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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 38 新・王宮での生活34 ナナシ、新しいメイドさんに事情を訊く それと、軽く魔法を披露する >


ニーナが異動になったと聞かされた。

新しく”俺付き”になったというメイドさんに。


ニーナとは良好な関係だったと思うので、残念だ。

でも、急な話だ。

急な話だったので驚いた。

でも、何でニーナは異動になっちゃったのかな?

新しく、”俺付き”になったというケイティさんに訊いてみよう。


「ケイティさん。」

「ケイティとお呼びください。(キリッ)」

「…ケイティ。」

「はい。(キリッ)」

キリッとしぎていて、何だか調子が狂う。

ケイトほどユルぎるのも問題だけど、キリッとしぎているのも問題だね。

今は、それは置いておこう。

「えーっと、何でニーナは異動になっちゃたのかな?」

「ナナシ様付きとして相応ふさわしくない問題行動が有ったからだと聞いております。(キリッ)」

問題行動…。

何か有ったかな?

…割と細かい事が色々と有った気がするな。

笑顔で”あつ”を加えてきたりしたしね。

あと、明確に俺の要請を拒否したりもしたな。

ペンギン型ゴーレムを「床に置いて。」って言ったら、「や。(キッパリ)」って言われちゃったし。(苦笑)

でも、『コレだ』というモノは、思い付かないな。

うーん。

でも、俺に何かが出来る訳ではないのかな?

メイドさんの配置について、俺が何か言える訳ないよね。

下手へたに何か言うと、シルフィからあらぬ誤解を受けてしまいそうだ。

そうなったら、またメイドさんたちへの”ゴマスリ”を考えないといけなくなっちゃいそうだね。俺が死なない為に。

何か言うのは、ひどい悪手あくしゅっぽいね。

ニーナの異動について、俺が何か言うのはめておこう。

ヤバイ事態を招きかねないからね。


そして、既に窓側の壁際かべぎわに移動してひかえている、もう一人のメイドさんについても訊く。

自己紹介はされたのだが、ニーナが異動になったと聞かされて頭が真っ白になってしまって、何も耳に入ってきていなかったので。

「あの子は俺の護衛?」

「クーリは、ケイトに代わってナナシ様の護衛を勤めます。(キリッ)」

クーリというお名前だそうです。

「…もしかして、ケイトも異動?」

「そう聞いています。(キリッ)」

えぇー、ケイトもかぁー。

でも、ケイトについては、あまり意外感が無いな。(←おい)

『したい事しかしない、良く分からない人』って感じだったからね、ケイトは。(苦笑)

護衛役としては問題だよね。時々居なくなっていたし。

いや、『したい事しかしない』感が有ったのはニーナも同じかな?

ニーナは、ケイトほどではなかったかな?

でも、明確に拒否された事も有ったからなぁ。

…何だか、『どっちもどっちだった』という気もしてきました。(苦笑)


窓側の壁際かべぎわひかえているクーリを見る。

彼女は手袋をしているのだが、手袋をしているメイドさんは初めて見た気がするな。

水仕事が多いメイドさんには珍しい気がする。

寒がりさんなのかな?

容姿は、お人形さんの様な見た目でとても可愛かわいらしい。

ただ、表情が硬いね。

彼女も”キリッ”っとしている。

堅苦かたくるしいよね。

今までこの部屋にあったユルい雰囲気が、二人のお陰で消し飛んでしまっています。

うーーむ。

取り敢えず、気分を落ち着けたくて、ケイティさんにお茶を頼んだ。

何となくソファーに座り直し…。

「はぁ。」

無意識に溜息ためいきが出た。



ケイティさんにれてもらったお茶を飲みながら考える。

『この堅苦かたくるしい雰囲気をどうしようか?』とか。

『部屋の中で魔法の実験をしたら、彼女たちにどんな反応をされるのだろうか?』とかね。

堅苦かたくるしい雰囲気”の方は、すぐにどうにかなるモノでもないだろう。

この部屋での仕事に慣れていけば、自然と肩の力が抜けてくれるだろう。


魔法の方は、早い段階である程度見せておいて、慣れてもらった方がいいかな?

これからも、部屋の中で色々な魔法の実験をしたりするだろうからね。

その中には、驚かせてしまうモノも有るかもしれないからね。

うん。早く慣れてもらった方がいいだろう。

ぢゃあ、早速さっそく慣れてもらおうかな。

二人を呼んで、言う。

「俺はこの部屋で色々な魔法を使って実験をしたりしてました。」

「これからもすると思うので、その時に驚かせてしまわない様に、ちょっと魔法を使う様子を見せておくね。」

二人は無言でうなずいた。

緊張しているのかな?

