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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
202/400

< 46 新・王宮での生活40 ナナシ、こたつを完成させる。それと、常識の壁 >


昼食後。

こたつ布団ぶとん座布団ざぶとんが届いた。


やったぁ!!

これで、こたつが完成するぜ!!

受け取ったこたつ布団ぶとん座布団ざぶとんを【無限収納】に仕舞い、「ちょっとかくに行ってくる!」と言って、ケイティさんの返事も聞かずにかくに転移した。


隠れ家に転移して来た。

いつもの居間兼応接間から廊下を通って南側の建物に行き、靴を脱いで居間に直行する。

既にセッティングされているところに、【無限収納】からこたつ布団ぶとんを取り出してバサァとかぶせ、天板てんばんを置く。

よし!

こたつ! 完成! です!

やったぁ!!


座布団ざぶとんも取り出して座り、こたつに足を入れる。

ひんやり

「………。」

そう言えば、こたつの熱源はどうしてたっけ?

『こたつの熱源 正式版』作った後、何もしていなかったことを思い出した。

あの時は、試作品を持って部屋を出て行ったニーナがそれっきり帰って来なかったり、新しいメイドさんが来たり、買い物に行ったり、ダンジョンに行ったりしていたから、その間に忘れてしまっていたね。

こたつ布団ぶとんまくって中をのぞむ。

…暗くてよく見えないのは仕様デス。

【暗視】さんが仕事を思い出したのか、暗さに目が慣れたのか分からないが、少し見える様になってきたところで、頭の中で【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】が教えてくれた。

『…こたつの熱源は、掘りごたつの底に置いてあります。「ON。」で起動します。(呆れ)』

ちょっと呆れた様な感じでそう言われて、ちょっとヘコみます。

「…ON。」

俺が、そう”ワード”を言うと、掘りごたつの底から赤い光が出た。

「おお! こたつっぽい!」

思わず、そう声が出た。

”こたつっぽい”のは、こたつなのだから当たり前ですがっ!

でも、赤い光が出る様にはしていなかったから驚いたんです!(←誰に対する言い訳だよっ)

『こたつの熱源ですからね。赤い光も出る様に改造しておきました。(ふっ)』

頭の中で【製作グループ】の誰かのものらしき声がした。

ありがとうございます。

【製作グループ】は、イイ仕事をしてくれますね。(笑顔)

姿勢を戻して座り直し、天板てんばんの上にアゴを乗せて、こたつをマッタリと堪能たんのうします。

「ふわぁぁ。」

思わず、そんな声が出た。

あぁ、ぬくい。(ぬくぬく)


しばらくの間、久しぶりのこたつを堪能たんのうしまくった。

そして、考える。

『王宮の部屋にもこたつを置きたいなぁ』と。

許可を取らなければならないのはもちろんだが、掘りごたつはマズイよね。

【空間魔法】でどうにか出来そうな気がしないでもないが、普通のこたつでもいいかな?

普通のこたつだったら、肩まで入って寝転ねころがれるしね。

掘りごたつでは出来ない楽しみ方だよね。(うむうむ)

王宮に作るこたつは、普通のこたつでいいね。

王宮でこたつに入ってゴロゴロと寝転ねころがってていいのかどうかは、取り敢えず置いておいてなっ。


王宮にもこたつを作る事を決めて、必要な物を考える。

そうしたら頭の中で【多重思考さん】に言われた。

『こたつも熱源も畳も、全て準備が出来ています。』

おおっ。そうなのか。

こたつ布団ぶとん座布団ざぶとんも買ってあるから、足りない物は無いのかな?

うん。全部揃っているね。(ニッコリ)


こたつを置く場所はどうしようかな?

普段()ごしている居間は無理かな?

畳を敷くスペースがそれなりに必要だから、無理っぽい気がするな。

となると、居間の隣の”お着替え部屋(通称)”だな。

居間と同じくらいの広さがあるし、着替えをする時くらいしか使わないから、問題無いだろう。

寝室も、畳を敷くスペースは取れなさそうだしね。

初めから選択肢なんて無かったね。(苦笑)

ぢゃあ、王宮に戻って許可を取ろう。

………………。

そう思ったのですが、”こたつの魔力”に負けて、動けませんでした。(苦笑)


結局、おやつの時間の寸前までこたつから出れませんでしたが、これはこたつの仕様なのだから仕方が無いよね!



