< 44 新・王宮での生活38 ニーナとケイトのペンギン型ゴーレム >
「メイド長から、ナナシ様にお返しする様に言われて渡されたのですが…。」
ダンジョンと買い物から帰って来たばかりの俺に、ケイティさんが戸惑った様にそう言って袋を差し出して来た。
モソモソモソモソ
何だか、袋が動いてるんですがっ。
「…中身は何?」
「…分かりません。」
「………。」
ケイティさんが、いかにも手に持っていたくなさそうに袋を差し出して来たので、取り敢えずその袋を受け取った。
モソモソ動いているから、袋の中身は生き物なのかな?
でも、お返しされる様な生き物に心当たりは無いなぁ。
袋に入れっぱなしにしておくのは可哀想なので、結界を張って、その中に袋の中身をぶちまけた。
袋の中から出て来たのは、ペンギン型ゴーレムだった。それが二体。
モソモソしていたのはペンギン型ゴーレムだったのね。
生き物でなくて安心しました。
でも、これがここに持ち来まれた理由が分からない。
被服部から持ち来まれたのなら『何かの不具合かな?』とか思うけど、メイド長からだからね。
落とし物だったとしても、その場合でもやっぱり被服部に持ち込まれそうだしね。
分からないよね。
取り敢えず、その二体のペンギン型ゴーレムを見てみる。
見ると、一体の足が黄色かった。
足の黄色いペンギン型ゴーレムは、一体しか作ってない。
二体目に作った、ケイトのペンギン型ゴーレムだね。
いや、”ケイトがいつも抱きかかえていた”ペンギン型ゴーレムか。
ぢゃあ、もう一体はニーナのかな?
二体のペンギン型ゴーレムは、球状に張られた結界の底でジタバタしている。
取り敢えず『ぬいぐるみモード』にして大人しくさせてから、結界を消して手に持った。
えーーっと。
二人から没収したってことなのかな?
一応、所有者は俺だから、ここに持ち来まれた事は分からないでもないが、二人から没収された理由が分からない。
それと、二人が俺の担当から外された理由もね。
分からない事だらけだね。
うーーん。どうしようかな?
どうしたら良いのか分からないが、取り敢えず、部屋の中を歩かせておくか。
そもそも、その為に作ったペンギン型ゴーレムだったしね。
もう随分と昔の話の様に感じてしまいますが。(遠い目)
二体のペンギン型ゴーレムを『歩行モード』にして、床に置いて歩かせる。
ヨタヨタヨタヨタ
ヨタヨタヨタヨタ
ヨタヨタと歩いている様子を少し眺めてから、メイドさんたちに言う。
「取り敢えず、部屋の中を歩かせておくね。その為に作った物だから。」
「はい。分かりました。(キリッ)」
「はい………。」
ケイティさんは”キリッ”とした返事をして壁際に控えた。
クーリは、窓側の壁際に控えながらジーーーッとペンギン型ゴーレムを目で追っている。
時々クーリの手が動くのは、触りたいからなのだろうか?
何となく可愛らしい仕草だったので、そんなクーリを眺めて和みました。
夕食後のお茶の時間。
シルフィをなでなでしながら、頭の中で【多重思考さん】から報告を聞く。
ニーナとケイトについてね。
『ニーナさんとケイトさんは、懲罰房的な部屋に入れられています。』
そうなのか。
何かやらかしたのかな?
何かやらかして、懲罰房的な部屋に入れらたから、ペンギン型ゴーレムが没収されたんだね。
何をやらかしたのかは分からないけど。
まぁ、それは今はいいか。
明日にでも、誰かから説明があるだろう。
あるよね?
ないかな?
それもよく分からんね。(苦笑)
二人には、後で”差し入れ”をしてあげよう。
取り敢えず、今は”シルなで”をしておく。
今日は色々な事があって、疲れてしまったのでね。
はぁ。(疲れた目)
< ニーナ視点 >
一人寂しく、体を丸めて寝ています。
”反省部屋”のベッドです。
固くて寒いです。
ペネラの温もりが恋しくなります。
明日も延々と反省文を書かされるのかと思うと、気が沈みます。
「はぁ…。」
溜息が出ました。
ぽす
「ん?」
…何かが顔の前に置かれた様な感じがしました。
暗くて分からなかったので、手で触ってみます。
モフ
…この手触りは知っている気がします。
ソレの全体を触ります。
モフモフ
フニフニ
この手触りと、この大きさ。
間違いありません。
ペネラです。
胸元に抱きます。抱き締めます。
ほんのり暖かくてモフモフでフニフニです。
ほんのり暖かくてモフモフでフニフニです。
『ありがとうございます。ナナシ様。』
転移魔法でここに送ってくれたナナシ様に心の中で感謝し、そのまま眠りにつきました。