ず、割と普段から空中から物を取り出します。」

【無限収納】からつえを取り出す。

二人とも驚いている様です。

杖を起動させて、俺の左前に浮かせておく。

「この様に物が浮いている事も、この部屋ではよく有ります。」

…自分で言っておいて何だけど、言葉にすると変な感じがするね。(苦笑)

空中でうにょうにょし始めた杖を無視して、説明を続ける。

「俺自身が浮いている事も有るし。」

【フライ】で浮いて見せる。

「転移魔法で何処どこかに行く事もあります。」

隠れ家に転移し、またすぐに戻って来る。

「それと、窓が勝手に開いたり、閉じたりします。」

【魔法の腕】を使って、窓を開けて、また閉める。

「机から便箋びんせんがふよふよと宙を浮いてやって来る事もあります。」

【魔法の腕】を使って机の引き出しを開けて、便箋びんせんを持って来させる。

「こんな事がしょっちゅう有るし、同時にいくつもの事が起こる事も有るけど、驚かないでね。」

「………………。」

「………お、…お…う?」

ケイティさんは無言です。

クーリはちょっと変な声を出していました。

「………………。」(俺)

「………………。(呆然)」(ケイティ)

「………………。(おろおろ)」(クーリ)

おもいのほか、衝撃を与えてしまっている様な気がします。

おかしいね。

ニーナとケイトは、平然へいぜんとしていたんだけどね。

それどころか、ペンギン型ゴーレムとたわむれていた気もするな。

二人の様子に戸惑います。

『手加減ェ…。』

頭の中で【多重思考さん】に呆れた様に言われましたが、俺は悪くないと思います。


二人の様子を見て少し不安になった。

そして、早くもニーナとケイトの事を懐かしく思いました。(←本当に早いな)


(突発的メイドさん紹介)


< 『将来の幹部候補』 ケイティ >

”キリッ”としたお硬い感じのメイドさん。真面目まじめ。鎖骨派。

初代”あててんのよ”さんのマリーとは同期。

ナナシが初めて王宮に来た際、マリーと一緒に採寸をしていたメイドさん。

マリーのブレーキ役として、一緒に仕事をしている事が多かったのだが、今回、ニーナの後任としてナナシ付きのメイドになった。

堅実な仕事ぶりが評価されていて、将来の幹部候補とされている。

『仕事は堅実だが、遊び心が足りない。マリーと足して2で割れればいいのに…。』と、メイド長をはじめとした幹部たちに思われている。

”キリッ”っとしているのは、誰かに付くのが初めてな事と相手が姫様の夫だから緊張している為である。

この先、徐々に(キリッ)は無くなっていく予定。書くのがめんどくさいので。(←おい)


< 『”あててんのよ”さん』 マリー >

初代”あててんのよ”さん。

ナナシが初めて王宮に来た際、採寸をしていた時に”あててんのよ”をしてきたメイドさん。

ケイティの同期。

筋肉が好きで、筋肉に詳しい。

意外と有能。普段はアレだが、やる時はやるタイプ。

『頼りになる先輩』と後輩たちには思われている。


< 『重撃じゅうげき』のクーリ >

ケイトの後任のナナシの護衛役。

綺麗な金髪を肩まで伸ばした、お人形さんの様な見た目の美少女。

瞳の色は青。無口。色白いろじろ。背が低い。胸は小さい。愛称:クーリちゃん。

現在のふた持ちの中では最年少の17歳。

まだ若いが、その実力は高い。

拳闘術の使い手で、攻守共に高い能力を有している。

拳を保護する為に、特別製の肘までの長さの手袋を着用している。

ナナシには”寒がり”だと思われている。

ジャブとストレートを打ちながら前へ前へと出る、武骨ぶこつな戦い方をする超攻撃的ファイター。

見た目によらず重い一撃を放つ事を驚かれ、空位くういだった『重撃じゅうげき』のふたが与えられた。

王宮のメイドになる前から、先代の『重撃じゅうげき』であった実母に鍛えられていた様である。

『鉄壁』のケイトと初めて訓練をした際は、ケイトの防御力の前にまったく攻撃を当てることが出来ずに惨敗した。

それ以来、『打倒ケイト』を目指し、よくケイトの訓練相手を務めている。(ケイトが付き合わされている。)

だが、『打倒ケイト』がかなう気配はまったく無い。

ケイトの防御方法を真似まねて、相手の攻撃をはらけたり、ジャブで撃ち落とす防御方法を身に着けつつある。

現在でも既に『鉄壁』のケイトに次ぐ高い防御力を持っている。

だが、ケイトとの実力差は、まだまだ大きい様である。

最近では、ケイトの影響で増えた手数の多さから『十撃じゅうげき』のふたも付くようになった。


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