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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十三章 異世界生活編08 魔術師の街の騒動 前編 <異変>
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<02 元魔術師 バロル 01 >


元魔術師 バロル

35歳。男性。【水属性魔法】の使い手。

魔術局からの移籍は最近。魔術局ではポーション作りをしていた。


  ◇     ◇


目がめた。

………何で空が見えるんだ?

体を起こしてまわりを見る。

街の外なのか?

少し離れたところに街をかこむ外壁が見えた。

地面に寝た事で痛む体を見る。

下着姿だった。

その事に気が付いたら、急に寒く感じる様になった。

訳が分からない。

一体いったい、どうなっているんだ?


昨夜は久しぶりに呑みに行って…。

魔術師さまにおだいを請求するおろものが居て…。

おろものの頭を冷やして、世の中のことわりを教えてやろうと、【ウォーターバレット】を撃った…。いや、撃とうとした?

あれ?

そのあたりから記憶が無いな。

どうしたんだったかな?

うーーん。

思い出せないな。



声が聞こえた。

声がする方を見る。

門番もんばんと話している男が見えた。

いや、あれは門番に文句を言っている様だ。

門番に文句を言っている、その男。

その男も下着姿だった。


アイツの事は知っている。

少し前、市場で騒ぎを起こして、街の住人たちボコボコにされて、街の外にポイ捨てされたヤツだ。

その時は、アイツの事を腹を抱えて笑ったものだったのだが…。

今の俺の姿を見ると、まったく笑えないな。

「ははは…。」

『笑えないな。』と思ったそばから、笑い声が出た。

「ははは………。…はぁ。」

何とも言えない、みじめな気持ちになった。


何とはなしに、アイツの様子をながめていた。

アイツは門番に文句を言った後、少し離れた場所に座り込んだ。

見ると、他にも座り込んでいる者や、地面に寝転んでいる者も居るみたいだった。

そのだらしない姿を見て、何とも情けない気持ちになった。


そして、今の自分の姿も、『他の者から見たら同様にだらしない姿に見えるのではないか?』と気が付いた。

ふっ。

俺は、至高の存在たる魔術師さまだ。

無様ぶざまな姿を見せる訳にはいかない。

立ち上がった。

俺は魔術師さまだ。

家に帰ろう。堂々とな。

俺は門に向かって堂々と歩いた。


下着姿というのは、何となく心細こころぼそく感じるものなのだな。

門の前まで来た時には、『早く家に帰りたい』という感情だけになっていた。

それでも虚勢きょせいを張って門番に言う。

「俺は魔術師さまだ! 門を開けろ!」

「身分証をお願いします。」

ムカついた。

「魔術師さまだと言ってるだろう! 早く門を開けろ!」

「最近、魔法を使えないのに魔術師だと言い張る者が増えています。何か魔法を使って見せてくださいますかねぇ。(ニヤニヤ)」

ムカついた。

こんなにも世の中におろものあふれていたとはな!

やはり我々、至高の存在たる魔術師さまが導いてやらねばならない様だな! 愚か者どもを!

俺が、この愚か者の頭を冷やしてやらねばならん!

俺は両手を空に向け魔法を放つ。

「【ウォーターボール】!」

その直後、目の前が暗くなった。

ニヤニヤする門番の顔が見えた気がした。



家に帰って来た。

ソファーに腰掛け、一息ひといきく。


あの後。

もう一度目が覚めて途方とほうれていたら、魔術師ギルドの者が来てくれて、そのおかげで街の中に入る事が出来た。

門番が呼んでくれた様だった。

がたいという気持ちも無くはなかったが、感謝する気持ちにはなれなかった。

また、他の一部の者たちの様に、勝ち誇った顔で門番を罵倒ばとうする気にもなれなかった。


何故なぜ、魔法を使えなかったのだろう?

門番とのやり取りを思い出す。

【ウォーターボール】を放とうとしたら目の前が暗くなった。

魔力切れの様な症状だった。

しかし、それなりの時間寝ていたはずだ。

魔力は十分に回復していただろう。

…昨夜は、魔力切れの可能性が無くはないな。仕事明けだったしな。

だが、今朝は違う。

魔力は十分に回復していたはずだ。

魔力切れのはずはない。

では、何だ?

何故、魔法を使えなかったのだろう?

分からない。


分からない。

だが、一つだけ確かな事が有る。

魔力切れのはずはない。

そう。

魔力切れのはずはない。


だから、ステータスを見てみた。

分からなかったから。

”確かなもの”を見たかったから。


ステータスに表示されているソレを見て、俺は愕然がくぜんとする。

そんなはずはない。

そう。

そんなはずはない。


ステータスに表示されていたソレは…。

『お前は魔術師なんかじゃない。』とげていた。


それは、あまりにも唐突とうとつ過ぎる…、”絶望”だった。


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