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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十三章 異世界生活編08 魔術師の街の騒動 前編 <異変>
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< 14end 外伝 トバされた男 ウォルト >


ウォルト

33歳。男性。【付与魔法】、【火属性魔法】の使い手。

以前、王宮のメイドさんたちが使う魔道具を作る部署に居た人。

ナナシの作ったトイレを王妃様が複製させようとした際、そのトイレに使われている魔道具の調査と再現を依頼された人たちの一人。

”ブツ”を処理する【分解】の魔法を『転移魔法だから不可能だ。』とか言ってろくに調査せず、王妃様の不興ふきょうってトバされた。


  ◇     ◇


王妃様の不興ふきょうってしまい、トバされた。

トバされて、少しホッとした。

予想以上に、王宮に居辛いづらくなってしまったからな。

王妃様の不興ふきょうってしまっただけで、あれほど王宮に居辛いづらくなってしまう事になるとは思いもしなかった。

あんな事になるのなら、王妃様からの依頼に真面目まじめに取り組むんだった。



今、俺は魔術師ギルドに居る。『魔術師の街』の。

ポーションが品薄しなうすになっている原因を調べて来る様に命令されたからだ。

だが、ポーションを作る部署ではなく、魔道具を作る部署に配属されてしまった。

俺の名を知っている者が魔道具を作る部署に居たからだ。

この業界は狭いからな。

名が売れてしまうのもかんがものだ。

いきなり、ちょっとだけ失敗してしまったが、仕方が無い。

だが、ポーションを作るノルマも有る様なので、ポーションが品薄しなうすになっている原因をさぐることは出来るだろう。


魔道具作りの工程の一部を受け持ったり、開発の手伝いをしたりしながら、時々ポーションも作る。

それが、ここでの俺の仕事だ。

自分で魔道具の開発が出来ないのは不満だが、ここでは新入りだからな。

今は仕方が無いだろう。



魔道具作りの仕事を終え、今日もポーションを作る共用スペースへ行きポーションを作る。

作りながら、周囲の様子をうかがう。

ここでは、普通にポーションが作られている様に感じる。

魔力切れで医務室に運ばれる者が毎日の様に居るのは、普通ではない気がするが。

魔力切れになるまでポーションを作るなんて、皆、真面目まじめにポーションを作っているな。

ここだけ見れば、ポーションが品薄になる原因なんて無い様に感じる。

ポーション作りを専門にしている部署で何か問題が起きているのだろうか?

それとも、材料不足か?

俺がこの共用スペースに居る時間は短いからな。

俺が居ない時間に、材料不足でポーション作りが止まっているのかもしれん。

材料不足を疑い、薬草と魔石が収められている棚を見てみた。

薬草も、魔石も十分に有るな。

ならば、容器か?

容器も十分に有った。

ここを調べるだけでは、ポーションが品薄になっている原因は分からなさそうだ。

倉庫や、他の部署も見てみないといけないな。

だが、新入りがウロウロしていたらおかしいだろう。

今日は、ノルマぶんのポーションを作ったらがろう。



後日。

倉庫をのぞいてみた。たまたま通り掛かったフリをして。

ここにもポーションを作る材料は十分に有る様に見える。容器もな。

と、なると、ポーションを専門に作る部署で問題が起きているのだろうか?

それとも出荷後か?

誰かが横領おうりょうしていれば品薄しなうすになるか? いや、ならないか。

横領したとしても現金化できなければ、そもそも横領する意味が無い。

現金化すれば、物は市場しじょうに流れるのだ。

品薄になるのと横領とは関係が無いな。

国外への持ち出しに何の対策もされていない訳はないだろうから、その線も無いだろう。

と、なると、やはりポーションを専用に作る部署か…。

しかし、俺がそんなところに行くのは不自然だろう。

どうしたものか…。



今日も、ノルマぶんのポーションを作る為に、共用スペースに向かう。

その時に同僚から声を掛けられた。

『”ハエ”が居る。』、『引き抜きに気を付けろ。』と。

ハエ?

詳しく話を聞くと、魔術局への引き抜きをしている者が、時々共用スペースに現れるのだそうだ。

ふむ。引き抜きか。

ポーションを作る人が大量に引き抜かれて、ポーションの生産量が落ちてしまったのだろう。

どのくらい引き抜かれたのか訊いてみたが、引き抜かれた人は居ないらしい。

”引き抜き”でもないのか…。

『ポーションが品薄になっている原因が分かった。』と、少し期待したのだがな。


共用スペースでポーションを作っていたら声を掛けられた。

『魔術局へ一緒に行かないか?』と。

こいつが引き抜きをしている奴か…。

ポーションを作りながらそいつの話を聞き流していたら、すぐに居なくなった。

ドタドタと警備員らしき男が来たので、逃げたのだろう。



ポーションが品薄しなうすになっている原因が分からないまま、日数だけが過ぎてしまった。

決して魔道具作りが楽しかった訳ではない。

別に、楽しくなかった訳でもないが。

新入りが、自分の仕事と関係無い場所をウロウロする訳にはいかないのだから、仕方が無いのだ。


ある日、『この街の領主が勝負をいどまれそうだ。』なんていう噂を聞いた。

その噂を聞いて、少し冷や汗が出た。

もしかして、俺の調査が進まなかったから、国が強硬策に出たのか?

いや、俺の調査とは関係無いか。

この街の領主が勝負をいどまれるとなれば、それは魔術師を多くかかえている事とか、魔道具やポーションの一大生産拠点となっている事が原因だろう。

ポーションが品薄になっている問題が解決しない現状を打破する為に国王陛下が勝負を認める可能性が少しは有るのかもしれないが、それは俺の所為せいではないよな。

俺の仕事は、問題解決ではなく調査なのだからな。

関係が無い訳ではないが、俺が責任を感じる必要は無いだろう。

ふぅ。


でも、勝負が始まったら、俺はどうすればいいんだろうな?

俺も、その勝負とやらに駆り出されたりするんだろうか?

『前回の勝負ではオークキングを倒した。』とか、不穏ふおんな言葉が聞こえて来るんだが…。

俺は、そんな事に駆り出されたくなんかないぞ。

あるいは、王宮から新たな命令が来るとか?

………………。

あれ?

術師ギル(ここ)ドに居るのはマズくないか?

早く調査を終わらせて、ここを出なければっ。

俺は、調査をする為にポーションを専門に作っている部署に向かおうとした。

が、立ち止まって考える。

今、おかしな行動をしたら、余計にマズイ事になってしまうか?

内通者なんかに疑われでもしたらマズイ事になるよな?

くそう。

不自然に見えてしまう様な行動は控えないといけないな。

取り敢えず、トイレに行って、そのまま戻って来た。


魔道具を作りながら考える。

ここで、これまで通りに過ごすしかないか…。

変に疑われでもしたら、もっとマズイ事になりそうだしな。

むむむ。

今は、これまで通りに過ごすしかないな。

そうしよう。

でも、もし王宮からおかしな命令が届いたら困る事になりそうだな…。

いやいや、落ち着こう。

まだ、何も決まった訳ではないんだ。

勝負も、駆り出される事も、王宮からおかしな命令が届く事もな。

そう、落ち着こう。

俺は、これまで通りに過ごしていればいいんだ。


おかしな事が起きない様に祈りながらな。


次回から新章です。

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