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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 47 新・王宮での生活41 こたつでホイホイ >


朝食を終えて部屋に戻って来た。


部屋の前で控えていたメイドさんが俺に言う。

「リリス様がいらしてます。」

「ん? リリス様?」

リリス様って誰だったっけ?

俺が疑問に思っていたら、シルフィが教えてくれた。

「結婚式で会ってますよ。お母様の姉の様な方です。」

ごめんなさい。憶えてないです。

まぁいいか。(←よくないだろっ)

取り敢えず、部屋に入ろう。


部屋に入った。

が、部屋には誰も居なかった。

てっきり、”リリス様”とやらがソファーに座っていると思ったんだけどね。

さて。どうするかな?

トイレという可能性も有るが、念の為、他の部屋も見ておこう。


シルフィを居間に残して隣の部屋に入ったら、こたつに入ってとろけた様な表情をされているおばさんが居た。

この人がリリス様かな?

どうしようかな?

天板てんばんにアゴを乗せてとろけた様な表情をされていると、どう声を掛けたらいいのか分からなくなるよね。(苦笑)

取り敢えず、シルフィを巻き込んでから声を掛ける事にしよう。


シルフィを連れて来てから声を掛ける。

「おはようございます。」

「んーー…。(ダラーー)」

「……………。」

「……………。」

よし。シルフィに任せよう。(←おい)

居間に戻ろうとしたらシルフィに腕を強くつかまれた。

くっ。逃がしてはくれないか。

シルフィに腕を引かれるまま、リリス様(?)の正面まで行って、畳の上に膝をつく。

目線の高さを合わせたシルフィが言う。

「リリス姉さま、おはようございます。」

リリス姉さま?

『姉さま』と呼ぶ様な年齢…(ゾクリ)

…これ以上考えるのはめておこう。怖いから。(ビクビク)

「んーー。(モソリ)」

「リリス姉さま、おはようございます。」

「んーー。おはよう、シルフィ。(モソモソ)」

「何かご用ですか?」

「んーー。別にぃー。(ダラーー)」

そうか。用は無いのか。

ぢゃあ、俺はここに居なくてもいいよね。

立ち上がろうとしたらシルフィに腕を強く掴まれた。

やっぱり、逃がしてはくれないみたいです。(苦笑)

さらにシルフィが訊く。

「どうしてナナシさんのお部屋に居らっしゃるんですか?」

「んーー。おもしろそうだからーー?」

おもしろそうだから?

なるほど分からん。

だが、シルフィは何かを理解したみたいで、『私は居なくても良さそうですねっ。』っていう表情をして立ち上がろうとする。

が、そんなシルフィの腕を掴んで引き戻す。

逃がさないよ。(←おい)

今度は俺がリリス様に訊く。

「『おもしろそう』って何がですか?」

「んーー。これー。(ダラーー)」

…『これ』って、こたつのことかな?

でも、リリス様はこたつの事をどうやって知ったのかな?

シルフィは『お母様の姉の様な方です。』って言っていたから、メイドの偉い人って訳ではないっぽいしね。服装もメイドっぽくないし。

よく分からんね。

「私は、お母様にリリス姉さまがいらしている事をお知らせしてきますね。」

シルフィは、そう言って立ち上がる。

俺とシルフィでは対処できなさそうだから、王妃様に何とかしてもらうのは良いアイデアだろう。

王妃様を巻き込む事に決めて、シルフィが部屋を出て行くのを見送った。



俺は居間に戻ってのんびりしています。

リリス様の対応をケイティさんにお願いしてね。

もちろん、いつもの丸投げです。(←おい)


王妃様が部屋にやって来た。

俺が「リリス様が隣の部屋にいらしてます。」と言うと、王妃様は溜息ためいきいて、隣の部屋に向かった。

後は、王妃様にお任せしよう。うん。

相手が王妃様だろうが、丸投げです。(←おい)


少ししたらケイティさんに呼ばれた。

「王妃様がお呼びです。(キリッ)」

…王妃様に丸投げしただけでは済まなかった様です。

チッ。(←舌打ちすんなや)

仕方が無いので、隣の部屋に行く。


俺が隣の部屋に行くと、王妃様もこたつに入っていた。

リリス様をどうにかしてくれると思っていたのだが、二人してこたつを堪能たんのうしている様にしか見えません。

おかしくね?

