< 39 新・王宮での生活35 ナナシ、買い物に行く02 >
買い物に行くことにした。
部屋で大人しくしていると、堅苦しい雰囲気に疲れてしまいそうだったので。
それに、新しいメイドさんたちも、『空中から何が出てくるんだろう。』とかビクビクしていたり、『物が勝手に動くことに驚かない様にしよう。』とか緊張している様に感じたのでね。
部屋に居るよりは、外に買い物に出た方がいいよね。
まぁ、何処に居ようが、空中から物を取り出したりしますが。(←やめてさしあげろ)
よし。買い物だ。
その為に、俺は気合いを入れる。
この後、着替えをしないといけないのでっ。
でも、ニーナが居ないから、メイドさんが大勢やって来るという事態にはならないのかな?
その可能性も無くはないが、変に期待してそれが裏切られたら心が折れるので、気合いを入れておこう。(←どんだけ警戒してるんだよ)
着替えをする。
ケイティさんに手伝ってもらって。
メイドさんが大勢やって来る気配は無い。
でも、気を抜いたりはしない。
油断して下手を打つと心が折れるから。
サクサクと着替えが進む。
そして、着替えが終わった。
「ふぅ。」
安堵の溜息が出た。
いや。
ここで気を緩めるのは危険だ。
気合いを入れ直す。(←どんだけ警戒してるんだよ)
廊下を歩く。
ケイティさんとクーリが一緒だ。
廊下で何かが起こる事も無く、建物を出て馬車に乗る。
走り出した馬車は王宮の門を出て、街中を走る。
ガラガラガラガラ
………………。
あれ?
何も起きなかったね。
………………。
「ふぅ。」
安堵の溜息が出た。
何も起きなかった。
うん。何も起きなかった。
ふぅ。良かった。
警戒し過ぎだったのかな?
警戒し過ぎて、ちょっと疲れた。
着替えて、歩いて、馬車に乗っただけなのにね。(苦笑)
何も無くてよかったね。
SAN値が削られる事も無かった。
うん。良かった。
何も無かった事に安堵したら、『”あててんのよ”は有っても良かったかなー。』なんて思った。(←おい)
まぁ、何も無かった事を素直に喜ぼう。ばんざい。
安堵した俺は、クーリが感心した様子でこの馬車の内装を見回しているのを眺めて和んだ。
俺の服の胸元が少しゆったりしている事とか、その胸元を正面から凝視しているケイティさんとかには、俺はまったく全然気が付きませんでしたっ。
寝具屋に来た。
こたつ布団と座布団を発注する為にね。
お店に入ると、応接室に通された。
見た感じ、普通の応接室です。
でも、俺の中では『寝具屋』と『応接室』とは繋がらないので、普通に応接室が在る事に、何だかよく分からない笑いが出そうになります。(苦笑)
貴族が居る社会では、きっと応接室が在るのが当たり前なんだろうね。
自分自身が貴族だという事実には、まったく慣れる気配がありませんがっ。
よく分からない笑いが出そうになるのを堪えながら、応接室の中を見回す。
すると、掛け布団と敷布団の見本が有った。
ちょうどいい。
それぞれ、サイズを変えればこたつ布団と座布団になりそうだよね。
掛け布団の質感を触って確認する。
モフモフ
ふむふむ。
こんな感じでいいかな?
良さそうな気がするな。
こたつ布団は、こいつのサイズを変えて作ってもらえば、それで済みそうだ。
次に敷布団の質感を触って確認する。
モニモニ
…ちょっと固いかな?
