね。(喜)』
とのことだった。
『ダンジョンって何処に在るのよ?』とか、『奴らの今の状況は?』とか、『いつ、コカトリスのトコまで行けるの?』とか、『何で嬉しそうなんだよ!』とか色々思ったが、何を言っても無駄だと思ったので、次の報告を受けることにした。
次の報告。
『オークキングを8体確認しました。』とのこと。
探査系の魔法を作り出して、それを使っての成果らしい。
そして『さらに探査を続けています。』とのこと。
8体か…。意外と多いのかな?
集落のリーダーだよね? オークキングって。
集落が8つも在るのか…。
そう考えると多い気がするのだが、全滅させた方が良いのかな?
うーむ。
どうするかは、後で考えるか。
次の報告。
『”呪い対策”は、まだ検討中です。』とのこと。
次の報告。
『”空間魔法を使った結界魔法”が一応完成したので、確認をお願いします。』とのこと。
これは、【空間魔法グループ】と【結界魔法グループ】が以前から検討していたヤツだね。
この結界魔法の概要が頭の中に浮かび上がってくる。
ふむふむ。
なるほど。
実際に使う前に確認が必要だね。
でも、今回のオークキング狩りは【目玉(仮称。魔法で作られた目。正式名称まぢどうしよう)】を使ってする予定だから、俺自身に危険は無い。
だから、この結界魔法は今は必要ないから、これの確認は後回しでいいだろう。
さらに、寝る前にお願い(=丸投げ)していた、必要な準備を聞いた。
ふむふむ。
よし。起きるか。
起きて、メイドさんたちに朝の挨拶をする。
部屋付きのメイドさんに、「午前中に勝負のルールの詳細を決める話し合いが行われる予定です。」と、教えてもらった。
「大臣が上手くやってくれるはずです。」とも言われたので、安心しておこう。
目をキラッキラさせた姫様との朝食を済ませ、部屋に戻ると、昨夜頼んでおいた紙が届いていた。
それぞれ10枚ずつ有る。随分早かったね。
『昼までに各1枚ずつ有ればいいかな。』と思っていたのだが、思いの外、早く届いた。
部屋付きのメイドさんに礼を言って、受け取った。
丸められている大きい方の紙を1枚、床に広げる。
端が丸まるのを見て、『魔法で何とか出来ないかな?』と、ふと考える。
濡らして、伸ばして、乾かせばいいのかな?
霧吹きで吹く様な水は、どうやって作ればいいんだろうな?
いきなりやって上手くいく自信が無かったので、大人しく手で伸ばしました。(てへ)
床に広げた紙の真上に【目玉(仮称)】を一つ移動させ、真下に視線を向ける。
ソファーに座り目を閉じて、【目玉(仮称)】の視覚を通して床に広げた紙を見る。
【目玉(仮称)】たちを使って情報収集した、王都の北側の外壁と街道と北の森の位置関係などの光景を頭の中に思い浮かべる。
その光景を、線状に沢山並べた極々小さな【ファイヤー】の魔法で再現し、それを使って紙を焦がす事で、一気に地図を描き上げた。
引き続き、オークの集落の位置も、同様に【ファイヤー】で描き込んだ。
描き込まれた印の数は、9個。
朝一で言われた数より、1つ増えていた。
オーク多くね?
これでオークの集落の位置を描き込んだ地図が完成した。
やったね。
ふと、周りを見たら、部屋に居るメイドさんたちがビックリしていた。
そういえば、居るよね。
集中してて、気にしてなかったわ。
まぁ、いいか。
次に、オークキングの大きさを記さなければならないのだが、オークキングの大きさをどう測ろうか?
考える。
【目玉(仮称)】を二つ飛ばして、一つを足元、もう一つを頭の位置に置き、その間の距離を感覚で測る?
【目玉(仮称)】の大よその位置は感覚で分かるのだが、きちんと距離を測れるイメージが湧かないな。
足元に何かを置いて、それを頭の位置から見て、見かけの大きさ測る?
この方が、まだ上手くいく様な気がするな。
何を置くか?
いや、地面に何か描けばいいのか。
先ほど地図を描いた様に、【ファイヤー】の魔法で地面に四角でも描いて、それを頭の位置から見よう。
よし、早速、オークキングの大きさを測ろう。
そう思ったのだが、立っているオークキングが1体も居なかった。orz
もう全部殺して、【無限収納】の中に仕舞っちゃおうか…。
相手に1体も渡さなければ、勝負には勝てるよね。
いや、まだ勝負のルールの詳細が決まっていないから、全部殺しちゃ駄目だな。駄目かな? 駄目だよな?
