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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 51 新・王宮での生活45 ナナシ、おかしなメイドさんからおかしな依頼を受ける01 >


ソファーに座ってくつろいでいます。


そして考える。

先ほど部屋にやって来たニーナが、何をしに来たのかを。


ニーナが部屋にやって来て、『鎖骨さん!!』と言って俺に近付いて来た。

それをクーリがぶちのめしてしまって、廊下に”ポイ捨て”されてしまった。

さて。ここで問題です。

ニーナは何をしに来たのでしょう?

クーリがぶちのめしてしまった事と、”ポイ捨て”のインパクトが強すぎて、ニーナが何をしに来たのかを考えるどころではないよね!

ヒントが『鎖骨さん!!』だけしかないしな!

『ただ抱き着きに来ただけ』の可能性も少しは有るけど、それだけとは思えない。

ニーナの今の職場はこの建物とは別の建物らしいから、それだけの為に仕事中にこの部屋まで来るとは考えられないよね。

分からないよね。

まぁ、そのうちまた来るだろう。

ニーナだし。(←謎の信頼感)

俺は考えるのを放棄ほうきして、ソファーでくつろぎました。



バタン!

ソファーでダラーーっとしていたら、ドアが勢いよく開いた。

『またかよ!』って思いながら見ると、メイドさんが「ジキソー!!」とか言いながら入って来るのが見えた。

バキッ!

ドサ

「………………。」

めるが、まったく有りませんでした。(呆然)

えーーっと。

取り敢えず、安らかに眠っていただける様に祈っておこう。(←死んでません)


『メイドさんが何か言いながらやって来た』と思ったら、俺が反応をする前にクーリにぶちのめされてしまいました。

ひどい部屋だね。(苦笑)

しかし、クーリは常に全力だなー。

手加減できないの? この子。

俺がそんな事を考えていたら、クーリが倒れているメイドさんに近付いて行くのが見えた。

「クーリ、ストップ。」

クーリをめる。

また廊下に”ポイ捨て”されるのは、ちょっと見たくないからね。

気の毒というのも勿論もちろん有るのだが、メイドさんが廊下に”ポイ捨て”されるのが、この王宮の日常だとは思いたくはないからねっ。

倒れているメイドさんに【ヒール】を掛けて、【魔法の腕】で持ち上げてソファーに寝かせました。



メイドさんが目を覚ますのを待っている間に、ケイティさんとクーリとお話をすることにしよう。

ケイティさんとクーリを呼んで、訊く。

「部屋にやって来た人を一撃でぶちのめすってのは、どうなの?」

「護衛対象を確実に守ろうとするならば、一撃で倒すのも”アリ”かとは思いますが…。」

そう言うケイティさんは歯切れが悪い。

「………………。」

クーリは目を彷徨さまよわせています。

『やらかした』という意識は有るのだろう。

「ですが、そもそも、クーリの戦い方はあの通りですので…。えーっと…。」

ケイティさんも目を彷徨さまよわせ始めてしまいました。

言外げんがいに、『クーリを配置した人が悪い。』と言っている様に感じるよね。

目を彷徨さまよわせているクーリを見る。

背が小さく、華奢きゃしゃな印象を受ける。

一撃でぶちのめした事が信じられない様な体格だ。

取り押さえる事は出来なさそうな気がするな。クーリの体格的に。

と、なると、ここにクーリを配置した人は、何か有った時はクーリがぶちのめす事になると思っていたんだろうね。

そうなると、クーリは悪くないのか…。

そうだね。

クーリは悪くないね。うん。

「分かった。悪いのは”うえの人”ってことで。」

それでいいよね。

「ケイティ、一応、”うえの人”には『文句を言っていた。』とでも伝えておいて。」

「かしこまりました。(キリッ)」

「クーリは、これからもよろしくね。」

「はい。」

これで、『クーリが部屋に来た人を一撃でぶちのめしてしまう件』は終了だ。

現状の消極的追認(ついにん)でしかありませんがっ。

メイドさんの配置は、俺が口を出しにくい事だから仕方が無いよね。うん。

それと、アレについても釘を刺しておこう。

「廊下への”ポイ捨て”は、やめようね。」

…こんなセリフを王宮のメイドさんに言う日が来るなんてね。

それも、”ポイ捨て”されたのがメイドさんだしなっ。

この王宮の常識ってヤツに疑問を感じるよね。(苦笑)



ソファーに寝かせていたメイドさんが目を覚ましたみたいだ。

声を掛ける。

「大丈夫ですか?」

「…白くて恐ろしいものが…。(ぼそ)」

そんな小さな声が聞こえた。

白くて恐ろしいもの?