手で持って重さを確認する。
…ちょっと重い気がする。
もっと、ふっくらした物が欲しいな。
お店の人とそんな話をしたら、クッションの見本を持って来てもらえる事になった。
クッションの見本を待っている間に、こたつ布団の発注を済ませてしまおう。
サイズと、欲しい枚数を伝えるだけだからね。
「カバーはどうしますか?」と訊かれて、頭から抜け落ちていた事に気が付いた。
生地の見本を見せてもらいながら、カバーの発注も済ませた。
クッションの見本を持って来てもらったので、これも質感を触って確認する。
モフモフ
敷布団よりも軽くて柔らかいです。
こいつで座布団を作ってもらおう。
サイズを伝えたら、平べったくて大きいクッションに、少し驚かれた。
胡坐をかかない人たちからすると、不思議なサイズに思われてしまうのかもしれないね。
再び、生地の見本を見て、座布団のカバーの発注も済ませた。
ふぅ。
想像していたよりも時間が掛かったね。カバーの事を忘れていたから。
後の細かい話は、ケイティさんに任せる。
が、すぐに話は終わった様だ。
お店の人たちに見送られて、次のお店に向かいます。
次は革を扱っているお店だ。
買うのは前回と同様、畳表代わりに使う革だ。
王宮の部屋にもこたつを置きたいと思っているからね。
こたつを置く為には、畳を敷かないとならないので、その畳に使う分の革です。
前にも来たお店で、前にも買った革を買うだけなので、サクッと終わります。
帰り際に、『王宮から毛皮の発注が増えて喜んでいます』的な事を言われた。
『へぇー、そうなんだー。』としか思わなかったが、馬車に揺られてしばらく経ってから『ペンギン型ゴーレムに使う毛皮かもしれない』と、気が付いた。
何の毛皮を使っているのかは知らないが、絶滅してしまったりしない様に祈っておこう。
中古の馬車を売っているお店に来た。
馬車がズラリと並べられています。
ここで、魔改造の実験用の馬車を買います。
”実験用”なのは、今日も乗って来ている元公爵家の所有物だった馬車が豪華過ぎるので、いきなりイジるのが怖いからです。
【製作グループ(多重思考された人(?)たちの内の、物品製作をしているグループ)】の人(?)たちが馬車の魔改造をしたがっているので、どうしても必要なのです。
接客に来てくれた人に、「目を付けている物があるから、それを見させてもらいます。」と言って、その馬車のところに向かう。
前もって【製作グループ】の人(?)が【目玉】を使って良さげな物を探してくれていたのでね。
おやつの時間までに王宮に戻りたいので、サクサクと買い物をしていこう。
【製作グループ】の人(?)に頭の中で案内してもらって、お目当ての馬車のところまで行く。
そして、足回りを覗き込む。
車軸の固定方法とか、サスペンションとかが気になっていたので。
中身など、二の次なのだよ。(←変な客だ)
車軸は板バネを介して客室部に固定されていて、車軸の両端に車輪が取り付けられている。
車軸と車輪の間の隙間にはグリスがベッタリ塗られているみたいだ。
『ベアリング無いとこうなるんだなぁ。』なんて事を考えながら色々と見る。
頭の中で【製作グループ】の人(?)が、この馬車を選んだ理由を説明してくれる。
乗って来た馬車と足回りの部品の使い回しが出来て、座席の取り外しが簡単そうな物を選んだんだそうだ。
ふむふむ。
変な客だね。(←変な客だという自覚があった模様)
ケイティさんに「これを買う。」と告げて、交渉をお任せする。
交渉をしてもらっている間に、俺は他の馬車も見て回る。
中身を見ずに、足回りばかり見る俺のことを、他の人がどう思っているかなんて気にしません。
男はこういうのが好きなんですよ。
色々と見ていたらケイティさんが迎えに来た。
ちょっと夢中になり過ぎていた様です。(てへ)
馬車に向かいながら、「今日中に王宮に届けられます。」と教えてくれた。
『このくらいの馬車なら俺の【マジックバッグ】に入るなぁ。』とか思ったけど、悪目立ちする様な事はやめておこうね。
ケイティさんに礼を言って、お店の人にも礼を言って、次のお店に向かう。
魔道具屋に来た。
前に一度来たことのある魔道具屋です。
ミスリルのネックレスチェーンを買っておこうと思ってね。
それと、ついでに魔石の価格がどんなことになっているのかを確認しておこう。
前に来た時に色々教えてもらった、あのおばあさんは居るかな?