立ったら測ろう。まだ、期日まで日数が有るしね
それまで【目玉(仮称)】で監視しておくことにしよう。
俺は、溜息を一つ吐いてから、描き上げたばかりの地図を片付けた。
ソファーに座ってボーっとしていると、廊下を監視していた【目玉(仮称)】を通して、この部屋の方へ歩いて来るメイドさんが居る事に気が付いた。
そのメイドさんは、廊下で控えている護衛のメイドさんと言葉を交わした後、ノックをして部屋の中に入って来た。
そして、俺のところまで来て、言う。
「勝負のルールの件で、大臣が呼んでいます。」
ああ、そんな話が有ったね。
それぢゃあ、行きますか。
メイドさんの後に付いて、王宮内を移動する。
部屋に居た二人の護衛のメイドさんも一緒です。
護衛のメイドさんたちは俺の前後を歩いていて、人生で初めて護衛されているこの経験に、戸惑う様な嬉しい様な、よく分からない感情が湧き上がって来ます。
部屋の前まで案内されると、俺の前を歩いていた護衛のメイドさんが、先に一人だけで部屋の中に入って行った。
警戒し過ぎなんぢゃないですかね?
その後、一拍おいて、俺も部屋の中に入った。
入った部屋は、会議室の様だ。
中央にテーブルが有り、二人ずつ向かい合って座っていた。
大臣の隣に座り、勝負のルールの説明を受ける。
ふむふむ。ふむふむ。
勝負の期日や、狩った獲物の確認場所、勝敗の決め方なんかについてはOK。
気になったのは、”妨害行為を禁止する”という項目。
気になったので、訊く。
「妨害行為をした事の証明方法って有るんですかね? また、妨害行為をしなかった事の証明方法って有りますか? 証言だけになってしまうのではないですか?」
「監視する人をずっと張り付けておくのなんて無理ですよね? 『妨害された。』と主張されたら、ずっと揉めて結論が永遠に出ないのでは? その辺、どうなんですかね?」
証言する人が嘘を吐いていないかどうかは、審問官なら分かるとのことだった。
でも、それでは不十分だろう。
「例えば、オークと戦っている時に、どこからか矢が飛んで来た。『妨害された。』と証言できて、嘘を吐いていない事は分かっても、誰が妨害したのかは分からないですよね。それはどうするんですかね?」
返答はどちらからも無かった。
こちらから提案する。
「妨害行為を禁止する場所を限定しましょう。オークキングを持ってくる場所である、王宮内での妨害行為を禁止。王宮内は人目が有るから。妨害行為を発見出来るのでは?」
「メイドさんたちは審問官の審問を拒否したりしないよね?」
護衛のメイドさんたちが肯定してくれる。
「現実的なルールにしようとすると、こうなるのでは?」
公爵家側から文句が出た。
「それでは、妨害し放題ではないか。」
「この勝負で測るのは能力の優劣でしょ。妨害を回避するのも能力。だから問題無いのでは? それに、妨害を証明する方法が無いのに禁止する方が、後で揉めることになりますよ。」
「揉めたら王女様の結婚式までに解決できないでしょ。『グラスプ公爵家の目的は王女様の結婚を妨害することだ。』なんて言われることになりますよ。」
「王女様の結婚式を中止させる原因を作りたくないのなら、揉めない方法を示してください。やり直しをする日数なんか無いんですよ。」
文句は出たが、有効な妨害禁止方法は出て来なかった。
結局、王宮内での妨害行為のみが禁止となった。
さらに、勝負のルールの詳細を聞いて、了承して、話し合いは終わった。
部屋に戻って来た。
頼んでいた肩掛けカバンが二つ届いていた。
コートハンガーに、ローブと一緒に掛けてある。
部屋付きのメイドさんに礼を言って、早速、その一つを手に取り、魔法を掛けて【マジックバッグ】にした。
よし。ちゃんと【マジックバッグ】になっているか、確認してみよう。
取り敢えず、ソファーの前に在るテーブルを入れてみる。
入った。
出す。
よし。ちゃんと【マジックバッグ】になっているね。
次は、容量の確認だな。
何を入れて確認するかな?
部屋の中に在る物で一番大きな物を考える。
一番大きな物となるとベッドかな?
寝室へ移動し、ベッドを眺める。
試しに【マジックバッグ】に入れてみる。
入った。
出す。
ふむ。
オークキングがちゃんと入るかどうかを確認する為には、このくらいの大きさの物が、3つか4つくらい入ればいいのかな?
オークキングの大きさがどの程度なのか、いまいち分かってませんが。
部屋付きのメイドさんを呼んで、相談してみる。
「では、部屋を回って、ベッドがいくつ入るか確認してみましょう。」
そう言ってくれたので、【マジックバッグ】を渡してお願いした。
部屋付きのメイドさんは、廊下で控えているメイドさんに依頼。
【マジックバッグ】を受け取ったメイドさんが、何処かに歩いて行った。
よろしくねー。
俺はソファーに座り、【多重思考さん】から報告を受ける。
報告は、探査に使った魔法についてと、それを使ったオークキングの大きさの測り方について。
探査に使った魔法は、魔力を検知する魔法だそうだ。
そして、『もし、”魔力の大きさ”と”魔物の体の大きさ”とに相関関係が有るのなら、魔力を検知する魔法を使って、大きさを比較する事が出来るのではないのでしょうか?』 とのこと。
なるほど。
でも、その相関関係を調べる為には、実際にオークキングの大きさを測らなければならない。
だが、立っているオークキングが1体も居なくて、大きさを測れない。orz
………【ファイヤーボール】でもぶっぱなせば、立ってくれるかな?
