03 外伝 ギルドマスターの悩み
そろそろ、ギルドマスターを辞める事を、考えてもいいのかもしれない。
最近、そんな事を考える様になった。
理由は、冒険者たちの評判が良くない事だ。
粗暴な冒険者が冒険者たちの評判を落とす事は、以前から、ある程度は有った。
イザという時に、街を守ってくれる戦力としての期待もあり、大目に見てもらえていた。
今までは。
最近はそうではない。
『冒険者たちが居ない方が街の治安が良くなるのでないか?』と、ハッキリと口にする者が増えてきた。
”イザという時”という状況がまったく起きていない事と、冒険者たちが問題を起こす事が原因だ。
ギルドとしても、冒険者たちが一般人に迷惑を掛ける行為は無視出来ない。
対策として、冒険者を雇い巡回させて監視させているが、十分な効果は上がっていない。
何か新しい対策を考え出さなければならないだろう。
その様な状況の中、さらに問題が起こった。
魔術師の多くが、パーティーを離脱して隣の街に移住してしまったのだ。
隣の街が、魔術師たちを優遇する政策を採った事が原因だ。
その政策の噂が広がると、パーティー内での扱われ方に不満を持っていた魔術師たちが、パーティーを離脱して移住していってしまった。
初めの内は、そんな魔術師たちを、せせら笑う者が多かった。
しかし、パーティーの戦力低下や、治癒魔術師の不足。それとポーション製作者の減少とポーション価格の上昇などによって、怪我人の発生率と依頼失敗率が急激に上昇した。
そして、怪我を完治させるまでの休業日数の増加が無視できない状況になってくると、今度は街の治療師の囲い込みを謀り、奪い合い、さらに怪我人を増やしていまうという事態まで起こる様になった。
そんな愚行は、街の住人たちの目にも触れるし、大変な迷惑も掛けてしまう。
さらに冒険者たちの評判を落としたことは、言うまでもない。
本当に、とんでもない状況になってしまっている。
状況の改善を図ろうとしたパーティーが、かつての仲間を好待遇で迎え入れようとしたそうだが、それに応えた者は居ない様だ。
隣の街の政策を真似て状況の改善を図ろうと調査に人を派遣したのだが、対策に使えそうな良い報告は無く、なかなか状況の改善が見込めないのが現状だ。
一時的なものだと見ている者も居るが、自分はそうは思わない。
この先、改善の見込みは無いのではないか?
今の内にギルドマスターを辞めてしまった方が、良いのではないか?
最近、そんな事を考えている。




