< 08 魔術師ギルドのギルドマスター 01 >
魔術師ギルドのギルドマスター
47歳。男性。【土属性魔法】の使い手。
この街で生まれ育った魔術師。
副領主に期待して、彼の作った魔術局に最初期から参加。
副領主の依頼で、土ゴーレムを使って多くの建物の建設に参加した。
幸運にも恵まれ、魔術局の実質的なトップになった。
その後、魔術局から独立して魔術研究会を立ち上げた。
魔術研究会を魔術師ギルドに改名し、それに合わせて肩書もギルドマスターとなった。
◇ ◇
冒険者ギルドで使われている『ギルドシステム』が欲しい。
支部間の情報共有や金銭授受の仕組みに使われていて、冒険者ギルドに必要不可欠な物となっている唯一無二の素晴らしい魔道具だ。
ぜひとも、我々の魔術師ギルドにも欲しい。
幸い、冒険者ギルドとの関係は良好だ。
仕事を発注してやっているのだからな。
早速、冒険者ギルドの支部長に会いに行き、交渉した。
交渉したのだが、あっさりと断られた。
「それは、一支部長の権限を遥かに越える話だ。」
「それに、あの仕組みは本部の人間が来て設置する物だ。一支部長がどうこう出来る代物ではない。」
「そもそも、国にすら手出しをさせていない物だ。欲しければクライスに在る本部に話を持って行ってくれ。私ごときではどうにもならない話だ。」
そんな事を言われた。
うーむ。
言われてみれば、確かに国にさえも手出しをさせていなかったな。
どうやって国から守っているのかは知らないが、確かに容易に貰える様な物では、そもそもなかったな。
いや。そもそも、まだ支部が無い現状では、我々には必要無かったな。
組織を大きくするのが先か?
そうだな。
先に組織を大きくしよう。
それからだな。
帰りの馬車の中で考える。
先ず、我々の魔術師ギルドを大きくしよう。
やがては大陸中に支部を置くが、取り敢えず国中に支部を増やして…。
…それから彼らに頭を下げて、お願いするのか?
………バカバカしい。
そもそも、何故至高の存在たる我々が頭を下げる必要が有るというのか。
支部を増やし、組織を大きくして、我々の魔術師ギルドが冒険者ギルドを吸収してしまえばいいではないか!
そうとも。それだな。
そうしよう。(ニヤリ)
ギルドに帰って来た。
執務室でさらに考える。
組織を大きくする方法を。
組織を大きくする為に、この街でする事はもう無いだろう。
次は、支部を増やして、さらに組織を大きくする事だな。
そして、やがては冒険者ギルドを吸収して、唯一無二の巨大な組織にするのだ。
うむうむ。
しかし、『支部を増やす』ということは、『魔術師を分散させる』ということだ。
これまでこの街が採ってきた方針は、『魔術師を集めて、この街で大量の魔道具やポーションを作り、価格の決定権を握る。』というものだった。
それとは、まったく逆の話だ。
そんな事をして大丈夫なのだろうか?
何か不都合が起きてしまわないだろうか?
しかし、『魔術師ギルド』と名乗っている以上、支部は必要だ。
うーむ。
いやいやいや、違うな。
『至高の存在たる魔術師さまが、愚民どもを導いて行く為の拠点』か。
うむ。そうだな。
支部を作る事は『分散』では無いのだ。
我々至高の存在たる魔術師の義務である、愚民どもを導いて行く為の拠点なのだ。
そうとも。
我々がしなければならない『義務』なのだ。
うむうむ。
よし。
早速、支部作りに取り掛かろう。
幹部会で、”支部作り”について話をするつもりだった。
だが、『人事』を統括している幹部が、支部の立ち上げに動いてくれるそうだ。
「『人事』の職を辞して、新しい支部の立ち上げに関わりたい。」と言って。
うむうむ。
これからの我々は、支部を増やさなければならないのだからな。
至高の存在たる我々魔術師さまが、愚民どもを導いて行く為にな。
先を見通せている有能な彼には恩を売っておこう。
敵に回らない様にな。
「彼には王都を任せようではないか。」
私の提案に、誰からも反対の声は上がらなかった。
この街の次に支部を作ろうと思えは、隣の王都において他には無いのだからな。
我々は、いよいよ至高の存在たる者としての義務を果たす為に動き出すのだ。
愚民どもを導いて行くという崇高な義務を果たす為にな。
さて。
次の『人事』には、誰を充てようかな?
他の幹部たちも同じ事を考えている様な顔をしている。
特に【風】と【火】が、早くも火花を散らしている。
だが、『人事』はやらんぞ。
『人事』は、【土】が貰うのだ。
(設定)
<【風】、【火】、【土】とは。>
それぞれの属性魔法の使い手たちの派閥の通称。
同じ属性魔法の使い手たちで派閥が出来てしまうのは、魔術師が大勢集まるこの組織では当然のことなのです。
『人事』の幹部だったトラヴィスは、【風】と【火】の二つの属性魔法の使い手だった為、この後、彼の後任を巡って派閥間で揉める事になってしまいます。