おやつの時間を終えた。

今日も手を付けなかったおやつを手に持ち、部屋に帰って行くシルフィを見送った。

それはそれで気になるのだが、訊いても答えてくれなさそうだから気にしないでおこう。


それは置いておいて、こたつだ!

ケイティさんにこたつを置く許可について訊く前に、こたつを置くスペースを確認しよう。

隣の”お着替え部屋(通称)”に行き、確認する。

ほとんど物が置かれていない部屋で、居間側の壁一面が収納になっている。

この収納の前にたたみを敷くと邪魔になってしまうが、部屋の奥の角から畳を敷けば六畳くらいのスペースは使えそうに見える。

ちょっと畳を敷いてみて確認してみようかな?

いつの間にか窓際まどぎわひかえていたケイティさんに許可を取ろう。

…と、思ったのだが、何と言って許可を取ったらいいのかな?

『ここに畳を敷いていい?』って訊いても、畳を知らなかったら返事のしようが無いよね。

先に畳を敷いてから訊くか。

その方が早いだろうからね。

【無限収納】から畳を取り出して、並べて敷いていく。

『ついでにこたつも出してしまいましょう。』と【多重思考さん】が言うので、敷いた畳の上にこたつを置く。

で、こたつを置いたところで気が付いたのだが、敷く物が必要だったね。敷き布団(てき)な物がね。

失敗したね。

かくのこたつが”掘りごたつ”だったから気が付かなかったね。

どうしよう。

取り敢えず、毛布でも敷いておくか。

隠れ家に常駐している【目玉】を使って、寝室のベッドから毛布を剥ぎ取り、【無限収納】経由で受け取る。

その毛布を畳の上に敷いてから、こたつをサクッと組み立てた。

よし!

こたつ! 完成! です!(本日二回目)

やったぁ!!


満足して全体を眺めますが、洋風の部屋には合っていない様に見えます。(苦笑)

まぁ、そんな事はこたつの前では些細ささいな事なんですけどねっ。

ぢゃあ、窓際まどぎわひかえているケイティさんに許可を取ろうか。

ケイティさんを見たら、何やらビックリしている様に見えましたが、それについてはスルーします。

俺がやる事に慣れてくれないと困るからね。俺が。(←おい)

「ケイティ、ここをこんな風にしたいんだけど、いいかな?」

「………………。」

「………………。」

ケイティさんをおどろかせ過ぎてしまった様です。

色々な物を出し過ぎちゃったかな?

ちょっと反省して、心の中で謝っておく。(←普通に謝ってもいいんですよ?)


「…これは、”こたつ”ですか?」

「え?」

ケイティさんの口から”こたつ”という単語が出て来た事に驚く。

「こたつを知っているの?」

「いえ、私は”こたつ”は知りません。ですが、メイド長から『”こたつ”を作る許可を求められたら許可を出す様に。』と言われておりましたので。」

えーーっと。

誰かこたつを知っている人が居たのかな?

それとも、俺が『こたつ』って言っていたっけ?

こたつ布団の事は、『こたつ布団』とは口に出して言っていなかった気がするが、言ってしまっていたのかもしれないね。

まぁ、今はそれはどうでもいいや。

たたみの上には靴のままで上がってほしくないんだけど、この状態でもこの部屋での作業の邪魔にはならないよね?」

ケイティさんは、収納の引き出しを開けたりしながら確認してくれる。

「はい。大丈夫ですね。」

よかった。うむうむ。

「これは”タタミ”と言うんですか?」

ケイティさんに訊かれた。

何て答えようかね? この”畳っぽい何か”について。

「えーっと、ちゃんとした畳ぢゃないんだけど『畳』って呼んでる。材料が見付からなくて、ちゃんとした畳が作れなくてね。」

「探させましょうか?」

「いや、その必要は無い。この大陸に無い事は確認済みだから。」

「…左様さようですか。」

ケイティさんは、「こほん。」と咳払せきばらいをしてから姿勢を正して言う。

「メイド長から『”こたつ”を作る許可を求められたら許可を出す様に。』と言われておりますので、問題ありません。(キリッ)」

よかった。

これからは、こたつでダラダラ出来るね。

やったね。


早速さっそく、こたつに入ってダラダラぬくぬくしました。

むふー。(ぬくぬく)