店に入ると、奥のカウンターにあのおばあさんが居た。
「こんにちはー。」
「いらっしゃい。久しぶりだねぇ。あと、結婚おめでとう。」
ここで『結婚おめでとう。』と言われるとは思っていなかったので、少し驚いた。
「あ、ありがとうございます。」
どもりながら、礼を言う。
そして、『おや?』っと思う。
「…俺、結婚するとか言ってなかったですよね? 名前も言ってなかった気がするんですが?」
そもそも、前にここに来たのはシルフィに出会う前だ。
結婚の”け”の字も無いよね。
おかしいよね?
「あんた以外に、他に誰が居るって言うんだい。はぁ。」
呆れた様に言われた。溜息付きで。
『俺以外には居ない』みたいに言われてしまったんだけど、そんな事は無いんぢゃないかなぁ?
解せぬ。
せっかく、結婚を祝ってくれたので、言うべき事は言っておこう。
「ご祝儀とか、くれたりするんですかねぇ? (にやにや)」
「こんな老い耄れにタカるんじゃないよ。義理のご両親にでもタカリな。」
「はーい。」
ただの挨拶のつもりが、長くなってしまったね。
ちゃっちゃと買い物を済まそう。
おやつの時間までに王宮に戻りたいので。
「ミスリルのネックレスチェーンが欲しいんですが、有りますか?」
「有るよ。どんだけ奥さんにプレゼントするんだい。(にやにや)」
「いえ、シルフィにはもうプレゼントしたので。買うのは、この先作るかもしれない魔道具用です。20個分くらい欲しいんですが、有りますかね?」
「そのくらいなら有るよ。ところで、ミスリルは持ってないかい?」
あまり買い過ぎると困ってしまうのかな?
「えーっと、持ってますね。」
「売ってくれないかねぇ? 腕一本なんて言わないからさ。手首の先くらいでいいよ。」
「………………。」
”腕一本”とか言われちゃったんですがっ。
それって、オークションに出しているのが俺だと思われちゃってませんか?
おかしくね?
「えーっと…、どこまで知ってるんですかね?(ビクビク)」
探りを入れる為に、敢えて曖昧な訊き方をする。
「冒険者ギルドのオークションにミスリルゴーレムの腕が出品されている事と、あんたが仕留めたんだろうって事と、きっと全部持っているんだろうなぁって事くらいだね。」
「………………。」
それって、全部ぢゃね?
おかしくね?
どうなってんの?
「手首の先くらいならオークションに影響は無いさ。誤差の範囲だし、加工しちまうからね。」
俺が黙っているのは、『オークションへの影響を考えているから』と思われた様だ。
って、それだと、俺がミスリルゴーレムを仕留めてて、全部持ってるって事は、既に確定扱いぢゃないですかっ。
おかしいよねっ?
まぁいいや。
それは諦めよう。
それに、『ここに来ればミスリルのネックレスチェーンが買える』という状態にしておくのは、俺にもメリットが有るからね。
【製作グループ】に切り分けてもらって、【マジックバッグ】から取り出す風に装いつつ【無限収納】からミスリルの塊を取り出してカウンターに置いた。
「ほぉ。」
おばあさんはカウンターに置かれたミスリルの塊をジッと見る。
「ありがとう。(ニッコリ)」
「どういたしまして。」
金貨の入った袋とミスリルのネックレスチェーンを受け取り、【マジックバッグ】に仕舞った。
よし。買い物は終わった。
ここに来たついでに、魔石の価格について訊こう。
「魔石の価格が上がってるって聞いたんですけど…。」
「ああ、上がってるね。品薄になってしまっているからね。大量に購入したお方が居らっしゃってね。」
『お方が居らっしゃってね。』という言い方で察した。
どうみても王妃様に頼まれたアレが原因です。本当にありがとうございました。
ちょびっとだけ表情が固まってしまう。
「やっぱり、あんたが原因かい。」
「いやいやいやいや、『やっぱり』って何ですか、『やっぱり』って。」
「何かしでかすとしたら、あんたしか居ないだろ。で、何をしでかしたんだい?」
これも確定扱いかい!
失礼なっ。
確かに俺がした事が原因だけどさっ!