別に【ファイヤーボール】をぶっぱなしたくて言ってる訳ぢゃないですよー。
一応、”【ファイヤーボール】ぶっぱ”を、選択肢には入れておく。(←入れんなや)
魔力を検知する魔法ってことは、【目玉(仮称)】を見る事が出来るという事なのかな?
疑問に思ったので、早速、魔力を検知する魔法を使って【目玉(仮称)】を見てみる。
見えた。
そーかー、見えちゃうのかー。
【目玉(仮称)】の隠密性が失われてしまうのは嫌だなー。
何か対策を考えよう。
まぁ、『対策を考えよう。』とか言っても、【多重思考さん】たちに丸投げするだけなんですけどね。(←おい)
魔石とか、魔道具とか、結界とかは、魔力を検知する魔法では、どう見えるのだろうか?
色々見てみた。
魔石は、魔力を多く持っている物ほど、明るく見える様だ。
魔道具と結界は、効果がより強いモノが、より明るく見える様な気がする。何となくだけど。
【魔法無効】の結界は見えないのかと思ったら、普通に見えました。
そう言えば、【魔法無効】の結界に【魔法破壊】の魔法を掛けたらどうなるんだろうな?
暇な時にでも、色々と実験してみよう。
メイドさんが部屋に来た。
先ほど、【マジックバッグ】にどのくらい物が入るのかを確認しに行ってもらったメイドさんだ。
「この【マジックバッグ】に、ベッドが20個入りました。」とのこと。
すげぇ。
予想外の性能に、ちょっとビビる。
礼を言って【マジックバッグ】を受け取り、コートハンガーに掛けておく。
まだ使わないからね。
あと、しないといけない準備は、何か有ったかな?
ソファーに座って、考える。
”呪い対策”は、まだ検討中だ。
”空間魔法を使った結界魔法”の確認かな?
この結界は、結界を張った時に足元の地面がどういう振る舞い方をするのか読み切れないので、王都の外で実験したいんだよね。
でも、外出するのは止められてしまっている。
外出中に襲われるのを、警戒してのことなんだろうね。
ならば、【転移】で人の居ないところへ行くのはOKなのかな?
…【転移】で王宮に張ってある結界を抜けるのかぁ。
先日の魔術師団の副団長の死んだ目を思い出す。
うん、駄目だ。
諦めよう。
いや、そもそも、今回の勝負とは関係が無いから、後回しにする予定だったね。
無駄に、”副団長の死んだ目”を思い出しただけだった。(苦笑)
「はぁぁぁ。」
ちょっと長い溜息が出た。
オークキングの大きさを測る方法を思い付いた。
魔法で、MP(Magic Point)を”0”にして気絶させ、寝かした状態で、【魔法の腕】を生やした【目玉(仮称)】にメジャーを持たせて、それで大きさを測る。
………………。
もう全部殺しちゃって、【無限収納】の中に仕舞っちゃえよ…。
相手に1体も渡さなければ、勝負に勝てるんだからさぁ。
どうにも、余計な苦労をしている気がするなぁ。
そもそも、”今回の勝負”もそうだけどなっ!
『うがーっ!』って、吠えたい気持ちを、頑張って抑え込む。
海に行って、『うがーっ!』って、吠えてぇー!
ちなみに、オークキングやオークたちを殺すのを躊躇っている理由は、オークたちが、討伐しに来た冒険者たちを殺してくれる事を期待しているからだ。
『街に冒険者たちが居ない方が街の治安が良くなるのではないか?』と、思っているので。
出来れば、オークたちにクズな冒険者たちを始末してもらいたい。
だから、オークたちは、なるべくなら殺したくない。
そんな事を思ってます。
それはそれとして。
オークキングの大きさを測る方法は、もう、これでいいかなぁ?
もう、考えるのがめんどくさくなった。
そうなると、また、メジャーを用意しないといけなくなるなぁ。
今度は、オークキングの大きさを測れるくらいの長いヤツをね。
まぁ、『用意する。』と言っても、メイドさんに頼むだけなんですが。
部屋付きのメイドさんを呼んで、「オークキングの大きさを測る為のメジャーが欲しい。」と、お願いした。
あと、「いつ手に入るかも知りたい。」とも言っておく。
あまり長い物になると、お店には置いてなさそうな気がするからね。
メジャーのことは、これでいいね。
メジャーが間に合わない場合は、別の方法を考えよう。




