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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第十二章 異世界生活編07 新・新生活編
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< 37 外伝 ニーナ、異動させられる >


メイド長の執務室に来ました。

先ほどナナシ様が作られた『ほんのりあたたかくなる板』の製作を直訴じきそする為です。

これを喜ぶメイドは大勢おおぜい居ると思いましたので。

メイド長に早速さっそく試してもらいましょう。

どの様な魔道具なのかをメイド長に説明し、足元に置いた板に足を乗せてもらいます。

そのまま少し待つとメイド長の表情が変わりました。

「これはいいですね。(笑顔)」

好感触です。

「姫様をつうじてナナシ様に発注いたしましょう。」

よし。

これでまた得点を稼げたことでしょう。

将来のメイド長の座も、夢ではないのかもしれませんね。(ニヤリ)


「ナナシ様は、これを何の目的で作られたのですか?」

メイド長に訊かれます。

「”こたつの熱源”に使う物らしいです。ですが、”こたつ”がどんな物かは私はまだ見ていませんので分かりません。」

「”こたつ”ですか…?」

メイド長も”こたつ”をご存じなかった様ですね。

「他にも何か知らない言葉をくちにされたりしましたか?」

ナナシ様の口から割とよく出てくる”よく分からない言葉シリーズ”ですが、今は他に有りませんね。すべて報告済みですから。

「すべて報告済みです。(キリッ)」

フフフ。何だか、デキるメイドみたいなセリフですね。

やはり、将来のメイド長の座も、夢ではないのかもしれません。

フフフ。


直訴じきそと報告を終えた私は退室します。

部屋に戻って、今も抱いているペネラをもっとモフモフフニフニしまくりたいので。

ですが、メイド長に呼び止められました。

「先日、ナナシ様のお部屋であった出来事について確認させてね。」

「………………。」

『確認させてね。』というメイド長の言葉に体が緊張します。

『確認させてね。』という事は、『確認しなければならない事』が存在し、かつ、『裏が取れている』という事なのでしょうか?

そして、『裏を取る必要があった』という事は、『間違いがあってはならない』という意味なのでしょうか?

…何だか嫌な予感がします。

何らかの処罰がありそうな流れっぽいのは、私の気の所為せいですよね?(ビクビク)


メイド長の説明を黙って聞きます。

メイド長が問題としていたのは、ナナシ様のお着替えを大勢おおぜいのメイドで見学した件でした。

ふ。安心しました。

その件なら、ちゃんとした弁明べんめいが有りますので。

「誰も”おさわり”をしていませんでしたので問題ありません。(キリッ)」

適度てきどにナナシ様の素晴らしい鎖骨を見せておきませんと、節度を越えた行動をする者(=襲っちゃう者)が出かねませんので必要な事なのです。(うむうむ)」

「私的な理由で職場を離れた者が居た事は遺憾いかんですが、大きな問題が起こる事を未然みぜんに防げた訳ですので、問題にすべきではないと思います。(うむうむ)」

「ナナシ様の鎖骨の素晴らしさは、提出済み(=別の報告に紛れ込ませておいた)の報告書に記載した通りです。(やれやれだぜ)」

私が弁明をするたびに部屋がひんやりとする様な気がしますが、それは私の気の所為せいです。(汗)

確かに見学者の人数が少しばかり多かったかもしれません。(←大分だいぶ多かったです)

ですが、まったくぜんぜん問題ありませんよね!

うむうむ。

私はそう思ったのですが、メイド長の見解は私の見解とはかなり違っていました。

私はメイド長に、処罰と異動をげられました。



異動はショックです。

今まで、ナナシ様付きの特権で、お着替えのたびにあの素晴らしい鎖骨を鑑賞できていたのですから。

そうです。

あの最高に素晴らしい私の鎖骨を!(←あなたの鎖骨ではありません)

お着替えのたびに!(←あなたに着せ替えをされるたびに)

あの最高に素晴らしい私の鎖骨を!(←あなたの鎖骨じゃありませんってば!)


それに、ナナシ様はワガママをおっしゃられませんので、ナナシ様付きのお仕事はかなり楽なお仕事でした。

一日中ペネラを抱いていられましたし。

時々(ときどき)見せられるナナシ様の奇行きこうにさえ目をつむれれば、最高の職場なのです。

それなのに…。(泣)

げられた異動先は、お菓子製造部の受け入れ担当…。

毎日搬入されてくる大量のおやつの材料の受け入れと運搬と在庫管理。肉体労働の多い過酷な職場です。

メイドの仕事の中で一番過酷とまで言われている職場です。

牛のお世話の方が(牛さんとたわむれられるので)まだマシとか言われています。

オーク退治の方が(ストレス発散できるので)まだマシとか言われています。

ただただ過酷なだけのお仕事なのです。


さいわい、お菓子製造部の建物は寮のすぐ近くなのですが、『職場が寮から近くて助かるね。(ニッコリ)』なんて思いません。

『職場があと10メル(=約6m)遠ければ、その事に絶望しながら安心して倒れられるのに。(絶望した目)』とまで影で言われている職場なのです。

…想像が出来なさ過ぎて意味不明ですが。

まさか、そんな職場に異動とは…。

『天国から地獄』とは、まさにこのことですね。


ふっ。仕方がありませんね。(失う物が無くなった者の目)

せめて最後にナナシ様に突撃して抱き着いて、思う存分すりすりむふむふしまくりましょう。

そう思ったのですが…。

どうやらそれを実行に移す事は出来そうにありません。

護衛のメイドに羽交はがめにされてしまったので。

『ふっ。仕方がありませんね。』の『』のあたりで、すでに羽交はがめにされていました。(困惑)

異様に対応が早いですね。

まだ何もしていなかったどころか、何をするのかも決めていませんでしたよ?

おかしくないですか?(困惑)

メイド長の護衛たちは最高レベルの技能を持っているとの噂は聞かされていましたが、私の想像のはるか上を行っていますね。(呆然)

行動を抑え込むすべは、王宮(づと)めのメイドの必須技能ですので私もおさめていますが、私のソレとは隔絶かくぜつしたレベルの違いが在ります。

あまりにもレベルが違い過ぎて言葉を失います。

しかも、肩をガッツリとめられてしまっています。

身動きがまったく出来ませんし、ヘタな動きを見せたら『ガキョ!』と肩をイイ音で鳴らされそうで、すごく怖いです。

ええ。すっごく怖いです。(ビクビク)

くっ。

諦めるしかありませんね。

不覚でした。

メイド長に呼び止められた時に、全速力でナナシ様に突撃すればよかったですね。

…それすらもめられてしまいそうな気がするのは、私の気の所為せいのはずです。


私は”反省部屋”に連行される様です。

無念です。

床をヨタヨタと歩いているペネラの姿が涙でにじみます。


ペネラと私の鎖骨(←ナナシの鎖骨ですってば)との早い再会を願いながら、私は”反省部屋”に連行されました。(泣)


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