「…ちょっと、魔道具を作っただけデスヨ。」
『ちょっと』という数ではありませんでしたがっ。
「ほう。」
おばあさんは興味を持ったご様子です。
「その魔道具をウチに卸す気はないかい?」
「あー、無いですね。売る気が無いんで。」
おばあさんは少しだけ不満顔だ。
ちょっと補足しておこう。
「『お金を払いさえすれば手に入って当然』とか考える変な奴が現れてめんどくさい事になりそうですからね。だから、お金を対価に魔道具を作る気は無いんです。」
「なるほど。じゃあ、しょうがないね。」
諦めてくれた様だ。割とあっさりと。
納得してくれたのかな?
それとも、俺とは適度な距離感を取る事が良いと思ってくれているのかな?
そうだとしたら、付き合い易くて助かるね。
「魔石が品薄になっている状態は解消しますよね?」
価格が上がっているのなら売りに来る人が増えるだろうから心配はしていないが、ついでに訊いておく。
魔石が品薄になっている状態が解消してくれないと俺も困るからね。
俺が困る理由は、魔石が無くて魔道具が使えなくなると、俺の作った魔道具も『役立たず』呼ばわりされてしまいかねないからです。
俺にとっても大きな問題だよね。
「どうなるか分からないねぇ。」
だが、おばあさんの返答は、俺の予想していたものとは違った。
「え? そうなんですか? 魔石の価格が上がれば、森に魔物を狩りに行こうって冒険者が増えるんぢゃないんですか?」
「それがねぇ。」
おばあさんが説明してくれた。
原因の一つは、あの”公爵家との勝負”にあった。
オークの集落に向かった冒険者たちが全滅したと思われていて(実際に全滅しているのだが)、それまで森に行って魔物を狩っていた中堅の冒険者たちが警戒して森に行くのを止めてしまったのだそうだ。
残ったベテラン冒険者たちは、稼ぎの良い商隊の護衛を多くやっていたり、ダンジョンに行ったりしているらしい。
護衛の仕事が回ってこない新米冒険者たちが森に行っているそうなのだが、何故かゴブリンが激減してしまっていて、碌に魔石を持ち帰る事が出来ていないらしい。
また、ゴブリンを探して歩き回っている内に他の魔物と遭遇してしまって、命を落としたり大怪我をしてしまったりした新米冒険者が多く居たんだそうだ。
そんな稼ぎの少ない新米冒険者たちの一部が、『ゴブリンやオークを相手にするより安全に稼げるだろう』と他の冒険者を襲ったり、盗賊になったりしているのだそうだ。
そんな者たちは冒険者ギルドが討伐を計画している様なのだが、そんな事もあって、魔石の品薄状態はなかなか解消しそうにないとのことだ。
えーーっと。
コメントし難いね。
あの”公爵家との勝負”については当事者だし、ゴブリンが激減しているのも、俺(主に【多重思考さん】たち)の所為だしね。
でも、俺が想像していた以上に大変な状況になっていたね。
稼ぎが無いからといって、他の冒険者を襲ったりとか盗賊になるとかは、俺の想像の斜め上だしね。
簡単に盗賊になり過ぎな気がするね。この世界の人たちって。
どうすればいいんだろうね?
頭の中で対策を考える。
森のゴブリンを増やす?
急には増えないよね。
俺の持っている魔石を供給する?
魔石の品薄状態は軽減されるだろうけど、新米冒険者の問題は解決しないよね。
何か良い解決方法なんてあるかね?
うーーむ。
あ。
閃いた。
ダンジョンか。
ダンジョンの一層目にゴブリンを沢山出してもらえば、解決するかな?
解決しそうな気がするな。
新米冒険者にはダンジョンの一層目でゴブリンを狩ってもらって魔石を得ると共にレベル上げをしてもらって、それから森のオークなんかに挑んでもらおう。
森のゴブリンを急に増やす事なんか出来ないんだから、これが一番っぽい気がするな。
ダンジョンマスターのダーラムさんに、そうしてもらえるように頼んでみよう。
俺が一人で解決方法を見付け出していたら、おばあさんが言う。
「ポーションも品薄になってしまって困ってるんだよねぇ。なかなか手に入らないし、価格も高いしね。」
ポーションも品薄になって価格が上がってしまっているそうです。
【ヒール】の魔道具を作っちゃったけど、その所為ぢゃないよね?