手招てまねきする王妃様にうながされるまま、俺もこたつに入る。

あー、こたつはあったかいねー。

呼ばれた理由は取り敢えず置いておいて、俺もこたつを堪能たんのうします。

こたつを堪能たんのうしないのは、こたつに対して失礼だからね。(←王妃様に丸投げした人が偉そうに言える事ではありません)

むふー。(ぬくぬく)


こたつに入ってしばらくダラダラぬくぬくしていたら、思い出したかの様に王妃様に言われた。

「ナナシさん、私の部屋にもこたつが欲しいのだけど、作ってもらえないかしらー。」

「私もー。(ダラーー)」

すかさずリリス様も便乗してきます。

まぁ、そうなるよね。

「分かりました。」

ゴネる様な事でもないので了承する。

そして、頭の中で発注しなければならない物を考える。

こたつ本体はすぐに作れるけど、こたつ布団ぶとん座布団ざぶとんと敷物代わりの毛布は発注しないといけないから、明日か明後日くらいになるのかな?

ケイティさんに発注を頼もうとして、ふと、気付いた。

畳はどうしよう? 必要な気がするな。

王妃様に訊く。畳をポンポンしながら。

「この敷物しきものも必要ですかね?」

「ああ、そうねー。これも必要ねー。これもお願い出来るかしらー?」

「私もー。(ダラーー)」

「はい。分かりました。」

返事をしながら、頭の中で【多重思考さん】に訊く。

『畳の材料の麦藁むぎわらって有る?』

『大丈夫です。準備しておきましたので。(ふっ)』

こうなる事を予想していたみたいです。

ありがとうございます。いつも助かっています。


ケイティさんを呼んで、発注する物を頼んだ。

一昨日おととい、一緒に買いに行った物と毛布だけだから、スムーズに話は終わった。

後は、物が揃うのを待つだけだね。

物が揃いさえすれば、すぐに完成させられるからね。

一区切ひとくぎり付いたので、体の力を抜いて、こたつを堪能たんのうします。


ふと、リリス様を見ると、天板てんばんにアゴを乗せてとろけた様な表情をしていらっしゃいます。

見たら、王妃様も同じ体勢でまったりしていらしゃいます。(苦笑)

『この状況って何なの?』と思わなくもなかったが、俺もダラーっと体の力を抜いて、こたつを堪能たんのうしました。

こたつの魔力には何人なんびとたりともあらがえないのだから、仕方が無いよね。(ぬくぬく)


こたつでダラダラぬくぬくしながら、ポツリポツリと王妃様と交渉をする。

交渉と言っても、天板てんばんにアゴを乗せてダラーっとしながら、『報酬はシルフィと交渉としてくださいー。(ぬくぬく)』『そうねー。(ぬくぬく)』くらいのやり取りしかしませんでしたが。(苦笑)

王妃様とそんなやり取りをしていたら、魔石のことを思い出した。

「あ。王妃様、魔石を2万個ほど市場しじょうに戻そうと思うんですが、どうすればいいですかね?」

「! そうしてくれると助かるわっ。」

王妃様は、ガバッと姿勢を起こして、そう言う。

やはり王妃様もなんとかしないといけないと思っていたみたいだね。

王妃様のアゴが赤くなっているのが見えますが、もちろんそれについてはスルーします。

魔石のことは、王妃様の方でやってもらえるとのことなので、魔石を【マジックバッグ】に入れて渡した。

魔石を売却する時の価格についても王妃様にお任せです。

俺は魔石を売る事で利益を上げる気なんて無いから以前の価格で売り払ってくれても良かったのだが、『急に値下がりしてしまうのも問題になるのよねー。』とか言われたので、その価格調整も含めて王妃様にすべてお任せする事にしました。

俺には無理だからね。そんなめんどくさいこと。

だから、王妃様に丸投げです。(←丸投げ言うなや)

これで魔石が品薄しなうすになっている問題が、少しは改善に向かうね。

肩の荷が下りた気がして、俺の”ダラーー”が一段階上がった気がします。(ダラーー)

王妃様もホッとしたご様子で、こちらも”ダラーー”が一段階上がった様に見えます。

リリス様は、ずっと高いレベルのダラーーっを見せつけていらっしゃいます。(苦笑)

このリリス様なんだが、ただ、こたつを堪能たんのうしに来ただけにも見えるのだが、どうしたもんかね?

置き物とでも思っておけばいいのかな?

そもそも、どうしてこたつの事を知ったのかも分らんのだが…。

まぁ、いいや。

考えるのもめんどくさいし。

俺はダラダラぬくぬくと、こたつを堪能たんのうすることにしました。

むふー。(ぬくぬく)



しばらくダラダラぬくぬくしていたら、シルフィがやって来た。

お茶の時間かなー?(ダラーー)

「増えてる…。(苦笑)」

シルフィは、呆れた様な笑っている様な表情でそう言います。

俺は、シルフィを手招きして隣に座らせ、ケイティさんにお茶を持って来てもらうようにお願いする。

今日は、ここでお茶にしよう。

一度こたつに入ってしまうと、出られなくなるからね。

言わずと知れた、”こたつの魔力”です。(ぬくぬく)


ダラダラぬくぬくしながらお茶をした。

会話は少なく、こたつを堪能たんのうする合間あいまにお茶を飲むって感じです。

…何なのこれ?

