01 事件発生01 ナナシは見た
姫様と初めて出会った、この日。
俺は、”盗賊退治”と言うか、”嫌がらせ”っぽい事をする為に、姿を消して街道近くの上空に立ち、盗賊たちの様子を窺っていた。
偵察に【目玉(仮称。魔法で作られた目。正式名称決めないといけないなぁ)】を複数使って、盗賊たちのレベルと数と配置は把握済み。
馬車が二台近付いて来たので、『あの馬車が通り過ぎてからやるかぁ。』と決めて、その馬車が通り過ぎるのを待った。
その二台の馬車の内、後ろを走っている馬車は、普段見掛ける物とはかなり違っていた。
装飾がされた立派な外装で、騎士たちが護衛に就いていた。
『アレに仕掛ける馬鹿は居ないよなぁ。』とか思いながら、ぼんやりと眺める。
しかし、後ろを走っていたその豪華な馬車だけが、盗賊たちが居る場所のすぐ近くで停まった。
「あれ?」
不思議に思っていると、「わー。」、「わー。」、「わー。」とか言って、騎士たちが走り去ってしまった。
「………は?」
その様子に、呆然とする俺。
呆然とその馬車を眺めていたら、盗賊の一人が馬車に近付き、中に入っていった。
しばらくすると、女性が二人、馬車から降ろされ、盗賊たちに連れ去られて行く。
うーん。困ったなぁ…。
盗賊に捕われている人が居ると面倒なんだよなぁ。
助けられるのが当然の様な態度をとるから。
『街まで連れていけ。』、『護衛しろ。』、『食べ物をよこせ。』
そんな事を、当然の権利の様に主張する。
そんな過去の嫌な出来事を思い出し、助けようか放置しようか決めかねる。
どうするか決めかねながら…。
俺は、一応、近付いて行って、監視する事にした。
2019.12.30 一部修正しました。
馬車を”一台”から”二台”に変更しました。
『騎士が居る』『国内の移動』『街に寄りながらの移動』とは言っても、メイドさんが一人も居ないのはおかしいと思いましたので。
メイドさんたちが乗っている馬車が前。姫様が乗っている馬車が後ろです。