【ヒール】の魔道具が原因で価格が動くとしたら、ポーションが売れなくなって安くなる方向に動くはずだからね。
それに4つしか作ってないから、価格変動を起こすほどの影響力は無いだろう。
「ポーションが品薄なのは、隣街の連中の所為だね。」
俺の所為ではなかった様です。(ホッ)
「…何かやったのかい?」
ホッとしていたら、あらぬ誤解を受けた。
「何もやってないデスヨ。」(ポーションを品薄にする様な事は)
おばあさんは、俺の返答には特に反応を示さずに、説明してくれた。
「隣街が魔術師を集めて何か組織を作ったと思ったら、その組織が分裂したりして、なにやらゴタゴタしているみたいでね。そのゴタゴタの煽り受けたのか、ポーションの出荷量が落ちているみたいなんだよ。」
「隣街はポーションの生産で発言力を得たかったみたいなんだけど、ゴタゴタの所為で多くの街が迷惑しているよ。」
「へぇー。」
「そう言えば、あんたは魔術師ギルドには入っているのかい?」
「へ? 『魔術師ギルド』なんて在りましたっけ?」
冒険者ギルドしか知らないんですが。
「隣街の『魔術局』という役所から分裂した『魔術研究会』が、『魔術師ギルド』に名前を変えたんだよ。知らなかったのかい?」
「知りませんでした。」
「王都にも支部が出来たよ。魔術師ギルドの。」
「へぇー。」
「…興味無さそうだねぇ?」
「組織に所属するのが嫌いなので。」
揉め事を避けて、のんびり過ごす為には、組織に所属しない方がいいよね。
アレコレ指図されるのはめんどくさいからね。
「それに、魔術研究会には勧誘されましたけど、魔術師を至高の存在とか言う変な団体でしたしね。街の住人たちの評判も良くなかったですし。むしろ、『魔術師の評判を落とすクソ迷惑な集団』と俺は思ってます。」
消してしまおうかね?
「あんたは目を付けられてるよ。気を付けなよ。」
「へ?」
特に目を付けられる様な事はしてないはずだよな?
何でだろう?
「たった一人の魔術師が公爵家との勝負に勝ったんだからね。魔術師を至高の存在とか言っている連中にしたら、大いに宣伝したい英雄だろうさ。」
「うわぁ。(超イヤな顔)」
それは迷惑だな。超迷惑だ。
吹き飛ばしちゃおうか?
「魔術師を至高の存在とか言っている連中だ。あんたのことを取り込みたくて仕方が無いんだろうねぇ。実際に王宮に押し掛けたらしいしね。」
「え? そうなんですか?」
全然知らなかった。
「…あんた、大事にされてるんだねぇ。(にやにや)」
少し考えてから「…そうですね。」と言った。
そうだよね。気を使ってもらっているよね。
領地を貰っているけど、何もしなくてもいい様に大臣たちが動いてくれているもんね。
それと、【マジックバッグ】を作れる事を知られているけど、製作依頼が来ないしね。
うん。気を使ってもらっているよね。
「王宮に居る間は大丈夫だろうね。でも外出する時は気を付けなよ。絶対に一人で出歩くんじゃないよ。」
「…子供ぢゃないんですが。」
「あんたは常識知らずなんだからね。この前来た時は”長さの単位”すら知らなかったじゃないか。」
「ハハハ…。」
ソンナコトモアリマシタネー。
ぐぬぬん。
「それぢゃあ、買いたい物も買えたし、王宮に帰りますね。」
変な奴に目を付けられない内にね。
「ああ。気を付けて帰んなよ。」
すっかり子供扱いです。(苦笑)
「はーい。」と返事してお店を出ます。
馬車に乗り、王宮に帰りました。
寄り道せずに真っ直ぐにね。