そんな事を少しだけ思いましたが、こたつを堪能たんのうすること以上に大事だいじなことなど存在しないのだから、仕方が無いよね。

ただただ、こたつでマッタリとします。(ぬくぬく)



シルフィが部屋に帰った後も、こたつでマッタリとします。

今日は、一日中こたつでマッタリすることに決めました。(キッパリ)

こたつでマッタリとしていたらメイドさんが迎えに来た。

王妃様を。

「………………。」

マッタリとし過ぎていて気が付かなかったけど、結構長い時間ここに居らっしゃったよね。(苦笑)

お仕事は大丈夫なのかな?

まぁ、大丈夫ぢゃないから、こうしてメイドさんが迎えに来たんだろうけどねっ。

王妃様は少し考えて、「ここで仕事してもいいかしら?」なんて、俺に訊いてきます。

王妃様のその表情は本気マジっぽいです。(苦笑)

それってどうなんですかねっ?

王妃様がここで仕事をする為に必要な物を持って来てもらうよりは、こたつを移動させた方がきっと手間が少ないだろうね。

仕方が無いね。

このこたつを王妃様の部屋に持って行こう。

そうすれば、きっとリリス様も付いて行くだろうしね。

リリス様は、どうやらこたつを堪能たんのうしに来ただけみたいだからね。

そうしよう。

「このこたつを王妃様のお部屋に持って行きましょう。」

「えーっと、いいの?」

「いいですよ。」

リリス様を押し付ける事が出来るからね。(ニヤリ)

俺は笑顔で立ち上がって、こたつの解体に取り掛かる。

「ぢゃあ、こたつを解体しますよー。」

俺がそう言うと、王妃様はスッとこたつから出てくれたのだが、リリス様はそのままです。

こたつを片付ける時によく見られる光景ですね。(苦笑)

俺も普段はリリス様ポジションですが、意外とイラつくものですねっ。

邪魔者は無視して、こたつの解体に取り掛かります。

リリス様がアゴを乗せている天板てんばんを、手で少し持ち上げてから【無限収納】に仕舞う。

いきなり【無限収納】に仕舞ったらアゴを打ってしまいそうだったからね。

ちょっとだけ、してやりたくなりましたがっ。

こたつ布団ぶとんを【無限収納】に仕舞ったら、リリス様が「むぅーー。」とか言いやがりましたが、もちろんスルーします。

こたつを片付ける時の母親の苦労を、こんなところで経験することになるなんて思わなかったね。(苦笑)

心を無にして、どんどんとこたつを解体して【無限収納】に仕舞っていきます。

こたつを片付ける極意ごくいは、心を無にする事だと思いました。(悟り)

こたつを片付け終わったら、王妃様とリリス様には退いてもらい、座布団ざぶとんと毛布と畳も【無限収納】に仕舞う。

よし。解体と回収が終わった。

「ぢゃあ、移動しましょう。」

そう言って、王妃様の部屋に向かいます。ぞろぞろと。(苦笑)

ちょっとだけ、『何なのこれ?』って思いましたが、俺の心は”無”なので気になりませんでした。(苦笑)

ずっと『むぅーー。』って表情をしていやがるリリス様のことは、もちろんスルーです!



王妃様の部屋でこたつをセッティングする。

天板てんばんを置く前に、既にリリス様が『むふー。』ってなっていやがります。

天板てんばんを置くことが出来なくて、すっごく邪魔です。(イラッ)

どうしてやろうかと思っていたら、王妃様がリリス様の頭をガシッとつかんで持ち上げてくれました。

ありがとうございます。

リリス様のあつかいがすごくざつな気がしましたが、その事についてもスルーです。

もう、めんどくさいし。(苦笑)

天板てんばんを置いて…。

こたつ! 完成! です!(昨日ぶり、三回目)

「ぢゃあ、俺は部屋に戻りますね。」

「ごめんなさいね。こたつを取っちゃって。」

「いえ、お気になさらず。隠れ家にも有りますんで。」

そう言って、俺は王妃様の部屋を後にしました。


部屋からこたつが無くなってしまいましたが、よく分からん人を王妃様に押し付ける事が出来たので、俺は満足しました。(←おい)


(設定)

ナナシは【こたつ片付け師】の称号を得た。(←おい)

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