連邦れんぽうの白いヤツかな?(←違います)

チラリとクーリを見る。

が、目をらされた。

それは、まぁいいや。(苦笑)

壁際かべぎわひかえているクーリは、色白いろじろで、白い手袋をしている。

見た目は可愛かわいらしいのだが、一撃でぶちのめす様子はなかなかに凶悪だった。

恐怖心をいだかせてしまっていても仕方が無いよね。

それも、まぁいいや。他人事ひとごとだし。(←おい)


だんだん意識がハッキリしてきたみたいなので、ここに来た理由を訊こう。

「私に何かご用ですか?」

「ナナシ様! 馬車の屋根の上に座ってもお尻が痛くならない魔道具を作ってくださいぃー!」

「………………。」

おかしな事を言われた。

ぶちのめされた影響が、まだ残っているのだろう。

「もう少し休んでいてください。」

「ナナシ様ぁ! 馬車の屋根の上に座って移動するとお尻が痛くなるんです! もうイヤなんです! 」

そう言われましても、『馬車の屋根の上に座って移動する』っていう言葉自体がすでに意味不明なんですよ?

きっと、頭を打ち過ぎたのだろう。

可哀想に。

チラリとクーリを見てしまう。

が、また、目をらされた。

よそ見をしている俺に、メイドさんがさらに訴え掛けてくる。

「あの『異空間トレー』みたいな物を作ってくださいぃ! お願いしますぅ!」

そんな事を言われたのだが、意味不明だったり、頭を打った疑惑がある現状では、「もう少し休んでいてください。」と言うしか、俺に出来る事はないよね。


取り敢えず落ち着いてもらい、俺はケイティさんを呼んで、訊く。

「『馬車の屋根の上に座って移動する』って何? 有名な絵本か何かにそんな場面が有ったりするの?」

「そのままの意味だと思います。(キリッ)」

そのままの意味って…。

もう少し説明ぷりーず。

俺の表情からさっしてくれたのであろうケイティさんが、説明してくれる。

尾行びこうをする時などに、魔道具で姿と気配を消して馬車の屋根の上に乗って付いて行く事は、外で仕事をする者たちがよく行っている事です。(キリッ)」

どうやら『馬車の屋根の上に座って移動する』は、言葉通りの意味らしいです。

また一つ、この世界の知識を手に入れる事が出来ました。

どう考えても無要な知識です。本当にありがとうございました。

ぶちのめされメイドさん(仮称)に訊く。(←ヒドイ仮称です)

「えーっと、『馬車の上に『異空間トレー』みたいな物を置いてそれに座れば、お尻が痛くならないのではないか?』って事ですかね?」

「そうです! ぜひ作ってください! お願いします!」

そう言って、すごい勢いで頭を下げられた。

ふむ。

面白そうではあるね。

面白そうだからやってみるかな。

「分かりました。面白そうだから検討してみます。」

「ありがとうございます! よろしくお願いします!」

ぶちのめされメイドさん(仮称)は、そうお礼を言うと、あわただしく帰って行った。

仕事中に抜け出して来たのかな?

この部屋に入って来た時の状況を思い出すと、思い付いて、即、この部屋に飛び込んで来たのかもしれないね。

職場に戻った彼女が、すごい勢いで頭を下げている様子が脳裏に浮かびます。(苦笑)

あ。彼女のお名前は、カーティーさんとのことでした。

モノが出来上がったら、また部屋に来てもらって確認してもらおう。

そして、また来てもらった時にクーリにぶちのめされない事を心の中で祈っておく。

ハイテンションでこの部屋にやって来た彼女が、再びクーリにぶちのめされる未来が脳裏に浮かぶのでねっ。


(設定)

カーティーさんは、『第三章 公爵対決編』で登場していたメイドさんです。

やや年齢は高めで、外での作戦行動が多いメイドさんです。



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