こたつでダラーーっとしていたらシルフィがやって来た。

そろそろ夕食の時間なのだろう。

こちらに近付いてきたシルフィが、俺に訊いてくる。

「これは何ですか?」

「これはね、”こたつ”って言う暖房器具。」

「! 寒かったですかっ?!」

シルフィが、あせった様に言う。

誤解させちゃったね。

『寒かった訳ぢゃない』と、ちゃんと言わないといけないね。

「いや、別に寒かったからこれを作った訳ぢゃないよ。」

暖炉だんろに火を入れさせないと!」

「俺の話を聞いてくれ!」

ケイティさんの方を向いて指示を出そうとするシルフィを【魔法の腕】で捕まえて、説明する。

「これは暖房器具の一種だけど、寒かったから作った訳ぢゃないから。」

「………………。(うたがわしそうな目)」

シルフィに”疑わしそうな目”で見られた!

くそう。何て説明したらいいんだ?

寒くないのに暖房器具を使うなんて、おかしいもんな!

思わぬところで”常識の壁”にブチ当たったぜ!

これでは俺が非常識な人間だと勘違いされてしまう。(←えっ?!)

「これは暖房器具だけど、普通の暖房器具ではないんだ。その心地ここち良さで人をとりこにする暖房器具で、寒くなくても使いたくなるモノなんだ。」

「………………。(さらに疑わしそうな目)」

くっ。おかしい!

間違った事は言ってないのにな!

「それに寒かったら、もっと厚着あつぎをしているよ!」

「………………。(やっぱり疑わしそうな目)」

くそう。俺の言うことを信じてくれてないみたいだ。

日頃ひごろの行いの所為せいか?!(←少しは自覚が有った模様)

どうしよう?

実際に試してもらうか?

口で説明しても、まったく伝わってないしなっ!

よし、実際に試してもらおう。

「実際に試してみて。そうすれば心地ここち良さが分かるから。」

そう言って、シルフィを手招てまねきする。

その前に大事なことを言っておかないとね。

「あ。靴はそこで脱いでね。」

靴を脱いでもらってから畳に上がってもらう。

俺は一度こたつから出て座布団を二枚並べ、「こうして、中に足を入れるの。」と言いながら座ってみせる。

俺にならって隣に座ったシルフィに言う。

「こたつはね、心地ここち良いから、寒くなくても使いたくなる暖房器具なんだよ。」

「………………。(やっぱり疑わしそうな目)」

シルフィは、まだ”疑わしそうな目”をしています。

おかしいな。間違った事は言ってないのにね。

せぬ。

みかんジュースを振舞ふるまいながら、さらにシルフィに説明しました。

こたつには、やっぱりみかんだよね。(←今はどうでもいいことです)


しばらくしたら、シルフィの”疑わしそうな目”がやわらいだ気がした。

「どうかな? 心地ここち良さが分かってもらえたかな?」

「んー。そうですね…。」

肯定なのか否定なのか、よく分からないシルフィのお返事です。

でも、心地ここち良さは分かってくれていそうです。

うむうむ。


この後、ケイティさんに「お食事のお時間です。(キリッ)」と言われるまで、シルフィとこたつでマッタリとしました。


(設定)

(王宮のナナシの部屋について)

ナナシの部屋は、全部で三部屋在ります。

隣のシルフィの部屋のがわから、『寝室』『お着替え部屋(通称)』『居間兼応接室』と並んでいます。

他に、お茶を淹れる為の小さなキッチンとメイドの休憩室と物置が在ります。

廊下に繋がるドアは『居間兼応接室』に在り、ナナシが普段居るのも、この『居間兼応接室』です。

ナナシの部屋の三部屋をするドアは、窓際まどぎわに一直線に並ぶ様に在ります。

また、寝室からシルフィの部屋に繋がるドアも、この直線上に在ります。


(ケイティが”こたつ”を知っていた理由)

ナナシ「こたつの熱源」→ニーナ→メイド長→王妃様「こたつを作る許可を求められたら許可を出す様に」→メイド長→ケイティ です。


(”畳っぽい何か”について)

イグサの代わりに革をかぶせた、畳っぽい物です。

【目玉】を派遣してイグサを探しましたが、この大陸では見付かりませんでした。

他の大陸にも【目玉】を派遣して探していますが、まだ見付かっていません。

イネ(米)も醤油も味噌も探していますが、こちらもまだ見付かっていません。


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